187 / 718
淫魔編:フォントメウ
【207話】温泉:シャナとモニカ
しおりを挟む
同時刻、シャナとモニカは体の洗い合いっこをしていた。シャナの背中を泡立てたタオルでこすりながら、モニカが彼女に声をかける。
「おちからかげんいかがですかー?」
「うふふ、とっても気持ちいいですよ~」
「かゆいところはありませんかー?」
「ありませーん」
「はい!洗い終わりましたー!」
「ありがとうモニカ。じゃあ、泡を落として温泉に浸かりましょうか」
「うん!」
タオルを頭に乗せ、とろみのある温泉に体を浸ける。二人は同時に「ふぅー」と気持ちよさそうな声を出した。
「モニカ、体の調子はどう?」
「シャナったら。もうすっかり元気って今朝も言ったでしょお?」
「そうだったかしら?ふふ、ごめんなさい」
「えへへ。心配してくれてありがと」
「本当に、元気になってくれてよかったわ」
「シャナとユーリとアーサーのおかげよ。本当にありがとう」
「どういたしまして」
二人は微笑み合ったあと、しばらくぼぉっとお湯に浸かっていた。東側の温泉からアーサーとユーリの笑い声が聞こえてくる。シャナは「あの子たちったら…静かに入らないと怒られちゃうわよぉ…?」と心配そうに呟いていたが、すぐに笑い声がおさまったので安堵のため息をついた。そんなシャナに、モニカがそわそわしながら視線を送っていた。
「どうしたのモニカ?」
「あっ、う、ううん!なんでもない!」
「そう?気になることがあるんじゃない?」
「あっ、え、えっとね!アクセサリーまで買ってもらっちゃって申し訳ないなーって思ってたの!」
「ああ。アクセサリーのお金は、あのあとこっそりアーサーに渡されちゃったわ」
「そうだったの?!気付かなかった!」
「ご丁寧にリゥとユエに値段をきっちり確認してね。コスメや服は甘えるけど、アクセサリーはさすがに金額が大きすぎるから渡すって聞かなくて。あの子、昔から人にお金出させるのいやがるわよねえ」
「ごめんねシャナ。せっかくの好意を…」
「気にしないで。むしろ私の方こそ気をつかわせてしまってごめんなさいね」
「ううん。私もアーサーもすっごく嬉しいんだよ!今日とっても楽しかったし!でもお金はユーリに使ってあげて!私たちは気持ちだけで充分だもん」
「分かったわ。あなたたちがそっちの方がやりやすいなら、そうする」
「うん!」
「…で?本当に言いたいことはそれじゃないわよね?」
「ぎくっ」
上手に気をそらすことができたと思っていたが、シャナにはお見通しだったようだ。シャナは湯がしたたる指でモニカのほっぺをぷにぷにとつつきながら言った。
「もう私たち、隠し事するような間柄じゃないでしょう?思っていることがあるなら言ってみなさい?」
「うう…」
「そうじゃないと、モニカが髪を伸ばしている理由をバラしちゃうわよぉ?」
「ひぇ?!」
「あれは何年前だったかしら。アーサーが…」
「きゃー!シャナ!分かった!言う!言うからぁ!!」
モニカは慌ててシャナの口を塞いだ。シャナがニヤニヤしていると、モニカはゆっくりと手を離し「答えたくなかったら答えなくていいからね」と前置きをしてから尋ねた。
「これはただの好奇心なんだけど…」
「ええ。どうぞ」
「あのね、私にヒョウイしたインマのコンパクが言ってたんだけど…」
「オブシーね。彼がなにを言ってたの?」
「100年前に…シャナと会ったことがあるって」
「あらあら…」
シャナは困ったように笑った。
「インマの言ってたシャナが、今のシャナと全然違ったの。あれは本当にシャナのことなのかなあ?」
モニカがちらりと見ると、シャナがこくりと頷いた。
「オブシーとは確かに100年前戦ったわ。戦っというより…まあ、うん。いたぶった…と言った方がいいのかしらね…」
「イタブッタ…」
「実は私、カミーユに出会うまですっごく…荒れてたのよ。冒険者をしている頃は特にひどくって…。ヒト型の魔物をいたぶりまくっていたら、いつの間にかS級冒険者になっちゃってたほどにね」
「ひぇ…。どうしてヒト型の魔物をイタブってたの?」
そう尋ねられ、シャナは空を見上げながらふぅと深く息を吐いた。
「…アーサーに言わない?」
「言わない。約束する」
「もちろんユーリにもね」
「絶対言わない」
「ありがとう。じゃあ話すわ。…私の過去をざっくりと」
1ページにおさまる程度にね、と軽く笑ってから、シャナはぽつりぽつりと話し始めた。
「おちからかげんいかがですかー?」
「うふふ、とっても気持ちいいですよ~」
「かゆいところはありませんかー?」
「ありませーん」
「はい!洗い終わりましたー!」
「ありがとうモニカ。じゃあ、泡を落として温泉に浸かりましょうか」
「うん!」
タオルを頭に乗せ、とろみのある温泉に体を浸ける。二人は同時に「ふぅー」と気持ちよさそうな声を出した。
「モニカ、体の調子はどう?」
「シャナったら。もうすっかり元気って今朝も言ったでしょお?」
「そうだったかしら?ふふ、ごめんなさい」
「えへへ。心配してくれてありがと」
「本当に、元気になってくれてよかったわ」
「シャナとユーリとアーサーのおかげよ。本当にありがとう」
「どういたしまして」
二人は微笑み合ったあと、しばらくぼぉっとお湯に浸かっていた。東側の温泉からアーサーとユーリの笑い声が聞こえてくる。シャナは「あの子たちったら…静かに入らないと怒られちゃうわよぉ…?」と心配そうに呟いていたが、すぐに笑い声がおさまったので安堵のため息をついた。そんなシャナに、モニカがそわそわしながら視線を送っていた。
「どうしたのモニカ?」
「あっ、う、ううん!なんでもない!」
「そう?気になることがあるんじゃない?」
「あっ、え、えっとね!アクセサリーまで買ってもらっちゃって申し訳ないなーって思ってたの!」
「ああ。アクセサリーのお金は、あのあとこっそりアーサーに渡されちゃったわ」
「そうだったの?!気付かなかった!」
「ご丁寧にリゥとユエに値段をきっちり確認してね。コスメや服は甘えるけど、アクセサリーはさすがに金額が大きすぎるから渡すって聞かなくて。あの子、昔から人にお金出させるのいやがるわよねえ」
「ごめんねシャナ。せっかくの好意を…」
「気にしないで。むしろ私の方こそ気をつかわせてしまってごめんなさいね」
「ううん。私もアーサーもすっごく嬉しいんだよ!今日とっても楽しかったし!でもお金はユーリに使ってあげて!私たちは気持ちだけで充分だもん」
「分かったわ。あなたたちがそっちの方がやりやすいなら、そうする」
「うん!」
「…で?本当に言いたいことはそれじゃないわよね?」
「ぎくっ」
上手に気をそらすことができたと思っていたが、シャナにはお見通しだったようだ。シャナは湯がしたたる指でモニカのほっぺをぷにぷにとつつきながら言った。
「もう私たち、隠し事するような間柄じゃないでしょう?思っていることがあるなら言ってみなさい?」
「うう…」
「そうじゃないと、モニカが髪を伸ばしている理由をバラしちゃうわよぉ?」
「ひぇ?!」
「あれは何年前だったかしら。アーサーが…」
「きゃー!シャナ!分かった!言う!言うからぁ!!」
モニカは慌ててシャナの口を塞いだ。シャナがニヤニヤしていると、モニカはゆっくりと手を離し「答えたくなかったら答えなくていいからね」と前置きをしてから尋ねた。
「これはただの好奇心なんだけど…」
「ええ。どうぞ」
「あのね、私にヒョウイしたインマのコンパクが言ってたんだけど…」
「オブシーね。彼がなにを言ってたの?」
「100年前に…シャナと会ったことがあるって」
「あらあら…」
シャナは困ったように笑った。
「インマの言ってたシャナが、今のシャナと全然違ったの。あれは本当にシャナのことなのかなあ?」
モニカがちらりと見ると、シャナがこくりと頷いた。
「オブシーとは確かに100年前戦ったわ。戦っというより…まあ、うん。いたぶった…と言った方がいいのかしらね…」
「イタブッタ…」
「実は私、カミーユに出会うまですっごく…荒れてたのよ。冒険者をしている頃は特にひどくって…。ヒト型の魔物をいたぶりまくっていたら、いつの間にかS級冒険者になっちゃってたほどにね」
「ひぇ…。どうしてヒト型の魔物をイタブってたの?」
そう尋ねられ、シャナは空を見上げながらふぅと深く息を吐いた。
「…アーサーに言わない?」
「言わない。約束する」
「もちろんユーリにもね」
「絶対言わない」
「ありがとう。じゃあ話すわ。…私の過去をざっくりと」
1ページにおさまる程度にね、と軽く笑ってから、シャナはぽつりぽつりと話し始めた。
11
お気に入りに追加
4,342
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。