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宮城旭
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シェアハウスにつき、飲み物を取りに行った栄智を置いて、俺は先に自室に入る。ビニール袋をテーブルに置き、いつかのセフレに貰ったネクタイを緩めていると、コップとコーラを持った栄智がドアのところで立ち止まっていた。
「なにしてんの」
「……いや何でも。ドア閉める」
どこか不自然な動作で持ち物をテーブルに置くと、ソファに座る。たかが服を脱ぎかけているだけなのに反応してしまう姿に、つい笑みが漏れる。ネクタイをほどきながら、栄智のそばに座ると、俺は彼の顔を覗き込んだ。
「もしかして、脱いでるのにドキドキした?」
「しねーわ、そんなことじゃ」
平静を保っているように見せているが、全然目を合わせようとしない。強がっているのが丸わかりなのが楽しくて、俺は栄智の顔を追いかける。
「えーいち?」
ソファを座り直して覗き込むが、栄智は身をよじるようにして俺を避けた。避けたことでこちらを向いた耳に顔を寄せ、わざと息をかけながら囁く。
「ねぇ、なんで逃げんだよ」
「あーもう!やめろって!セクハラだろ」
顔を赤くしてこっちを睨む栄智を見て、俺は笑みを浮かべたまま体を離した。性格が良くないので、栄智の好意を利用したイタズラをすることが多い。
栄智から告白されて付き合うことになったのが3か月ほど前だ。俺は相手が高校生であることの配慮もなしに、キスできたしセックスもできるかと遠慮なく関係を持って今に至っている。黒島さんあたりにバレたらちゃんと怒られそうなあれやこれやを、栄智に教えてしまっていた。
「栄智はほんと可愛いね~素直じゃないとこも含めて」
「そういうこと言われっから嫌なんだよ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、顔は上気したままの栄智は、やはり可愛かった。
今までの人生で『可愛い』という感情を男に対して抱いたことはなかったが、栄智は別だった。栄智の顔がいくら整っていても中性的なわけじゃないし、ギリギリ敬語なだけで口も悪いのに、俺は栄智を可愛いと感じていた。理由は単純で、栄智のことをちゃんと好きになっていたからだ。恋愛感情というのは偉大である。
「栄智が可愛いのはデフォだから」
「俺はカッコいいと思われたいんですけど」
ジロリとこちらを見る恋人を横目に、俺は買ってきた缶チューハイを開けた。
「はーい、じゃあ栄智のカッコよさに乾杯」
「おい、適当に流すな」
そう言いながらもコーラのグラスを持ち上げてくれる栄智は優しい。
グラスに軽く缶を当てて、チューハイを飲む。金曜の夜に相応しい味がして何だか心に染みた。いや、染みると感じるような歳になっただけかもしれないけど。
栄智はというと、コーラを飲むのもそこそこに、俺がテーブルに置いたレジ袋を漁り出していた。何が目当てなのか見ていると、ポッキーを取り出した栄智と目が合う。一瞬手の内のポッキーを見てから「……旭さんのだった?」と困ったように聞くのが可愛くて、笑いをこらえるのが大変だった。
ポッキーの権利を栄智に譲渡した後、酒を飲みながら他愛のない話をして時間を過ごす。最近の会社の話とか、競馬に負けた話とか、そんなどこでも出来るような普通の話。でも気兼ねなくこういう話が出来る相手が俺には少なくて、ただただ楽しい時間だった。
栄智が2袋目のポッキーを開け、俺が缶チューハイ3本目に手をつけた頃、ふと会話が途切れた。10秒程の沈黙の後、多少酔いが回った俺は、栄智を眺めながらその唇に触れた。少し体を強張らせた栄智は、ゆっくりとこちらを見る。そのまま顔を寄せると、栄智は素直に目を閉じた。薄い唇に触れるだけのキスをして、すぐにまた唇を重ね合う。啄むように唇を食むと、栄智は浅く息を漏らした。
ちゅ、とわざと音をさせて唇を離せば、少し名残惜しそうな顔をした栄智がいる。明日は休みだし今すぐ性行為に耽っても良かったが、俺は一旦傾けていた体を元に戻した。
「……旭さん」
追うように俺のシャツを掴む栄智の手を握って離させると、俺は笑みを浮かべてシャツのボタンを外し始める。
「まず風呂入ろ」
「は?」
ボタンを外した俺の手に期待を向けていた栄智は、その提案にすぐに眉を寄せた。
「……別に入んなくても。今までそんなの気にしたことないじゃないすか」
「まぁそれはそうだけど。たまには一緒に入ろうよ。生活サイクル合わないから何だかんだ一緒に入ったことないじゃん」
俺がそう言うと、一瞬ポカンとした栄智は顔をひきつらせて俺から距離をとった。
「いや無理。絶対変なことするだろ旭さん。人来るかも知れねーとこで旭さんの相手すんのは無理」
「え~もう遅いし誰もいないって。大丈夫大丈夫」
「そんなのわかんないでしょ。つーか変なことするのは否定しねーのかよ……」
栄智は『変なこと』と言ったが、要するに俺は『探求心』が強い。栄智の感じるポイントを知りたくて、ついついしつこいセックスを仕掛けがちだった。栄智自身、行為中は悦んでいるように見えるが、射精後の理性的な脳で振り返れば年上の変態に翻弄されて醜態をさらすはめになっていると思えるのかもしれない。
ため息と共に顔をそらした栄智を追いかけるように、彼の頬を両手で包んだ。
「お願いだから」
「……お願いしたら、俺がなんでも許すと思ってんですか」
「ダメなの?」
目線を合わせて、少し困った顔をしてみせる。栄智が俺の困り顔に弱いことは重々承知していた。しばらくこちらを睨んでいた栄智は、聞こえるように舌打ちをして頭を引っ掻くと「人前で変なことしたら許さねーから」と念を押して俺の体を押し返した。
「なにしてんの」
「……いや何でも。ドア閉める」
どこか不自然な動作で持ち物をテーブルに置くと、ソファに座る。たかが服を脱ぎかけているだけなのに反応してしまう姿に、つい笑みが漏れる。ネクタイをほどきながら、栄智のそばに座ると、俺は彼の顔を覗き込んだ。
「もしかして、脱いでるのにドキドキした?」
「しねーわ、そんなことじゃ」
平静を保っているように見せているが、全然目を合わせようとしない。強がっているのが丸わかりなのが楽しくて、俺は栄智の顔を追いかける。
「えーいち?」
ソファを座り直して覗き込むが、栄智は身をよじるようにして俺を避けた。避けたことでこちらを向いた耳に顔を寄せ、わざと息をかけながら囁く。
「ねぇ、なんで逃げんだよ」
「あーもう!やめろって!セクハラだろ」
顔を赤くしてこっちを睨む栄智を見て、俺は笑みを浮かべたまま体を離した。性格が良くないので、栄智の好意を利用したイタズラをすることが多い。
栄智から告白されて付き合うことになったのが3か月ほど前だ。俺は相手が高校生であることの配慮もなしに、キスできたしセックスもできるかと遠慮なく関係を持って今に至っている。黒島さんあたりにバレたらちゃんと怒られそうなあれやこれやを、栄智に教えてしまっていた。
「栄智はほんと可愛いね~素直じゃないとこも含めて」
「そういうこと言われっから嫌なんだよ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、顔は上気したままの栄智は、やはり可愛かった。
今までの人生で『可愛い』という感情を男に対して抱いたことはなかったが、栄智は別だった。栄智の顔がいくら整っていても中性的なわけじゃないし、ギリギリ敬語なだけで口も悪いのに、俺は栄智を可愛いと感じていた。理由は単純で、栄智のことをちゃんと好きになっていたからだ。恋愛感情というのは偉大である。
「栄智が可愛いのはデフォだから」
「俺はカッコいいと思われたいんですけど」
ジロリとこちらを見る恋人を横目に、俺は買ってきた缶チューハイを開けた。
「はーい、じゃあ栄智のカッコよさに乾杯」
「おい、適当に流すな」
そう言いながらもコーラのグラスを持ち上げてくれる栄智は優しい。
グラスに軽く缶を当てて、チューハイを飲む。金曜の夜に相応しい味がして何だか心に染みた。いや、染みると感じるような歳になっただけかもしれないけど。
栄智はというと、コーラを飲むのもそこそこに、俺がテーブルに置いたレジ袋を漁り出していた。何が目当てなのか見ていると、ポッキーを取り出した栄智と目が合う。一瞬手の内のポッキーを見てから「……旭さんのだった?」と困ったように聞くのが可愛くて、笑いをこらえるのが大変だった。
ポッキーの権利を栄智に譲渡した後、酒を飲みながら他愛のない話をして時間を過ごす。最近の会社の話とか、競馬に負けた話とか、そんなどこでも出来るような普通の話。でも気兼ねなくこういう話が出来る相手が俺には少なくて、ただただ楽しい時間だった。
栄智が2袋目のポッキーを開け、俺が缶チューハイ3本目に手をつけた頃、ふと会話が途切れた。10秒程の沈黙の後、多少酔いが回った俺は、栄智を眺めながらその唇に触れた。少し体を強張らせた栄智は、ゆっくりとこちらを見る。そのまま顔を寄せると、栄智は素直に目を閉じた。薄い唇に触れるだけのキスをして、すぐにまた唇を重ね合う。啄むように唇を食むと、栄智は浅く息を漏らした。
ちゅ、とわざと音をさせて唇を離せば、少し名残惜しそうな顔をした栄智がいる。明日は休みだし今すぐ性行為に耽っても良かったが、俺は一旦傾けていた体を元に戻した。
「……旭さん」
追うように俺のシャツを掴む栄智の手を握って離させると、俺は笑みを浮かべてシャツのボタンを外し始める。
「まず風呂入ろ」
「は?」
ボタンを外した俺の手に期待を向けていた栄智は、その提案にすぐに眉を寄せた。
「……別に入んなくても。今までそんなの気にしたことないじゃないすか」
「まぁそれはそうだけど。たまには一緒に入ろうよ。生活サイクル合わないから何だかんだ一緒に入ったことないじゃん」
俺がそう言うと、一瞬ポカンとした栄智は顔をひきつらせて俺から距離をとった。
「いや無理。絶対変なことするだろ旭さん。人来るかも知れねーとこで旭さんの相手すんのは無理」
「え~もう遅いし誰もいないって。大丈夫大丈夫」
「そんなのわかんないでしょ。つーか変なことするのは否定しねーのかよ……」
栄智は『変なこと』と言ったが、要するに俺は『探求心』が強い。栄智の感じるポイントを知りたくて、ついついしつこいセックスを仕掛けがちだった。栄智自身、行為中は悦んでいるように見えるが、射精後の理性的な脳で振り返れば年上の変態に翻弄されて醜態をさらすはめになっていると思えるのかもしれない。
ため息と共に顔をそらした栄智を追いかけるように、彼の頬を両手で包んだ。
「お願いだから」
「……お願いしたら、俺がなんでも許すと思ってんですか」
「ダメなの?」
目線を合わせて、少し困った顔をしてみせる。栄智が俺の困り顔に弱いことは重々承知していた。しばらくこちらを睨んでいた栄智は、聞こえるように舌打ちをして頭を引っ掻くと「人前で変なことしたら許さねーから」と念を押して俺の体を押し返した。
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