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淫魔編:ダンジョン巡り@ルアン
【183話】顧客満足度ナンバーワン淫魔
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廃墟ダンジョン最上階最奥の部屋。そこは他の部屋と違い、真新しく豪華な家具が置かれていた。部屋の隅にある、白いレースカーテンがかかった天蓋付きベッドの上でモニカが眠らされている。
「ん…」
目を覚ましたモニカは目をこすりながら伸びをした。頭がぼーっとしているのか、ぼんやりとした目でまわりを見渡す。見覚えのない内装に違和感を覚えた。
「……ん?!ここどこ?!」
意識がはっきりしたモニカは飛び起きた。ふんわりさらさらした感触がして自分の体に目をやると、防具ではなくベビードール姿になっていた。透けた白の薄い布、オフショルダー、丈が短いふんわりとしたワンピースの寝衣。裾にレースがあしらわれており、胸元には白いリボンが飾られている。透けた素材なので下着が丸見えだ。しかも下着まで白く布面積が少ないものに着替えさせられていた。自分の恥ずかしい恰好にモニカは絶叫する。
「きゃああああ!!なによこの服はぁぁぁぁ!!!」
「おっ!目ぇ覚めたぁ?」
「ひぃ?!あ、あんただれぇ?!」
ベッドのカーテンを開けて一人の男性が姿を見せた。黒い髪、赤い瞳、褐色の肌をした25歳あたりの見た目のその男は、起きたモニカを見て「おおお!」と目を輝かせた。
「やっべー!めっちゃ似合うじゃん!!天使みてぇ!!」
「ひぃぃ!あ、あんたなの?!私にこんな服着せたのぉ!!し、し、しかも下着まで履き替えさせたわね?!この変態!!ぎゃー気持ち悪い!!きもちわるいぃぃぃぃ!!!はやく服を返して!!着替えさせてえええええ!!!」
「返すわけないじゃーん!あんなだっさい服。悪趣味ったらありゃしねえべや」
「どっちが悪趣味なのよー!!」
モニカは枕を男めがけて投げつけた。男は枕を顔面にくらい「なにすんだよぉー!」と唇をとがらせる。じっとモニカを見つめて首を傾げた。
「おっかしいなー。今までの女で俺にこんなことしたやつなんていなかったのになー」
「今までの女…?ってことは、あんたもしかして…インマ…?」
「正解~!君、俺のこと知っててこの城に来たの?まじかー!!もしかして俺に攫われたくて来たとか?」
「はぁ?!そんなわけないでしょ!?」
「隠さなくていいって!!俺目当てでここに来る女、結構多いんだぜ?精気を対価に一晩抱かれに来るんだ。まずけりゃ帰すが、うまかったら帰さないけどな!ははは!!」
「なんなのこいつぅ…」
「そんな引いた目で見るなよぉ!こう見えても俺の腕は淫魔の中でも優秀な方なんだぜえ?去年なんて故郷帰ったら表彰までされたんだ!なんでもこの国でいっちばん女の精気食ったっつって!しかも顧客満足度ナンバーワン!!いひひ、すげえだろ~」
淫魔は得意げにそう言ってからベッドへ上がりモニカの肩を抱いた。淫魔の顔が近づいてきてモニカの腕に鳥肌が立った。
「ひぃぃっ!!」
「安心しろってー!ちゃんとさっき歯磨いてきたし、体も洗ってきたからさ!!淫魔は清潔さが命!」
「そういう問題じゃないのぉぉぉ!!私から離れなさいこの変態ぃぃぃ!!」
モニカは淫魔に手を当てて聖歌を歌った。いつもより魔力を込めて聖魔法を放つ。…つもりが、魔法が発動しない。
「えっ?あれっ、なんでっ?」
「急に歌い出したからビビったわー。君ちょっと変わってんな!」
「ど、どうしてっ?」
「あっ…、もしかして君、今魔法打とうとした?」
「っ…」
何度魔法を打とうとしても、うんともすんとも言わない自分の手のひらをモニカは見た。変わったところは見当たらない。ちらと淫魔を盗み見て、彼も人型の魔物だということに気付いた。
「反魔法をかけたのね…?!」
「反魔法?俺にそんな高度な魔法使えると思うかあ?淫魔が使えるのは誘惑と結界だけ。魔物の中では弱っちい弱っちい存在だ。ははは!…だから人間は俺たち淫魔に油断してくれるんだけどね」
「じゃ、じゃあどうして魔法が使えないの…」
「ねえ君、名前は?」
「あんたに教える名前なんてないわ!」
「そんな寂しいこと言うなよお。まあいいや、じゃあドールちゃんって呼ぼっと」
「どーるぅ?!」
「ベビードールを着てるからドールちゃん。顔も人形みたいにくりっくりだしぴったりだろ?」
モニカの肩を抱いていた淫魔の手が腰に回り、ぐいと彼女を抱き寄せた。体がぴったりとくっつき、淫魔のもう片方の手がモニカの胸を掴んでいる。モニカは「ひぃぃぃぃ!!!」と声をあげながら淫魔から離れようと暴れた。だが女の子の力では敵わない。淫魔はニコニコ笑いながらモニカの耳元で囁いた。
「君が俺にされたこと教えてあげようか」
「な…なにしたの…?ていうかほんとっ…離れてよぉぉっ…気持ち悪いよおぉぉ…!」
モニカが覚えているのは、グールの部屋でアーサーを見守っているとき、後ろから水分を含んだ布を顔に当てられて意識を失ったところまでだった。なぜこんなところにいるのか、なぜこんな服装をしているのかはさっぱり分からない。淫魔はモニカの両頬を指で挟んだ。モニカの目を見つめる彼の赤い瞳が黄色く変色する。
「この城に侵入した君はグールの部屋で椅子に座ってた。睡眠液を含んだ布を当てられて意識を失った。俺は君をこの部屋へ連れてきて、だっさい服を脱がせてその寝衣に着替えさせた」
「そんなこと、見れば分かるわよ」
「なあドールちゃん。淫魔に連れ去られてそれだけで済むと思うかぁ?」
「え…?」
淫魔はニィと笑って舌なめずりした。
「君はすでに俺の誘惑にかかっているんだよ」
「っ…」
「君が眠ってる間にかけておいたんだ。じっくりと、なぁ?」
淫魔はそう言ってモニカの顎を指でクイと上げた。顔が近づいてきたので、モニカは咄嗟に淫魔の顔に手を押し付けて距離を保つ。
「顔を近づけないでよ変態!」
「いやぁ~不思議だなあ。誘惑にかかってるのに何でそんなに意識がはっきりしているんだぁ?俺に対しても何の感情もないような素振りをしてるしなー」
「ええ。あなたのこと、気持ちの悪い変態としか思わないわっ」
「あははは!やっぱり君は他の女と違うなあ!他の女は少ぉし誘惑をかけるだけで俺に陶酔したのに。あいつらなんでも言うことを聞いたぞ。あんなこともこんなことも…死ぬまで精気を吸い尽くしたいなあって俺がお願いしたら喜んで吸わせてくれた。死に顔は…それはもう幸せそうだったなあ」
「なんてひどい…」
過去に殺した女性たちに思いを馳せ、淫魔はうっとりとした表情を浮かべた。モニカは不快感をもよおし吐きそうな顔をした。その視線に気付いた淫魔はクスクスと笑う。
「自分は俺の言いなりになんてならないとでも言いたげな顔をしてるなあ。ドールちゃん。君、自分に誘惑が効いていないと思ってるんだろ。でも残念!君はちゃぁんと誘惑にかかってる。さっき俺に魔法を打てなかっただろ?あれ、そのせいだから」
「どういう意味?」
「確かにドールちゃんの思考に誘惑はかかってない。だから俺にこんな態度がとれる。でも、体にはしっかり誘惑がかかってる。俺に魔法を打てなかったことが、君の体が俺に陶酔している証拠。君は俺に攻撃できない。体が俺の味方をしているから」
「うそでしょ…」
「淫魔ってのは弱いがしたたかな魔物でね。結界魔法で男が巣に侵入することを防いで、女には誘惑をかけて自分に攻撃できないようにする。それが俺たちの生き方。下級魔物だからこそ人間は舐めて俺たちの巣へのこのこやってくる。淫魔に上級冒険者なんぞ派遣させない。ここへ来るのはみぃんな、弱っちいやつばっか。楽な生き方だよなあ!あー淫魔でよかった!」
モニカはもう一度魔法を放とうと歌を歌った。だが、やはり発動しない。みぐるみを剥がされた魔法を使えないモニカは、少し体術が使えるだけのただの女の子だ。サーッと血の気が引いていく。
(こ、この状況、やばいのでは…?)
「さてドールちゃん、そろそろ時間だ。今度こそちゃんとかかってくれよな」
「え?」
淫魔がパチンと音を鳴らすと、次第にモニカの頭がぼんやりとしてきた。目がとろんと落ちていくモニカを見て、淫魔が満足げな表情を浮かべる。
「効いてきたな。さっき誘惑を重ねがけしたんだ。一度目よりもさらに濃い誘惑をたぁっぷり時間をかけてな。さすがに頭も痺れてきただろ?」
「……」
「お、力が抜けてきた。やっとだぜぇー!こんな集中したの久しぶりだわ!魔力使ったらはらへってきたー」
「…アーサー…」
「アーサー?ああ、グールと戦ってた男の子のことか?残念だけどあいつはこの部屋に辿り着けないなあ。この部屋に結界魔法かけてるし。今までも男がここに入ってきたことはないぜ。鉄壁の守り、これ淫魔の常識!」
「……」
「あっ、そうだ。ドールちゃん、淫魔に捕らえられた女がどうなるか知ってる?」
「…知らない…」
「たいがいの女はね、淫魔と楽しく遊んでから精気を吸い尽くされて終わり。でもそれはそれで幸せなんだぜ?だって淫魔と遊ぶほど楽しいことないからな。ちなみに俺はだいたい一週間遊んだら精気吸い尽くすんだ」
「……」
「でも俺、ドールちゃんのことは殺さないつもり。君のことすっごく気に入ったんだ。だって俺の誘惑に思考だけでも耐えた子なんて初めてだったし。それに君、処女だろ?俺さ、かわいい処女が欲しかったんだよなー!!あーやべー、テンション上がってきたー!」
「ショジョ…?なあにそれ…」
「処女の意味も分からないんだ?えー、かわいすぎるんですけど!」
「…?」
「処女は君が今から失うものさ。君には俺の子を産んでもらおうと思ってる。ドールちゃん聞いてくれる?実は淫魔の長老にさ?遊び惚けるのも良いけどそろそろ淫魔の子孫を増やす努力をしろって説教食らっちまってさあ。そもそも俺がここに来たのだってそのためだったんだけどもぉ。でもさ、俺さ、あんまそういう重い遊びしたくなかったんだよなあ。だって一週間で死ぬ子と後腐れなく遊ぶ方が楽でしょ?」
「そうなの…?」
「まじでそうだよ!俺さぁ、ここに来る前は半年くらいのスパンで女と遊んでたんだけどさ。日が経つにつれて相手が俺に独占欲を持ち始めるんだ。本気で俺のこと好きになりはじめちまうんだよぉ。それがめんどくさくてさ、ここに来てからは一週間で殺すことにしたんだ。それから生きるの楽になったわあー」
「ふぅん…」
「でも、長老にああ言われちまったし、そろそろ子孫増やす努力しねえとなーって思ってたときにドールちゃんを見つけたってわけ。君を見たときビビビって来たんだ!ま、そういうことでこれからよろしくな、ドールちゃん!!」
「……」
淫魔は脱力したモニカをベッドへ横たえ、彼女の上に乗り胸に手を添えた。モニカは抵抗せずに両腕を広げる。
「うん。完全に誘惑にかかってる。じゃ、いただきますか」
モニカに応じるように淫魔が彼女に覆いかぶさった。モニカは彼の首元に唇を添え…力いっぱい噛みついた。
「い"っ?!はっ?!今なにしたぁ!?ひょっとして噛み癖あるタイプ?!悪いけど噛むならもう少し手加減してくれるかな?!俺そっちの気ないんだわ!!」
「何言ってんのよ…。はやくどきなさいこの変態。あ~頭クラクラして気持ち悪いわね…」
「なっ…?!ひょっとしてまた誘惑が解けちゃった?!」
「そうみたいね」
「まじかよ?!俺に誘惑を二重にかけられたのに?!顧客満足度ナンバーワンの俺に完全に誘惑されないとか!!ドールちゃんはんぱねえわぁ…」
「それよりも早くどきなさいってば!!重いし気持ち悪いし最悪な気分なんですけどぉ!!いい加減私のおっぱいから手を離しなさいよこのバカぁ!!」
「ん…」
目を覚ましたモニカは目をこすりながら伸びをした。頭がぼーっとしているのか、ぼんやりとした目でまわりを見渡す。見覚えのない内装に違和感を覚えた。
「……ん?!ここどこ?!」
意識がはっきりしたモニカは飛び起きた。ふんわりさらさらした感触がして自分の体に目をやると、防具ではなくベビードール姿になっていた。透けた白の薄い布、オフショルダー、丈が短いふんわりとしたワンピースの寝衣。裾にレースがあしらわれており、胸元には白いリボンが飾られている。透けた素材なので下着が丸見えだ。しかも下着まで白く布面積が少ないものに着替えさせられていた。自分の恥ずかしい恰好にモニカは絶叫する。
「きゃああああ!!なによこの服はぁぁぁぁ!!!」
「おっ!目ぇ覚めたぁ?」
「ひぃ?!あ、あんただれぇ?!」
ベッドのカーテンを開けて一人の男性が姿を見せた。黒い髪、赤い瞳、褐色の肌をした25歳あたりの見た目のその男は、起きたモニカを見て「おおお!」と目を輝かせた。
「やっべー!めっちゃ似合うじゃん!!天使みてぇ!!」
「ひぃぃ!あ、あんたなの?!私にこんな服着せたのぉ!!し、し、しかも下着まで履き替えさせたわね?!この変態!!ぎゃー気持ち悪い!!きもちわるいぃぃぃぃ!!!はやく服を返して!!着替えさせてえええええ!!!」
「返すわけないじゃーん!あんなだっさい服。悪趣味ったらありゃしねえべや」
「どっちが悪趣味なのよー!!」
モニカは枕を男めがけて投げつけた。男は枕を顔面にくらい「なにすんだよぉー!」と唇をとがらせる。じっとモニカを見つめて首を傾げた。
「おっかしいなー。今までの女で俺にこんなことしたやつなんていなかったのになー」
「今までの女…?ってことは、あんたもしかして…インマ…?」
「正解~!君、俺のこと知っててこの城に来たの?まじかー!!もしかして俺に攫われたくて来たとか?」
「はぁ?!そんなわけないでしょ!?」
「隠さなくていいって!!俺目当てでここに来る女、結構多いんだぜ?精気を対価に一晩抱かれに来るんだ。まずけりゃ帰すが、うまかったら帰さないけどな!ははは!!」
「なんなのこいつぅ…」
「そんな引いた目で見るなよぉ!こう見えても俺の腕は淫魔の中でも優秀な方なんだぜえ?去年なんて故郷帰ったら表彰までされたんだ!なんでもこの国でいっちばん女の精気食ったっつって!しかも顧客満足度ナンバーワン!!いひひ、すげえだろ~」
淫魔は得意げにそう言ってからベッドへ上がりモニカの肩を抱いた。淫魔の顔が近づいてきてモニカの腕に鳥肌が立った。
「ひぃぃっ!!」
「安心しろってー!ちゃんとさっき歯磨いてきたし、体も洗ってきたからさ!!淫魔は清潔さが命!」
「そういう問題じゃないのぉぉぉ!!私から離れなさいこの変態ぃぃぃ!!」
モニカは淫魔に手を当てて聖歌を歌った。いつもより魔力を込めて聖魔法を放つ。…つもりが、魔法が発動しない。
「えっ?あれっ、なんでっ?」
「急に歌い出したからビビったわー。君ちょっと変わってんな!」
「ど、どうしてっ?」
「あっ…、もしかして君、今魔法打とうとした?」
「っ…」
何度魔法を打とうとしても、うんともすんとも言わない自分の手のひらをモニカは見た。変わったところは見当たらない。ちらと淫魔を盗み見て、彼も人型の魔物だということに気付いた。
「反魔法をかけたのね…?!」
「反魔法?俺にそんな高度な魔法使えると思うかあ?淫魔が使えるのは誘惑と結界だけ。魔物の中では弱っちい弱っちい存在だ。ははは!…だから人間は俺たち淫魔に油断してくれるんだけどね」
「じゃ、じゃあどうして魔法が使えないの…」
「ねえ君、名前は?」
「あんたに教える名前なんてないわ!」
「そんな寂しいこと言うなよお。まあいいや、じゃあドールちゃんって呼ぼっと」
「どーるぅ?!」
「ベビードールを着てるからドールちゃん。顔も人形みたいにくりっくりだしぴったりだろ?」
モニカの肩を抱いていた淫魔の手が腰に回り、ぐいと彼女を抱き寄せた。体がぴったりとくっつき、淫魔のもう片方の手がモニカの胸を掴んでいる。モニカは「ひぃぃぃぃ!!!」と声をあげながら淫魔から離れようと暴れた。だが女の子の力では敵わない。淫魔はニコニコ笑いながらモニカの耳元で囁いた。
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モニカが覚えているのは、グールの部屋でアーサーを見守っているとき、後ろから水分を含んだ布を顔に当てられて意識を失ったところまでだった。なぜこんなところにいるのか、なぜこんな服装をしているのかはさっぱり分からない。淫魔はモニカの両頬を指で挟んだ。モニカの目を見つめる彼の赤い瞳が黄色く変色する。
「この城に侵入した君はグールの部屋で椅子に座ってた。睡眠液を含んだ布を当てられて意識を失った。俺は君をこの部屋へ連れてきて、だっさい服を脱がせてその寝衣に着替えさせた」
「そんなこと、見れば分かるわよ」
「なあドールちゃん。淫魔に連れ去られてそれだけで済むと思うかぁ?」
「え…?」
淫魔はニィと笑って舌なめずりした。
「君はすでに俺の誘惑にかかっているんだよ」
「っ…」
「君が眠ってる間にかけておいたんだ。じっくりと、なぁ?」
淫魔はそう言ってモニカの顎を指でクイと上げた。顔が近づいてきたので、モニカは咄嗟に淫魔の顔に手を押し付けて距離を保つ。
「顔を近づけないでよ変態!」
「いやぁ~不思議だなあ。誘惑にかかってるのに何でそんなに意識がはっきりしているんだぁ?俺に対しても何の感情もないような素振りをしてるしなー」
「ええ。あなたのこと、気持ちの悪い変態としか思わないわっ」
「あははは!やっぱり君は他の女と違うなあ!他の女は少ぉし誘惑をかけるだけで俺に陶酔したのに。あいつらなんでも言うことを聞いたぞ。あんなこともこんなことも…死ぬまで精気を吸い尽くしたいなあって俺がお願いしたら喜んで吸わせてくれた。死に顔は…それはもう幸せそうだったなあ」
「なんてひどい…」
過去に殺した女性たちに思いを馳せ、淫魔はうっとりとした表情を浮かべた。モニカは不快感をもよおし吐きそうな顔をした。その視線に気付いた淫魔はクスクスと笑う。
「自分は俺の言いなりになんてならないとでも言いたげな顔をしてるなあ。ドールちゃん。君、自分に誘惑が効いていないと思ってるんだろ。でも残念!君はちゃぁんと誘惑にかかってる。さっき俺に魔法を打てなかっただろ?あれ、そのせいだから」
「どういう意味?」
「確かにドールちゃんの思考に誘惑はかかってない。だから俺にこんな態度がとれる。でも、体にはしっかり誘惑がかかってる。俺に魔法を打てなかったことが、君の体が俺に陶酔している証拠。君は俺に攻撃できない。体が俺の味方をしているから」
「うそでしょ…」
「淫魔ってのは弱いがしたたかな魔物でね。結界魔法で男が巣に侵入することを防いで、女には誘惑をかけて自分に攻撃できないようにする。それが俺たちの生き方。下級魔物だからこそ人間は舐めて俺たちの巣へのこのこやってくる。淫魔に上級冒険者なんぞ派遣させない。ここへ来るのはみぃんな、弱っちいやつばっか。楽な生き方だよなあ!あー淫魔でよかった!」
モニカはもう一度魔法を放とうと歌を歌った。だが、やはり発動しない。みぐるみを剥がされた魔法を使えないモニカは、少し体術が使えるだけのただの女の子だ。サーッと血の気が引いていく。
(こ、この状況、やばいのでは…?)
「さてドールちゃん、そろそろ時間だ。今度こそちゃんとかかってくれよな」
「え?」
淫魔がパチンと音を鳴らすと、次第にモニカの頭がぼんやりとしてきた。目がとろんと落ちていくモニカを見て、淫魔が満足げな表情を浮かべる。
「効いてきたな。さっき誘惑を重ねがけしたんだ。一度目よりもさらに濃い誘惑をたぁっぷり時間をかけてな。さすがに頭も痺れてきただろ?」
「……」
「お、力が抜けてきた。やっとだぜぇー!こんな集中したの久しぶりだわ!魔力使ったらはらへってきたー」
「…アーサー…」
「アーサー?ああ、グールと戦ってた男の子のことか?残念だけどあいつはこの部屋に辿り着けないなあ。この部屋に結界魔法かけてるし。今までも男がここに入ってきたことはないぜ。鉄壁の守り、これ淫魔の常識!」
「……」
「あっ、そうだ。ドールちゃん、淫魔に捕らえられた女がどうなるか知ってる?」
「…知らない…」
「たいがいの女はね、淫魔と楽しく遊んでから精気を吸い尽くされて終わり。でもそれはそれで幸せなんだぜ?だって淫魔と遊ぶほど楽しいことないからな。ちなみに俺はだいたい一週間遊んだら精気吸い尽くすんだ」
「……」
「でも俺、ドールちゃんのことは殺さないつもり。君のことすっごく気に入ったんだ。だって俺の誘惑に思考だけでも耐えた子なんて初めてだったし。それに君、処女だろ?俺さ、かわいい処女が欲しかったんだよなー!!あーやべー、テンション上がってきたー!」
「ショジョ…?なあにそれ…」
「処女の意味も分からないんだ?えー、かわいすぎるんですけど!」
「…?」
「処女は君が今から失うものさ。君には俺の子を産んでもらおうと思ってる。ドールちゃん聞いてくれる?実は淫魔の長老にさ?遊び惚けるのも良いけどそろそろ淫魔の子孫を増やす努力をしろって説教食らっちまってさあ。そもそも俺がここに来たのだってそのためだったんだけどもぉ。でもさ、俺さ、あんまそういう重い遊びしたくなかったんだよなあ。だって一週間で死ぬ子と後腐れなく遊ぶ方が楽でしょ?」
「そうなの…?」
「まじでそうだよ!俺さぁ、ここに来る前は半年くらいのスパンで女と遊んでたんだけどさ。日が経つにつれて相手が俺に独占欲を持ち始めるんだ。本気で俺のこと好きになりはじめちまうんだよぉ。それがめんどくさくてさ、ここに来てからは一週間で殺すことにしたんだ。それから生きるの楽になったわあー」
「ふぅん…」
「でも、長老にああ言われちまったし、そろそろ子孫増やす努力しねえとなーって思ってたときにドールちゃんを見つけたってわけ。君を見たときビビビって来たんだ!ま、そういうことでこれからよろしくな、ドールちゃん!!」
「……」
淫魔は脱力したモニカをベッドへ横たえ、彼女の上に乗り胸に手を添えた。モニカは抵抗せずに両腕を広げる。
「うん。完全に誘惑にかかってる。じゃ、いただきますか」
モニカに応じるように淫魔が彼女に覆いかぶさった。モニカは彼の首元に唇を添え…力いっぱい噛みついた。
「い"っ?!はっ?!今なにしたぁ!?ひょっとして噛み癖あるタイプ?!悪いけど噛むならもう少し手加減してくれるかな?!俺そっちの気ないんだわ!!」
「何言ってんのよ…。はやくどきなさいこの変態。あ~頭クラクラして気持ち悪いわね…」
「なっ…?!ひょっとしてまた誘惑が解けちゃった?!」
「そうみたいね」
「まじかよ?!俺に誘惑を二重にかけられたのに?!顧客満足度ナンバーワンの俺に完全に誘惑されないとか!!ドールちゃんはんぱねえわぁ…」
「それよりも早くどきなさいってば!!重いし気持ち悪いし最悪な気分なんですけどぉ!!いい加減私のおっぱいから手を離しなさいよこのバカぁ!!」
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