性奴隷を拒否したらバーの社畜になった話

タタミ

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「正解です。安心しました。全然起きないから殴りどころが悪かったのかと心配していたんです」

 頭の中で何かが暴れているような痛みが邪魔して、何が起きているのか整理できない。新宿のど真ん中で頭を殴られて、それ以降の記憶がない。

「あ、の……これどういう状況……」
「あぁ、混乱していますよね。すみません。嘉指くん、手短に説明してあげてください」

 俺の髪を掴んだまま、三ツ木さんは嘉指に微笑みかけた。嘉指は「承知しました」と答えて煙草を灰皿に擦り付けながら立ち上がると、俺に2歩ほど近づいた。

「お前のスマホと俺のガラケー、どっちも三ツ木さんから支給されてるだろ」

 嘉指がスーツのポケットから黒いガラケーと俺のスマホを取り出して振ってみせた。
 俺のスマホは画面がバキバキに割れている。殴られたときに地面に落としてしまったようだ。

「この支給された電子機器は、三ツ木さんの端末で居場所を特定できるようになってんだわ」

 俺は頭痛に耐えながら、プライバシーの欠如に息を吐いた。

「ちんたらしてるお前を三ツ木さんの部下がお迎えに行ったわけよ。愛人の話をお前が承諾すればレクサスに乗って愛dollに帰れたのに、お前はバカだからぶん殴られてこうして事務所のパイプ椅子に縛り付けられてんだ」

 肩を揺らして笑う嘉指の下唇はざっくり切れて血が滲んでいた。よく見れば目の端も赤黒く鬱血している。赤字の制裁か知らないがありありと残る暴行の跡に、数分後の自分を見るようで耳鳴りがした。

「説明ありがとうございます。大体そういうことですが、何か質問はありますか?」
「……俺は……このまま、その客のところに連れて、行かれるんですか」 
「須原くんはお相手がどんな方か知りたいと仰ってましたよね」

 俺の声を無視して三ツ木さんは俺の髪から手を離した。

「お相手のお客様は、手広く事業を展開する企業の社長です。女性の方ですよ。人材斡旋を以前もさせていただたことがあって。今回のオーダーが『斡旋のカタログにいない、身寄りのない20歳前後の男性』だったので須原くんを紹介させていただいたんですが、えらく気に入ってくださったんです」

 大切なものを扱うように三ツ木さんの手が俺の頬を撫でて、俺の全身に鳥肌が立つ。

「お客様の持ち家で暮らすと言っても、料理洗濯などの雑用をする必要はありません。須原くんの仕事はお客様の性行為の相手をすることだけです。求められたときに必ず応じる、それだけですよ。少々特異な性癖──所謂欠損フェチの方なので、脚か腕が1本犠牲になりますが、それもちゃんとした外科医が切断を行ってくれますから安全です。なにより怪我をして余りある富を得られます。自由と引き換えに富を得るわけです。その辺の一般人が何を捨てても手に入らないほどの富ですよ」
「なに、何言ってんだ……あんた……そんなの聞いて『はい』なんて、言うと思ってんですか」
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