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魔女編:カミーユたちとの特訓
【78話】リアーナの家族
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「さて、着いたぞ」
リウィン山の麓でカミーユが馬を止める。
「リアーナの家はこの山のてっぺんだ。山ん中には上級魔物がうじゃうじゃいる。ほとんどがBクラス級だ。戦ってちゃあ埒が明かねえから馬で突っ切るぞ。アーサー、俺の馬へ乗れ。モニカはカトリナんとこだ」
「ひえぇぇ…」
双子は自分たちが乗っていた馬から降り、カミーユとカトリナに抱きかかえられて山を登った。走っている馬に魔物たちが襲い掛かってくるが、S級冒険者たちは軽やかに攻撃をかわし先へ進む。頂上へ着いたときも、全員かすり傷ひとつなかった。
魔物が棲んでいる山の頂上にぽつんと立っている小屋。モニカとアーサーに嫌な記憶がよみがえる。不安そうな顔をしていると、リアーナが双子の頭を撫でた。
「お前らが考えてること当ててやろうか?この小屋の中に魔女がいるんじゃねえかって思っただろ」
「うん…」
「魔女、いないよね…?」
モニカはぷるぷる震えながらリアーナを見上げた。リアーナはニカっと笑う。
「いや、いるぜ!」
「えええっ?!」
びっくりして思わずカミーユにしがみついたアーサーに、リアーナは大きな声をあげて笑った。
「安心しろ!この魔女は悪いやつじゃねえ。あとでじっくり説明してやる」
そう言いながらリアーナが小屋のドアを乱暴にノックした。
「ばあちゃーん!帰ったぞぉ」
「ああ?!リアーナかい?!」
「おう!!ただいまあ!」
「あんた!帰ってくるなら先に言っといてよ!準備ってのがあるじゃないか!」
慌ただしくドアが開く。リアーナと同じ黒髪の、気のきつそうな女性が顔を覗かせた。彼女はリアーナの後ろに控えている5人の顔を見てにやりと笑った。
「おやあ、これはこれはリアーナの連れじゃないか。久しいねえ。そしてなんだいこのガキは。…ほう、双子じゃないか。うまそうだ」
「ひぃぃっ」
「アハハハ!!冗談冗談!!さ、中へ入んな」
アーサーとモニカは脚がすくんで動けない。リアーナとカミーユはどかどかと小屋の中へ入って行った。カトリナとジルが双子の背中を撫でて安心させようとするが、断固として入ろうとしない。
「大丈夫よアーサー。中へはいりましょう?」
「モニカ、ほら、おいで」
カトリナたちが手を引くが、双子は首を横に振って地面に踏ん張った。そんな彼らをひょいと抱き上げ無理やり小屋の中へ入る。
「ひぃぃぃん!!」
「殺される!殺されるぅ!!」
「こらこらァ。そんなに暴れないの」
双子がいやいや小屋の中へ入ると、奇妙な匂いが鼻をついた。カミーユたちはダイニングチェアに腰かけくつろいでいる。カミーユは葉巻を吸いながら「ばあさん、ビールあるか?」と魔女に声をかけた。
「あるよ。私の手作りのビールがね。飲むかい?」
「…何が入ってる?」
「聞いたら飲まないだろうから言わない。なあに、人間は入ってないよ」
「…それでいい。くれ」
「あいよぉ」
魔女は上機嫌でどす黒い自称ビールをグラスに注いでカミーユに手渡した。すっかり縮み上がっている双子に、リアーナが魔女を紹介した。
「アーサー、モニカ。こいつはあたしのばあちゃん!職業、魔女だ!ばあちゃん、こいつらは私のお気に入り」
「お、おばあさん?!ってことは、リアーナって…」
「そうだ、あたしには4分の1魔物の血が流れてるのさ。あたしのこと怖くなったか?」
テーブルに肘をつきながらリアーナが言った。いつもの元気いっぱいなリアーナの声に少し緊張が孕んでいる。双子は必死に首を横に振った。
「魔女はこわいけど、リアーナは怖くない!!」
「どんな血が流れてたって、リアーナはリアーナだもん!」
アーサーとモニカの言葉に、リアーナはホッとした表情を浮かべた。カミーユたちも安心した笑みを浮かべている。
「おまえらならそう言ってくれると思ってたぜ!あと、うちのばーちゃんは悪い魔女じゃねえ。それだけは言わせてくれ」
「そうだよ私は悪い魔女じゃないよぉ。かろうじてねえ」
リアーナ、カトリナ、ジルにも黒いビールを手渡しながら、魔女が双子にウィンクした。双子がぶるっと震える。魔女の含みのある言い方に、カミーユはため息をついた。
「ばあさん、面白がってこいつらを怖がらせようとすんな。…あのなお前ら、魔女ってえのは人間に魔物の心が棲みついて生まれるのは知ってるな?」
「うん」
「魔物の心は大きく分けて4つある。哀しみ…お前たちが遭遇した魔女はこれだな、あとは、怒り、喜び、楽しみ。怒りと哀しみの魔女は人間を喰らう奴が多い。喜びは魔物も人間も喰う一番やべえやつだ。そして楽しみの魔女は、変な魔女が多い」
「面白いことのためなら自分の魂魄でさえも犠牲にしてしまうような性質を持っているのォ。簡単に言えば、変人ってことね」
「カトリナぁ、誰が変人だってぇ?」
「リアーナのおばあさんは楽しみの心が集まった魔女だ。そしてバカなことに…」
「バカって言うんじゃないよ」
「愚かなことに、楽しみの心が憑依した先が、聖女だった」
アーサーとモニカはびっくりして魔女を見た。
「もともと聖女だった…魔女…?」
「ああ、そうさあ。あたしの心のモトとなった魔物たちは、当時この国で一番強かった聖女に惨殺されたぁ。あたしの心はこう思った…。どうせ憑くなら強くて面白いやつがいい。おやちょうどいい体が目の前にいるじゃぁないか…。この聖女に憑くのが一番楽しそうだとね。魔物の心が聖女の体を乗っ取ろうと一斉に彼女に襲い掛かった…。そのときの聖女の顔…あははっ…思い出すだけでも楽しくてゾクゾクしちまうよぉ…!」
不気味な笑い声をあげる魔女が怖すぎて、モニカはアーサーにしがみついた。目に涙を浮かべている。魔女は言葉を続けた。
「聖女だった元の体は、魔物の心を三日三晩浄化し続けて抵抗したんだけどねえ。結局数の暴力に勝てなかった。聖女は魔女に落ちぶれたのさァ。だが、魔物の心も聖女の呪いを受けた。人間を喰えない。人間を愛してしまう。人間を守りたいという気持ちが埋め込まれちまったぁ…。結果、私は人間と恋に落ちて子どもを授かったのさぁ」
「で、その子孫があたしってわけだ!!」
リアーナは魔女の肩に手を回して双子にピースをした。魔女も「ウヒヒッ」と言いながら控えめにピースをしている。
「魔物と聖女の血を引いてる…だからリアーナは聖魔法も反魔法も使えるんだね!」
アーサーがそう言うと、ジルが頷いた。
「そういうこと。本当に特殊な体質だ」
「おかげであたしはすっげえ魔法使いになれた!やっほぉーい!」
「特殊な血すぎて心配になるよぉ…。あたしの娘は魔物の血が濃すぎて長生きできなかった。リアーナを産んですぐに死んじまったぁ」
「そうなんだぁ…」
「リアーナのお父さんは人間なんだよね?どこにいるの?」
アーサーは小屋の中を見回した。魔女は「とくの昔に死んじまったよぉ」と答えた。
「婿は最愛の妻を亡くして気がおかしくなっちまった。生まれたばかりのリアーナと置手紙をあたしの小屋に残して、この山の魔物に自ら体を喰わせおった。愚かだねえ…愚かだよぉ…」
リアーナの父親のことを思い出して、魔女の目に涙が浮かんだ。
「婿はいいやつだった…。守ってやりたかったねぇ…」
「魔女さん…」
しんみりした雰囲気に耐え切れず、リアーナがパンと手を叩いて場を切り替えた。
「ま、そーいうわけで、あたしはばーちゃんに育ててもらったんだ!!んで、あたしが15歳くらいのころ、まだ若くてそれなりに男前だったカミーユがばあちゃんを狩りに来た」
「今も男前だろ」
「カミーユ、人間のあたしが魔女と暮らしてるのを見て驚いてたなあ!あたしはばあちゃんを殺さないでくれって必死に頼んだんだ。ほかの冒険者はあたしの話を聞いてくれなかったけど、カミーユだけは聞いてくれた。ばーちゃんと話して、人間を喰わないことを確認して、討伐隊に撤退命令を出してくれた。しかも今後も襲わないって約束してくれたんだ」
「ああ。あのときは本当に助かったねぇ。一歩間違えれば恋に落ちていたよぉ」
フヒヒと笑いながら魔女が上目遣いでカミーユを見つめた。カミーユは必死に目を逸らす。
「やめてくれよばあさん…考えただけでも吐きそうだ」
「おいおいあんた失礼だねぇ。こんなに美しい魔女になんてこと言うんだい」
「あーめんどくせぇー」
「カミーユを気に入ったばあちゃんは、あたしをカミーユに預けることにしたんだ」
「さすがにこの森で一生を終えさせるのは娘にも婿にも申し訳なかったからねぇ。カミーユにだったらあたしの大事なリアーナを預けてもいいと思ったんだ」
「ああ。なんでか魔女に娘を押し付けられた俺は、リアーナをポントワーブへ連れ帰った。結婚したてのシャナに隠し子だと勘違いされてまじ焦ったぜ…。離婚の危機だった」
「おや、そんなことがあったのかい。隠し子って歳でもなかっただろうに」
「あんときのリアーナは小柄だったからな。冷静さを欠いたシャナにはそう見えたんだろう」
「あんときのカミーユは今でも覚えてるぜ!ガチ泣きしながらシャナに縋り付いてた!!シャナァ~~~!冤罪だぁ~~!俺が愛してるのはお前だけだ~~!ってな!ぎゃはははは!!」
「ちょ!おまっ!!」
カミーユは慌ててリアーナの口を塞いだ。顔を真っ赤にしてリアーナにげんこつをくらわす。カトリナとジルは口に手を当ててニヤニヤしながらカミーユを見た。
「あらァ…カミーユったら」
「ガチ泣きしながら縋り付くカミーユ?ふふ。見てみたいな」
「カミーユはシャナが大好きなんだね!!いいことだと思うよ!」
「うん!きっとシャナもカミーユのこと大好きだよ!」
「アーサー、モニカ、ありがとな。だが余計恥ずかしくなるからやめてくれるか」
「えっどうしてえ?」
「カミーユがシャナのこと大好きなことがどうして恥ずかしいことなのぉ?」
「やめろ…そんな純粋な目で俺を追い詰めるな…」
その様子をニヤニヤしながら眺めていた魔女が、双子を指さしてカミーユに尋ねた。
「で、こんなチビちゃんを連れてあたしの小屋に来るなんて、一体どうしたんだい。あたしに喰わせてくれるのかい?」
ニヤァ、と黄ばんだ歯を見せて魔女が笑う。アーサーとモニカの顔が真っ青になった。
「人間喰えねえくせにそんなこと言うんじゃねえよ。いや、こいつらに魔法や剣技を教えたくてな。人がいない場所が必要だったんだ」
「なるほどぉ。確かにこの子どもたちは鍛えたら良い線いきそうだねェ。ポテンシャルはあんたたちよりずっと上だぁ」
「そうだ。だからしばらくいさせてもらうぞ。いいか?」
「もちろんいいよお。ゆっくりいたらええ」
「ありがとう、おばあさま」
カトリナが微笑むと、魔女がうっとりした顔でカトリナの顎に指を添えた。
「んんん…カトリナ、まぁた綺麗になったねえ。はあ、私が人間を喰えたならお前さんを一番に喰っていたよぉ」
「あらおばあさまったら、褒めていただけて嬉しいですわ」
「…あれは、褒めてるの…?」
「ふえ…こわい…」
モニカは恐怖のあまり涙を浮かべていた。カミーユはそんなモニカの肩を叩き、「慣れろ。あいつは口は悪いがまじで良い魔女だから」と安心させた。
リウィン山の麓でカミーユが馬を止める。
「リアーナの家はこの山のてっぺんだ。山ん中には上級魔物がうじゃうじゃいる。ほとんどがBクラス級だ。戦ってちゃあ埒が明かねえから馬で突っ切るぞ。アーサー、俺の馬へ乗れ。モニカはカトリナんとこだ」
「ひえぇぇ…」
双子は自分たちが乗っていた馬から降り、カミーユとカトリナに抱きかかえられて山を登った。走っている馬に魔物たちが襲い掛かってくるが、S級冒険者たちは軽やかに攻撃をかわし先へ進む。頂上へ着いたときも、全員かすり傷ひとつなかった。
魔物が棲んでいる山の頂上にぽつんと立っている小屋。モニカとアーサーに嫌な記憶がよみがえる。不安そうな顔をしていると、リアーナが双子の頭を撫でた。
「お前らが考えてること当ててやろうか?この小屋の中に魔女がいるんじゃねえかって思っただろ」
「うん…」
「魔女、いないよね…?」
モニカはぷるぷる震えながらリアーナを見上げた。リアーナはニカっと笑う。
「いや、いるぜ!」
「えええっ?!」
びっくりして思わずカミーユにしがみついたアーサーに、リアーナは大きな声をあげて笑った。
「安心しろ!この魔女は悪いやつじゃねえ。あとでじっくり説明してやる」
そう言いながらリアーナが小屋のドアを乱暴にノックした。
「ばあちゃーん!帰ったぞぉ」
「ああ?!リアーナかい?!」
「おう!!ただいまあ!」
「あんた!帰ってくるなら先に言っといてよ!準備ってのがあるじゃないか!」
慌ただしくドアが開く。リアーナと同じ黒髪の、気のきつそうな女性が顔を覗かせた。彼女はリアーナの後ろに控えている5人の顔を見てにやりと笑った。
「おやあ、これはこれはリアーナの連れじゃないか。久しいねえ。そしてなんだいこのガキは。…ほう、双子じゃないか。うまそうだ」
「ひぃぃっ」
「アハハハ!!冗談冗談!!さ、中へ入んな」
アーサーとモニカは脚がすくんで動けない。リアーナとカミーユはどかどかと小屋の中へ入って行った。カトリナとジルが双子の背中を撫でて安心させようとするが、断固として入ろうとしない。
「大丈夫よアーサー。中へはいりましょう?」
「モニカ、ほら、おいで」
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「ひぃぃぃん!!」
「殺される!殺されるぅ!!」
「こらこらァ。そんなに暴れないの」
双子がいやいや小屋の中へ入ると、奇妙な匂いが鼻をついた。カミーユたちはダイニングチェアに腰かけくつろいでいる。カミーユは葉巻を吸いながら「ばあさん、ビールあるか?」と魔女に声をかけた。
「あるよ。私の手作りのビールがね。飲むかい?」
「…何が入ってる?」
「聞いたら飲まないだろうから言わない。なあに、人間は入ってないよ」
「…それでいい。くれ」
「あいよぉ」
魔女は上機嫌でどす黒い自称ビールをグラスに注いでカミーユに手渡した。すっかり縮み上がっている双子に、リアーナが魔女を紹介した。
「アーサー、モニカ。こいつはあたしのばあちゃん!職業、魔女だ!ばあちゃん、こいつらは私のお気に入り」
「お、おばあさん?!ってことは、リアーナって…」
「そうだ、あたしには4分の1魔物の血が流れてるのさ。あたしのこと怖くなったか?」
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「魔女はこわいけど、リアーナは怖くない!!」
「どんな血が流れてたって、リアーナはリアーナだもん!」
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「そうだよ私は悪い魔女じゃないよぉ。かろうじてねえ」
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「カトリナぁ、誰が変人だってぇ?」
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「バカって言うんじゃないよ」
「愚かなことに、楽しみの心が憑依した先が、聖女だった」
アーサーとモニカはびっくりして魔女を見た。
「もともと聖女だった…魔女…?」
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不気味な笑い声をあげる魔女が怖すぎて、モニカはアーサーにしがみついた。目に涙を浮かべている。魔女は言葉を続けた。
「聖女だった元の体は、魔物の心を三日三晩浄化し続けて抵抗したんだけどねえ。結局数の暴力に勝てなかった。聖女は魔女に落ちぶれたのさァ。だが、魔物の心も聖女の呪いを受けた。人間を喰えない。人間を愛してしまう。人間を守りたいという気持ちが埋め込まれちまったぁ…。結果、私は人間と恋に落ちて子どもを授かったのさぁ」
「で、その子孫があたしってわけだ!!」
リアーナは魔女の肩に手を回して双子にピースをした。魔女も「ウヒヒッ」と言いながら控えめにピースをしている。
「魔物と聖女の血を引いてる…だからリアーナは聖魔法も反魔法も使えるんだね!」
アーサーがそう言うと、ジルが頷いた。
「そういうこと。本当に特殊な体質だ」
「おかげであたしはすっげえ魔法使いになれた!やっほぉーい!」
「特殊な血すぎて心配になるよぉ…。あたしの娘は魔物の血が濃すぎて長生きできなかった。リアーナを産んですぐに死んじまったぁ」
「そうなんだぁ…」
「リアーナのお父さんは人間なんだよね?どこにいるの?」
アーサーは小屋の中を見回した。魔女は「とくの昔に死んじまったよぉ」と答えた。
「婿は最愛の妻を亡くして気がおかしくなっちまった。生まれたばかりのリアーナと置手紙をあたしの小屋に残して、この山の魔物に自ら体を喰わせおった。愚かだねえ…愚かだよぉ…」
リアーナの父親のことを思い出して、魔女の目に涙が浮かんだ。
「婿はいいやつだった…。守ってやりたかったねぇ…」
「魔女さん…」
しんみりした雰囲気に耐え切れず、リアーナがパンと手を叩いて場を切り替えた。
「ま、そーいうわけで、あたしはばーちゃんに育ててもらったんだ!!んで、あたしが15歳くらいのころ、まだ若くてそれなりに男前だったカミーユがばあちゃんを狩りに来た」
「今も男前だろ」
「カミーユ、人間のあたしが魔女と暮らしてるのを見て驚いてたなあ!あたしはばあちゃんを殺さないでくれって必死に頼んだんだ。ほかの冒険者はあたしの話を聞いてくれなかったけど、カミーユだけは聞いてくれた。ばーちゃんと話して、人間を喰わないことを確認して、討伐隊に撤退命令を出してくれた。しかも今後も襲わないって約束してくれたんだ」
「ああ。あのときは本当に助かったねぇ。一歩間違えれば恋に落ちていたよぉ」
フヒヒと笑いながら魔女が上目遣いでカミーユを見つめた。カミーユは必死に目を逸らす。
「やめてくれよばあさん…考えただけでも吐きそうだ」
「おいおいあんた失礼だねぇ。こんなに美しい魔女になんてこと言うんだい」
「あーめんどくせぇー」
「カミーユを気に入ったばあちゃんは、あたしをカミーユに預けることにしたんだ」
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「ああ。なんでか魔女に娘を押し付けられた俺は、リアーナをポントワーブへ連れ帰った。結婚したてのシャナに隠し子だと勘違いされてまじ焦ったぜ…。離婚の危機だった」
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「あらァ…カミーユったら」
「ガチ泣きしながら縋り付くカミーユ?ふふ。見てみたいな」
「カミーユはシャナが大好きなんだね!!いいことだと思うよ!」
「うん!きっとシャナもカミーユのこと大好きだよ!」
「アーサー、モニカ、ありがとな。だが余計恥ずかしくなるからやめてくれるか」
「えっどうしてえ?」
「カミーユがシャナのこと大好きなことがどうして恥ずかしいことなのぉ?」
「やめろ…そんな純粋な目で俺を追い詰めるな…」
その様子をニヤニヤしながら眺めていた魔女が、双子を指さしてカミーユに尋ねた。
「で、こんなチビちゃんを連れてあたしの小屋に来るなんて、一体どうしたんだい。あたしに喰わせてくれるのかい?」
ニヤァ、と黄ばんだ歯を見せて魔女が笑う。アーサーとモニカの顔が真っ青になった。
「人間喰えねえくせにそんなこと言うんじゃねえよ。いや、こいつらに魔法や剣技を教えたくてな。人がいない場所が必要だったんだ」
「なるほどぉ。確かにこの子どもたちは鍛えたら良い線いきそうだねェ。ポテンシャルはあんたたちよりずっと上だぁ」
「そうだ。だからしばらくいさせてもらうぞ。いいか?」
「もちろんいいよお。ゆっくりいたらええ」
「ありがとう、おばあさま」
カトリナが微笑むと、魔女がうっとりした顔でカトリナの顎に指を添えた。
「んんん…カトリナ、まぁた綺麗になったねえ。はあ、私が人間を喰えたならお前さんを一番に喰っていたよぉ」
「あらおばあさまったら、褒めていただけて嬉しいですわ」
「…あれは、褒めてるの…?」
「ふえ…こわい…」
モニカは恐怖のあまり涙を浮かべていた。カミーユはそんなモニカの肩を叩き、「慣れろ。あいつは口は悪いがまじで良い魔女だから」と安心させた。
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