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13 オヴェルニー学院編
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ロイが完全な吸血鬼となり容態が落ち着いてから、セルジュは彼に体術と魔法を教えた。自分が人間だった頃に使っていた杖を与えると、贈り物をもらったことがなかったロイはそれはもう喜んだ。
セルジュがロイと出会ってから100年が経った頃には、セルジュの城に所蔵されていた数千冊の書物を諳んじることができるようになってしまうほど何度も読み、書物に書かれている魔法もすべて習得してしまった。
城の敷地から出てはいけないとセルジュに強く言われていたロイは退屈で退屈で仕方がない毎日を送るようになっていた。
干からびた死体を枕にして床に寝転びながら読書をしていたロイは、不機嫌そうに本を閉じて起き上がった。セルジュが仕事をしている部屋のドアをノックする。
「お父さま」
「ん?ロイかい?入っておいで」
ロイがドアを開けると、セルジュが眼鏡越しに彼を見て微かに微笑んだ。
セルジュの仕事場には数えられない数の小瓶が棚に並んでいる。右側の棚は吸血用の血液、左側の棚は診療する血液が入った瓶が置かれていた。作業机には一本の血液瓶と薬素材、調合器具があり、セルジュがちょうど薬を作っている最中だったことが分かる。セルジュは手に持っていた乳棒を机に置いて手招きした。ロイはセルジュの膝の上に飛び乗り義父に抱きついた。
「どうしたんだいロイ?」
「……」
「?」
黙り込んだロイの顔をセルジュがのぞき込む。ムスッとして唇をとがらせていた。100年経ってもまだまだ子どものままだなと思いセルジュが愛おしそうに目じりを下げた。
「ロイ、何かいやなことでもあったのかい?」
「いいえ。何もありません」
「だったらどうしてそんなに不機嫌な顔をしているのかな?」
「…何もないからです」
「……ここは退屈かい?」
義父の問いかけにロイはこくんと頷いた。セルジュは「そうか」と呟き考え込んだ。不満を言って愛想をつかされたと思ったロイが慌ててセルジュの服を掴んで懇願した。
「ご、ごめんなさい!!僕、こんなこと言うつもりじゃ…。ごめんなさいお父さま…!僕を捨てないで…!」
「何を言っているんだいロイ。私は君を手放すつもりなんて毛頭ないよ。…いやね、ちょうど私も困っていたところなんだ。今のままでは新しい王族の血の味を確かめることができないから」
セルジュは爵位を手に入れてから今まで、一人残らず王族の血を手に入れていた。ミモレスの口利きにより王族は200年間フィール家に薬調合を依頼していたのだ。
セルジュが城に出向くのではなく、王族の血をフィール家に送らせそれに合わせて薬を調合して使者に渡していた。質が良く、その人の体質によって細かく調整された薬の効果は文句の言いようがなかったため200年間愛用されていたのだが、現王妃が王族の血を部外者に渡すことを嫌がった。王妃を溺愛している国王は彼女に言われるがまま、長年付き合ってきたフィール家と縁を切った。この代から王族の血を手に入れる術を失ってしまいセルジュは途方に暮れていた。
現国王には5人の子がいた。第一子と第二子は5年前に亡くなったので、現在は2人の王子と1人の王女がいることになる。セルジュは彼らの血をどのようにして手に入れようかここ数年ずっと思案していたのだった。今の生活にうんざりしているロイを見てセルジュは決心した。
「分かったよロイ。私にいい考えがあるんだ」
「いい考え?」
「そう。君はこの退屈な生活から抜け出せて、私は王族の血を探せる場所がある。…半年だけ時間をくれないかい?準備をしなきゃいけないから」
「もちろん待ちますけど…お父さま、どこへ行くおつもりなんですか?」
「この国の貴族の子どもたちが集まる場所。オヴェルニー学院だ。君はそこで友人を作っていろんな勉強をできるよ。それに…いざとなればアパンの調達もできるしね」
「オヴェルニー学院?!わあ、行ってみたいです!」
顔を輝かせて喜ぶロイにセルジュはホッとした。こんなにわくわくした顔はここ数十年見ていなかった。
「そうと決まれば早速行動に移さないといけないな」
オヴェルニー学院。それはオーヴェルニュ侯爵が理事長を務めている貴族の子たちのための学院。高等教育を受けられる唯一の教育機関だ。教養を身に付けたり貴族の繋がりを広げたりすることを目的として、王子や王女も5年間学院で生活する習わしがある。
(第三子のヴィクス王子は、王妃の寵愛を受けすぎて学院にすら通わせてもらえていないと聞く。残念だが…彼の血は城に乗り込みでもしない限り手に入れられないだろうな。だが、王女は2年後、王子は4年後に入学するだろう。彼らの血を手に入れるのなら学院に行くほかない。…ロイをどうしようかと悩んで踏み出せなかったが、話してみると意外とあっさり決まったな)
その日のうちにセルジュはオヴェルニー学院を訪れた。フィール家が医学に精通していることは誰もが知っていることなので、医務室の先生をしたいと申し出ると校長は喜んで受け入れた。また、息子を生徒として通わせたいと相談すると、それも快諾してもらえた。
「いやぁ、まさかかの有名なフィール侯爵が医務室の先生を申し出てくださるとは…!しかし本当によろしいので?侯爵様としての職務がおありなのでは…」
「うちにはもう一人倅がいるのでね。侯爵としての仕事は彼に任せて私は隠居することにしますよ」
「そうですかそうですか!ならば安心ですねえ」
「校長、お願いがあるのですが。生徒たちの混乱を避けるために、私が侯爵だということは秘密にしていただけませんか?あと、ロイが私の息子であるということも」
「よろしいですよ。…フィール家のご子息となれば、寮はもちろんリリー寮ですなぁ。彼を迎え入れる準備をしときますね」
「ええ。よろしくお願いいたします」
予想より順調に準備が進み、次年度からオヴェルニー学院での生活が始まった。入学するまでにセルジュはロイに瞳孔を常時開く訓練をさせ、吸血鬼だとバレないよう人間らしい振る舞いを教え込んだ。ロイの魔力や知識は人間にしては高すぎるので、授業では手加減をして能力をひけらかさないようしつこく言い聞かせた。また、セルジュとロイが親子ということも隠す必要があるため、学院では他人のふりをするように言った(それに関してはロイはとても不服そうだった)。
100年前までセルジュはオーヴェルニュ侯爵と仲が良かった。一度オーヴェルニュ侯爵がセルジュに、当時建設中だった学院の見取り図を見せてくれたことがあった。それにより複数の隠し部屋があることを知っていたセルジュは
、そのひとつに連れてきた10人のアパンを閉じ込めて吸血鬼の食事部屋とした(入学時、引っ越し道具と称してセルジュは大きな荷台を積んだ馬車と一緒に学院へ入った。その荷台の中にアパンを潜ませ、疑われることなくアパンを学院内に連れ込むことができた)。ロイがセルジュに思いっきり甘えられるのは、この食事部屋でだけだった。
セルジュがロイと出会ってから100年が経った頃には、セルジュの城に所蔵されていた数千冊の書物を諳んじることができるようになってしまうほど何度も読み、書物に書かれている魔法もすべて習得してしまった。
城の敷地から出てはいけないとセルジュに強く言われていたロイは退屈で退屈で仕方がない毎日を送るようになっていた。
干からびた死体を枕にして床に寝転びながら読書をしていたロイは、不機嫌そうに本を閉じて起き上がった。セルジュが仕事をしている部屋のドアをノックする。
「お父さま」
「ん?ロイかい?入っておいで」
ロイがドアを開けると、セルジュが眼鏡越しに彼を見て微かに微笑んだ。
セルジュの仕事場には数えられない数の小瓶が棚に並んでいる。右側の棚は吸血用の血液、左側の棚は診療する血液が入った瓶が置かれていた。作業机には一本の血液瓶と薬素材、調合器具があり、セルジュがちょうど薬を作っている最中だったことが分かる。セルジュは手に持っていた乳棒を机に置いて手招きした。ロイはセルジュの膝の上に飛び乗り義父に抱きついた。
「どうしたんだいロイ?」
「……」
「?」
黙り込んだロイの顔をセルジュがのぞき込む。ムスッとして唇をとがらせていた。100年経ってもまだまだ子どものままだなと思いセルジュが愛おしそうに目じりを下げた。
「ロイ、何かいやなことでもあったのかい?」
「いいえ。何もありません」
「だったらどうしてそんなに不機嫌な顔をしているのかな?」
「…何もないからです」
「……ここは退屈かい?」
義父の問いかけにロイはこくんと頷いた。セルジュは「そうか」と呟き考え込んだ。不満を言って愛想をつかされたと思ったロイが慌ててセルジュの服を掴んで懇願した。
「ご、ごめんなさい!!僕、こんなこと言うつもりじゃ…。ごめんなさいお父さま…!僕を捨てないで…!」
「何を言っているんだいロイ。私は君を手放すつもりなんて毛頭ないよ。…いやね、ちょうど私も困っていたところなんだ。今のままでは新しい王族の血の味を確かめることができないから」
セルジュは爵位を手に入れてから今まで、一人残らず王族の血を手に入れていた。ミモレスの口利きにより王族は200年間フィール家に薬調合を依頼していたのだ。
セルジュが城に出向くのではなく、王族の血をフィール家に送らせそれに合わせて薬を調合して使者に渡していた。質が良く、その人の体質によって細かく調整された薬の効果は文句の言いようがなかったため200年間愛用されていたのだが、現王妃が王族の血を部外者に渡すことを嫌がった。王妃を溺愛している国王は彼女に言われるがまま、長年付き合ってきたフィール家と縁を切った。この代から王族の血を手に入れる術を失ってしまいセルジュは途方に暮れていた。
現国王には5人の子がいた。第一子と第二子は5年前に亡くなったので、現在は2人の王子と1人の王女がいることになる。セルジュは彼らの血をどのようにして手に入れようかここ数年ずっと思案していたのだった。今の生活にうんざりしているロイを見てセルジュは決心した。
「分かったよロイ。私にいい考えがあるんだ」
「いい考え?」
「そう。君はこの退屈な生活から抜け出せて、私は王族の血を探せる場所がある。…半年だけ時間をくれないかい?準備をしなきゃいけないから」
「もちろん待ちますけど…お父さま、どこへ行くおつもりなんですか?」
「この国の貴族の子どもたちが集まる場所。オヴェルニー学院だ。君はそこで友人を作っていろんな勉強をできるよ。それに…いざとなればアパンの調達もできるしね」
「オヴェルニー学院?!わあ、行ってみたいです!」
顔を輝かせて喜ぶロイにセルジュはホッとした。こんなにわくわくした顔はここ数十年見ていなかった。
「そうと決まれば早速行動に移さないといけないな」
オヴェルニー学院。それはオーヴェルニュ侯爵が理事長を務めている貴族の子たちのための学院。高等教育を受けられる唯一の教育機関だ。教養を身に付けたり貴族の繋がりを広げたりすることを目的として、王子や王女も5年間学院で生活する習わしがある。
(第三子のヴィクス王子は、王妃の寵愛を受けすぎて学院にすら通わせてもらえていないと聞く。残念だが…彼の血は城に乗り込みでもしない限り手に入れられないだろうな。だが、王女は2年後、王子は4年後に入学するだろう。彼らの血を手に入れるのなら学院に行くほかない。…ロイをどうしようかと悩んで踏み出せなかったが、話してみると意外とあっさり決まったな)
その日のうちにセルジュはオヴェルニー学院を訪れた。フィール家が医学に精通していることは誰もが知っていることなので、医務室の先生をしたいと申し出ると校長は喜んで受け入れた。また、息子を生徒として通わせたいと相談すると、それも快諾してもらえた。
「いやぁ、まさかかの有名なフィール侯爵が医務室の先生を申し出てくださるとは…!しかし本当によろしいので?侯爵様としての職務がおありなのでは…」
「うちにはもう一人倅がいるのでね。侯爵としての仕事は彼に任せて私は隠居することにしますよ」
「そうですかそうですか!ならば安心ですねえ」
「校長、お願いがあるのですが。生徒たちの混乱を避けるために、私が侯爵だということは秘密にしていただけませんか?あと、ロイが私の息子であるということも」
「よろしいですよ。…フィール家のご子息となれば、寮はもちろんリリー寮ですなぁ。彼を迎え入れる準備をしときますね」
「ええ。よろしくお願いいたします」
予想より順調に準備が進み、次年度からオヴェルニー学院での生活が始まった。入学するまでにセルジュはロイに瞳孔を常時開く訓練をさせ、吸血鬼だとバレないよう人間らしい振る舞いを教え込んだ。ロイの魔力や知識は人間にしては高すぎるので、授業では手加減をして能力をひけらかさないようしつこく言い聞かせた。また、セルジュとロイが親子ということも隠す必要があるため、学院では他人のふりをするように言った(それに関してはロイはとても不服そうだった)。
100年前までセルジュはオーヴェルニュ侯爵と仲が良かった。一度オーヴェルニュ侯爵がセルジュに、当時建設中だった学院の見取り図を見せてくれたことがあった。それにより複数の隠し部屋があることを知っていたセルジュは
、そのひとつに連れてきた10人のアパンを閉じ込めて吸血鬼の食事部屋とした(入学時、引っ越し道具と称してセルジュは大きな荷台を積んだ馬車と一緒に学院へ入った。その荷台の中にアパンを潜ませ、疑われることなくアパンを学院内に連れ込むことができた)。ロイがセルジュに思いっきり甘えられるのは、この食事部屋でだけだった。
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