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学院編:オヴェルニー学院
【134話】カミーユたちの説教
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翌日の夜中、カミーユたちがお忍びで学院を訪れた。校長室へカミーユたちと双子、そしてビアンナ先生が集まった。校長先生はS級、F級冒険者たちに頭を下げながらお礼の言葉を伝えた。
「今回は、誘拐された生徒たちを救出してくださり、本当にありがとうございました」
「救出した?は?」
「あらァ?私たち、これから救出しに行こうと思ってここへ来たのだけれど…」
「ちょ、え?聞いてねえ聞いてねえ」
「…アーサー、モニカ。僕たちに潜入捜査完了って伝言飛ばしたよね?失踪の原因を突き止めたから送ったんだよね?」
カミーユたちはじろりと双子の方を見た。アーサーとモニカはビクビクしながら必死に彼らから目を逸らしている。校長先生は首をかしげている。
「あの…アーサー君たちから聞いておりませんか?もう彼らが吸血鬼2体を倒し、無事監禁されていた生徒は保護され、失踪事件は無事解決したのですが…」
「はぁぁぁ?!」
「吸血鬼ィ?!アーサー、モニカ、どういうことかしらァ?」
「おいおいおい聞いてねえ聞いてねえ」
「アーサー、モニカ。ちょっとあっちで話をしようか」
「ひぃぃぃぃ…」
混乱しているカミーユたちが双子の首根っこを掴んで校長室の端へ連れて行った。4人の威圧感がすごい。双子はカタカタと震えながら必死に言い訳を並べた。
「あのねっ!私たちも誘拐されちゃったの!それですぐインコを飛ばせなくてね?!」
「へえ?」
疑わし気にモニカを睨みつけるジルが低い声を出した。ジルにこのような目を向けられたのが初めてでモニカは「んひぃぃぃっ!」と変な声を出しながらアーサーの後ろに隠れた。
「とりあえず、詳しく説明してくれるかな」
「は…はひ…」
双子は昨晩の出来事を事細かく話した(ミモレスのことには触れないように気を付けて話した)。双子がやむを得ず吸血鬼と対峙することになったことを聞き、カミーユたちはアーサーとモニカの服をめくりあげた。
「きゃぁっ!なにするのぉ!」
「怪我はないか?!痛いところは?!吸血欲は?!」
「ないよ!もう治ったから!」
「治った?!ってことは怪我したんだな?!何されたんだ!!」
「私は大したことないわ。自分の体に毒魔法打っただけだから…」
「はぁ?!なんでそんなことした?!お前の毒はきっついんだぞ?!」
「だって吸血鬼に毒魔法効かなかったから…血を飲まれてたからちょうどいいかなーって自分の体に毒魔法をかけて、血に毒を混ぜたの」
「どうして聖魔法を使わなかったのォ…」
「え?!モニカ、ロイに血を吸われたの?!ロイのやつ!!許さない!」
「アーサーだっていっぱい血を飲まれてたじゃない!!アーサーのばか!!」
「仕方ないじゃないか!!ウィルクたちを守るためだったんだから!!」
「倒れちゃうくらい血を飲まれてた上にウィルクをかばっておなかに手ぶっさされて!!あの出血量はさすがに死んじゃうかと思ったわよ!!それに…!!あんたなんか、セルジュにキスされたんでしょぉ?!ばかっ!!アーサーのばかぁぁ!!」
「お前吸血鬼に何されてんだよ…」
カミーユは深いため息をついて額に手を置いただけだったが、ジルはそれを聞いてアイテムボックスから槍を取り出した。それを見たカミーユは「お…おい、ジル…?」と震えた声を出す。
「隠し部屋に吸血鬼の魂魄が残ってないか見てくる。残ってたら何かに憑依させてもう一度殺す」
「物騒なパパねェ…。ジル、話しはまだ終わってないわよォ。武器をしまって大人しく話を聞いて頂戴」
「……」
しぶしぶ武器をしまい、ジルは話の続きを聞いた。モニカがジュリア姫を隠し部屋から逃がし、先生に助けを呼ぶように指示してから兄を助けに行ったところまで聞いたところで、カミーユはパキパキと指の関節を鳴らしながらモニカに怖い笑顔を向けた。
「おいモニカぁ?お前、インコ飛ばす暇あったよなあ?」
「ぽひぃ…」
「さては忘れてたわねェ?」
「モニカはちょっとアホなところあるからなあ…」
「僕たちさ、君たちが潜入捜査始めてからは、いつでも駆けつけられるようにオーヴェルニュ家を拠点にしてたんだよね。緊急救助要請が来たら30分とかからず駆けつけられたんだよ。そうしたら…モニカの戦闘は間に合わなかったけど、アーサーがクソ吸血野郎にキスされることもなかったし、アーサーのおなかにクソ豚吸血変態野郎の腕が突っ込まれることもなかったんじゃないの」
「ご…ごめんなさいぃぃぃ…っ」
「まあ、過ぎたことは責めてもしかたないわァ…。二人とも無事だったんだから良しとしましょう。ジル、緊急事態だったのよ。冷静な判断ができなくても仕方ないわ。だからモニカのことをあまり言ってあげないでェ」
「あっ…ごめん、モニカ。言い過ぎたね…」
「ううん…ジルの言う通りだもん。ごめんなさい」
「おいおいモニカ!まじで気にすんなって!ジルは野郎がアーサーにキスしてヤキモチやいてるだけだからよ!ぎゃははは!!!」
「……」
「おいそこで黙んのかよ!!まじっぽくなるからやめろって!!」
「ちがう、リアーナを脳内でボコボコにしてただけ」
「こわっ!こわぁ!!」
6人のカオスな会話に校長先生とビアンナ先生が困ったように目を見合わせた。しばらくして彼らの(丸聞こえの)コソコソ話が終わり、二人の元へ戻ってくる。
「あの…カミーユさん…これはどういうことで…?」
おろおろしながら校長が尋ねた。カミーユは「ああ、すんません」と謝る仕草をした。
「こいつらのホウレンソウが全くなっていなくてですね。てっきり俺らがこれから誘拐犯をとっちめるモンだと思ってたんですが、どうやらその必要もないらしい」
「そうだったのですか…。わざわざ来てくださったのに申し訳ありません」
「いえ。こっちこそなんかすんません。…で、アーサー、モニカ」
「ひゃいっ!」
まだ口喧嘩をしていた双子がビクッと体を強張らせた。
「説教はあとでじっくりしっぽりするとして…よく頑張ったな。おつかれさん」
労いの言葉を受け、アーサーとモニカは喜びでぷるぷる震えた。そしてニッコリ笑う。
「うん!!」
「で、どうする?俺らはポントワーブに戻るが。お前らも一緒に帰るか?」
「ううん!今年度中はここにいようと思って!」
「ほう。そんなに学院生活が気に入ったか?」
「うん!色んな子たちと学べて楽しいんだ!」
「そうか」
アーサーとモニカにとって、同じくらいの年齢の友人ができるのは初めてのことだろうと思い、カミーユたちは嬉しそうに頬を緩めた。
「校長先生、ひとつ頼み聞いてもらっていいですか?」
カミーユが校長先生に声をかけた。
「はい、なんでしょうか」
「こいつらがいる間は新しい教師や使用人を雇わないでください。部外者も学院内に一切入れないように」
「はあ。かまいませんが…どうして?」
「ちと訳ありでな。頼みましたよ」
「分かりました」
カミーユたちがホッとした表情を浮かべた。これで王族の監視から約9か月間は双子を遠ざけることができる。
「よし、おまえら。ここで友だち作ってから帰ってこい」
「ちぇー!!お前らのいないポントワーブつまんねーぜ!!」
「こらこらリアーナ、わがまま言わないのォ」
「そうだよリアーナ。大人げない」
「とか言いながらジルも泣きそうな顔してんじゃねーか!!」
しばらく騒いだ後、カミーユたちは双子を引きずって校長室を出て行った。廊下を歩きながらひたすら説教を聞かされ、アーサーとモニカは耳にタコができるかと思った。校門の前へ着き、馬車の前でカミーユたちとお別れの挨拶をする。
「じゃ、まただいたい9か月後に会おうぜ」
「トロワのことは私たちに任せといてェ」
「嫌な目にあったらすぐに伝書インコを飛ばすんだよ」
「モニカ!あたしが教えた基礎訓練サボんなよ!」
「うん!!ありがとう!!」
「あっ、あとね。あのね」
モニカはカミーユの服を引っ張り、嬉しそうに囁いた。
「王子と姫と、友だちになったんだよ」
「…そうか。どうだった?」
「ジュリア姫は、少し気がきついけどとても勇敢な子よ」
「ウィルク王子は、きっとこれから優しい人になってくれると思う」
自分の妹と弟を自慢げに話している二人を見て、カミーユたちはくすりと笑った。
「お前たちの寛容さには毎度びっくりするが…。良かったな。この9カ月間で、もっと仲良くなってこい」
「うん!!」
「じゃあな!!伝書インコ飛ばすからなー!!!」
「アーサー、モニカ、元気でねェ」
「会いたくなったらいつでも伝書インコ飛ばして。すぐ駆けつけるから」
リアーナとジルを双子から引きはがすのに随分時間がかかったが、4人は馬車に乗り込み学院を去った。アーサーとモニカは手を振って見送る。馬車が見えなくなったあと、アーサーがモニカの肩を抱いた。
「よし!もうしばらく、ここで楽しもうかモニカ」
「うん!」
「今回は、誘拐された生徒たちを救出してくださり、本当にありがとうございました」
「救出した?は?」
「あらァ?私たち、これから救出しに行こうと思ってここへ来たのだけれど…」
「ちょ、え?聞いてねえ聞いてねえ」
「…アーサー、モニカ。僕たちに潜入捜査完了って伝言飛ばしたよね?失踪の原因を突き止めたから送ったんだよね?」
カミーユたちはじろりと双子の方を見た。アーサーとモニカはビクビクしながら必死に彼らから目を逸らしている。校長先生は首をかしげている。
「あの…アーサー君たちから聞いておりませんか?もう彼らが吸血鬼2体を倒し、無事監禁されていた生徒は保護され、失踪事件は無事解決したのですが…」
「はぁぁぁ?!」
「吸血鬼ィ?!アーサー、モニカ、どういうことかしらァ?」
「おいおいおい聞いてねえ聞いてねえ」
「アーサー、モニカ。ちょっとあっちで話をしようか」
「ひぃぃぃぃ…」
混乱しているカミーユたちが双子の首根っこを掴んで校長室の端へ連れて行った。4人の威圧感がすごい。双子はカタカタと震えながら必死に言い訳を並べた。
「あのねっ!私たちも誘拐されちゃったの!それですぐインコを飛ばせなくてね?!」
「へえ?」
疑わし気にモニカを睨みつけるジルが低い声を出した。ジルにこのような目を向けられたのが初めてでモニカは「んひぃぃぃっ!」と変な声を出しながらアーサーの後ろに隠れた。
「とりあえず、詳しく説明してくれるかな」
「は…はひ…」
双子は昨晩の出来事を事細かく話した(ミモレスのことには触れないように気を付けて話した)。双子がやむを得ず吸血鬼と対峙することになったことを聞き、カミーユたちはアーサーとモニカの服をめくりあげた。
「きゃぁっ!なにするのぉ!」
「怪我はないか?!痛いところは?!吸血欲は?!」
「ないよ!もう治ったから!」
「治った?!ってことは怪我したんだな?!何されたんだ!!」
「私は大したことないわ。自分の体に毒魔法打っただけだから…」
「はぁ?!なんでそんなことした?!お前の毒はきっついんだぞ?!」
「だって吸血鬼に毒魔法効かなかったから…血を飲まれてたからちょうどいいかなーって自分の体に毒魔法をかけて、血に毒を混ぜたの」
「どうして聖魔法を使わなかったのォ…」
「え?!モニカ、ロイに血を吸われたの?!ロイのやつ!!許さない!」
「アーサーだっていっぱい血を飲まれてたじゃない!!アーサーのばか!!」
「仕方ないじゃないか!!ウィルクたちを守るためだったんだから!!」
「倒れちゃうくらい血を飲まれてた上にウィルクをかばっておなかに手ぶっさされて!!あの出血量はさすがに死んじゃうかと思ったわよ!!それに…!!あんたなんか、セルジュにキスされたんでしょぉ?!ばかっ!!アーサーのばかぁぁ!!」
「お前吸血鬼に何されてんだよ…」
カミーユは深いため息をついて額に手を置いただけだったが、ジルはそれを聞いてアイテムボックスから槍を取り出した。それを見たカミーユは「お…おい、ジル…?」と震えた声を出す。
「隠し部屋に吸血鬼の魂魄が残ってないか見てくる。残ってたら何かに憑依させてもう一度殺す」
「物騒なパパねェ…。ジル、話しはまだ終わってないわよォ。武器をしまって大人しく話を聞いて頂戴」
「……」
しぶしぶ武器をしまい、ジルは話の続きを聞いた。モニカがジュリア姫を隠し部屋から逃がし、先生に助けを呼ぶように指示してから兄を助けに行ったところまで聞いたところで、カミーユはパキパキと指の関節を鳴らしながらモニカに怖い笑顔を向けた。
「おいモニカぁ?お前、インコ飛ばす暇あったよなあ?」
「ぽひぃ…」
「さては忘れてたわねェ?」
「モニカはちょっとアホなところあるからなあ…」
「僕たちさ、君たちが潜入捜査始めてからは、いつでも駆けつけられるようにオーヴェルニュ家を拠点にしてたんだよね。緊急救助要請が来たら30分とかからず駆けつけられたんだよ。そうしたら…モニカの戦闘は間に合わなかったけど、アーサーがクソ吸血野郎にキスされることもなかったし、アーサーのおなかにクソ豚吸血変態野郎の腕が突っ込まれることもなかったんじゃないの」
「ご…ごめんなさいぃぃぃ…っ」
「まあ、過ぎたことは責めてもしかたないわァ…。二人とも無事だったんだから良しとしましょう。ジル、緊急事態だったのよ。冷静な判断ができなくても仕方ないわ。だからモニカのことをあまり言ってあげないでェ」
「あっ…ごめん、モニカ。言い過ぎたね…」
「ううん…ジルの言う通りだもん。ごめんなさい」
「おいおいモニカ!まじで気にすんなって!ジルは野郎がアーサーにキスしてヤキモチやいてるだけだからよ!ぎゃははは!!!」
「……」
「おいそこで黙んのかよ!!まじっぽくなるからやめろって!!」
「ちがう、リアーナを脳内でボコボコにしてただけ」
「こわっ!こわぁ!!」
6人のカオスな会話に校長先生とビアンナ先生が困ったように目を見合わせた。しばらくして彼らの(丸聞こえの)コソコソ話が終わり、二人の元へ戻ってくる。
「あの…カミーユさん…これはどういうことで…?」
おろおろしながら校長が尋ねた。カミーユは「ああ、すんません」と謝る仕草をした。
「こいつらのホウレンソウが全くなっていなくてですね。てっきり俺らがこれから誘拐犯をとっちめるモンだと思ってたんですが、どうやらその必要もないらしい」
「そうだったのですか…。わざわざ来てくださったのに申し訳ありません」
「いえ。こっちこそなんかすんません。…で、アーサー、モニカ」
「ひゃいっ!」
まだ口喧嘩をしていた双子がビクッと体を強張らせた。
「説教はあとでじっくりしっぽりするとして…よく頑張ったな。おつかれさん」
労いの言葉を受け、アーサーとモニカは喜びでぷるぷる震えた。そしてニッコリ笑う。
「うん!!」
「で、どうする?俺らはポントワーブに戻るが。お前らも一緒に帰るか?」
「ううん!今年度中はここにいようと思って!」
「ほう。そんなに学院生活が気に入ったか?」
「うん!色んな子たちと学べて楽しいんだ!」
「そうか」
アーサーとモニカにとって、同じくらいの年齢の友人ができるのは初めてのことだろうと思い、カミーユたちは嬉しそうに頬を緩めた。
「校長先生、ひとつ頼み聞いてもらっていいですか?」
カミーユが校長先生に声をかけた。
「はい、なんでしょうか」
「こいつらがいる間は新しい教師や使用人を雇わないでください。部外者も学院内に一切入れないように」
「はあ。かまいませんが…どうして?」
「ちと訳ありでな。頼みましたよ」
「分かりました」
カミーユたちがホッとした表情を浮かべた。これで王族の監視から約9か月間は双子を遠ざけることができる。
「よし、おまえら。ここで友だち作ってから帰ってこい」
「ちぇー!!お前らのいないポントワーブつまんねーぜ!!」
「こらこらリアーナ、わがまま言わないのォ」
「そうだよリアーナ。大人げない」
「とか言いながらジルも泣きそうな顔してんじゃねーか!!」
しばらく騒いだ後、カミーユたちは双子を引きずって校長室を出て行った。廊下を歩きながらひたすら説教を聞かされ、アーサーとモニカは耳にタコができるかと思った。校門の前へ着き、馬車の前でカミーユたちとお別れの挨拶をする。
「じゃ、まただいたい9か月後に会おうぜ」
「トロワのことは私たちに任せといてェ」
「嫌な目にあったらすぐに伝書インコを飛ばすんだよ」
「モニカ!あたしが教えた基礎訓練サボんなよ!」
「うん!!ありがとう!!」
「あっ、あとね。あのね」
モニカはカミーユの服を引っ張り、嬉しそうに囁いた。
「王子と姫と、友だちになったんだよ」
「…そうか。どうだった?」
「ジュリア姫は、少し気がきついけどとても勇敢な子よ」
「ウィルク王子は、きっとこれから優しい人になってくれると思う」
自分の妹と弟を自慢げに話している二人を見て、カミーユたちはくすりと笑った。
「お前たちの寛容さには毎度びっくりするが…。良かったな。この9カ月間で、もっと仲良くなってこい」
「うん!!」
「じゃあな!!伝書インコ飛ばすからなー!!!」
「アーサー、モニカ、元気でねェ」
「会いたくなったらいつでも伝書インコ飛ばして。すぐ駆けつけるから」
リアーナとジルを双子から引きはがすのに随分時間がかかったが、4人は馬車に乗り込み学院を去った。アーサーとモニカは手を振って見送る。馬車が見えなくなったあと、アーサーがモニカの肩を抱いた。
「よし!もうしばらく、ここで楽しもうかモニカ」
「うん!」
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