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「お父さま!!!」
「ロイ…!どうしたんだい…ボロボロじゃないか…!その傷…聖魔法?」
気を失ったアーサーを抱きかかえているセルジュの元に、傷だらけで口から血を流しているロイがふらふらと駆け寄った。義父の腕にしがみつき赤子のように泣きじゃくる。
「はい…!モニカが聖魔法を…。それに、毒まで…」
「そうか…。おかしいな、ミモレスは聖なる力は受け継がせないと言っていたのに。…ロイ、私のアイテムボックスを持ってきておくれ。薬を飲ませてあげる」
「はい…」
アイテムボックスを受け取ったセルジュは、解毒薬と増血薬をロイに飲ませた。だが、聖魔法を全身に受けたロイを治す術はない。彼はあと数分で灰になるだろう。セルジュはアーサーを隣に寝かせロイを抱きかかえた。顔や腕が、すでに砕けかけている。
「ロイ。君も気付いているんだろう?君はもうすぐ灰になってしまう」
「お父さまと離れ離れになるのはいやだ…」
「私もだよロイ…」
ロイはセルジュにぎゅっと抱きつき、嗚咽を漏らしながら「ごめんなさい」を繰り返した。
「お父さま…!僕は自分が死ぬことが怖くなって…モニカと王女を前に逃げ出してしまいました…。ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「なぜロイが謝るんだい?謝らなければいけないのは私のほうだ。私がモニカが欲しいなんて言ったから君がこんな目に…!すまない…ロイ、すまない…!もういい…!モニカも王女もいらない…!だからロイ…!死なないでくれ…死なないでくれロイ…」
「お父さまは悪くない…僕がうまくできなかったから…」
「ああ…!私に回復魔法が使えたら…!君を治せるかもしれないのに…!人間の時の私は回復魔法が使えたのに…!くそっ…!!忌々しい吸血鬼になんてなってしまったから私はロイを助けられない…!!私はまた愛する人を失わなければいけないのか…?!」
「お父さま、落ち着いてください。…最期に僕の話を聞いてもらえませんか…?」
ロイがセルジュの涙で濡れた頬をそっと両手で包んだ。その手はもう、灰色になり朽ち始めている。セルジュは唇を震わせながらロイの目を見た。
「まず…3年間もお父さまを拒絶してすみませんでした…。それが僕の一番の後悔です…。僕は…あなたともっとずっと…一緒にいたい…」
「……」
「それと…あなたが救ってくれたこの命を…早く捨てたいと言ったことも…ごめんなさい。今…は、死にたくないと…思ってる…。ああ…お父さま…死にたくない…」
「ロイ…すまない、君を守れなかった…っ」
「最期にお願いを…。お父さま…せめて…僕が死んだら…僕の魂魄をその身に移してください…」
「ロイ…」
「お父さま…僕を助けてくれて…あり…が…とう…」
「っ…」
「お父さまと…過ごした…100年間…とても、しあわせでした…」
その言葉を最後にロイは灰となって消えた。セルジュ先生はロイの着ていた服を抱きしめ、彼の魂魄を口に入れた。嗚咽を漏らし涙を流しながら、かつてミモレスが死者を弔うときに手向けとして歌っていた歌をロイに贈った。
「ロイ…君がいなければ私はここまで生きてこられなかった。私を必要としてくれて…私に生きがいを与えてくれて…ありがとう…。どうか、次生まれ変わるときは人間のまま、幸せに…」
「ロイ…!どうしたんだい…ボロボロじゃないか…!その傷…聖魔法?」
気を失ったアーサーを抱きかかえているセルジュの元に、傷だらけで口から血を流しているロイがふらふらと駆け寄った。義父の腕にしがみつき赤子のように泣きじゃくる。
「はい…!モニカが聖魔法を…。それに、毒まで…」
「そうか…。おかしいな、ミモレスは聖なる力は受け継がせないと言っていたのに。…ロイ、私のアイテムボックスを持ってきておくれ。薬を飲ませてあげる」
「はい…」
アイテムボックスを受け取ったセルジュは、解毒薬と増血薬をロイに飲ませた。だが、聖魔法を全身に受けたロイを治す術はない。彼はあと数分で灰になるだろう。セルジュはアーサーを隣に寝かせロイを抱きかかえた。顔や腕が、すでに砕けかけている。
「ロイ。君も気付いているんだろう?君はもうすぐ灰になってしまう」
「お父さまと離れ離れになるのはいやだ…」
「私もだよロイ…」
ロイはセルジュにぎゅっと抱きつき、嗚咽を漏らしながら「ごめんなさい」を繰り返した。
「お父さま…!僕は自分が死ぬことが怖くなって…モニカと王女を前に逃げ出してしまいました…。ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「なぜロイが謝るんだい?謝らなければいけないのは私のほうだ。私がモニカが欲しいなんて言ったから君がこんな目に…!すまない…ロイ、すまない…!もういい…!モニカも王女もいらない…!だからロイ…!死なないでくれ…死なないでくれロイ…」
「お父さまは悪くない…僕がうまくできなかったから…」
「ああ…!私に回復魔法が使えたら…!君を治せるかもしれないのに…!人間の時の私は回復魔法が使えたのに…!くそっ…!!忌々しい吸血鬼になんてなってしまったから私はロイを助けられない…!!私はまた愛する人を失わなければいけないのか…?!」
「お父さま、落ち着いてください。…最期に僕の話を聞いてもらえませんか…?」
ロイがセルジュの涙で濡れた頬をそっと両手で包んだ。その手はもう、灰色になり朽ち始めている。セルジュは唇を震わせながらロイの目を見た。
「まず…3年間もお父さまを拒絶してすみませんでした…。それが僕の一番の後悔です…。僕は…あなたともっとずっと…一緒にいたい…」
「……」
「それと…あなたが救ってくれたこの命を…早く捨てたいと言ったことも…ごめんなさい。今…は、死にたくないと…思ってる…。ああ…お父さま…死にたくない…」
「ロイ…すまない、君を守れなかった…っ」
「最期にお願いを…。お父さま…せめて…僕が死んだら…僕の魂魄をその身に移してください…」
「ロイ…」
「お父さま…僕を助けてくれて…あり…が…とう…」
「っ…」
「お父さまと…過ごした…100年間…とても、しあわせでした…」
その言葉を最後にロイは灰となって消えた。セルジュ先生はロイの着ていた服を抱きしめ、彼の魂魄を口に入れた。嗚咽を漏らし涙を流しながら、かつてミモレスが死者を弔うときに手向けとして歌っていた歌をロイに贈った。
「ロイ…君がいなければ私はここまで生きてこられなかった。私を必要としてくれて…私に生きがいを与えてくれて…ありがとう…。どうか、次生まれ変わるときは人間のまま、幸せに…」
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