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矢代頼

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  付き合ってもらえてない。
  涼真は確かにそう言った。

「あのー、ちょっと1から説明してもらいたいんだけど」

  涼真の発言はしっかり耳に届いていたけど、俺の理解が全然ついてこなかった。

「まず、リョウマはハヤテのことが好きなの?」
「……はい」

  なるほど、あっさりとした肯定だ。
  こうなってくると、動揺とか逆にしないもんだなと、どんどん冷静になる自分がいた。

「あー、じゃそのことをハヤテには……?」
「伝えてます。告白はもう……結構前にしてます」

  目を伏せる涼真は、その告白がうまく行っていないことを表していて、慰めたい気持ちとまだ理解が追い付かないので詰めたい気持ちが反発しあう。

「その告白を断られたってこと……?」
「断られた、というかはぐらかされてるっていうのが正確な表現です……」

  うわぁ、って声に出るところだった。
  告白をはぐらかすという、キープを生み出すだけの悪しき行為。
  颯のやつ、なんて悪い男なんだ。

「でもさ、その。今朝方聞こえた内容としては、いやホントに聞いちゃって悪いんだけど。なんというか、キスはしてたよね?」
「はい……キスは、というかもう色々してます……すみません、不純で……」

  涼真はずるずると頭を下げて、ほとんど土下座しそうだ。
  俺もつられるように首を傾けて、眉を下げた。

「つまり。リョウマはハヤテが好きで、告白したけどはぐらかされて。そんで、やることはヤってるっつーわけか」
「……はい」

  声に出して整理してみたけど、現実味のない言葉だ。

「なんでハヤテとそういうことになったの?てか、ふたりとも、あのー、ゲイなの……?」

  気になることと聞きたいことがごちゃごちゃで、要領を得ない問いになってしまった。涼真が部屋に来る前に用意していた質問リストが全く役に立っていない。

「ハヤテのことはわかんないですけど……俺は男を好きになったのはハヤテが初めてで。今までは女性が好きでした」
「はー、そういうもんなんだ……」

  颯の整いすぎた顔面は、確かに性別を越える感じがある。

「で、ハヤテとの関係については、告白してうやむやにされたあと……誘われて」
「あ、え?ハヤテから?」

  てっきり告白した涼真が迫って、それを颯が許しているのかと思っていた。

「はい。最初はスキンシップが増えていったんです。それで、俺はハヤテが好きだから、あんまりされると辛いって言ったら……。『お前は俺のこと抱きたいの?』って聞かれて」

  今の台詞が颯で再生されて、言われてもないのに俺はゾクリとした。あの顔と声で告白してきた相手にそんなことを言うなんて、罪深い。罪深すぎる。

「それで、肯定したら、いいよって言われたんです。俺は愚かなので、その許可に抗うことができず、ズルズルと関係を持って。今ではセフレのような状態で……」

  再び泣きそうな声になっている涼真を見て、俺は年上としてリーダーとして、とりあえず慰めなければという気持ちにかられた。

「処分もお叱りも受けます……ただ脱退はっ……」
「いや!いやいや、脱退なんてさせないって!色々驚きがあって、まだ飲み込みきれてないけど、事情はわかったから。ね?一旦そんな思い詰めないで」

  安心させたくて腕をさすると、涼真は鼻をすすってから弱い笑みを浮かべた。

「ありがと、ございます。本当に、隠していてすみませんでした」

  この悩み、涼真の気持ちを考えたら誰にどう相談することもできないなと胃が重くなっていく。

「現状を他メンバーとか事務所に話すつもりはないから安心してくれ」

  肩を叩くと、やっと涼真は目を拭って俺をしっかり見てくれた。

「お前が悩んでるなら俺、協力するよ」
「え、諦めろとか、関係を絶てとか、じゃなくて……?」
「リョウマの気持ちは本物なんだろ?それなら俺は否定しないよ。ただハヤテがなに考えてるか、わかってない状況はよくないと思う」

  涼真は俯いて唇を噛んだ。噛んで、なにかを決意したように両手を握った。

「俺も……ハヤテがどう思ってるのか、知りたいです。答えが、ほしいです」

  そう小さく答えた涼真は、俺が味方でいてあげないとと思わせた。

「よしわかった、俺に任せろ。あのハヤテをぎゃふんと言わせてやるよ」

  メンバー内恋愛が勃発しただけでなく、その実情がメンバー内恋愛をちゃんとしてくれてた方がよかったというレベルで拗れており、半ば空元気の自棄で前向きな声を出す。自棄でも涼真が少し笑ってくれたので、あの美形を問い詰めてやるという気持ちで俺は涼真を抱き締めた。
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