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学院編:オヴェルニー学院

【146話】贈り物

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化粧を落としたあと、アーサーはモニカの隣に腰かけた。温かいミルクを妹に渡して二人でまったり過ごす。いっこうにプレゼントの山に手を出さない双子を見て、グレンダは首を傾げた。

「アーサー、モニカ、ご両親からのプレゼントは探さないの?」

それを聞いたウィルク王子が思わずグレンダの足を踏んだ。死んでいるはずの二人にプレゼントがないことを王子は知っているからだ。

「いたっ!なにするんですかウィルク王子ぃ!!痛いじゃないですかぁ!!」

「余計な詮索はするなグレンダ!」

「えぇっ?!私何かダメなこと言いました?!」

「グレンダ、僕たちにプレゼントはないよ」

「だから探す必要もないの」

双子はのんびりした口調でそう言った。そのことをまったく気にしていない様子だった。近くで聞いていたジュリアが黙ってじっと双子を見た。

「ううん。さっき自分のプレゼントを探すときに、いくつか二人宛てのプレゼントを見たよ」

「えっ?」

アーサー、モニカ、ウィルク王子は驚いた声をあげ、半信半疑でプレゼントの山を漁った。

「あっ!ありましたよお兄さま宛てのプレゼント」

「わ、見つけた!」

「あった!」

「こちらにもほら」

漁れば漁るほど双子宛てのプレゼントがゴロゴロ出てきた。3人は全てのプレゼントをチェックし終わり数えてみると、アーサーとモニカにそれぞれ16こ贈り物があった。あまりの数の多さに双子も生徒たちも唖然としている。アーサーはそのうちの一つを手に取った。プレゼントと共に手紙が添えられている。

--------------
アーサーへ

学院生活たのしんでるか?
12月25日が近づくにつれて、
お前んちの玄関前に荷物が積みあがってきて
えらいことになっていたから
学院に送ることにする。

お前らのことを
自分の子どものように思っている人、
兄弟のように思っている人、
かけがえのない友人と思っている人からのプレゼントだ。

大切にしろよ。

カミーユ
--------------

モニカにも同様の手紙が入っていた。双子は目を潤ませてその手紙を読んだ。二人は静かにひとつひとつプレゼントを開封する。すべてに短いメッセージが添えられていた。

カミーユからのプレゼントは、アーサーには剣、モニカにはナイフだった。どちらも二人の手にぴったりとおさまり、試行錯誤して一番相性の良い武器を選んでくれたことが分かった。

ジルからの箱には防具が入っていた。「これは反魔法がかけられた防具だよ。気に入ってもらえると嬉しいな。二人がこれからも怪我なく元気に過ごせるようにって気持ちをこめたよ。早く君たちに会いたい」

リアーナからは、アーサーには少し高級そうなおしゃれな普段着、モニカには杖を挟むベルトが贈られた。「アーサー、お前には何買えばいいのか分かんなかったから洒落た服を買った!気に入ってなくてもあたしの前ではそれを着ろ!分かったな?!モニカ、お前には杖用ベルトだ。いつまでスカートに挟んでる気だ!ちゃんと使えよな!」

カトリナからのプレゼントは、アーサーには弓、モニカにはコスメポーチだった。ポーチの中にはいかにも上等なコスメがたっぷり詰められていた。ジュリアがコスメを見て「あら、これはリリー寮レベルの貴族しか買えない希少なコスメですわ」と興奮していた。
「アーサー、この弓はあなたが今まで使っていたものの倍よく飛ぶわよ。きっと気に入ってくれるはず。モニカには特別なお化粧品をプレゼントするわ。これでもっともっときれいになってね」

「二人にエルフの町でしか手に入らないブレスレットを贈ります。加護魔法がかけられたものよ。これらがあなたたちをずっと護ってくれますように。シャナ」

「母さんと父さんの3人でクッキーを作ったよ!食べてね!ユーリ」

「アーサー、お前さんには新しい調合器を。モニカには美容に効く薬を調合してプレゼントしよう。また薬屋に顔を出しておくれ。ボルーノ」

「二人に石鹸とタオルを贈るよ。あんたたちが宿にいたとき気に入ってたのと同じものだよ。それにしても、全然宿に遊びに来てくれないじゃないか。あんたたちがいないと退屈でかなわないねえ。時間のあるときに泊まりにおいで。もちろんお代はいらないよ。イザベラ(宿屋のおばあさん)」

「元気か?俺たちは日々クエストをこなす毎日だ。先日やっとCクラスになったぞ。お前らも早くここまで来い。また一緒に合同クエストに行ける日を楽しみにしてる。その気持ちを込めてこの国の地図と、クラス別魔物一覧表をプレゼントする。しっかり勉強しとけよ。ベニート」

「おーいアーサー、モニカ!!ベニートがかたっくるしいプレゼントを贈る気まんまんだから俺はふざけた物を贈ることにした!クエストの途中で寄った町で見つけたゴブリンの人形だ!!アイテムボックスにでもつけてろ!!イェルド」

「ベニートとイェルドがとてもくだらないものを贈るから気が楽だわ。二人にアイテムボックスを贈ります。もう持っているだろうけれど、いくつか持ってても損はないものよ。アデーラ」

「アビー、モニカ。君たちにドレスを贈るよ。二人に似合うものを仕立て屋と三日三晩話し合って作ってもらったんだ。次に会うときはそれを着てほしいな。想像しただけで口元が緩むよ。いつまでも元気で、そして美しい二人でいてね。愛を込めて。キャネモ」

「俺からはもちろん絵を贈るよ。君たちをモデルにした絵だ!どうだい綺麗だろう!クロネ」

「僕からも絵を贈るね。クロネとキャンバスを並べて描いた。君たちに護衛してもらったあの森へ行って、君たちに思いを馳せながら描いたよ。気に入ってもらえると嬉しいな。ヴァジー」

「モニカにはアウラリネの花びらと髪をじっくりことこと煮込んで作った誘惑剤を、アーサーにはミノタウロスの血をたっぷり使った精力剤を贈るよぉ。ヒヒヒ。間違っても二人同時に飲むんじゃないよ。リアーナのばあちゃん魔女より(リアーナたちにはこんなものもらったってバラすんじゃないよぉ)」

喜んだり、笑ったり、時には苦笑いをしながらも嬉しそうに。アーサーとモニカは全てのプレゼントを開封した。開けている途中から二人は涙が止まらなくなっていた。5年前までは、アーサーとモニカは二人っきりの世界で生きてきた。だが今は違う。家族のように二人を想ってくれている人がこんなにもたくさんいる。

二人が今までどんな人生を送ってきたかは分からないが、きっと孤独だっただろうと知っているウィルク王子は姉の陰に隠れてこっそり泣いた。

「…生まれてきてよかった」

アーサーがボソリと呟いた。モニカは泣きながら笑った。
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