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薄暗い部屋で、新坂は息を吐いて少し身じろいだ。
動いた分、体温で暖まっていない冷えたシーツが素肌に触れて、速まり続けていた心臓が少し落ち着く。好きな人とキスを繰り返して、肌を撫で合って、嘘みたいだと思う心と嘘ではない心音を感じているうちに新坂はベッドに身体を沈めていた。
蓋を閉める音がして、仰向けで天井を見ていた新坂は視線を足元に向けた。何も纏わない己の身体と、立てた膝の間に同じく肌を晒した瀬戸が見える。用意されていたローションのボトルを片手間にベッドサイドに置いた瀬戸は、新坂の脚の間に手を這わせた。
「痛かったら教えてください」
「うん、っ……」
返事と同時に、自分じゃない指が入ってくる。それが瀬戸のだと考えるだけで、新坂はどうにかなりそうだった。探るように動く指から、身体が快楽を拾い始める。口からは息だけでなく早々に声も出そうで、新坂は自分だけが盛り上がってしまうことに焦りを感じた。
(自分でやるよって言えばよかったかな)
浅い呼吸になりながらそんなことを頭の片隅で思っていると、瀬戸が顔を覗き込むようにしてくる。
「平気ですか?」
「っ大丈夫。でもユキトくんは、その、萎えない……?」
瀬戸は目を瞬いて、新坂はちょっと気まずくて目をそらした。その間にベッドが軋んで、身体を寄せた瀬戸が新坂の手を引く。
「そんなことない。ほら」
引かれた手は瀬戸の下腹部に当てられ、熱の存在感に新坂は反射的に顔を向けた。
(興奮してくれてるんだ、ちゃんと)
安堵と喜びが身体を走って、それがまた新坂を刺激する。瀬戸を見ると、『ね?』と言いたげに彼は首を傾げた。
「新坂さんはこっち」
握らされて、新坂が上下に手を動かし始めると中に入っていた指が動く。
「どこがいい?教えてください」
「も、すこし奥……」
素直に答えると、奥に進んだ指が壁を押し上げた。
「っあ、ッ……!」
好きな場所を押されて新坂の腰が跳ねて、瀬戸が嬉しそうな顔をする。
「ここ、気持ちいいですか」
「ぅん、いい……っ」
断続的に良いところを刺激され、息とは呼べない感じ入った声が口から出ていく。瀬戸の指が2本に増えたところで、新坂は急激に快楽の波が強まるのを感じた。
「っあ、これ、やば……ッ」
伝えきる余裕もなく、下半身が痙攣して新坂は喉をそらした。こんな簡単に甘イキしたのは初めで、新坂はこれ以上の快楽を拾ったら勝手に果てきってしまうと思って頭を振った。どうにか快感を消化して視線を戻すと、精液と先走りの中間のような半透明のものが腹に垂れるのがわかる。
「すごい、こんな出方するんだ」
「ッ、ちょ、待って」
瀬戸が糸を引く先端を撫でてきて、新坂は思わずその手を掴んだ。今刺激されたら本格的に達してしまう。
「もう俺大丈夫だから、早く、入れてほしい」
新坂としては他意などない純粋なお願いだったが、瀬戸を焚き付けてしまったようだった。
「……あんま、煽んないでください」
言いながらコンドームの包みを切った瀬戸は、ゴムを付けながら新坂にキスをする。瀬戸の顔を引き寄せるように手を添えてキスを返すと、熱を帯びたものが身体に割り込むのがわかった。
「っ、ユキトくん……ッ」
「新坂さん、っはぁ……」
熱い。
人工物ではない生きた体温を中に感じて、下腹部が勝手に浅く痙攣する。
全てを入れた瀬戸が刺激に眉を寄せて息を吐き、その情景が新坂をより昂らせた。
「中、大丈夫?」
欲の滲む両目に見下ろされて、新坂は言葉より先に頷く。
「っ……へいき、動いて」
許可が出てすぐ瀬戸は新坂にのし掛かるように覆い被さって、腰を押し付けた。奥に当たる感覚が新坂の身体を震えさせて、既に要領を掴んでいる瀬戸はそこを擦るために動く。
「ぁ、っは、ぁあ……ッ」
瀬戸が動くたびに新坂は声が出て、止められなかった。開いたままの口に瀬戸の舌が入ってきて、気持ちいいことしか分からなくなっていく。
「んっ……こえ、俺の声、いやじゃない……っ?」
唇が離れた僅かの間に、新坂は瀬戸を見上げて聞いた。最後の理性だった。
「嫌じゃないです。もっと聞きたい」
瀬戸がこめかみにキスを落とす。「聞かせて」と耳元に熱い吐息がかかり、新坂の喉が鳴った。同時に理性は消え去っていた。
名前を呼んで抱き締めて、「好き」だとうわ言を繰り返す。瀬戸は新坂の全てを受け止めて返し、新坂は与えられる愛で溶けてしまいそうだった。
2人は境界線を失ったように、どこまでも深く互いを求め続けた。
動いた分、体温で暖まっていない冷えたシーツが素肌に触れて、速まり続けていた心臓が少し落ち着く。好きな人とキスを繰り返して、肌を撫で合って、嘘みたいだと思う心と嘘ではない心音を感じているうちに新坂はベッドに身体を沈めていた。
蓋を閉める音がして、仰向けで天井を見ていた新坂は視線を足元に向けた。何も纏わない己の身体と、立てた膝の間に同じく肌を晒した瀬戸が見える。用意されていたローションのボトルを片手間にベッドサイドに置いた瀬戸は、新坂の脚の間に手を這わせた。
「痛かったら教えてください」
「うん、っ……」
返事と同時に、自分じゃない指が入ってくる。それが瀬戸のだと考えるだけで、新坂はどうにかなりそうだった。探るように動く指から、身体が快楽を拾い始める。口からは息だけでなく早々に声も出そうで、新坂は自分だけが盛り上がってしまうことに焦りを感じた。
(自分でやるよって言えばよかったかな)
浅い呼吸になりながらそんなことを頭の片隅で思っていると、瀬戸が顔を覗き込むようにしてくる。
「平気ですか?」
「っ大丈夫。でもユキトくんは、その、萎えない……?」
瀬戸は目を瞬いて、新坂はちょっと気まずくて目をそらした。その間にベッドが軋んで、身体を寄せた瀬戸が新坂の手を引く。
「そんなことない。ほら」
引かれた手は瀬戸の下腹部に当てられ、熱の存在感に新坂は反射的に顔を向けた。
(興奮してくれてるんだ、ちゃんと)
安堵と喜びが身体を走って、それがまた新坂を刺激する。瀬戸を見ると、『ね?』と言いたげに彼は首を傾げた。
「新坂さんはこっち」
握らされて、新坂が上下に手を動かし始めると中に入っていた指が動く。
「どこがいい?教えてください」
「も、すこし奥……」
素直に答えると、奥に進んだ指が壁を押し上げた。
「っあ、ッ……!」
好きな場所を押されて新坂の腰が跳ねて、瀬戸が嬉しそうな顔をする。
「ここ、気持ちいいですか」
「ぅん、いい……っ」
断続的に良いところを刺激され、息とは呼べない感じ入った声が口から出ていく。瀬戸の指が2本に増えたところで、新坂は急激に快楽の波が強まるのを感じた。
「っあ、これ、やば……ッ」
伝えきる余裕もなく、下半身が痙攣して新坂は喉をそらした。こんな簡単に甘イキしたのは初めで、新坂はこれ以上の快楽を拾ったら勝手に果てきってしまうと思って頭を振った。どうにか快感を消化して視線を戻すと、精液と先走りの中間のような半透明のものが腹に垂れるのがわかる。
「すごい、こんな出方するんだ」
「ッ、ちょ、待って」
瀬戸が糸を引く先端を撫でてきて、新坂は思わずその手を掴んだ。今刺激されたら本格的に達してしまう。
「もう俺大丈夫だから、早く、入れてほしい」
新坂としては他意などない純粋なお願いだったが、瀬戸を焚き付けてしまったようだった。
「……あんま、煽んないでください」
言いながらコンドームの包みを切った瀬戸は、ゴムを付けながら新坂にキスをする。瀬戸の顔を引き寄せるように手を添えてキスを返すと、熱を帯びたものが身体に割り込むのがわかった。
「っ、ユキトくん……ッ」
「新坂さん、っはぁ……」
熱い。
人工物ではない生きた体温を中に感じて、下腹部が勝手に浅く痙攣する。
全てを入れた瀬戸が刺激に眉を寄せて息を吐き、その情景が新坂をより昂らせた。
「中、大丈夫?」
欲の滲む両目に見下ろされて、新坂は言葉より先に頷く。
「っ……へいき、動いて」
許可が出てすぐ瀬戸は新坂にのし掛かるように覆い被さって、腰を押し付けた。奥に当たる感覚が新坂の身体を震えさせて、既に要領を掴んでいる瀬戸はそこを擦るために動く。
「ぁ、っは、ぁあ……ッ」
瀬戸が動くたびに新坂は声が出て、止められなかった。開いたままの口に瀬戸の舌が入ってきて、気持ちいいことしか分からなくなっていく。
「んっ……こえ、俺の声、いやじゃない……っ?」
唇が離れた僅かの間に、新坂は瀬戸を見上げて聞いた。最後の理性だった。
「嫌じゃないです。もっと聞きたい」
瀬戸がこめかみにキスを落とす。「聞かせて」と耳元に熱い吐息がかかり、新坂の喉が鳴った。同時に理性は消え去っていた。
名前を呼んで抱き締めて、「好き」だとうわ言を繰り返す。瀬戸は新坂の全てを受け止めて返し、新坂は与えられる愛で溶けてしまいそうだった。
2人は境界線を失ったように、どこまでも深く互いを求め続けた。
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