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「朝からやかましいやつだ」
俺のリアクションにダン王子が舌打ちをする。
「今のが転位魔法ですか……!?一生歩かなくても生きていけるじゃないですかこれ」
「便利ですが魔力消費量が多いので乱発はできませんし、行ったことのある場所にしか行けませんよ。イリス殿のように誰かと一緒に転位できる者は一握りの実力者です」
マーティアス王子が説明してくれながら、手にしていた本をテーブルに置く。
「ルカくんおはよう。制服似合ってるよ、もっと近くで見せてほしいな」
クシェル王子は俺に手を振って、さらりと口説いてくる。
「至上様。マフィン作ったので、食べてください」
ラルフ王子はかごに入ったマフィンを魔法で皿に取り分けている。見れば王子たちは皆マフィンを食べたらしい痕跡がテーブルにあった。
イリスさんに促されて着席すると、マフィンが俺とイリスさんの前に飛んでくる。
(朝から手作りマフィン一緒に食べてる……意外と仲いいんだな……)
ダン王子とマーティアス王子はいらないと断りそうなキャラに見えるが、そうでもないらしい。俺の結婚相手の座を争っているはずの4王子は、俺の想像より穏便に時間を過ごしているようだった。
「皆様、国での状況はいかがでしたか」
「特には。選ばれるように尽力しろと言われたくらいです」
「ま、みんなそんな感じでしょ。至上様が相手選ぶ基準なんて誰もわかってないくせに、好き勝手よく言うよ」
マーティアス王子に便乗したクシェル王子は、やれやれと肩をすくめる。ラルフ王子はその横でマフィンを食べながら頷いた。ダン王子は黙っているだけだったが、否定しないなら似たようなことだったんだろう。
「怪しまれていないのならよかったです。それでは私からも報告させていただきます。昨夜、何者かが至上宮に侵入を試みた形跡がありました。結界への魔力接触です。私のほうで調査いたしましたが、特定には至らず」
「!侵入って……」
昨日イリスさんが急に仕事が入ったと言って去った理由がわかり、俺は目を大きくした。
「至上様を狙ってのことだろうが……それにしても早いな。毎度あるのか、こういうことは」
「少なからず。しかしお目覚め当日にというのは初めてです」
「相当やる気なやつがいるってわけか。しかも相手は至上様がルカくん状態だって知らずにやってるんだから、捨て身だね」
「今後も何かしら仕掛けてくる可能性がかなり高いと思われます。至上様にお力があれば、至上宮の結界を強めるなどやりようはいくらでもあるのですが……」
言い濁したイリスさんの横にいる俺に、4王子の視線が突き刺さる。その目だけで十分言いたいことは伝わった。
(俺が魔法使えないせいで色々危ないってことっすね……)
「す、すみません。でも俺が魔法使えるようになったら、対策もできるってことですよね」
「はい。それで皆様にご提案がございます。至上様……いえ、ルカ様にはここアクラマ魔導学院で魔法を学んでいただくのはいかがでしょうか」
「えっ」
俺だけではなく、イリスさん以外の全員が目を見開いていた。
「本気で仰っているんですか。アクラマは寮生活です。至上様は魔界で最も安全といわれる至上宮を離れることになります。危険すぎるのでは」
「出身国の設定とか、どうするんですか。魔法ができないってだけでかなり目立っちゃいますから、注目は避けられないです」
マーティアス王子は訝しい顔で、ラルフ王子は心配そうに意見した。
「至上宮が魔界で最も安全なのは、至上様のお力が健在の場合です。現状は4王子もとい各国の王族貴族が集まるアクラマがトップの安全性を誇ります。自国の有力者に危害が及ぶのを避ける心理が働くので、学院内での反逆行為は発生しがたい」
「そうは言っても、一般生徒のルカくんに護衛は付けられないし危ないことには変わりないんじゃない」
「……まさか、俺たちにそいつの護衛代わりをしろなどと頼むつもりか」
俺のリアクションにダン王子が舌打ちをする。
「今のが転位魔法ですか……!?一生歩かなくても生きていけるじゃないですかこれ」
「便利ですが魔力消費量が多いので乱発はできませんし、行ったことのある場所にしか行けませんよ。イリス殿のように誰かと一緒に転位できる者は一握りの実力者です」
マーティアス王子が説明してくれながら、手にしていた本をテーブルに置く。
「ルカくんおはよう。制服似合ってるよ、もっと近くで見せてほしいな」
クシェル王子は俺に手を振って、さらりと口説いてくる。
「至上様。マフィン作ったので、食べてください」
ラルフ王子はかごに入ったマフィンを魔法で皿に取り分けている。見れば王子たちは皆マフィンを食べたらしい痕跡がテーブルにあった。
イリスさんに促されて着席すると、マフィンが俺とイリスさんの前に飛んでくる。
(朝から手作りマフィン一緒に食べてる……意外と仲いいんだな……)
ダン王子とマーティアス王子はいらないと断りそうなキャラに見えるが、そうでもないらしい。俺の結婚相手の座を争っているはずの4王子は、俺の想像より穏便に時間を過ごしているようだった。
「皆様、国での状況はいかがでしたか」
「特には。選ばれるように尽力しろと言われたくらいです」
「ま、みんなそんな感じでしょ。至上様が相手選ぶ基準なんて誰もわかってないくせに、好き勝手よく言うよ」
マーティアス王子に便乗したクシェル王子は、やれやれと肩をすくめる。ラルフ王子はその横でマフィンを食べながら頷いた。ダン王子は黙っているだけだったが、否定しないなら似たようなことだったんだろう。
「怪しまれていないのならよかったです。それでは私からも報告させていただきます。昨夜、何者かが至上宮に侵入を試みた形跡がありました。結界への魔力接触です。私のほうで調査いたしましたが、特定には至らず」
「!侵入って……」
昨日イリスさんが急に仕事が入ったと言って去った理由がわかり、俺は目を大きくした。
「至上様を狙ってのことだろうが……それにしても早いな。毎度あるのか、こういうことは」
「少なからず。しかしお目覚め当日にというのは初めてです」
「相当やる気なやつがいるってわけか。しかも相手は至上様がルカくん状態だって知らずにやってるんだから、捨て身だね」
「今後も何かしら仕掛けてくる可能性がかなり高いと思われます。至上様にお力があれば、至上宮の結界を強めるなどやりようはいくらでもあるのですが……」
言い濁したイリスさんの横にいる俺に、4王子の視線が突き刺さる。その目だけで十分言いたいことは伝わった。
(俺が魔法使えないせいで色々危ないってことっすね……)
「す、すみません。でも俺が魔法使えるようになったら、対策もできるってことですよね」
「はい。それで皆様にご提案がございます。至上様……いえ、ルカ様にはここアクラマ魔導学院で魔法を学んでいただくのはいかがでしょうか」
「えっ」
俺だけではなく、イリスさん以外の全員が目を見開いていた。
「本気で仰っているんですか。アクラマは寮生活です。至上様は魔界で最も安全といわれる至上宮を離れることになります。危険すぎるのでは」
「出身国の設定とか、どうするんですか。魔法ができないってだけでかなり目立っちゃいますから、注目は避けられないです」
マーティアス王子は訝しい顔で、ラルフ王子は心配そうに意見した。
「至上宮が魔界で最も安全なのは、至上様のお力が健在の場合です。現状は4王子もとい各国の王族貴族が集まるアクラマがトップの安全性を誇ります。自国の有力者に危害が及ぶのを避ける心理が働くので、学院内での反逆行為は発生しがたい」
「そうは言っても、一般生徒のルカくんに護衛は付けられないし危ないことには変わりないんじゃない」
「……まさか、俺たちにそいつの護衛代わりをしろなどと頼むつもりか」
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