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学院編:オヴェルニー学院
【123話】王族の血
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おそるおそるジュリア王女が目を開けると、目の前まで迫っていた火の玉が消滅し、気が触れたように笑うロイの姿があった。
「あは!あはははは!!さすがだよモニカさん!!杖も持っていないのにその威力かい?!君には驚くばかりだ!!!」
「ロイ。いい加減にしてちょうだい。ジュリアを傷つけることは許さないわ」
「モ…モニカ…?」
「ジュリア。私の後ろへ。…さっきはありがとう。すごく嬉しかった」
脱力してへたりこんだジュリアをぎゅっと抱きしめてから、今度はモニカがジュリアの前へ立った。妹を危険に晒された怒りで、モニカは凍えるほどの冷気を纏わせていた。ロイに向けて両手を差し出し深く息を吐いた。
「私のかわいいジュリアを怖がらせたこと、後悔させてあげる」
「ああ!もっと見せてほしい!モニカ!君の美しい魔法を!!ああ!この学院で餌探しをしていてよかった!!こんな素晴らしい人間を手に入れられるなんて!!僕はなんて幸せ者なんだろう!!」
高揚したロイはさまざまな属性の魔法をモニカに向かって放った。それをモニカが的確に反属性魔法で打ち消していく。目にも止まらない魔法の攻防にジュリア姫は目を見開いた。
「モニカ…あなた…魔法は苦手なはずじゃ…」
モニカは風魔法でロイの首を狙うが、彼もそれを軽々と打ち消した。
「戦い慣れているねモニカさん。ただの貴族の子どもではないね?」
「あなたに教えることはなにもないわ」
「君は本当に面白い。でも、そろそろ大人しくしてもらおうかな」
ロイは動きを止め、深呼吸をしてから杖を握りなおした。嫌な感じがしたモニカはロイに詰め寄り杖を叩き落とした。彼女の予想外の行動にロイは顔をしかめる。
「ちっ。体術までできるとは」
(ジルに訓練してもらってて良かったわ)
モニカがロイの杖を火魔法で燃やそうとしたとき、ロイがモニカの頭を掴んで床に叩きつけた。
「う"っ…」
「モニカ!!!」
「もう、こんなに強かったら手加減ができないじゃないか。僕たち吸血鬼は回復魔法を使えないんだ。頼むから大人しくしてくれないかな?せっかくこんな上質な人間を見つけたのに間違って殺しちゃうなんてあんまりだからさ」
床にモニカの血が流れる。頭を強く打ち付けられたせいで一瞬意識が飛び、自分が今何をしているのか分からなくなった。
「……」
「ああ、やっと静かになってくれた。良かったあ。…じゃあ次は王女の番ですね。ごめんなさい王女。モニカはこれからずっと僕の傍に置くつもりだからあまり痛めつけなかったですけど、あなたはただの餌なので暴れるなら両腕と両脚を砕きます」
「はっ…はっ…モニカから手を離しなさい…っ」
「…いい眺めですね王女。普段あんなに気の強い王女が泣きながら虚勢を張っているなんて。たいして魔力も大きくないのに威張り散らすのは楽しかったですか?あなたの100倍以上の魔力量があるモニカさんを"出来損ないの子猫ちゃん"なんて呼んで…あはは、本当に滑稽でしたよ」
ロイはぐったりしているモニカを抱き寄せた。首元をぺろりと舐め、ニヤリと笑う。
「王家の血には二種類あるとお父さまは言っていました。高潔な血と、薄汚い血。高潔な血はどの人間の血より美味らしい。そして薄汚い血はどの人間よりも不味い。姫、あなたはどちらかな。僕は薄汚い血の方だと思いますが。…僕のモニカ、少し待っていてね。まずはこの王家の餌とそこに寝転がってる餌から味わうことにするね。君の血は最後にいただくよ」
名残惜しそうにモニカの頬にキスをして、ロイはそっと彼女を床に置き、ライラのもとへ近寄った。口から流している血を指ですくい舌先で舐めた。
「…うん、普通だね。他の餌と変わらない」
「うう…」
「ん?意識が戻ったのかい?すごいね。体内がぐちゃぐちゃになってるのに。さすがこの年齢でA級アーチャーに上り詰めただけある。アーサーと同じで体のつくりがちがうんだろうね」
「ひっ…王女にひどいこと…しちゃ…だめ…ゴブッ」
「だめだよライラ。喋ったらもっと内臓が痛んじゃう。そこで大人しく惨めに転がっててね」
そう言い捨て、ロイはジュリア王女の前に立った。乱暴に彼女の腕を掴み手首に噛みつく。王女は痛みに顔を歪めた。
「うっ…」
「うーん…そこまで不味くないかなあ。むしろ今まで飲んできた血の中で一番美味しいかも。僕の予想は外れちゃったか。おめでとうございます王女。あなたは高潔な血を持っているらしい」
「きもちわるいっ…腕から口を離しなさい!!」
「すみません王女。思いのほか美味しくて止まりません。しばらく我慢していてくださいね」
勢いよく血を飲まれ、たちどころに王女から力が抜けていく。体中が冷たくなり感覚がなくなってきた。
夢中になって喉を鳴らしながら血を飲んでいるロイの背中に一本の矢が刺さる。ロイは血を飲みながらその矢を引き抜いた。
「驚いたよライラ。まだ弓を引く気力があったのかい?」
「王女…から、はな…れろっ…!」
血を吐きながら、ブルブルと震える腕で再び弓を引こうとしているライラに、ジュリア王女は叫び声をあげた。
「ライラやめて!!あなた殺されてしまうわ!!私は大丈夫だから!!」
「わ、わたしは…国にお仕えするために…弓術を磨いてきました…お…王女が危険に遭われている今…弓を引かず…いつ…引くのでしょうか…。おうじょを…助けられるなら…このような命…いくらでも…ガハッ…捨てましょう…」
ライラが最後の力をこめて射た矢は、ロイの体に触れることもなく風魔法で跳ね返された。跳ね返された矢はライラの胸に刺さった。
「あ…う…」
「ライラ!!!ライラぁ!!!」
「大丈夫です王女。心臓は外しました。お父さまに見せるまで殺しません」
「こんな…!!こんな腐った王族のために命を捨てるなんておやめなさい!!!あなたの腕は…あなたの腕は、今失われるべきではない!!」
「あははは!!王女、ご自身でも王族が腐っていることを自覚しているのですね。…ん?どうしたんだいモニカ」
いつの間にかロイの後ろまで這って来ていたモニカが彼の手を掴んだ。まだ意識が朦朧としているのか、目の焦点が定まっていない。彼女がもう片方の手を伸ばすと、ロイは困ったような嬉しいような顔でモニカを抱き寄せた。
「あは!あはははは!!さすがだよモニカさん!!杖も持っていないのにその威力かい?!君には驚くばかりだ!!!」
「ロイ。いい加減にしてちょうだい。ジュリアを傷つけることは許さないわ」
「モ…モニカ…?」
「ジュリア。私の後ろへ。…さっきはありがとう。すごく嬉しかった」
脱力してへたりこんだジュリアをぎゅっと抱きしめてから、今度はモニカがジュリアの前へ立った。妹を危険に晒された怒りで、モニカは凍えるほどの冷気を纏わせていた。ロイに向けて両手を差し出し深く息を吐いた。
「私のかわいいジュリアを怖がらせたこと、後悔させてあげる」
「ああ!もっと見せてほしい!モニカ!君の美しい魔法を!!ああ!この学院で餌探しをしていてよかった!!こんな素晴らしい人間を手に入れられるなんて!!僕はなんて幸せ者なんだろう!!」
高揚したロイはさまざまな属性の魔法をモニカに向かって放った。それをモニカが的確に反属性魔法で打ち消していく。目にも止まらない魔法の攻防にジュリア姫は目を見開いた。
「モニカ…あなた…魔法は苦手なはずじゃ…」
モニカは風魔法でロイの首を狙うが、彼もそれを軽々と打ち消した。
「戦い慣れているねモニカさん。ただの貴族の子どもではないね?」
「あなたに教えることはなにもないわ」
「君は本当に面白い。でも、そろそろ大人しくしてもらおうかな」
ロイは動きを止め、深呼吸をしてから杖を握りなおした。嫌な感じがしたモニカはロイに詰め寄り杖を叩き落とした。彼女の予想外の行動にロイは顔をしかめる。
「ちっ。体術までできるとは」
(ジルに訓練してもらってて良かったわ)
モニカがロイの杖を火魔法で燃やそうとしたとき、ロイがモニカの頭を掴んで床に叩きつけた。
「う"っ…」
「モニカ!!!」
「もう、こんなに強かったら手加減ができないじゃないか。僕たち吸血鬼は回復魔法を使えないんだ。頼むから大人しくしてくれないかな?せっかくこんな上質な人間を見つけたのに間違って殺しちゃうなんてあんまりだからさ」
床にモニカの血が流れる。頭を強く打ち付けられたせいで一瞬意識が飛び、自分が今何をしているのか分からなくなった。
「……」
「ああ、やっと静かになってくれた。良かったあ。…じゃあ次は王女の番ですね。ごめんなさい王女。モニカはこれからずっと僕の傍に置くつもりだからあまり痛めつけなかったですけど、あなたはただの餌なので暴れるなら両腕と両脚を砕きます」
「はっ…はっ…モニカから手を離しなさい…っ」
「…いい眺めですね王女。普段あんなに気の強い王女が泣きながら虚勢を張っているなんて。たいして魔力も大きくないのに威張り散らすのは楽しかったですか?あなたの100倍以上の魔力量があるモニカさんを"出来損ないの子猫ちゃん"なんて呼んで…あはは、本当に滑稽でしたよ」
ロイはぐったりしているモニカを抱き寄せた。首元をぺろりと舐め、ニヤリと笑う。
「王家の血には二種類あるとお父さまは言っていました。高潔な血と、薄汚い血。高潔な血はどの人間の血より美味らしい。そして薄汚い血はどの人間よりも不味い。姫、あなたはどちらかな。僕は薄汚い血の方だと思いますが。…僕のモニカ、少し待っていてね。まずはこの王家の餌とそこに寝転がってる餌から味わうことにするね。君の血は最後にいただくよ」
名残惜しそうにモニカの頬にキスをして、ロイはそっと彼女を床に置き、ライラのもとへ近寄った。口から流している血を指ですくい舌先で舐めた。
「…うん、普通だね。他の餌と変わらない」
「うう…」
「ん?意識が戻ったのかい?すごいね。体内がぐちゃぐちゃになってるのに。さすがこの年齢でA級アーチャーに上り詰めただけある。アーサーと同じで体のつくりがちがうんだろうね」
「ひっ…王女にひどいこと…しちゃ…だめ…ゴブッ」
「だめだよライラ。喋ったらもっと内臓が痛んじゃう。そこで大人しく惨めに転がっててね」
そう言い捨て、ロイはジュリア王女の前に立った。乱暴に彼女の腕を掴み手首に噛みつく。王女は痛みに顔を歪めた。
「うっ…」
「うーん…そこまで不味くないかなあ。むしろ今まで飲んできた血の中で一番美味しいかも。僕の予想は外れちゃったか。おめでとうございます王女。あなたは高潔な血を持っているらしい」
「きもちわるいっ…腕から口を離しなさい!!」
「すみません王女。思いのほか美味しくて止まりません。しばらく我慢していてくださいね」
勢いよく血を飲まれ、たちどころに王女から力が抜けていく。体中が冷たくなり感覚がなくなってきた。
夢中になって喉を鳴らしながら血を飲んでいるロイの背中に一本の矢が刺さる。ロイは血を飲みながらその矢を引き抜いた。
「驚いたよライラ。まだ弓を引く気力があったのかい?」
「王女…から、はな…れろっ…!」
血を吐きながら、ブルブルと震える腕で再び弓を引こうとしているライラに、ジュリア王女は叫び声をあげた。
「ライラやめて!!あなた殺されてしまうわ!!私は大丈夫だから!!」
「わ、わたしは…国にお仕えするために…弓術を磨いてきました…お…王女が危険に遭われている今…弓を引かず…いつ…引くのでしょうか…。おうじょを…助けられるなら…このような命…いくらでも…ガハッ…捨てましょう…」
ライラが最後の力をこめて射た矢は、ロイの体に触れることもなく風魔法で跳ね返された。跳ね返された矢はライラの胸に刺さった。
「あ…う…」
「ライラ!!!ライラぁ!!!」
「大丈夫です王女。心臓は外しました。お父さまに見せるまで殺しません」
「こんな…!!こんな腐った王族のために命を捨てるなんておやめなさい!!!あなたの腕は…あなたの腕は、今失われるべきではない!!」
「あははは!!王女、ご自身でも王族が腐っていることを自覚しているのですね。…ん?どうしたんだいモニカ」
いつの間にかロイの後ろまで這って来ていたモニカが彼の手を掴んだ。まだ意識が朦朧としているのか、目の焦点が定まっていない。彼女がもう片方の手を伸ばすと、ロイは困ったような嬉しいような顔でモニカを抱き寄せた。
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