隣人、イケメン俳優につき

タタミ

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恋人たち

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「ん、……っ」

  一太くんの舌が上顎をなぞりゾクゾクとした感覚に息が漏れる。
  恋人としてキスが出来るなんて嘘みたいで、嘘じゃないことを確かめたくて一太くんに押し付けるようにキスを深めた。舌を絡ませながら一太くんのシャツのボタンを外しきり、はだけた肌に指先で触れる。そのまま手を下げて股にはわせると固くなっているのがわかった。
  興奮してくれてるのが嬉しくて揉むように手を動かし、手の動きに合わせて一太くんの脚が震える。
  と、そこで一太くんが唇を離した。

「っ……久遠さん、マジで手際いいですね。すいません、俺全然慣れてなくて……」
「一太くんの方が普通だよ。仕事でベッドシーン経験すると嫌でもうまくなるってだけで」

  俺は少し身を起こし、一太くんの首回りに両手を差し込んでするりとシャツを脱がせた。
  一太くんの筋肉質な上半身が露になり、正直言って股間に響く。遠慮を忘れた視線を向けると一太くんはさっと手で身体を隠した。

「あ、隠さないでよ。イイ身体なのに」
「いや、そんな見られると恥ずかしいし……」

  思春期の女の子みたいな反応をしてから、一太くんが俺のTシャツを掴んだ。

「はやく久遠さんも脱いでください」

  一太くんに急かされるままTシャツを脱ぐ。
  Tシャツを床に投げ飛ばし目線を戻すのと、一太くんが俺の首筋に舌を這わせるのが同時だった。

「っ……は……」

  耳元に一太くんの息遣いが響いて興奮する。
  首や鎖骨にキスをしながら、一太くんは俺の股ぐらを撫で上げた。
  さっきまでうぶに恥ずかしがってたのに、急にオスを出されては腹の奥が熱くなる。

「あ、っ……一太くん、直接触って……」

  撫で上げる手に擦り付けるように腰を浮かせると、一太くんは俺のスウェットを引きずり下ろしてパンツに手を突っ込んだ。

「んッ……ぁ……あっ」

  抜き合いの経験則から一太くんは俺がどこを触られるのが好きなのか熟知していて、的確にそこを指で弄る。

  あ~ヤバい、気持ちいい。

  親指が先端を押し込むように擦ってきて俺の意思と関係なく腰が痙攣した。

「は、あ、ぁ、そこホントに……ッん!」
「気持ちいいですか」
「ぅん、ヤバい、あっ……!」

  先走りがどんどん出て一太くんの指にまとわりつく。

「すごい濡れてますね」
「ん、きもち……いぃ、からっ」

  気持ちよくていつまでも触ってほしいけど、このまましごかれるとさっさとイッてしまいそうだ。
  一太くんの首に手をかけて頭を下げさせ、唇を塞ぐ。
  キスに応えた一太くんは、しごいていた手をさらに下げた。

「後ろ……いじっても平気ですか」

  言いながら一太くんの指が後孔を撫でるので腰が跳ねる。

「いいよ、ちょっと待って……」

  俺はソファの下に手を突っ込んで、ローションボトルとコンドームを取った。

「そんなとこに置いてるんですか」
「ひとり遊び用にね。ほら、ソファからの方がベッドより画面観やすいから」

  ボトルでテレビを指しながらコンドームを差し出すと、俺の自慰事情を察したらしい一太くんが「エロいですね……」と小さく呟いてコンドームを受け取った。
  今の状況の方がエロいよと思いながら、ローションを手に出して後ろに塗り込む。

「ッ……ハ、これで指突っ込めると思うから」
「痛かったら言ってください。あと……下手だったら教えてください」

  一太くんの指が遠慮がちに押し込まれ、俺の中に入ってくる。
  浅いところで抽出が繰り返されると、俺は久しぶりの快感に襲われて奥歯を噛んだ。

「あっ、ぁ……ん……!もっと、奥まで入れて、いいよ……ッ」
「は、はい」

  グッと指が押し進み、中で動く。
  俺は腰を浮かせて指がイイところに当たるように動かした。

「はっ、あ、そこ……ッ」
「……ここ?」

  探るように回転させた一太くんの指が、前立腺にあたり刺激に首が動いてしまう。

「あ、ぅんッ、イイ、もっとして……っ」

  俺の反応を見る一太くんの目がギラついていて、身体が熱くなる。
  挿入される指が2本に増えても、俺の穴は容易く飲み込んだ。増えた指で中をほじるようにされて、俺は快感を耐えるために一太くんの腕を掴む。

「んあ、やっ、ぁあ、ヤバ……!んっ……」

  俺の喘ぎ声は途中で一太くんの唇に塞がれた。
  噛みつくみたいに舌を吸われて、やらしい水音が響く。俺も一太くんの舌を噛み返そうと少し首を上げたら、一太くんが口を離して俺の肩をわし掴んだ。

「ッ……はぁ、あの、もう入れても、いいですか……っ」

  余裕無さそうに眉を寄せる一太くんが可愛くて腹がきゅんとなる。

「うん、入れて……」

  俺が答えると同時に、一太くんがコンドームの封を口で切った。

  うわ~カッコいい、やったことあるけどやられるとすごいわ。

  なんて余裕のある感想も、穴に太いものが当てられたことで霧散した。

「は、やば、でかっ……んん!ハァ……ッ」
「う、久遠さん、へいきっ……?」

  穴はどうにか平気だけど、気持ちは乱されまくりで俺は一太くんにしがみついた。
  質量がすごい。
  腹の中が一太くんで一杯だ。

「ぅん、すごい……ッ、んぁ……!」
「あぁ気持ちいい、です……ッ」

  一太くんが遠慮なく腰を動かしたので、俺は裏返った声を出してしまった。
  侵入を深めて中を打つ一太くんの顔が目前に迫り、その瞳の獰猛さに中がうねる。

「あ、あ、っ、んんッ……は、ぁ!」
「は、すご……ッ」

  堪えるように顔をしかめる一太くんがエロい。
  その間もガツガツと抉るように腰を打ち付けられて、俺は早々に高みへと追い詰められ始め声が抑えられなかった。
  イッたら絶対寝落ちするからまだイキたくないけど、でも耐え性のない俺は我慢もできなくて、欲のままに手を伸ばし自らをしごく。

「っ、自分でいじってんの、エロすぎ」
「だって、ハァ、あ!んぁ、もう、やばぃ、から……!」

  ホントにヤバい。
  こんなすぐイカないはずなのに、好きな人に抱かれているという幸福が脳内で快楽物質を暴れさせているとしか思えない。

「ごめ、ほんとに、イキそ……ッあ、あ、っ!」

  頭が快楽しか認知できなくなっていく。
  イキたい、気持ちいい、もっと。
  頭の中はそれだけ。

「俺もッ、はぁ……っもう、……ッ」
「あ、あ!イク、一太くんッ……!」

  全身を駆け巡るような、全身を濡らすような快楽が走り、身体が硬直する。
  一太くんが深く入り込んだ先で身体を震わせて、俺に額を付けた。
  呼応するように俺の腰はひときわ跳ねて、白い体液を自分の腹に飛ばす。

「は、はぁ……っ久遠さん……」
「ぁ、一太くん……すき……だいすき……」

  俺は脱力した一太くんの重みにこれ以上ない安心感を覚えながら、うわ言みたいに愛を呟く。
  目前にいる一太くんにキスをして、脳が白むのを感じる。

「久遠さん、俺も……」

  一太くんの返事を聞き終わる前に、俺は意識を手放した。



  誰かが隣に入ってくる感覚がする。
  うすぼんやり目を開けると、俺はベッドにいた。

「……あ、起こしちゃいましたか。すみません」
「……いちたくん……?」

  もやがかかったような思考が、上裸の一太くんを見たことで晴れていく。
  一太くんに抱かれてそのまま寝てしまったことを思い出し、俺は頭をあげた。

「寝落ちしてごめん……ベッド運んでくれたんだ」
「はい、ソファはさすがに身体痛くなりそうだったんで。眠れないより寝落ちできる方が健全ですよ」

  一太くんは笑って、持っていた水のペットボトルを差し出す。
  受け取って飲みながら俺は身体を起こした。

「久しぶりにセックスしたけどめちゃくちゃよかった」
「っそ、そうですか。それは……良かったです」

  あんなにオスらしく俺を抱いていた一太くんは、思春期の女の子みたいにベッドの上で膝を抱えている。

  俺の彼氏、カッコいいし可愛いな……。

  と、思いながら見つめていると一太くんはチラリと俺を見た。

「……芸能界、ホントに辞めるんですか」

  その問いは『辞めないで』という意味ではなく、純粋な疑問のようだった。

「うん。事務所は休業にさせたがってるけど、辞める。……西野との写真が出たのは最悪だったけど、最悪って気持ちと同時に『これで辞められる』って思った自分がいてさ。デビューしてからずっと辞め時を探してたんだなって、その時気付いた」

  俺の言葉を優しく見守る一太くんを見て、一太くんがいればそれで十分という気持ちが広がる。

「あ、ちゃんと次の仕事は探すから安心してね」
「はは、心配してないですよ」

  一太くんは俺からペットボトルを取ってベッドサイドに置いた。そばに寄って肩に頭を乗せると一太くんも俺に重心を傾けてくれる。

「これでやっと髪染められるよ」
「何色にするんですか」
「金髪かな。ほら、前に一太くんが描いてたミカエルいたじゃん?同じにしようと思って」
「そしたらマジでミカエルの擬人化ですね。楽しみです」

  一太くんは目を細めて俺の髪を指ですくった。

「染めたら1番に見せてください」
「もちろん」

  俺も一太くんの髪を手で撫でる。

「あと、外でデートしようよ。一緒に洋服買ったりしてさ」
「いいですね。服選んでもらいたいです」
「選ぶ選ぶ!任せて」

  一太くんは柔らかな笑みで頷いてくれて、俺はその笑みに吸い込まれるように唇を重ね合わせる。
  幸せに溺れながら、今死んだら幸せだなと思った。
  人生で1番、満たされていた。

「今、死んだら幸せとか思ってますか」
「なんでわかるの」
「何となく。でも、死なないでくださいよ。俺は久遠さんが好きなんですから」
「そりゃもちろん、一太くんに愛されてるのに死ねるわけないよ」

  空が白む中、俺たちは笑ってベッドの中で肌を寄せ合う。
  誰に邪魔されることのないふたりだけの楽園。
  夢のような現実で、俺たちはいつまでも愛を囁いた。
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