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淫魔編:モニカの画家生活
【230話】やっと見つけた私の取柄
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「おお」
「素晴らしいね」
「そ、そうかなあ?実はわたしもかなり良くできたと思ってて…」
レガッタを見に行った日の5日後、モニカの2枚目の絵が完成した。レガッタを背景に、友人とお話しながら満面の笑みを浮かべているアーサーの絵。もちろん拙い技術で描かれた子どもの絵だが、愛情たっぷりに描かれたそれには惹きつけられるものがあった。画家たちはそれを眺めてうっとりとした表情を浮かべている。
「モニカ、画家にならないか?」
「もう。クロネってば褒めすぎだよ」
「いや、本気で言ってる。君を育てたい」
「確かに。育てたらとんでもない画家になるぞ」
「画家になるなら僕がパトロンになるよ。画材などの費用は全てこちらで用意しよう」
「アトリエはしばらくはここでいいだろうし。あとはルアンで住む家だな…」
「家も僕が用意するよ」
「えっ、ちょ、ちょっと」
勝手にどんどん話が進んでいるので、モニカは慌てて画家たちの会話を遮った。
「待って。みんなにそう言ってもらえてすっごく嬉しいんだけど、私、冒険者をやめるつもりないから…」
「おっとそうだった。モニカは冒険者だった…」
「すっかり忘れてた…。ああ、こんなに才能があるのにもったいない…」
断りの言葉に画家たちがあからさまに落ち込んでいた。申し訳なさもあったが、尊敬する画家たちにそれほど評価してもらえた嬉しさのほうが大きかった。モニカは頬を赤らめてもじもじしながらお礼を言った。
「うれしいなあ。みんなにそんなふうに言ってもらえてうれしい。ありがとう」
「俺たちは本気でヘッドハントするつもりだったんだがなあ」
「喜ばせるために言ったんじゃないよ。本気だった」
「えへへ。うれしいなあ。…わたしね、ずっとなんの才能もないと思ってたから。クロネたちに絵を認めてもらえて、すっごくうれしいんだあ」
「ん?それはおかしいな。だって君は優秀な魔法使いだし、エリクサーだって作れる。才能のかたまりじゃないか」
「うーん…。魔法は生まれ持ったもので私が努力して手に入れたわけじゃないし…。エリクサーだって、アーサーがいなかったら発明できなかったもの。私はただスライムに魔法をかけるだけ」
「うーん…?」
「私はアーサーみたいになんでも器用にこなせるわけじゃないし、記憶の目も持ってないしね。だからずっと、わたしって落ちこぼれだなあって思ってた」
「……」
それはアーサーが特殊すぎるだけで、モニカも割となんでもこなせる方だと画家は思ったが、そんなことを言っても反論されるだけだと考えてなにも言わなかった。
「でもね、みんなのおかげで私だけの得意なことができたよ。アーサーに私ってすごいでしょーって自慢できること。それが、絵を描くこと」
モニカはそう言ってニコッと笑った。
「クロネ、ヴァジー、リュノ、シスル。本当にありがとう。私の才能を見つけてくれて。私の才能を引き出してくれて。私、これからも冒険者を続けるから画家にはなれないけど、絵はずっと描くよ。ポントワーブでも、旅先でも、いっぱい絵を描くよ。それに、またルアンに遊びに来るから、そのときはまた私と一緒にキャンバスを並べてくれる?」
彼女の言葉にたまらなくなったのか、クロネがぎゅっとモニカを抱きしめた。いつも笑顔で明るく振舞っていたその少女は、実はずっと自分に自信がなくて劣等感に苛まれていたことに初めて気付いた。そんな彼女が愛しくて、絵が彼女の自信につながったことが嬉しくて、クロネの喉元が熱くなった。彼はモニカの頭を優しく撫でながら、少し震える声で答えた。
「ああ。いつでも描きにおいで。また一緒に絵を描こう。そして俺たちにモニカの素敵な絵を見せてほしい」
「うん」
「君の絵は光のように美しい。君の絵は俺たちを夢中にさせてしまったんだからね。責任をとってほしいくらいだよ」
「えへへ。ありがとうクロネ。…でもちょっとにおう…。お風呂入った?」
「入ったよ。3日前に」
「うげぇ…」
「素晴らしいね」
「そ、そうかなあ?実はわたしもかなり良くできたと思ってて…」
レガッタを見に行った日の5日後、モニカの2枚目の絵が完成した。レガッタを背景に、友人とお話しながら満面の笑みを浮かべているアーサーの絵。もちろん拙い技術で描かれた子どもの絵だが、愛情たっぷりに描かれたそれには惹きつけられるものがあった。画家たちはそれを眺めてうっとりとした表情を浮かべている。
「モニカ、画家にならないか?」
「もう。クロネってば褒めすぎだよ」
「いや、本気で言ってる。君を育てたい」
「確かに。育てたらとんでもない画家になるぞ」
「画家になるなら僕がパトロンになるよ。画材などの費用は全てこちらで用意しよう」
「アトリエはしばらくはここでいいだろうし。あとはルアンで住む家だな…」
「家も僕が用意するよ」
「えっ、ちょ、ちょっと」
勝手にどんどん話が進んでいるので、モニカは慌てて画家たちの会話を遮った。
「待って。みんなにそう言ってもらえてすっごく嬉しいんだけど、私、冒険者をやめるつもりないから…」
「おっとそうだった。モニカは冒険者だった…」
「すっかり忘れてた…。ああ、こんなに才能があるのにもったいない…」
断りの言葉に画家たちがあからさまに落ち込んでいた。申し訳なさもあったが、尊敬する画家たちにそれほど評価してもらえた嬉しさのほうが大きかった。モニカは頬を赤らめてもじもじしながらお礼を言った。
「うれしいなあ。みんなにそんなふうに言ってもらえてうれしい。ありがとう」
「俺たちは本気でヘッドハントするつもりだったんだがなあ」
「喜ばせるために言ったんじゃないよ。本気だった」
「えへへ。うれしいなあ。…わたしね、ずっとなんの才能もないと思ってたから。クロネたちに絵を認めてもらえて、すっごくうれしいんだあ」
「ん?それはおかしいな。だって君は優秀な魔法使いだし、エリクサーだって作れる。才能のかたまりじゃないか」
「うーん…。魔法は生まれ持ったもので私が努力して手に入れたわけじゃないし…。エリクサーだって、アーサーがいなかったら発明できなかったもの。私はただスライムに魔法をかけるだけ」
「うーん…?」
「私はアーサーみたいになんでも器用にこなせるわけじゃないし、記憶の目も持ってないしね。だからずっと、わたしって落ちこぼれだなあって思ってた」
「……」
それはアーサーが特殊すぎるだけで、モニカも割となんでもこなせる方だと画家は思ったが、そんなことを言っても反論されるだけだと考えてなにも言わなかった。
「でもね、みんなのおかげで私だけの得意なことができたよ。アーサーに私ってすごいでしょーって自慢できること。それが、絵を描くこと」
モニカはそう言ってニコッと笑った。
「クロネ、ヴァジー、リュノ、シスル。本当にありがとう。私の才能を見つけてくれて。私の才能を引き出してくれて。私、これからも冒険者を続けるから画家にはなれないけど、絵はずっと描くよ。ポントワーブでも、旅先でも、いっぱい絵を描くよ。それに、またルアンに遊びに来るから、そのときはまた私と一緒にキャンバスを並べてくれる?」
彼女の言葉にたまらなくなったのか、クロネがぎゅっとモニカを抱きしめた。いつも笑顔で明るく振舞っていたその少女は、実はずっと自分に自信がなくて劣等感に苛まれていたことに初めて気付いた。そんな彼女が愛しくて、絵が彼女の自信につながったことが嬉しくて、クロネの喉元が熱くなった。彼はモニカの頭を優しく撫でながら、少し震える声で答えた。
「ああ。いつでも描きにおいで。また一緒に絵を描こう。そして俺たちにモニカの素敵な絵を見せてほしい」
「うん」
「君の絵は光のように美しい。君の絵は俺たちを夢中にさせてしまったんだからね。責任をとってほしいくらいだよ」
「えへへ。ありがとうクロネ。…でもちょっとにおう…。お風呂入った?」
「入ったよ。3日前に」
「うげぇ…」
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