52 / 718
魔女編:Fクラスクエスト旅
【71話】S級冒険者vs魔女1
しおりを挟む
翌朝、宿でゆっくりとくつろいでからカミーユたちはスィフィシュ町を発った。ウィツ山へ向かっている間も他愛のない会話で盛り上がっている。あの魔女相手にこんな呑気でいいんだろうか、と双子は少し不安になった。
しかしウィツ山の麓に立った瞬間、カミーユたちの雰囲気が一変する。ギラギラとした目つきで山の頂上を見上げた。
「お前ら、魔物はくれぐれも殺すなよ。魔女に養分与えたくねえからな」
「当り前なこと言うんじゃねーよ」
「ジル、今回は私たちを守る必要はないわ。その代わり、アーサーとモニカを頼んだわよォ」
「任せて。この子たちに指一本触れさせない」
馬に乗りながら、カミーユは剣、リアーナは杖、カトリナは弓、ジルは槍を構えた。ジルが先陣を切って山へ駆けのぼる。リアーナはエーテルを飲み干してから彼のあとを追った。カミーユとカトリナは双子を守りながらゆっくりと進んだ。
アーサーとモニカが進む道には、すでに何十体もの魔物が倒れていた。ジルとリアーナによって殺さない程度に傷付けられた魔物は動けずに唸るだけだった。たまに襲い掛かってくる魔物もカミーユとカトリナによって軽々と倒される。頂上へ近づくまでおそらく1000体以上の魔物を倒しているはずなのに、Sクラス冒険者は息もきらさず平然としていた。
「…すごい」
思わずモニカが声を漏らした。自分たちはもちろん、ベニートたちと比べても段違いの強さ。これが世界で5本の指に入るパーティの実力なのだ。
「さて、そろそろだな」
遠目で小屋を確認し、6人は馬を降りた。アーサーとモニカはジルの後ろを歩く。数メートル先を歩いているリアーナが「うぇぇ」と呻いて顔をしかめた。
「いやな気配がぷんぷんするぜ。間違いない、かなり強い魔女だ」
「アーサー、モニカ。絶対僕から離れないで」
「うん…」
「大丈夫よォ。ジルはひょろっこいけど、本当に強いから。安心して」
「お前ら、魔女の呪いに気を付けろよ。あいつに触れられないよう気を付けろ」
「あいよ」
しばらく歩いて小屋に辿り着いた。カミーユは声を出さず口だけを動かす。パーティは小さく頷き作戦に同意した。
カミーユが小屋の前にそろりと立ち、窓から中を覗いた。部屋の中で魔女が鍋をかき混ぜている。しかし。
「おやぁ?またまた来客かい?最近よく来るねえ」
「!!」
いつの間にかカミーユの後ろに魔女が立っていた。あまりの禍々しいオーラに思わず剣を振ってしまう。魔女は軽々と剣を避け余裕の笑みを浮かべている。
(この魔女…まじでつええ…!アーサーとモニカはこんなやつと戦ったのか…!)
「ほぉ。聖魔法武器かい。あたしの殺し方、ちゃあんと分かってるねぇ。…おや、この匂い…」
魔女がぐるりと首を回転させる。視線の先には、ジルの後ろに隠れているモニカとアーサーがいた。
「ひっ」
「おやおやまあまあ!!あたしのかわいいかわいい双子ちゃんじゃないかあ!生きていたんだねえ。嬉しいよぉ」
魔女は双子に再会できて嬉しそうに両手を広げた。呼び起されるトラウマにアーサーは妹の腕にしがみつき、モニカはジルに抱きついた。
「そんなに怖がらなくなっていいじゃないかぁ。んん?そう言えばあんたたち、見覚えがあるねえ。…ああ、坊やの目の記憶で見たんだ。坊やの親代わりの子たちだねぇ」
そう言い、魔女が一瞬にしてカトリナの前に移動した。片手で彼女の頬を掴み目を覗き見る。もう片方の手を胸に置いた。
「!」
「ヒヒヒッ!あんたたちもこの子たちのこと、自分の子どものように可愛がってるんだね!へぇ!親子ごっこかい!かわいらしいことしてるじゃないかぁ」
「カトリナ!」
カミーユが魔女を蹴り飛ばした。魔女は吹き飛び木に叩きつけられる。口から血を垂らしながら、上機嫌で笑った。S級冒険者たちは武器を構えた。
「ごめん、油断したわァ」
「呪いは?」
「…大丈夫よ」
「我慢しなくていいんだよぉ?息がしにくいんだろう?あんたの肺をひとつもらったからねぇ!あんたの肺活量…すざましいねぇ…」
魔女はそう言って手に持っている光を口に入れた。
「うまい…うまいわぁ。鍛錬された一流の体。魔力の次に好きなものさァ」
「カトリナ、下がってろ」
「いえ、いけるわ」
「ウヒヒヒ。気丈だねぇ。もっと悲しんでおくれよ。面白くないじゃないか」
「肺を呪われるのはいつものことよ。魔女たちに大人気なのよねェ。困っちゃうわ」
はぁ、とため息をつきながらカトリナが答えた。
「カトリナ…苦しくないのかな…平気そうに見えるけど」
モニカが心配そうに呟くと、ジルが「苦しいに決まってる」と小さな声で答えた。
「立っているだけでも息苦しいはずだ。本来戦いに参加させたくないけど…カトリナはやる気だな」
しかしウィツ山の麓に立った瞬間、カミーユたちの雰囲気が一変する。ギラギラとした目つきで山の頂上を見上げた。
「お前ら、魔物はくれぐれも殺すなよ。魔女に養分与えたくねえからな」
「当り前なこと言うんじゃねーよ」
「ジル、今回は私たちを守る必要はないわ。その代わり、アーサーとモニカを頼んだわよォ」
「任せて。この子たちに指一本触れさせない」
馬に乗りながら、カミーユは剣、リアーナは杖、カトリナは弓、ジルは槍を構えた。ジルが先陣を切って山へ駆けのぼる。リアーナはエーテルを飲み干してから彼のあとを追った。カミーユとカトリナは双子を守りながらゆっくりと進んだ。
アーサーとモニカが進む道には、すでに何十体もの魔物が倒れていた。ジルとリアーナによって殺さない程度に傷付けられた魔物は動けずに唸るだけだった。たまに襲い掛かってくる魔物もカミーユとカトリナによって軽々と倒される。頂上へ近づくまでおそらく1000体以上の魔物を倒しているはずなのに、Sクラス冒険者は息もきらさず平然としていた。
「…すごい」
思わずモニカが声を漏らした。自分たちはもちろん、ベニートたちと比べても段違いの強さ。これが世界で5本の指に入るパーティの実力なのだ。
「さて、そろそろだな」
遠目で小屋を確認し、6人は馬を降りた。アーサーとモニカはジルの後ろを歩く。数メートル先を歩いているリアーナが「うぇぇ」と呻いて顔をしかめた。
「いやな気配がぷんぷんするぜ。間違いない、かなり強い魔女だ」
「アーサー、モニカ。絶対僕から離れないで」
「うん…」
「大丈夫よォ。ジルはひょろっこいけど、本当に強いから。安心して」
「お前ら、魔女の呪いに気を付けろよ。あいつに触れられないよう気を付けろ」
「あいよ」
しばらく歩いて小屋に辿り着いた。カミーユは声を出さず口だけを動かす。パーティは小さく頷き作戦に同意した。
カミーユが小屋の前にそろりと立ち、窓から中を覗いた。部屋の中で魔女が鍋をかき混ぜている。しかし。
「おやぁ?またまた来客かい?最近よく来るねえ」
「!!」
いつの間にかカミーユの後ろに魔女が立っていた。あまりの禍々しいオーラに思わず剣を振ってしまう。魔女は軽々と剣を避け余裕の笑みを浮かべている。
(この魔女…まじでつええ…!アーサーとモニカはこんなやつと戦ったのか…!)
「ほぉ。聖魔法武器かい。あたしの殺し方、ちゃあんと分かってるねぇ。…おや、この匂い…」
魔女がぐるりと首を回転させる。視線の先には、ジルの後ろに隠れているモニカとアーサーがいた。
「ひっ」
「おやおやまあまあ!!あたしのかわいいかわいい双子ちゃんじゃないかあ!生きていたんだねえ。嬉しいよぉ」
魔女は双子に再会できて嬉しそうに両手を広げた。呼び起されるトラウマにアーサーは妹の腕にしがみつき、モニカはジルに抱きついた。
「そんなに怖がらなくなっていいじゃないかぁ。んん?そう言えばあんたたち、見覚えがあるねえ。…ああ、坊やの目の記憶で見たんだ。坊やの親代わりの子たちだねぇ」
そう言い、魔女が一瞬にしてカトリナの前に移動した。片手で彼女の頬を掴み目を覗き見る。もう片方の手を胸に置いた。
「!」
「ヒヒヒッ!あんたたちもこの子たちのこと、自分の子どものように可愛がってるんだね!へぇ!親子ごっこかい!かわいらしいことしてるじゃないかぁ」
「カトリナ!」
カミーユが魔女を蹴り飛ばした。魔女は吹き飛び木に叩きつけられる。口から血を垂らしながら、上機嫌で笑った。S級冒険者たちは武器を構えた。
「ごめん、油断したわァ」
「呪いは?」
「…大丈夫よ」
「我慢しなくていいんだよぉ?息がしにくいんだろう?あんたの肺をひとつもらったからねぇ!あんたの肺活量…すざましいねぇ…」
魔女はそう言って手に持っている光を口に入れた。
「うまい…うまいわぁ。鍛錬された一流の体。魔力の次に好きなものさァ」
「カトリナ、下がってろ」
「いえ、いけるわ」
「ウヒヒヒ。気丈だねぇ。もっと悲しんでおくれよ。面白くないじゃないか」
「肺を呪われるのはいつものことよ。魔女たちに大人気なのよねェ。困っちゃうわ」
はぁ、とため息をつきながらカトリナが答えた。
「カトリナ…苦しくないのかな…平気そうに見えるけど」
モニカが心配そうに呟くと、ジルが「苦しいに決まってる」と小さな声で答えた。
「立っているだけでも息苦しいはずだ。本来戦いに参加させたくないけど…カトリナはやる気だな」
10
お気に入りに追加
4,342
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。
烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。
その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。
「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。
あなたの思うように過ごしていいのよ」
真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。
その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。