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ここは天国じゃなくて、魔界。
天使だと思った人は、天使じゃなくてシジョウ様の側近・イリスさん。
シジョウ様は死んだり生き返ったりする人で、そして俺がそのシジョウ様で、魔界で1番偉い。
得られた情報をまとめてみても、まったく意味がわからなかった。
「あの、俺の理解力が足りなくてすみません。もっと根本的なところから説明してほしいんですけど……」
「混乱中に申し訳ございませんが、今の至上様にとってはより混乱することがこれから起こります。ですが途中で記憶が戻る可能性もございますので、ご容赦ください」
「いや、記憶喪失っていうか、そもそも俺はシジョウ様じゃな──」
「戻らない場合は、あとでしっかりご説明いたします」
俺の言葉を遮ってイリスさんが頭を下げたとき、部屋の大きな扉が開いた。
「4王子がご到着です」
そう述べたイリスさんは、俺の手を取って棺から出してくれる。
(今度は4王子……次から次へと知らないことが増える……)
新卒の時を回顧しながらメモ帳が欲しいと思っていると、4人の人影が俺の前に並んだ。みな一様にセレモニーで軍人が着るような黒衣装を身にまとっている。
「至上様、4王子の皆様です。右からロット国・第1王子、ダン・ロット様」
「……お目にかかれて光栄です」
イリスさんの紹介を受けて、深紅の髪をした鋭い眼光の青年が一礼する。なぜ王子様たちを紹介されるのかわからないが、とりあえず流れに身を任せることにした。
(ダン王子は赤髪。男らしい顔立ちのイケメン。プライド高そう。起業家っぽい)
心のメモ帳に不躾な特徴を刻む。
「続いて、ブラオ国・第1王子、マーティアス・ブラオ様」
「マーティアスと申します。以後お見知りおきを」
夜空のような色の髪をした青年は、1歩前に出てお手本のように美しいお辞儀をした。
(マーティアス王子は青髪。ザ・美形って感じのイケメン。クールで真面目そう。政治家っぽい)
「そしてこちらがローサ国・第1王子、クシェル・ローサ様」
「はじめまして。至上様がこんなに可愛い人だなんて罪ですね」
淡いピンクの髪をした青年がウィンクをして、手を振ってきた。
(クシェル王子はピンク髪。愛想のいいイケメンだけどチャラい。ホストっぽい)
「そして最後となりますのが、ゴルトー国・第1王子、ラルフ・ゴルトー様」
「ラルフです。えーっと……よろしくお願いします」
金髪に碧眼の青年がゆっくりしゃべって、軽く会釈をする。
(ラルフ王子は金髪。おっとりした甘いマスクの人。まさに王子様な見た目だな。つーかこの世界は美形しかいないのか?)
4人とも種類は違うがイケメンであることに間違いはない。自分の顔面だけ普通すぎてツラくなっていると、美形筆頭のイリスさんが俺を見た。
「以上、4名が至上様の配偶者候補でございます」
「はぁ、そうなんですね」
(ん?配偶者候補?)
「これより接吻の儀を執り行います。ダン様から前へ」
『配偶者候補』という言葉でまだ躓いている俺の前に、ダン王子が恭しく膝をつく。下からイケメンに見上げられると、急に手汗が出てきて落ち着かない。何をしたらいいのかわからないので曖昧に微笑みかけたら、ダン王子は怪訝そうに眉を寄せた。
天使だと思った人は、天使じゃなくてシジョウ様の側近・イリスさん。
シジョウ様は死んだり生き返ったりする人で、そして俺がそのシジョウ様で、魔界で1番偉い。
得られた情報をまとめてみても、まったく意味がわからなかった。
「あの、俺の理解力が足りなくてすみません。もっと根本的なところから説明してほしいんですけど……」
「混乱中に申し訳ございませんが、今の至上様にとってはより混乱することがこれから起こります。ですが途中で記憶が戻る可能性もございますので、ご容赦ください」
「いや、記憶喪失っていうか、そもそも俺はシジョウ様じゃな──」
「戻らない場合は、あとでしっかりご説明いたします」
俺の言葉を遮ってイリスさんが頭を下げたとき、部屋の大きな扉が開いた。
「4王子がご到着です」
そう述べたイリスさんは、俺の手を取って棺から出してくれる。
(今度は4王子……次から次へと知らないことが増える……)
新卒の時を回顧しながらメモ帳が欲しいと思っていると、4人の人影が俺の前に並んだ。みな一様にセレモニーで軍人が着るような黒衣装を身にまとっている。
「至上様、4王子の皆様です。右からロット国・第1王子、ダン・ロット様」
「……お目にかかれて光栄です」
イリスさんの紹介を受けて、深紅の髪をした鋭い眼光の青年が一礼する。なぜ王子様たちを紹介されるのかわからないが、とりあえず流れに身を任せることにした。
(ダン王子は赤髪。男らしい顔立ちのイケメン。プライド高そう。起業家っぽい)
心のメモ帳に不躾な特徴を刻む。
「続いて、ブラオ国・第1王子、マーティアス・ブラオ様」
「マーティアスと申します。以後お見知りおきを」
夜空のような色の髪をした青年は、1歩前に出てお手本のように美しいお辞儀をした。
(マーティアス王子は青髪。ザ・美形って感じのイケメン。クールで真面目そう。政治家っぽい)
「そしてこちらがローサ国・第1王子、クシェル・ローサ様」
「はじめまして。至上様がこんなに可愛い人だなんて罪ですね」
淡いピンクの髪をした青年がウィンクをして、手を振ってきた。
(クシェル王子はピンク髪。愛想のいいイケメンだけどチャラい。ホストっぽい)
「そして最後となりますのが、ゴルトー国・第1王子、ラルフ・ゴルトー様」
「ラルフです。えーっと……よろしくお願いします」
金髪に碧眼の青年がゆっくりしゃべって、軽く会釈をする。
(ラルフ王子は金髪。おっとりした甘いマスクの人。まさに王子様な見た目だな。つーかこの世界は美形しかいないのか?)
4人とも種類は違うがイケメンであることに間違いはない。自分の顔面だけ普通すぎてツラくなっていると、美形筆頭のイリスさんが俺を見た。
「以上、4名が至上様の配偶者候補でございます」
「はぁ、そうなんですね」
(ん?配偶者候補?)
「これより接吻の儀を執り行います。ダン様から前へ」
『配偶者候補』という言葉でまだ躓いている俺の前に、ダン王子が恭しく膝をつく。下からイケメンに見上げられると、急に手汗が出てきて落ち着かない。何をしたらいいのかわからないので曖昧に微笑みかけたら、ダン王子は怪訝そうに眉を寄せた。
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