性奴隷を拒否したらバーの社畜になった話

タタミ

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「須原くん、契約を飲む気はないということでいいですか」
「っ、さいしょから、飲む気なんて、ない」

  足掻きで睨み返すと、三ツ木さんは目線を外して電話相手に口を開いた。

「私です。少々トラブルが発生して、丙がダメになりました。はい、あぁそうです。甲を出します。この後対応終わり次第、私が同意させるので用意してください」

  通話を切って、満足か?と言いたげに肩をすくめた三ツ木さんを見て、イズキは再び「いくらだ」と聞いた。
 三ツ木さんが親指、人差し指、中指を立てる──俺にはこれがいくらなのかわからなかったが──と、イズキは「まぁ、いいだろう」と肩をすくめかえした。

「ここまで痛め付けられて、私に言い返したのは須原くんが初めてです」

  そう言って三ツ木さんは屈むと、俺の頭を撫でた。
  反射的に身体が強ばる。

「よく粘りましたね、須原くん。粘り勝ちです。初めて負けました」

  聖母のように微笑んでから、三ツ木さんは俺の頭を床に打ち付けた。目の前で火花が散って喉から呻き声が出る。

「おい、無駄に傷を増やすな」
「申し訳ありません。手が滑りました」

  言葉は謝っていても、三ツ木さんの態度も声音も表情も一切謝っていない。それに苦言を呈するでもなく、イズキは何か書き込んでいた紙をノウリに渡した。

「その金額でお前を雇う。こいつを車まで運んで、手当てしろ」
「承知した」
  
  ノウリが無機質に答えて、俺の腕を掴む。痛みに呻くのに構わず、ノウリは俺を土嚢のように肩に担いだ。

「すぐに脚の1本でも失った方が幸せだったと思えますよ、きっと」

  三ツ木さんの声が背中越しに聞こえた。

++
  外に運び出されると真っ暗な森が広がっていた。
  大きなワゴン車のそばに立っている男たち──おそらくノウリの部下──にノウリは「帰れ」と告げてから、黒塗りのレクサスに俺を乗せる。乗せる、というかほとんど肩から落とされた。

「脱げ」
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