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バート

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「で、フィルの奴、なんの話だったんです?」

 フィルから例の告白を受けたあと、俺は部下のウォルトと仕事に出ていた。
 仕事というのは『最近歯向かっているギャングを皆殺しにしてこい』という、ドンからの命令を指す。
 仕事前の腹ごしらえのため車中でパンを食う俺に、カップ麺に湯を入れたウォルトが時計を見ながら尋ねた。

「あー……いや、別に」
「別にってことはねーでしょ。フィル、この後死んでやるみたいな顔でしたよ」

 俺がウォルトと仕事に出る直前に、少しでいいから時間をもらえないかと懇願してきたのがフィルだったのだ。世間話としてウォルトが知りたがるのも当たり前だった。

「お前、カップ麺とかマフィアらしくねーもん好きだよな」
「思いっきり話そらしてくるじゃないですか。てか食いもんにマフィアらしいとかないっすよ」
「あるだろ。オレが食ってるパンの方が──」
「ははーん。相棒のオレにも話せないなんて、よっぽどの事案なんですね」

 パンを見せつけようとすると、ウォルトは肩をすくめてカップ麺の蓋を剥がした。
 相棒という言葉の通り、ウォルトは弟分ながら俺の右腕だった。俺とウォルトはドンから殺しばかりを任される血生臭い2人組だった。

「なんか、よくわかんねえ話だったんだよ」
「よくわかんねえって……殺してくれとかそういう?」
「それならわかりやすいだろ。気分次第では殺してやってもいいし」

 そう、好きだのなんだの言われるくらいなら、「敵に惨殺される前に安らかに殺してほしい」とか言われたほうが100倍わかりやすかった。

「あいつオレのこと好きなんだってよ」
「ブッふぇ!!す、好きってフィルがバートさんを!?」
「おい汚えな!」

 口に入れた一口めの麺を吹き出したウォルトの頭を叩いても、ウォルトは謝ることも忘れて俺に詰め寄った。

「な、何て言われたんですか!?」
「普通に好きだって言われた」
「憧れとかじゃなく?ファンですみたいなことじゃなく?」
「それはオレも気になってよ、確認したけど恋愛として好きらしい」
「うわぁすげえ……!それってフィルはバートさんとキスしたいしヤリたいわけですよね!」
「ゲホッ!おい急に生々しい話すんなよ」

 フィルとキス?
 ましてやセックスなど想像もつかない。
 あの貧相な身体が裸になったとして、どこに興奮すればいいんだと想像しそうになり、俺は頭を振った。

「でもそうでしょ?あ、ちょっと待ってください。麺が伸びる前に食べちゃうんで!」

 俺はこれ以上この話を続けたいわけではなかったが、唯一無二の相棒であるウォルトに隠し事をしたいわけでもない。ウォルトが知りたいなら答えてやるかという気持ちでパンを飲み込んだ。

「それで!バートさんはなんて答えたんですか」
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