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学院編:オヴェルニー学院

【147話】2vs2寮対抗戦の始まり

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アーサーとモニカがオヴェルニー学院に転入して約10カ月が経った。今日が学院で過ごす最後の日。そして最後の寮対抗戦の日だ。

《さぁー!!今日もやってまいりました寮対抗!!!今月は武器戦術クラスと魔法クラスの生徒がペアになって組む2対2戦!!一人一人の実力はもちろん!2人の息をぴったり合わせた協力プレイが大切になります!!そう!寮対抗の中でも最も難しいと言われている2vs2が!始まりましたぁ!!》

実況者リーノの熱のこもった声が拡声器を通して競技場に響き渡る。観客の歓声がワァァァ!!と沸き立った。

《今日もいつも通りリーノとニコロが実況させていただきます。では、早速選手に登場してもらいましょうか》

《まずはぁぁぁ!!リリー寮!!》

「フレー!フレー!!リ・リ・イ!!!」

「きゃーーーー!!!アーサーくぅぅぅん!!」

「ウィルク王子ぃぃぃぃ!!!」

「モニカちゃあああああん!!!」

「ジュリア王女ぉぉぉおおぉお!!!」

リリー寮だけでなく他寮からも彼らの名前を叫ぶ声が聞こえた。今やこの4人は大人気者だ。武器戦術系の寮対抗戦を総ナメしているアーサー、魔法系の対抗戦を総ナメのモニカ、必ず最終戦までのし上がるウィルク王子とジュリア王女。しかも彼らの外見には華があり、学院内でアイドルのような存在になっていた。入場してきた選手には、もちろんダフとシリルの姿もあった。

全寮の生徒が登場し、闘技場に整列し開会式をあげる。いつも通り審判の先生が注意事項を話した。

「えー、今から寮対抗2vs2を始める。首をはねることや心臓を突きさすなど、即死に繋がる攻撃は禁止だ。あとは状態異常を付与することも禁止する。回復魔法は許可するがポーションの持ち込みは禁止。その他は何をしてもいい。生徒のギブアップ、または審判が重症と判断したら試合終了となる。負傷したものはエリクサーで即時に治すので安心してくれ。では始める。選手たちは呼ばれるまで控室で待機していなさい」

「はい!!」

生徒が退場して準備を進めている中、リーノとニコロが興奮した面持ちで話している。

《さてさて何と言っても今回の目玉はリリー寮ですね。アーサー、ジュリア王女ペア。モニカ、ウィルク王子ペア。この2組が、もう、楽しみでなりません…!》

《そのアーサーと剣術大会で共に戦ったダフ選手やシリル選手にも注目です。しかも…!彼らが勝ちあがったらダフ組とモニカ組、シリル組とアーサー組が準決勝戦で戦うことになりますよ…!もし彼らが敗戦したとしても、彼らに勝つほどの実力を持った選手が戦う!どちらにしても、熱いですね…!》

「なんか今日の実況すごい興奮してない…?」

「ね。いつも以上に喋るじゃん…」

観客席の声など当然実況者には届かない。実況者はさらに解説を続けた。

《それにしても、リリー寮がまさかこのようなペアで来るとは思いませんでしたねえ。てっきり兄妹ペアと王女王子ペアで分かれるものかと思っていました!しかしそうなると兄妹ペアが強すぎるからでしょうか。んんん!カーティス先生とザラ先生の意図をお聞きしたいところですねえ!!》

「はんっ、ちげーよ。こっちの方が面白いからだ」

控えにいるカーティス先生が鼻で笑いながら呟いた。ザラ先生もクスクス笑っている。

「アーサー、モニカ、ジュリア王女、ウィルク王子、こちらへ来てください」

「はい!」

ザラ先生に呼ばれて4人が集まった。

「あなたたち4人が他の寮に負けるなんて許しませんよ。私とカーティス先生はあなたたち4人の2vs2が見たいんですからね」

「もちろんだ。他の選手はもちろん、お兄さまとお姉さまに負けるものか」

「モニカ様がついていようと、負けませんわよウィルク!!」

「アーサー、こてんぱんにしてあげるんだからね!」

「モニカと王子が相手かあ。怖いなあ」

「アーサー様!!弱音なんて吐かないでくださいまし!!私がアーサー様をしっかりサポートいたしますわ!」

「心強いよジュリア王女。ありがとうございます」

両ペアやる気満々の様子だ(アーサーはいつも通りのんびりしているが)。どちらも難なく他寮ペアとの試合を勝ち進み、準決勝戦まで突破した。相手はもちろん…

「おいモニカぁ!!ずぅっとお前と戦ってみたかった!!」

「私もよダフ!あなたの体、真っ黒こげにしてあげる」

「おいダフ!僕もいるぞ!」

「ああそうだなウィルク王子!おま…あなたの剣、控室でずっと見てましたよ!とても美しい剣筋だ!!アーサーを思わせる!!」

「よく分かったなダフ!僕はこの9か月間、お兄さまにみっちり剣術を教えていただいたのだ。この剣でお前を倒してみせる!」

「楽しみだ!!」

ローズ寮のダフ、キャロルがモニカとウィルクの対戦相手。そしてアーサーとジュリアの相手は、ビオラ寮のシリル、クラリッサだ。

「アーサー、この日を待ちわびた」

「僕もだよシリル。ずっと本気の君と戦いたかった」

「シリル。あの時のこと、改めてお詫びしますわ。…ですが今日は、手加減なんてしませんわよ」

「もちろんです王女。全力で、正々堂々戦いましょう!王女、この時であのことはお忘れください。この9か月間であなたがしてくださったお詫びの数々で充分です。今日は純粋に、アーサーとジュリア王女と戦いたい!」

「…ええ!分かりました。…ありがとうシリル」

「さあ、もうしめっぽい雰囲気はやめましょう。楽しみながらも真剣に、剣と魔法を交えましょう!」
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