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御厨涼真
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図星の言及に言い訳かはぐらかしをしようと俺が目を泳がせていると、パンッと両手を合わせた翔太郎さんが立ち上がる。
「ま、今日はこの後通し何回かやって終わりだから、乗り越えて。そんで、本当の悩みが解決しないならライにちゃんと相談しなよ」
「あの、聞かないんですか。ハヤテとのこと」
はぐらかそうとしていたくせに、俺は正直にそんなことを言っていた。
「ごめんごめん。中途半端だね、僕。なんかあったのかだけわかれば、何があったのか詳細はいいよ。自分で聞いといて抱えきれない内容だったら悪いし」
翔太郎さんは再び前髪をゴムで結びながら「それに」と続けた。
「相談乗るのが1番上手いのはライだからさ」
翔太郎さんが肩をすくめて言うと、タイミングを見計らったように、練習室に颯と丈さんを引き連れた頼さんが戻ってきた。
「そろそろ休憩終わりだぞ、みんな!」
「うるさ。わかってるっつーの」
「ジョー、俺はお前の分まで元気だしてやってんだよ。テンション上げろって」
「ムリ、モウ踊リタクナイ」
頼さんと丈さんとが言い合うのを笑って見ている颯を目で追ってしまって、案の定目が合う。
颯の方が先に目をそらした。
『寮戻ったら部屋来て』
練習を終えてなんとなくスマホを見たら、颯から1文だけのLINEが来ていた。普段なら口で言うであろうことをわざわざLINEにしてきたということは、いつもと違うことが起きるのを示唆している。
あとで話がある、と言われた話──要するに肉体関係の終了についての話し合いが始まるんだろうと、俺は覚悟した。
俺の感情を抜きにすれば、良くない関係なのはわかっている。セフレ状態なんて終わるのに越したことはない。
寮に戻ってすぐ自室に消えた颯を追うように、俺は颯の部屋のドアをノックした。
「入って」
出迎えた颯はすでに部屋着に眼鏡という気を抜いたスタイルだった。そんなオフの姿も見慣れたものだが、どんな格好でも顔が綺麗でつい見つめた。
「呼んだのは、今日話があるって言った件のこと話そうと思ってなんだけど」
見つめる俺を気にせず、颯は床のクッションに座って切り出した。話が進むのが急に怖くなって、俺は立ったままドアを親指で指差した。
「ご飯は?先になんか食べてから──」
「あー、あとで勝手に食べるよ」
「でもさ、一緒に食べた方が」
「リョウマ。……もう、心配ないって」
俺の言葉を遮る颯に、俺は開けていた口で謝罪を続けた。
「ごめん、お節介だった」
「いや、違う。お節介とかじゃ……なくて」
颯は俺を見ないようにして首の後ろをかいた。
「心配かけてたのは俺だし、偉そうなこと言えないんだけど。でも今はもう体重キープできてるから、ほんとに」
颯は弱く笑う。
その笑顔を見て、俺は軽すぎる颯の身体を抱き上げた時のことを思い出した。
あれは颯の活動休止が始まって、2週間が過ぎた日のことだった。
「ま、今日はこの後通し何回かやって終わりだから、乗り越えて。そんで、本当の悩みが解決しないならライにちゃんと相談しなよ」
「あの、聞かないんですか。ハヤテとのこと」
はぐらかそうとしていたくせに、俺は正直にそんなことを言っていた。
「ごめんごめん。中途半端だね、僕。なんかあったのかだけわかれば、何があったのか詳細はいいよ。自分で聞いといて抱えきれない内容だったら悪いし」
翔太郎さんは再び前髪をゴムで結びながら「それに」と続けた。
「相談乗るのが1番上手いのはライだからさ」
翔太郎さんが肩をすくめて言うと、タイミングを見計らったように、練習室に颯と丈さんを引き連れた頼さんが戻ってきた。
「そろそろ休憩終わりだぞ、みんな!」
「うるさ。わかってるっつーの」
「ジョー、俺はお前の分まで元気だしてやってんだよ。テンション上げろって」
「ムリ、モウ踊リタクナイ」
頼さんと丈さんとが言い合うのを笑って見ている颯を目で追ってしまって、案の定目が合う。
颯の方が先に目をそらした。
『寮戻ったら部屋来て』
練習を終えてなんとなくスマホを見たら、颯から1文だけのLINEが来ていた。普段なら口で言うであろうことをわざわざLINEにしてきたということは、いつもと違うことが起きるのを示唆している。
あとで話がある、と言われた話──要するに肉体関係の終了についての話し合いが始まるんだろうと、俺は覚悟した。
俺の感情を抜きにすれば、良くない関係なのはわかっている。セフレ状態なんて終わるのに越したことはない。
寮に戻ってすぐ自室に消えた颯を追うように、俺は颯の部屋のドアをノックした。
「入って」
出迎えた颯はすでに部屋着に眼鏡という気を抜いたスタイルだった。そんなオフの姿も見慣れたものだが、どんな格好でも顔が綺麗でつい見つめた。
「呼んだのは、今日話があるって言った件のこと話そうと思ってなんだけど」
見つめる俺を気にせず、颯は床のクッションに座って切り出した。話が進むのが急に怖くなって、俺は立ったままドアを親指で指差した。
「ご飯は?先になんか食べてから──」
「あー、あとで勝手に食べるよ」
「でもさ、一緒に食べた方が」
「リョウマ。……もう、心配ないって」
俺の言葉を遮る颯に、俺は開けていた口で謝罪を続けた。
「ごめん、お節介だった」
「いや、違う。お節介とかじゃ……なくて」
颯は俺を見ないようにして首の後ろをかいた。
「心配かけてたのは俺だし、偉そうなこと言えないんだけど。でも今はもう体重キープできてるから、ほんとに」
颯は弱く笑う。
その笑顔を見て、俺は軽すぎる颯の身体を抱き上げた時のことを思い出した。
あれは颯の活動休止が始まって、2週間が過ぎた日のことだった。
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