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「やめろっ…!やめろぉぉぉっ!!死ねっ!死んでしまえっ!!」
「私が死んだらちゃんと毎日血を飲んでくれるかい?」
「誰が飲むもんか!!」
セルジュはその日もロイに無理矢理血を飲ませていた。3か月に1度だけ、セルジュとロイが言葉を交わす日。2年半も罵られ続けられたセルジュは、もはや何を言われていてもロイと言葉を交わせるだけで幸せを感じるようになっていた。
「ああ…可哀そうなロイ。人間になりたくてもなれないロイ。もう諦めたらどうだい?君は人の血なしでは生きられない生き物なのだと」
「いやだっ…!そんなの認めるくらいなら…死んだ方がましだ…!」
「っ…」
ロイの言葉にセルジュの手が止まった。その隙にロイは口に注がれた血をすべて吐き出す。
「血を飲んで生きるより、血を飲まずに死にたい。僕はもう100年も生きた…生かされたんだ、お前に」
「……」
「僕はもう…死にたいんだ」
「ロイ…」
セルジュの目から涙がこぼれた。
「私は…死にたいと思っている君に…無理矢理血を飲ませていたのか?」
「そうだよ…っ。3年前から…僕はそう思ってた…。僕にとって…人間の血を飲んで吸血鬼として生きることは…死ぬよりも辛いことだった。そんな地獄みたいな毎日を…お前は…お前は…っ!!」
「……」
「3年ここで過ごして分かったよ…。やっぱり人間は優しいものだ。一緒にいると安らぐ。とても幸せな気持ちになる。お前が僕に言い聞かせてたことなんて全てデタラメだったって実感したよ。ずっと甘やかすふりをして…僕を支配していたんだ、お前は。…学院に連れてきたのは失敗だったね。僕のこと人形だとでも思ってたの?ここに来てもお前のことを妄信的に信じるとでも思ってた?…僕はそこまでばかじゃない。僕にだって頭はあるんだ。どこまでも僕をばかにして…っ!」
「人形?そんな風に思っているわけない…」
「うるさい!!その優しい声に僕は100年間騙されてきたんだ!!もう喋るな!僕にお前の声を聞かせるな!」
「っ…」
「もうこれ以上僕に血を飲ませるな。僕は…最期くらい人間として過ごしたい。そしてこの最悪だった人生を早く終わらせたい。しあわせだったと思っていたあの日々も、今となっては最悪な日々だ。あんな城に閉じ込めて…罪ない人間を何人も殺して…!お前しか話し相手がいない、あんな退屈な生活っ…!」
「……」
「お前もさっさと死んでしまえ!王族の血に囚われた、人殺しの吸血鬼め!」
セルジュを突き飛ばし、ロイが食事室から出て行った。床に倒れこんだセルジュは呆然と涙を流し続けた。
「人間でありたいと願うロイに血を飲ませ…死にたいと思っている彼の命を無理矢理繋いでいた…。わ…私はなんてことをしていたんだ…。私にロイが必要だったから…私がロイに生きてほしいからという理由で…私はロイに死ぬよりも辛いことをさせていたのか…。ロイ…すまない…すまない…。もう私は君の邪魔をしない…君を…失う覚悟をしよう…だから…最期はどうか…人間の友人と幸せにすごしてくれ…。ロイ…すまない…」
その日から、セルジュがロイの前に現れることはなくなった。吸血から解放されたロイは、ひどくやつれても、何度倒れても、グレンダやマーサと幸せそうに過ごしていた。あたたかい友人に囲まれ人間として過ごす毎日は、ロイにとってかけがえのない大切な時間だった。…9か月後の、あの日までは。
「私が死んだらちゃんと毎日血を飲んでくれるかい?」
「誰が飲むもんか!!」
セルジュはその日もロイに無理矢理血を飲ませていた。3か月に1度だけ、セルジュとロイが言葉を交わす日。2年半も罵られ続けられたセルジュは、もはや何を言われていてもロイと言葉を交わせるだけで幸せを感じるようになっていた。
「ああ…可哀そうなロイ。人間になりたくてもなれないロイ。もう諦めたらどうだい?君は人の血なしでは生きられない生き物なのだと」
「いやだっ…!そんなの認めるくらいなら…死んだ方がましだ…!」
「っ…」
ロイの言葉にセルジュの手が止まった。その隙にロイは口に注がれた血をすべて吐き出す。
「血を飲んで生きるより、血を飲まずに死にたい。僕はもう100年も生きた…生かされたんだ、お前に」
「……」
「僕はもう…死にたいんだ」
「ロイ…」
セルジュの目から涙がこぼれた。
「私は…死にたいと思っている君に…無理矢理血を飲ませていたのか?」
「そうだよ…っ。3年前から…僕はそう思ってた…。僕にとって…人間の血を飲んで吸血鬼として生きることは…死ぬよりも辛いことだった。そんな地獄みたいな毎日を…お前は…お前は…っ!!」
「……」
「3年ここで過ごして分かったよ…。やっぱり人間は優しいものだ。一緒にいると安らぐ。とても幸せな気持ちになる。お前が僕に言い聞かせてたことなんて全てデタラメだったって実感したよ。ずっと甘やかすふりをして…僕を支配していたんだ、お前は。…学院に連れてきたのは失敗だったね。僕のこと人形だとでも思ってたの?ここに来てもお前のことを妄信的に信じるとでも思ってた?…僕はそこまでばかじゃない。僕にだって頭はあるんだ。どこまでも僕をばかにして…っ!」
「人形?そんな風に思っているわけない…」
「うるさい!!その優しい声に僕は100年間騙されてきたんだ!!もう喋るな!僕にお前の声を聞かせるな!」
「っ…」
「もうこれ以上僕に血を飲ませるな。僕は…最期くらい人間として過ごしたい。そしてこの最悪だった人生を早く終わらせたい。しあわせだったと思っていたあの日々も、今となっては最悪な日々だ。あんな城に閉じ込めて…罪ない人間を何人も殺して…!お前しか話し相手がいない、あんな退屈な生活っ…!」
「……」
「お前もさっさと死んでしまえ!王族の血に囚われた、人殺しの吸血鬼め!」
セルジュを突き飛ばし、ロイが食事室から出て行った。床に倒れこんだセルジュは呆然と涙を流し続けた。
「人間でありたいと願うロイに血を飲ませ…死にたいと思っている彼の命を無理矢理繋いでいた…。わ…私はなんてことをしていたんだ…。私にロイが必要だったから…私がロイに生きてほしいからという理由で…私はロイに死ぬよりも辛いことをさせていたのか…。ロイ…すまない…すまない…。もう私は君の邪魔をしない…君を…失う覚悟をしよう…だから…最期はどうか…人間の友人と幸せにすごしてくれ…。ロイ…すまない…」
その日から、セルジュがロイの前に現れることはなくなった。吸血から解放されたロイは、ひどくやつれても、何度倒れても、グレンダやマーサと幸せそうに過ごしていた。あたたかい友人に囲まれ人間として過ごす毎日は、ロイにとってかけがえのない大切な時間だった。…9か月後の、あの日までは。
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