性奴隷を拒否したらバーの社畜になった話

タタミ

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  言われた通りに血やら汗やら泥でぐちゃぐちゃに汚れた服を脱ぐと、ボトルを手にしたノウリが俺の上から何かの液体をぶっかけた。それが消毒液だとわかる前に刺すような痛みが全身に走って、俺は塩をかけられたナメクジのように体を縮めた。

「いっ……!!」
「次暴れたら指を折る」

 脅しではなく人差し指を掴まれて俺が唇を噛みしめると、助手席と運転席のドアが開いた。
 車内のライトに一瞬照らされたイズキの顔に、俺はやはり既視感を覚える。

「そもそも、拷問までして契約に同意させる必要があるのか。売り物の意思なんて関係なく売りさばくのが一般的だろ」

 助手席に座ったイズキが後部座席の俺を見てから、シートを倒した。

「『無理強いされた』のと『少なからず自ら同意した』のでは、売られた先での従順さが全然違うんですよ。同意を得るのは売買における大切なプロセスです。その点、ノウリくんにはいつもお世話になっています」
「……今日は同意させられなかったがな」
「報酬はきちんとお支払いしますから、ご安心ください」

 車にエンジンをかけながら三ツ木さんは今日の晩御飯について喋るかのように話し、ノウリは無表情のままなぜか手芸用の針に糸を通していて、話題を提供したはずのイズキは三ツ木さんの回答に驚きも感心もせずにカーナビを弄っている。

 どうしてこんな雑談みたいに拷問と人身売買の話をできるのか意味がわからない。わかりたくもないけど。

 俺が唇を噛んだまま黙っていると、ノウリが俺の腕を掴んだ。ノウリの持つ針が、皮膚に当てられる。それを見てやっと、針で切り傷を縫うつもりだとわかって、俺は暴れたら指を折られることも忘れて「ま、待ってください!」と身じろいだ。

「ノウリ。手当て中、うるさそうだから気絶させとけ」

 カーナビを見たまま発せられた言葉に俺が目を瞬くのと、ノウリの腕が首に回るのが同時だった。
 首に圧迫感を感じてすぐ、俺は目の前が暗転した。
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