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バート

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「痛いのが好きなのかよ、おい」
「や、ちがっ、あっ違いまッ、ハァッ」
「なにが、違うって?」

 舌を噛むのをやめて揺れるフィルのものを掴むと、フィルは初めて俺にもわかるほど感じて首をそらした。奥を抉りながらにちゃにちゃと音を立てて強くしごけば、痛みをこらえるようだった声はすぐなまめかしい嬌声に変わっていく。

「っァあ~ッう、バートさん……!やだ、ヤダこれぇッ……!イッちゃ、イクッ……!」
「ヤじゃねーだろッたく、大人しくイッとけ……!」
「ひ、あ、ハァッ!バートさ、……!ああッ」

 俺の肩にしがみついて喘ぎ散らかすフィルがひときわ大きく痙攣すると、フィルの腹に白い体液が飛んだ。元から俺を受け入れるには狭すぎる中が更に狭くなり、呻きが漏れる。限界だった。
 部屋中に響くフィルの鳴き声を抑えることもせずに、俺はフィルの身体を壊すように突き上げて吐精した。

◆◇
 フィルから引き抜いたものをティッシュで拭いて、倦怠感を感じながらシャツを羽織った。
 ベッドで脱力しているフィルは裸のまま気絶してるのかと思うほど微動だにしない。覗き込むと、顔だけがこちらを向いた。

「……バートさん……」
「なんだよ」
「…………好きです……」
「んなこと知ってる」
「ほんとに、好き……です」

 恋人たちの囁き合いのようなやりとりは、腹がムズムズして居心地が悪い。俺は会話を絶つように床のシャツを拾うとフィルに投げた。

「早く着ろ。つーかまずシャワーでも浴びてこい」

 投げられたシャツを裸の上に着てのそのそと起き上がったフィルは、風呂場には行かずに這うようにして俺のそばにやってきた。

「バートさん。また……やってくれますか。その、今日みたいなこういうこと」
「恋人でもない男に抱かれたがるのやめろよ」
「……恋人じゃなくても、バートさんになら……されたい、んで」

 こんなときでも「恋人にしてください」と言えないのがフィルらしくて、俺は少し笑ってしまった。それがバレるのが嫌で口元を手で覆うと、こっちを見上げているフィルの薄い頬をつねる。

「い、痛いですって!」
「ケツのほうが痛いだろ。よく裂けなかったなマジで。内臓ぶちまけになるかと思った」
「オレは別に裂けたって……平気ですよ、全然。だから……」
「ヘーキなわけあるか。お前ほんと可哀想でバカだな」

 頬を押さえながらすいませんと答えるフィルを、俺はもう無下にできなくなっていた。
 いいから早く行けと身体を押しやると、フィルは今度こそ大人しく立ち上がって風呂場に向かう。筋ばった痩身が風呂場に消えるのを見送って、俺は狭いベッドに腰かけ直した。
 別にフィルを待つ理由なんてない。
 正直腹が減ってるし、さっさとウォルトと飯でも食いたい気分だ。でもここで勝手に帰ったら、ドンの言うとおりフィルを弄んでいることになる気がして癪だった。

「……ほんとにバカだよな」

 バカなのはどちらなのかわからないまま、俺は意味もなく壁の時計を眺め始めた。
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