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35.ルシャナ

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 自分の体重で一気に沈み込めば、きっと入るはず。


 中腰になり、グッと入れようとするのだが、全く入らないどころかつるりと滑って、マンフリートの大事なモノを落としてしまった。

「あ……」


 何度も試みるが、まったく入る気配すらないどころか、どんどんマンフリートのものも硬度を失い、完全にふにゃふにゃになってしまった。

「僕、じゃだめなのですか?」


 魅力がないから、硬くなってくれないのだ。とうとう感極まってマンフリートの腰に跨がったまま涙が出てきて、しまいには彼の胸に抱きついたまま、堪えきれずに泣いてしまった。


「な、んで……っ、も、だめ……っ、嫌われ、たかも」


 そんなことはないと頭を撫でてくれるが、今のルシャナにそれは虚しいだけだ。


「じゃ、最後まで抱いて、ください……っ、僕の、こと、好きな、ら……っ」


 嗚咽おえつを漏らしたあげくに、しゃっくりまで出てきて、挫くじけそうだ。でも、やはり今日完遂しなければ、自分の気力も持たないだろう。


 ルシャナらしかぬ癇癪に、マンフリートもどうしてよいのかわからず、おろおろするばかりだ。天下の将軍も、妻の前では形無しだ。


「だから、ルシャナのことを本気で愛しているから、また、血に染めてしまったらと思うと、怖いんだ」


「マンフリート様。僕、癒しの力が、あるの、知ってますよね? それに、痛みを気にしてくれるなら、魔法、使っていいですから……」


 宝物のように、大切に、いつまでも真綿に包むような愛で、包んでやりたいんだ、と何度も言う彼に、業を煮やしたのはルシャナだ。


 それはただの彼の自己満足と、目の前のルシャナではない、人形のルシャナに思えてしかたがないからだ。生身の自分はここだと主張したいのだ。


「痛いって、ちゃんと、言いますから、いやだったら、途中で止めてって言います……」


 その一言で、マンフリートは、ようやく納得して、そしてポジションを移動した。


(ああ、ようやく、愛する旦那様と一つになれるんだ)


 怖いという思いより、そちらのほうが断然強いのだ。


 マンフリートは少し躊躇ってから、でも観念したのかキスの雨を顔に降らせてくれた。そして、今までにない手の動きに、ルシャナはあっという間に快楽の渦に呑まれていった。


「あぁ! あっ」


 勝手に漏れる声が部屋中に響き渡り、正直恥ずかしかったが、声は殺さないようにした。


 どこを触られようと、すべてが気持ちいいのに、マンフリートは両胸にキスを落とし、それから軽く噛んだり、引っ張ったり、ときには捏ねくり回されているうちに、じんじんと腫れ上がるような、熱を先端に感じて、フーッと息を吹きかけられただけで、反応してしまう。


「感度が、いいな」


 ようやく一言そう言って笑ったマンフリートにも、いつもの余裕が生まれてきた。彼も覚悟を決めたのか、ちゃんと気持ちよくなるようにしてくれている。


「だ、って、マンフリート様の、手がっ、あぁぁ!」


 そしてついにルシャナのものに手が伸びてくる。玉を転がされ、手の中にすっぽり収まったものを扱かれ、でも緩くてぜんぜんいけそうになくて……。


「ね、もっと、強く、お願い、します……」


「少し、我慢できるか?」


 頷くと、両足を一括りにされたかと思うと、腰の下にクッションを敷かれて、恥ずかしい格好で窄まりが彼も目の前に来てしまう。


(恥ずかしい、でも……)


 期待をこめて、彼が何をするのかと見ていると、いきなり蕾の周辺を舐め始めたではないか。

しかも一舐めされただけで、甘い痺れが下半身とつま先に走るのだ。


 自分でもどこから声が出ているのかと思うほど、甘ったるい嬌声に、思わず口を塞いでしまう。

「ダメだ、もっと声を、聞かせて」


 さっきまでの遠慮が嘘のように、積極的になったマンフリート。気が変わらないように、言うとおりにする。といっても、すでにどうしようもないほど声は勝手に出てしまう。


 容赦なく舌で攻められて、為す術もなくただ喘いでいるだけのルシャナ。程なくして指が差し入れられ、じんじんと血液が逆流するように一点に集中し、続いて奥まで何本もの指が内部を縦横無尽に動き回る。


「あっ? うぁっ……な、に、ああぁ!」


 触れるたびに体の奥からせり上がるような快感に、ルシャナのものは完全に立ち上がり、淫液が内股まで垂れている。


 かなり長い間鈍い快感が長引き、つらくて、もうどうにかしてほしくて、涙が溢れてもマンフリートは大丈夫だからと言って、止めてはくれなかった。


「なんとか、あぁ……っ、して、くださいっ、あぁ」


 内部はもうどこに触れても危険なくらいうねりをあげて、マンフリートの指を引き留めようとしているのだが、彼は抜いてしまった。


「あ……、な、んで」


 涙と快感で視界がぼやけているのだが、ぴたりと蕾に当てられたモノが何か分かった途端に、ルシャナは喜びしかなかった。これでようやく彼と一つになれるのだという思いが、マンフリートに伝わったのだろう。


「入れるぞ」


 蕾の入り口に押し当てられた彼のものはひどく熱く、硬く、彼もまた相当我慢していたのだと知る。


「あぁ!」


 ゆっくりと彼の巨大なものがゆっくりと入ってくる。

 十分解してもなお、その太さと大きさは尋常ではなく、ルシャナは涙が出そうだったが、息を止めずに彼をしっかりと受け止めているのだ。

 一番太いカリの部分がすんなり入ると、あとはスッと入る。


 しかしここまででもルシャナの様子を見ながら、ゆっくりと入れてくれているのがわかる。相当つらいはずなのに、彼はここでも忍耐力を発揮するのだ。


「ぜ、んぶ、入りまし、た?」


「……ああ」


「よかった、も、大丈夫です、痛く、ないですから、動いて……くださいっ」


 気遣わしげにルシャナの表情を一つも漏らさないように観察するマンフリート。こんなに愛してくれる旦那様が他にいるだろうか?


 愛おしくて、彼の額の汗を手で拭ってやると、優しく微笑まれ、唇にキスを落としてくれる。

甘い。とにかく、甘い。どこまでも甘い。


 完全にルシャナから緊張が引いたのを感じたマンフリートは、ゆっくりと抜き差しを始めた。彼の太いもので快感のツボを擦られると、それだけでルシャナの頭は真っ白になって、もはや淫らな声しか出せなくなっている。


 こんなに気持ちの良いものだとは思わなかったルシャナは、どこまでこの快楽が続くのか、怖くて堪らずにマンフリートに抱きついたのだが、彼のリズムに合わせて自分の腰も動いていることに、まだ気づいていない。


 体は悦びにひたすら忠実だ。動きもかなり激しくなり、マンフリートは同時にルシャナの滾ったものを上下に擦っているので、たまったものではない。


こんなの正気のときにできるわけがない。

二人は互いを高め合うことだけに集中する。


「あぁ、マンフリート、様……っ、もう、無理、あぁ!」


 頭が真っ白くなり、堪えられなくなり、


「俺も、もう限界、だ」


 擦られて感覚も麻痺してきて、それはいきなりやってきた。


「あぁっ、ああ……あぁ!」


 ルシャナの立ち上がっているものから勢いよく愛液が吐き出されるのとほぼ同時に、キューッと締め付けたのだろう、マンフリートも苦しそうに、最後の一突きをした瞬間、


「…………っ!」

 ルシャナのもっとも深い部分に、マンフリートの熱い飛沫が放たれた。


 トクントクンとまだあまり硬度を失っていない彼の硬くて熱いものが、脈打っているのを感じる。

ルシャナの中でその鼓動が一打ちされるたび、ピクピクと伝わってくる。


 ゆっくりと引き抜かれていくマンフリートに、ほんの少し寂寥感せきりょうかんを覚えた。

 バタリとルシャナに覆い被さるようにして倒れ込んだ。その重みこそが愛の重みだと思った。二人はようやく壁を乗り越えたのだ。


 うれしくて、涙が止まらなかった。


 これで二人は本当の夫婦になれたのだ。


「愛してるっ、ルシャナ……っ、ありがとう」


 横にごろりとなり、こちらを向いて、マンフリートはそう言ってくれた。ルシャナは握り締めている手をさらにキュッと握り、

「ありが、とう、ございます。マンフリート様、僕、うれしくて……うっ」


「俺に勇気がなくて、すまなかった」


 ルシャナも何か言いたいのに、ただ泣き笑いをするばかりだ。嗚咽で言葉が出てこないが、思いは十分に伝わったはずだ。


 疲れ切ってはいるが、心はこれ以上ないくらい満たされていて、ルシャナは幸せだった。


 もっと余韻にひたっていたいのに、緊張の糸が切れたせいか、急に眠気が襲ってきた。でも、まだ二人で話したいことがいっぱいあるのに……。


 意識が遠のく寸前で、愛してる、おやすみ、奥さん、そう聞こえたのが最後だった。
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