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淫魔編:フォントメウ
【197話】目覚めの儀式
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「ん…んん…」
「あら、目が覚めたかしら?」
「っ!」
目を覚ましたアーサーは、シャナの胸に手を添えながら顔をうずめ、シャナの指を吸っている自分に気が付き驚きの声をあげた。
「う、うわあああ!!え?!ぼ、僕なにしてたの?!どうしてシャナの指を吸ってたの?!」
「ああ…気にしないでちょうだい。前にも言ったと思うけど、私の加護魔法を受けた人は一時的に幼児退行してしまうのよ。寝ているとき、あなたが私のおちちを吸いたがったから代わりに指を吸わせていたの」
「おちち…?え…ええーーー!!!シャナ、ご、ごめんなさいいいい!!」
顔を真っ赤にして謝るアーサーを見てシャナがクスクス笑った。
「いいのいいの。本当に気にしないで。どちらかと言うと恥ずかしいところを見てしまってごめんなさいね。でも、甘えん坊のあなたはとっても可愛かったわ。いつもあれくらい甘えてくれたらいいのに」
「うわあああああ!!!」
「あなた、おっぱいが好きなのね。ずっと気持ちよさそうに触っていたわ。そう言えばスライムの感触がおかあさんのおっぱいに似てるって、いっとき暇さえあればスライムをずっと触っていたものね。やっぱり幼少時代に充分甘えられなかったからかしら…」
「やめてシャナああああ!!!うわあああああああ!!!!」
「そ、そんな狼狽えないでちょうだいアーサー…。あなたはまだマシな方なのよ?カミーユなんてそれはもう…はっ、いけない。また口を滑らせるところだったわ…」
◇◇◇
30分後、恥ずかしさで悶えていたアーサーがやっと落ち着きを取り戻した。シャナに差し出されたホットミルクを飲みながら、いまだに顔を赤らめてシャナから目を逸らしている。手にまだシャナの胸の感触が残っていて、思い出しては「うぅぅぅっ…!」と頭を抱えていた。困ったシャナは気を紛らわそうと話を逸らした。
「アーサー、いい夢は見れたかしら?」
「う、うん。すごく幸せな夢を見たよ。大好きな人にたくさん会えた」
「よかった」
「…ねえシャナ。あれは夢だったの?」
「?ええ、夢だけど」
「あのね…夢の中にミアーナとかミモレスとかセルジュ先生…あ、以前倒した吸血鬼なんだけど…、が出て来てね。モニカのこととかいろいろ教えてくれたんだ」
「…深い夢の中は死者と生者が唯一交わることができる場所。でも言葉を交わすなんてそうそうできないことよ。加護魔法がかけられた深く雑念がない夢だからこそ、彼らはアーサーと話ができたのね。…アーサー、彼らは何て言ってたの?」
「モニカが僕を待ってるって。あとは僕が名を呼ぶだけだって言ってた」
「そう。じゃあ、ユーリはモニカを癒すことができたのね。きっと最後の準備に入っているはずよ。邪魔をしてはいけないから、ユーリが呼びに来るまでここで待っていましょう」
「うん…」
「他には何か話した?」
「あ、そうだシャナ。マーニャ様が言ってた使役してる魔物のことも分かったよ」
「夢に出てきたその吸血鬼ね?」
「え?どうして分かったの?」
「本来、加護魔法で見た夢の中に魔物なんて出てこないわ。アーサー、あなたにとって、その吸血鬼は大切な存在なんでしょう?」
「う、うん…」
「そして吸血鬼もまたあなたを心から愛している。そうでないと、幸せに包まれているはずの夢の中に出てきて…その上言葉を交わすことなんてできっこないわ。アーサー、あなたとその吸血鬼はどういう関係なの?深い関りがあるのよね?」
「うん…。実は…」
アーサーは自分とモニカがミモレスの生まれ変わりであることや、セルジュがミモレスの恋人だったことを説明した。学院でセルジュと出会ったこと。一時的にミモレスの人格がアーサーの身に入ったことで、ミモレスのセルジュに対する愛情がアーサーの中に残ってしまっていること…。そして、魂魄となったセルジュがミモレスの手によってペンダントに宿っていること、そのペンダントがアーサーとも繋がっていることを話した。
「あなたたち、あのミモレスの生まれ変わりだったの…?どおりで能力値が高いはずだわ。それに、ミモレスに吸血鬼の恋人がいた…?そんな話聞いたことがないわ。でも…あなたとそのペンダントがミアーナのものとは違う加護の糸で繋がっているのは間違いない。ミモレスの言ったことは本当のことなのでしょうね」
「先生が、この中にいてくれてるんだ…。えへへ」
「あなたが使役しているのは魔物ではなくて魔物の魂魄だったのね。しかも非常に強い魔法で隠されている。マーニャ様に見えて私に見えないのも納得だわ」
「ねえシャナ。セルジュ先生の魂魄とお話したい」
「できないわ。魂魄だけでは魔物は話せない。言葉を話せるようにするには、人間に憑依させる必要があるの。あなたがセルジュ先生と話すためには、ヒトを一人犠牲にしないといけない」
「それはダメだ…」
「でしょう?」
「じゃ、じゃあ、シャナにまた加護魔法をかけてもらえば、またミアーナやミモレス、セルジュ先生とお話できる?」
「それは半々ね…。死者が夢の中に入り言葉を交わすなんて、よっぽど力のある者にしかできないわ。彼ら3人はそれができるほどの力を持っている。でも、彼らであってもかなり無理をしなければいけないと思うのよ。そんな頻繁に夢に現れることができるとは思えないわ」
「そっか…」
あからさまに落ち込むアーサーにシャナは優しく諭した。
「アーサー、死者に囚われてはだめよ。生きている人と言葉を交わすの。だってあなたは生きているのだから」
「…うん」
その時、ドアをノックする音が聞こえた。そのあとにユーリが顔を覗かせる。
「アーサー、母さん!モニカを清めて癒すことができたよ!あとは目覚めさせるだけ。アーサー、ついてきて!」
「!!」
それを聞いたアーサーはユーリに駆け寄った。ユーリはアーサーの手を掴みモニカがいる場所へ連れて行く。シャナの家を出て、町の中心地に湧く泉へ向かう。泉のほとりでは、聖水に濡れたモニカが穏やかな顔で眠っていた。
「モニカ!!」
「…すぅ…すぅ…」
「まだ眠ってるよ」
「ど、どうしたら目覚めるの?!」
「落ち着いてアーサー。君にもしてもらわないといけないことがあるから」
「う、うん」
しばらくしてシャナが泉に到着した。さらさらした白い布を敷き、そこにモニカを寝かせる。庭に生えていた光る花をモニカの周りに散らせ、胸に小さな宝石を乗せた。
「…モニカはこれでいいわ。あとはアーサーね。アーサー、服を脱いで」
「?!」
「あなたの体も清めないといけないの。服を脱いで、泉に浸かってちょうだい。大丈夫、私とユーリしか見ていないから。…あと、ペンダントは外しておいた方がいいわ。大切なものでしょう?聖水に浸せば浄化されてしまう」
「う、うん…。分かった」
アーサーは裸になって泉に足を浸けた。凍えるような冷たさだ。
「うひぃぃぃ…」
「肩まで浸かって」
がたがたと歯を鳴らしながら、シャナに言われたように肩まで浸かる。冷たすぎて体の感覚がなくなってきた。
「水を口に含んで、そして飲んで。…そうよ。体に変化は?」
「…なんだか体が軽くなってきた」
「いいわ。じゃあ30分その中でいてね」
「ヒェッ」
「5分ごとに水を飲んでね」
「わ…わかった」
泉の聖水に浸かっていると、体が軽くなり頭がすっきりとしてきた。アーサーは泉に浸かりながらフォントメウの空を見上げた。朝なのにほの暗く、まだ星と三日月が輝いている。月明りに照らされているアーサーをほとりで見ていたユーリが、シャナにぼそっと呟いた。
「見て母さん。アーサー、人魚みたいだ」
「あらほんと」
30分後、アーサーは聖水を滴らせながら泉から出た。シャナが彼の肩に白い布をかけ、腰に紐を巻いた。そしてユーリが、トネリコの葉を浮かせた聖水が注がれたグラスをアーサーに手渡す。
「アーサー。この聖水をモニカに口移しで飲ませて。聖水がモニカの喉を通ったら、目覚めるまで彼女の名を呼び続けてあげて。…本当の名前で。僕は遠くに離れてるから安心してね」
「ありがとうユーリ。…ずっと隠しててごめんね。僕たちが偽の名前を使ってるってこと」
「ううん。はじめから分かってたよ。でも、僕にとってアーサーはアーサーだし、モニカはモニカだから。本当の名前を知らなくたって、そんなのちっともかまわない」
「本当に、ありがとう」
ユーリが離れたのを確認し、アーサーは聖水を口に含んだ。モニカの顎に手を添えてそっとそれを口移しする。モニカの喉がこくんと動いた。アーサーは妹の額に自分の額を当て、優しい声で囁いた。
「…モリア」
「あら、目が覚めたかしら?」
「っ!」
目を覚ましたアーサーは、シャナの胸に手を添えながら顔をうずめ、シャナの指を吸っている自分に気が付き驚きの声をあげた。
「う、うわあああ!!え?!ぼ、僕なにしてたの?!どうしてシャナの指を吸ってたの?!」
「ああ…気にしないでちょうだい。前にも言ったと思うけど、私の加護魔法を受けた人は一時的に幼児退行してしまうのよ。寝ているとき、あなたが私のおちちを吸いたがったから代わりに指を吸わせていたの」
「おちち…?え…ええーーー!!!シャナ、ご、ごめんなさいいいい!!」
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「いいのいいの。本当に気にしないで。どちらかと言うと恥ずかしいところを見てしまってごめんなさいね。でも、甘えん坊のあなたはとっても可愛かったわ。いつもあれくらい甘えてくれたらいいのに」
「うわあああああ!!!」
「あなた、おっぱいが好きなのね。ずっと気持ちよさそうに触っていたわ。そう言えばスライムの感触がおかあさんのおっぱいに似てるって、いっとき暇さえあればスライムをずっと触っていたものね。やっぱり幼少時代に充分甘えられなかったからかしら…」
「やめてシャナああああ!!!うわあああああああ!!!!」
「そ、そんな狼狽えないでちょうだいアーサー…。あなたはまだマシな方なのよ?カミーユなんてそれはもう…はっ、いけない。また口を滑らせるところだったわ…」
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「アーサー、いい夢は見れたかしら?」
「う、うん。すごく幸せな夢を見たよ。大好きな人にたくさん会えた」
「よかった」
「…ねえシャナ。あれは夢だったの?」
「?ええ、夢だけど」
「あのね…夢の中にミアーナとかミモレスとかセルジュ先生…あ、以前倒した吸血鬼なんだけど…、が出て来てね。モニカのこととかいろいろ教えてくれたんだ」
「…深い夢の中は死者と生者が唯一交わることができる場所。でも言葉を交わすなんてそうそうできないことよ。加護魔法がかけられた深く雑念がない夢だからこそ、彼らはアーサーと話ができたのね。…アーサー、彼らは何て言ってたの?」
「モニカが僕を待ってるって。あとは僕が名を呼ぶだけだって言ってた」
「そう。じゃあ、ユーリはモニカを癒すことができたのね。きっと最後の準備に入っているはずよ。邪魔をしてはいけないから、ユーリが呼びに来るまでここで待っていましょう」
「うん…」
「他には何か話した?」
「あ、そうだシャナ。マーニャ様が言ってた使役してる魔物のことも分かったよ」
「夢に出てきたその吸血鬼ね?」
「え?どうして分かったの?」
「本来、加護魔法で見た夢の中に魔物なんて出てこないわ。アーサー、あなたにとって、その吸血鬼は大切な存在なんでしょう?」
「う、うん…」
「そして吸血鬼もまたあなたを心から愛している。そうでないと、幸せに包まれているはずの夢の中に出てきて…その上言葉を交わすことなんてできっこないわ。アーサー、あなたとその吸血鬼はどういう関係なの?深い関りがあるのよね?」
「うん…。実は…」
アーサーは自分とモニカがミモレスの生まれ変わりであることや、セルジュがミモレスの恋人だったことを説明した。学院でセルジュと出会ったこと。一時的にミモレスの人格がアーサーの身に入ったことで、ミモレスのセルジュに対する愛情がアーサーの中に残ってしまっていること…。そして、魂魄となったセルジュがミモレスの手によってペンダントに宿っていること、そのペンダントがアーサーとも繋がっていることを話した。
「あなたたち、あのミモレスの生まれ変わりだったの…?どおりで能力値が高いはずだわ。それに、ミモレスに吸血鬼の恋人がいた…?そんな話聞いたことがないわ。でも…あなたとそのペンダントがミアーナのものとは違う加護の糸で繋がっているのは間違いない。ミモレスの言ったことは本当のことなのでしょうね」
「先生が、この中にいてくれてるんだ…。えへへ」
「あなたが使役しているのは魔物ではなくて魔物の魂魄だったのね。しかも非常に強い魔法で隠されている。マーニャ様に見えて私に見えないのも納得だわ」
「ねえシャナ。セルジュ先生の魂魄とお話したい」
「できないわ。魂魄だけでは魔物は話せない。言葉を話せるようにするには、人間に憑依させる必要があるの。あなたがセルジュ先生と話すためには、ヒトを一人犠牲にしないといけない」
「それはダメだ…」
「でしょう?」
「じゃ、じゃあ、シャナにまた加護魔法をかけてもらえば、またミアーナやミモレス、セルジュ先生とお話できる?」
「それは半々ね…。死者が夢の中に入り言葉を交わすなんて、よっぽど力のある者にしかできないわ。彼ら3人はそれができるほどの力を持っている。でも、彼らであってもかなり無理をしなければいけないと思うのよ。そんな頻繁に夢に現れることができるとは思えないわ」
「そっか…」
あからさまに落ち込むアーサーにシャナは優しく諭した。
「アーサー、死者に囚われてはだめよ。生きている人と言葉を交わすの。だってあなたは生きているのだから」
「…うん」
その時、ドアをノックする音が聞こえた。そのあとにユーリが顔を覗かせる。
「アーサー、母さん!モニカを清めて癒すことができたよ!あとは目覚めさせるだけ。アーサー、ついてきて!」
「!!」
それを聞いたアーサーはユーリに駆け寄った。ユーリはアーサーの手を掴みモニカがいる場所へ連れて行く。シャナの家を出て、町の中心地に湧く泉へ向かう。泉のほとりでは、聖水に濡れたモニカが穏やかな顔で眠っていた。
「モニカ!!」
「…すぅ…すぅ…」
「まだ眠ってるよ」
「ど、どうしたら目覚めるの?!」
「落ち着いてアーサー。君にもしてもらわないといけないことがあるから」
「う、うん」
しばらくしてシャナが泉に到着した。さらさらした白い布を敷き、そこにモニカを寝かせる。庭に生えていた光る花をモニカの周りに散らせ、胸に小さな宝石を乗せた。
「…モニカはこれでいいわ。あとはアーサーね。アーサー、服を脱いで」
「?!」
「あなたの体も清めないといけないの。服を脱いで、泉に浸かってちょうだい。大丈夫、私とユーリしか見ていないから。…あと、ペンダントは外しておいた方がいいわ。大切なものでしょう?聖水に浸せば浄化されてしまう」
「う、うん…。分かった」
アーサーは裸になって泉に足を浸けた。凍えるような冷たさだ。
「うひぃぃぃ…」
「肩まで浸かって」
がたがたと歯を鳴らしながら、シャナに言われたように肩まで浸かる。冷たすぎて体の感覚がなくなってきた。
「水を口に含んで、そして飲んで。…そうよ。体に変化は?」
「…なんだか体が軽くなってきた」
「いいわ。じゃあ30分その中でいてね」
「ヒェッ」
「5分ごとに水を飲んでね」
「わ…わかった」
泉の聖水に浸かっていると、体が軽くなり頭がすっきりとしてきた。アーサーは泉に浸かりながらフォントメウの空を見上げた。朝なのにほの暗く、まだ星と三日月が輝いている。月明りに照らされているアーサーをほとりで見ていたユーリが、シャナにぼそっと呟いた。
「見て母さん。アーサー、人魚みたいだ」
「あらほんと」
30分後、アーサーは聖水を滴らせながら泉から出た。シャナが彼の肩に白い布をかけ、腰に紐を巻いた。そしてユーリが、トネリコの葉を浮かせた聖水が注がれたグラスをアーサーに手渡す。
「アーサー。この聖水をモニカに口移しで飲ませて。聖水がモニカの喉を通ったら、目覚めるまで彼女の名を呼び続けてあげて。…本当の名前で。僕は遠くに離れてるから安心してね」
「ありがとうユーリ。…ずっと隠しててごめんね。僕たちが偽の名前を使ってるってこと」
「ううん。はじめから分かってたよ。でも、僕にとってアーサーはアーサーだし、モニカはモニカだから。本当の名前を知らなくたって、そんなのちっともかまわない」
「本当に、ありがとう」
ユーリが離れたのを確認し、アーサーは聖水を口に含んだ。モニカの顎に手を添えてそっとそれを口移しする。モニカの喉がこくんと動いた。アーサーは妹の額に自分の額を当て、優しい声で囁いた。
「…モリア」
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