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第1章
狂恋の果て
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スヴェートとジェニファーは開けられた部屋で口枷と拘束具をつけられたフェルナをみて狼狽した。ジェニファーに至っては怒りが最高潮に達していた。今まで培ってきた教養と忍耐力がなければ憤慨して帰っていただろう。それでは元も子もない。スヴェートは恐る恐る問うた。
「まさかとは思うけれど、殺してはいないわよね?」
「はい。明後日には異国の大商人に娼婦として売るつもりですもの。」
「そう。なら明日また二人で来るから話が聞ける状態にはしといて頂戴。今日はもう遅いし、彼女も眠っているように見えるから面白くないわ。」
そう言って公爵令嬢二人はラードナー伯爵邸を後にした。すぐさまガルシア公爵家に向かう。慌ただしい公爵家を見つめながら応接間でフレデリックを待った。
「おかえり。心配していたよ。収穫はあった?」
「えぇ、見込みは当たっていたわ。」
そう言って、二人は今日のことをフレデリックに説明した。物腰は柔らかな方のフレデリックもさすがに怒りに満ち溢れているようだった。最早カローリア大公爵を侮蔑しているのと同義だと彼は述べた。すぐに馬車を手配してフレデリックは王宮へ向かった。
到着してすぐにレイモンドに取り次いでもらった。待機していると、レイモンドに続いてウィリアムも入室してきた。ウィリアムにも大きく関わっていることだからとレイモンドは告げ、断れるはずもなくフレデリックは報告を開始した。
「彼女、フェルナ子爵令嬢の安否と居場所が確認できました。ラードナー伯爵邸の別館にて監禁されているようです。眠らされていたりはするものの、命には特に別状はありません。無事です。」
ほっと安堵した様子のウィリアムをみてフレデリックは続けた。
「今回、ガルブレイス公爵令嬢とゴールディング公爵令嬢がラードナー伯爵邸を訪ねた際に発見することができました。彼女たちは女性であり、助け出そうと何かをすると逆に彼女の身に危険が降りかかると判断したため、命を奪うようなことがないと確認をして私に報告してくださいました。急がないと、明後日には彼女を売るという旨の供述もあったそうです。」
それを聞いて、レイモンドとウィリアムは顔を合わせ、父である国王に会いに行くことを確認しあった。フレデリックに待機を命じて、寝室に向かった。ここは国王の家族のみ入れる場所だ。
「父上、母上。レイモンドとウィリアムです。入室してもよろしいでしょうか。」
ガチャリと向こう側からドアを開けられそこには王妃が立っていた。どうしたのか尋ねられ、経緯を説明する。
「どうか王命を貸してください、父上。そしてラードナー伯爵家にこれは国への謀反であると示したいのです。」
ウィリアムは必死に説得した。しばらく黙って聞いていた国王は父親としての顔を見せた。
「それは、彼女が夜の髪を持っているからか?」
「いえ、違います。私の大切な想い人だからです。」
ウィリアムの瞳はまっすぐ父親を見据えていた。その答えに納得した父親は王として相応しい身なりを整え、政務室へと向かい王命としてラードナー伯爵邸への立ち入り許可書を書いた。それをウィリアムに渡し、背中をバンっと叩いて送り出した。しっかりしろと言う父としての言葉を込めて。
次の日、スヴェートとジェニファーはラードナー伯爵邸を訪ねた。今邸の周りには隠れた兵でいっぱいだ。王命により国の中でも精鋭の部隊が送り込まれている。安否を確認したのち、高らかとどちらかが指笛を吹けば突入である。二人を昨日と同じように案内したベアトリスは終始笑顔でこう告げた。
「言いつけ通り、ちゃんと起きた状態で彼女を待機させてます。どうぞ。」
そう言って入室を促した。
「…スヴェート様、ジェニー様…」
虚ろになった目、涙の跡、全てを諦めているような彼女をみて辛くなってしまったジェニファーは思わず大丈夫かと口にしてしまっていた。
「たしかに、少しやつれてしまって売値が下がってしまいそうです。」
ベアトリスが悲しそうに述べた。最早フェルナのことは商品としてしか扱っていないと暗に言っている。みかねたスヴェートは指笛を鳴らした。透き通った気高い音が邸中に響き渡った。
「何をしていらっしゃるのですか?スヴェート様?」
笑顔を貼り付けたベアトリスはスヴェートに迫った。スヴェートとジェニファーは無言を貫いている。
ドンっと壁が開けられ、バタバタと兵士が入ってきた。その中にはウィリアムもいる。
「ウィリアム様!?」
ベアトリスは驚き、かつ恋い焦がれた目でウィリアムを見つめた。動くなと制されたためアルナは警戒しながら兵たちを睨んでいた。ウィリアムが合図をするとベアトリスとアルナは拘束された。
「そんなにあの髪が、能力が大切なのですか?…私があの忌々しい能力を持っていたら貴方と結ばれていたのですか?」
ボロボロと涙を溢れさせてベアトリスはフェルナを睨んだ。
私はスヴェート様とジェニー様を見た瞬間、絶望感に襲われた。しかしその絶望は間違いで、結果として2人は私を助けてくれた。リアム様もいらっしゃっる。みんな私を助けるために来てくれた。先程の彼女の問いに対しての返事に私は注目する。
「違う。私は彼女自身が大切だから来た。能力のみを見ていたならここには来ていない。」
「どうして、あいつなの?なんでよ!!」
涙とともに冷静さも垂れ流しているようだ。泣きながら私を睨みつけて、彼女は大きく息を吸い込んだ。
「…テレーム!テレーム!!」
使えるはずのない呪文を彼女は必死に唱える。耳障りな笑い声とともに私を見て彼女は憎しみを訴える。兵士に連れられて彼女は退出した。
私の方へリアム様がかけてきた。
「大丈夫か?怪我は?」
「大丈夫です。ありがとうございます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
リアム様は私を抱きしめて、髪を撫でてくれた。
「迷惑なんかじゃない。本当に心配だったんだ。心の底からだよ。ルナともう会えないと思ったら胸が張り裂けそうだった。」
そう言ってリアム様は私を強く抱きしめた。彼の鼓動が伝わってくる。私の心拍数は上昇し、顔も熱くなってきたような気がした。
私はそのあと保護されて、自分の家に戻った。母は涙ながらに無事を喜んでくれて、父と兄はリアム様に感謝を述べていた。ケイトも泣いていた。私は1日ゆっくり療養し、次の日は雨だった。
「まさかとは思うけれど、殺してはいないわよね?」
「はい。明後日には異国の大商人に娼婦として売るつもりですもの。」
「そう。なら明日また二人で来るから話が聞ける状態にはしといて頂戴。今日はもう遅いし、彼女も眠っているように見えるから面白くないわ。」
そう言って公爵令嬢二人はラードナー伯爵邸を後にした。すぐさまガルシア公爵家に向かう。慌ただしい公爵家を見つめながら応接間でフレデリックを待った。
「おかえり。心配していたよ。収穫はあった?」
「えぇ、見込みは当たっていたわ。」
そう言って、二人は今日のことをフレデリックに説明した。物腰は柔らかな方のフレデリックもさすがに怒りに満ち溢れているようだった。最早カローリア大公爵を侮蔑しているのと同義だと彼は述べた。すぐに馬車を手配してフレデリックは王宮へ向かった。
到着してすぐにレイモンドに取り次いでもらった。待機していると、レイモンドに続いてウィリアムも入室してきた。ウィリアムにも大きく関わっていることだからとレイモンドは告げ、断れるはずもなくフレデリックは報告を開始した。
「彼女、フェルナ子爵令嬢の安否と居場所が確認できました。ラードナー伯爵邸の別館にて監禁されているようです。眠らされていたりはするものの、命には特に別状はありません。無事です。」
ほっと安堵した様子のウィリアムをみてフレデリックは続けた。
「今回、ガルブレイス公爵令嬢とゴールディング公爵令嬢がラードナー伯爵邸を訪ねた際に発見することができました。彼女たちは女性であり、助け出そうと何かをすると逆に彼女の身に危険が降りかかると判断したため、命を奪うようなことがないと確認をして私に報告してくださいました。急がないと、明後日には彼女を売るという旨の供述もあったそうです。」
それを聞いて、レイモンドとウィリアムは顔を合わせ、父である国王に会いに行くことを確認しあった。フレデリックに待機を命じて、寝室に向かった。ここは国王の家族のみ入れる場所だ。
「父上、母上。レイモンドとウィリアムです。入室してもよろしいでしょうか。」
ガチャリと向こう側からドアを開けられそこには王妃が立っていた。どうしたのか尋ねられ、経緯を説明する。
「どうか王命を貸してください、父上。そしてラードナー伯爵家にこれは国への謀反であると示したいのです。」
ウィリアムは必死に説得した。しばらく黙って聞いていた国王は父親としての顔を見せた。
「それは、彼女が夜の髪を持っているからか?」
「いえ、違います。私の大切な想い人だからです。」
ウィリアムの瞳はまっすぐ父親を見据えていた。その答えに納得した父親は王として相応しい身なりを整え、政務室へと向かい王命としてラードナー伯爵邸への立ち入り許可書を書いた。それをウィリアムに渡し、背中をバンっと叩いて送り出した。しっかりしろと言う父としての言葉を込めて。
次の日、スヴェートとジェニファーはラードナー伯爵邸を訪ねた。今邸の周りには隠れた兵でいっぱいだ。王命により国の中でも精鋭の部隊が送り込まれている。安否を確認したのち、高らかとどちらかが指笛を吹けば突入である。二人を昨日と同じように案内したベアトリスは終始笑顔でこう告げた。
「言いつけ通り、ちゃんと起きた状態で彼女を待機させてます。どうぞ。」
そう言って入室を促した。
「…スヴェート様、ジェニー様…」
虚ろになった目、涙の跡、全てを諦めているような彼女をみて辛くなってしまったジェニファーは思わず大丈夫かと口にしてしまっていた。
「たしかに、少しやつれてしまって売値が下がってしまいそうです。」
ベアトリスが悲しそうに述べた。最早フェルナのことは商品としてしか扱っていないと暗に言っている。みかねたスヴェートは指笛を鳴らした。透き通った気高い音が邸中に響き渡った。
「何をしていらっしゃるのですか?スヴェート様?」
笑顔を貼り付けたベアトリスはスヴェートに迫った。スヴェートとジェニファーは無言を貫いている。
ドンっと壁が開けられ、バタバタと兵士が入ってきた。その中にはウィリアムもいる。
「ウィリアム様!?」
ベアトリスは驚き、かつ恋い焦がれた目でウィリアムを見つめた。動くなと制されたためアルナは警戒しながら兵たちを睨んでいた。ウィリアムが合図をするとベアトリスとアルナは拘束された。
「そんなにあの髪が、能力が大切なのですか?…私があの忌々しい能力を持っていたら貴方と結ばれていたのですか?」
ボロボロと涙を溢れさせてベアトリスはフェルナを睨んだ。
私はスヴェート様とジェニー様を見た瞬間、絶望感に襲われた。しかしその絶望は間違いで、結果として2人は私を助けてくれた。リアム様もいらっしゃっる。みんな私を助けるために来てくれた。先程の彼女の問いに対しての返事に私は注目する。
「違う。私は彼女自身が大切だから来た。能力のみを見ていたならここには来ていない。」
「どうして、あいつなの?なんでよ!!」
涙とともに冷静さも垂れ流しているようだ。泣きながら私を睨みつけて、彼女は大きく息を吸い込んだ。
「…テレーム!テレーム!!」
使えるはずのない呪文を彼女は必死に唱える。耳障りな笑い声とともに私を見て彼女は憎しみを訴える。兵士に連れられて彼女は退出した。
私の方へリアム様がかけてきた。
「大丈夫か?怪我は?」
「大丈夫です。ありがとうございます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
リアム様は私を抱きしめて、髪を撫でてくれた。
「迷惑なんかじゃない。本当に心配だったんだ。心の底からだよ。ルナともう会えないと思ったら胸が張り裂けそうだった。」
そう言ってリアム様は私を強く抱きしめた。彼の鼓動が伝わってくる。私の心拍数は上昇し、顔も熱くなってきたような気がした。
私はそのあと保護されて、自分の家に戻った。母は涙ながらに無事を喜んでくれて、父と兄はリアム様に感謝を述べていた。ケイトも泣いていた。私は1日ゆっくり療養し、次の日は雨だった。
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