魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ

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 さっき俺を殺そうとしていた男が堂々と目をそらさないので、俺は反発心もあり堂々と顔ごとそらして無視する。

「至上様には『接吻の儀』を行っていただきたいのです」
「ゲホ!え、キスは義務なんですか!?」

 俺が声音からして『嫌だ』というのを出すと、イリスさんは眉を下げた。

「今の至上様が困惑されるのは十分わかります。しかし、『接吻の儀』をしなければ至上様に何か異常が起きていると魔界に知れ渡ってしまいます」
「知れ渡ると……まずいんですか」
「非常にまずいです」

 言葉を選ぼうとしたイリスさんに代わって、マーティアス王子が率直に言った。

「魔界の平穏は、至上様の圧倒的な力による『平和的独裁』で成り立っています。至上様には誰も逆らえないという共通認識があるから平和なのです。至上様に力がないとなれば、先ほどのダンのような輩が大量に現れ、軽々しく反逆が起こり、戦争となります」
「せ、戦争って……」

 物騒なことをさらりと言われ、急に自分の立場が重くのしかかってくるのを感じる。

「俺を下等な反逆者と同じにするな。このルカという男が至上様の力を持っているのか、確かめる必要があっただけだ」
「結局力があるのかはわからなかったけどね」

 マーティアス王子を睨むダン王子の隣で、クシェル王子が可笑しそうに言う。

「キスを受けて、僕たちの身体に“印”が出ればとりあえずは至上様の力は存在してることになります。だから、嫌かもしれないけどしてほしい……です」

 ラルフ王子が申し訳なさそうに言った時、ダン王子がトンッと床を蹴った。その程度の蹴りで飛べるはずもない距離をあっさり跳躍したダン王子は、直後俺に覆いかぶさるようにしてベッドの上に乗っていた。

「っ!え、ちょ、おい──」
「わかったら、さっさと確かめさせろ」

 顎を掴まれ、目が離せなくなる。
 近づいてくる顔を拒否する隙もなく、俺はダン王子に口を塞がれていた。まごうことなきキスだ。

(!うそ、うわぁ……ほんとにしてる……)

 横暴なイケメン王子にキスされるということが非現実的すぎて身体が止まっていたが、不安げにこちらを見るイリスさんと目が合って、一気に正気に戻った。

「っ、このっ……長い!やめろ、終わり!」
「……色気のない男だな」

 俺がぐいっと手の甲で唇をぬぐうと、ダン王子は俺を見たまま舌打ちをした。

(色気のある男の方がいいんだ……マジで男相手でも抵抗ないんだな、この人たち……)

 そもそも性別以前に初対面でキスなんて普通もっと抵抗あるだろ、と思ってうなだれていると、イリスさんが足早にダン王子に近づいていく。

「ダン様、いかがですか?」
「わからん。もう少しすべきだったのでは──」

 ダン王子が肩をすくめた時、彼の身体──首元が赤く光った。

「!これは……」

 光が収まり、ダン王子が襟を広げると首筋に龍のような模様が記されていた。

「印が出ました。やはり至上様の力はご健在です。ああ、私は今とても安堵しております……!」

 イリスさんが胸を押さえて喜んでいる。俺に力があるかどうか、本気で心配していたようだ。

「これで印も出なかったら、第9次魔界大戦勃発だったね~。よかったよかった」

 クシェル王子が暗いことを気楽に言って、俺に向かって歩いてくる。

「俺もキスしていいですか?」
「え、もう次ですか──」

 ダン王子とのキスも消化しきれていないのに、次のイケメン王子が俺にウィンクをして、気づけば俺はキスされていた。

(ああ……また……)

 ダン王子よりあっさりとクシェル王子は離れてくれて、少し安心する。
 そしてすぐ、ダン王子と同じくクシェル王子の身体も──胸元あたりが光る。

「俺も任務達成♪次、どうぞ」
「至上様、僕ともお願いします」

 クシェル王子が退くと、後ろからひょっこりラルフ王子が現れた。
 
(なんかアイドルの握手会くらい流れ作業になってるな……)

 自分のキスの価値について考えてしまったが、逆にあっさり終わらないのはもっと嫌だなと思い直して、ラルフ王子に顔を向けた。
 触れるだけのキスをしたラルフ王子は、腕に光が灯った。

「ありがとうございます、至上様」
「い、いえいえ」

(初めてお礼言ってくれた……この人いいひとだ……)

「マーティアスくん、最後だよ」
「本来、2番目が俺だったんですが」
「だってキミが全然行かないから。ほーら、頑張って!」

 クシェル王子に手を引っ張られて、マーティアス王子がベッド横に来る。

(よし、これで最後。もう終わりだ)

 3人の男からキスされたことで俺は感情が鈍感になっており、早くキスを終わらせようという謎の前向き思考が芽生えていた。

「至上様……」
「はい、さっさとやっちゃってください」
「目を瞑っていただいてもいいですか」
「えっ?あ、そうですね」

 少々困った顔をしたマーティアス王子に比べて、ひたすら無神経な男であった俺は慌てて目を閉じる。すぐに手が頬に添えられて唇が重なった。

(…………………ん……?)

 キスがなかなか終わらない。
 マーティアス王子の雰囲気からしてすぐに終わるかと思ったキスが終わらなくて、俺は「もう終わりに……」と言おうと口を開いた。開いてしまった。

(!?んん!)
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