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矢代頼
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誰かにバレたらやめる。
つまり、俺にバレたので颯は涼真とセックスするのをやめるということだ。
急な展開に、俺は思わず颯に近づいていた。
「や、やめるって。リョウマと決めてたのか、それ」
「いやこういうの事前に決めとくとかないでしょ。ま、俺だって不健全な関係なのは自覚あったし、いいきっかけだよ」
「いいきっかけってお前……」
涼真はどう思うんだ。
颯のことが好きで、泣いた涼真の気持ちはどうなる。
「リョウマだって本気じゃないよ。こんな関係に本気も何もない」
颯と涼真の気持ちの差が、俺の前でどんどん明らかになっていく。
「そんなの、お前にわかるのか」
俺自身ふたりがどうすべきなのかわかってないが、颯の発言を認めることは避けたくてそう言った。
壁に寄りかかっている颯は、俺を見据えてから肩をすくめるだけだった。
「なに、リョウマとの関係続けた方がいいの?」
「そう言うことを言いたいんじゃなくて」
続けるべきかとか、そんなの俺にはわからない。
「俺はお前らふたりの間に何があったとか、どうしてこうなってるとか何も知らない。俺がやめろとかやめるなとか偉そうなこと言える立場じゃないだろ」
俺は我慢していたため息を吐いた。
「ただ、お互いの気持ちを軽んじるのはやめてほしい。ずっと一緒にやってきた仲間で、その辺で引っかけた適当な相手とは違う。やめるにしてもちゃんと終わりにしてほしいっていうか……」
今俺が言える限りの気持ちを伝えると、颯は茶化すように上げていた肩を下げた。
俺から視線をそらすと壁に寄りかかるのをやめる。
「……俺は、ライさんに迷惑かけたいわけじゃない。リョウマとのことは任せといてくれればいいよ」
任せていいのかわからなかったが、颯の声は今までになく静かに響いた。
「事務所に言う?」
「いや、俺は事務所にもメンバーにも言うつもりはない。でも……」
「そう。ありがとう」
静かな感謝が俺の発言を遮る。
颯にとってこの話は終わってしまったのだと察した。
「じゃ、リョウマとのことはじきになかったことになってると思うから。よろしくね」
颯がひらりと手を振って歩き出す。
「なぁ、マジでリョウマのこと──」
俺にとってはまだ話は終わってない。
涼真のことを傷付けないでくれと、せめてそのくらいのことは伝えておきたかった。本当は、あいつは俺の前で泣いてしまうほどお前のことが本気で好きなんだよと、言ってしまいたかった。
俺が颯の腕を掴んで引き止めようとしたとき、ガチャリとドアノブが回った。
とっさにドアを見ると、開いた先に立っていたのは
「……あ、ハヤテ。と、ライさん?何してるんですか」
涼真だった。
つまり、俺にバレたので颯は涼真とセックスするのをやめるということだ。
急な展開に、俺は思わず颯に近づいていた。
「や、やめるって。リョウマと決めてたのか、それ」
「いやこういうの事前に決めとくとかないでしょ。ま、俺だって不健全な関係なのは自覚あったし、いいきっかけだよ」
「いいきっかけってお前……」
涼真はどう思うんだ。
颯のことが好きで、泣いた涼真の気持ちはどうなる。
「リョウマだって本気じゃないよ。こんな関係に本気も何もない」
颯と涼真の気持ちの差が、俺の前でどんどん明らかになっていく。
「そんなの、お前にわかるのか」
俺自身ふたりがどうすべきなのかわかってないが、颯の発言を認めることは避けたくてそう言った。
壁に寄りかかっている颯は、俺を見据えてから肩をすくめるだけだった。
「なに、リョウマとの関係続けた方がいいの?」
「そう言うことを言いたいんじゃなくて」
続けるべきかとか、そんなの俺にはわからない。
「俺はお前らふたりの間に何があったとか、どうしてこうなってるとか何も知らない。俺がやめろとかやめるなとか偉そうなこと言える立場じゃないだろ」
俺は我慢していたため息を吐いた。
「ただ、お互いの気持ちを軽んじるのはやめてほしい。ずっと一緒にやってきた仲間で、その辺で引っかけた適当な相手とは違う。やめるにしてもちゃんと終わりにしてほしいっていうか……」
今俺が言える限りの気持ちを伝えると、颯は茶化すように上げていた肩を下げた。
俺から視線をそらすと壁に寄りかかるのをやめる。
「……俺は、ライさんに迷惑かけたいわけじゃない。リョウマとのことは任せといてくれればいいよ」
任せていいのかわからなかったが、颯の声は今までになく静かに響いた。
「事務所に言う?」
「いや、俺は事務所にもメンバーにも言うつもりはない。でも……」
「そう。ありがとう」
静かな感謝が俺の発言を遮る。
颯にとってこの話は終わってしまったのだと察した。
「じゃ、リョウマとのことはじきになかったことになってると思うから。よろしくね」
颯がひらりと手を振って歩き出す。
「なぁ、マジでリョウマのこと──」
俺にとってはまだ話は終わってない。
涼真のことを傷付けないでくれと、せめてそのくらいのことは伝えておきたかった。本当は、あいつは俺の前で泣いてしまうほどお前のことが本気で好きなんだよと、言ってしまいたかった。
俺が颯の腕を掴んで引き止めようとしたとき、ガチャリとドアノブが回った。
とっさにドアを見ると、開いた先に立っていたのは
「……あ、ハヤテ。と、ライさん?何してるんですか」
涼真だった。
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