性奴隷を拒否したらバーの社畜になった話

タタミ

文字の大きさ
上 下
5 / 46

4

しおりを挟む
「……三ツ木さんが俺に、なんの用でしょうか?」
『ふふ、そんなに警戒しなくて大丈夫ですよ。誕生日だったでしょう、先週。おめでとうございます。何歳になりましたか?』
「ありがとうございます。20歳……です」
『まぁ、すっかり大人ですね、出会った頃は中学生くらいだったのに。昔はピアノを弾くのが好きでしたよね。今でも弾くんですか』
「いえ、寮にピアノないので」

 4畳のクソ狭い部屋しかない事故物件に『社員寮』と名付けた張本人が何を聞いてるんだ。

『ああ、そうでしたっけ。それじゃピアノのある生活が出来るくらい、人生に余裕が出るといいですよね』
「あの、待ってください。俺と世間話をするために電話をしてるんですか?」
『いえいえ、もちろん違います。実は須原くんに相談したいことがあって電話しました。今日店に来たのも、半分は須原くんと話したいからだったんですが、帰ってくるのが待ちきれなくて』

 三ツ木さんが持ちかける『相談』。
 死体洗いのバイト、かもしれないと思った。1度やって懲りたんだよなとか、まだ呑気に構えていた。

『人材斡旋業の方で昔からお付き合いのあるお客様に、須原くんが欲しいという方がいらっしゃいまして』
「人材斡旋業?派遣会社みたいなことですか?」
『そうですね、ただ派遣社員と違って買い切りです』
「買い切り?」
『分かりやすく言えば、そのお客様の持ち家で暮らす愛人になっていただきたいです』

 買い切りで愛人になっていただきたい?
 『相談』が想像だにしない方向のもので、俺は意味もなくご機嫌を取るための笑顔を浮かべていた。
 三ツ木さんが持ってきた話だ。どう考えても一般的な愛人をやればいいわけがなかった。
 
「え、ちょっと待ってください、それって」
『いきなりで驚きますよね。でも今より確実に良い生活が保証されます。給料を私に吸収されるどころかそもそも働く必要もなく、お客様のお金で死ぬまで暮らせます。本当は須原くんだって学校に行きたかったでしょう?そういったことも叶えていただけますよ』
「いや、あの、でも買い切りの愛人ってなにを──」
『本来なら須原くんに悩む時間を与えたいところなのですが、お得意様というのもあって少々お待たせしにくい案件なんです。なにより大変須原くんを気に入っておられて、断るのも難しくてですね』

 全く俺の言葉を聞く気がない。断る気はない、ということだ。
 断る気がないということは、俺はどっかの金持ちに売られてしまうということだった。
 ただの愛人契約の仕事なら、三ツ木さんがわざわざ店に来るはずがない。俺を売ると大きな利益がある取引だからわざわざ店にまで来ているんだろう、とクッキー缶を指でいじりながら考える。そうしないと落ち着いていられなかった。

「……俺の買い取り金額、俺の借金以上だったりしますか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

『霧原村』~少女達の遊戯が幽から土地に纏わる怪異を起こす~転校生渉の怪異事変~

潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。 渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。 《主人公は和也(語り部)となります。ライトノベルズ風のホラー物語です》

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...