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大切なモノ
54話 連れてきたモノ
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今日も今日とて終電の電車に揺られて帰宅する。体重い。疲れた。今すぐ寝たい。薄雪と綾目に会いたい。
《次はーー……》
最寄り駅がアナウンスされ、私は重い鞄を持ってドアの前に立つ。電車が止まり、ドアが開く。のろのろと下車してボロアパートへ歩いていく。ああ、寒。息が白いや。
玄関のドアの鍵を開けながら、私はひとりでクスっと笑った。家へ帰ることがこんなに楽しみになるなんて。待ってくれてる人たちがいるって、こんなに嬉しいことなんだ。
「ただいまー!」
靴を乱雑に脱ぎ捨てながら大声で叫ぶと、リビングから「あ!帰ってきた!」と言っている綾目の声が聞こえてきた。
「花雫ー!!おかえりー!!」
「おかえりなさい花……」
「ん?どうしたの薄雪」
名前を言う前に黙り込んでしまった薄雪に私は首を傾げた。彼は私を睨みつけている。あれ…私またなんか不機嫌になるようなことしちゃった…?心当たりがない…。
「なんてモノを連れてきているのですか」
「え?」
よく見ると薄雪と目が合わない。薄雪が睨んでるのは私じゃない。視線は私の後ろ…。
「見てはいけません!」
何気なく振り返ってしまった。
私のうしろにいた人と目が合った。中島さまの庭にいた女性。彼女は私を見てニヤァ…と気味の悪い笑みを浮かべた。
「私を見てくれた。私に話しかけてくれた。私の話を聞いてくれた」
「……」
以前話した時と明らかに形相が違う。恐ろしく寒気がする。よく見ると彼女の目は瞳孔が細かった。これはあやかしの…。
「あなたを愛します。骨の髄まで愛します」
「な…に…言ってるの…?」
「だから私だけを見て」
「花雫から離れなさい!」
薄雪が扇子を広げ風を放つ。女性のあやかしは私を盾にして風を避けた。薄雪は舌打ちをして私を奪い返そうと手を伸ばす。その手を掴む前に、私はそれに唇を奪われた。
「ふ…」
あやかしが息を吸う。力が抜けていく。意識が遠のく。寒い。…そして私の視界が真っ暗になった。
《次はーー……》
最寄り駅がアナウンスされ、私は重い鞄を持ってドアの前に立つ。電車が止まり、ドアが開く。のろのろと下車してボロアパートへ歩いていく。ああ、寒。息が白いや。
玄関のドアの鍵を開けながら、私はひとりでクスっと笑った。家へ帰ることがこんなに楽しみになるなんて。待ってくれてる人たちがいるって、こんなに嬉しいことなんだ。
「ただいまー!」
靴を乱雑に脱ぎ捨てながら大声で叫ぶと、リビングから「あ!帰ってきた!」と言っている綾目の声が聞こえてきた。
「花雫ー!!おかえりー!!」
「おかえりなさい花……」
「ん?どうしたの薄雪」
名前を言う前に黙り込んでしまった薄雪に私は首を傾げた。彼は私を睨みつけている。あれ…私またなんか不機嫌になるようなことしちゃった…?心当たりがない…。
「なんてモノを連れてきているのですか」
「え?」
よく見ると薄雪と目が合わない。薄雪が睨んでるのは私じゃない。視線は私の後ろ…。
「見てはいけません!」
何気なく振り返ってしまった。
私のうしろにいた人と目が合った。中島さまの庭にいた女性。彼女は私を見てニヤァ…と気味の悪い笑みを浮かべた。
「私を見てくれた。私に話しかけてくれた。私の話を聞いてくれた」
「……」
以前話した時と明らかに形相が違う。恐ろしく寒気がする。よく見ると彼女の目は瞳孔が細かった。これはあやかしの…。
「あなたを愛します。骨の髄まで愛します」
「な…に…言ってるの…?」
「だから私だけを見て」
「花雫から離れなさい!」
薄雪が扇子を広げ風を放つ。女性のあやかしは私を盾にして風を避けた。薄雪は舌打ちをして私を奪い返そうと手を伸ばす。その手を掴む前に、私はそれに唇を奪われた。
「ふ…」
あやかしが息を吸う。力が抜けていく。意識が遠のく。寒い。…そして私の視界が真っ暗になった。
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