強面な将軍は花嫁を愛でる

小町もなか

文字の大きさ
上 下
35 / 43

35.ルシャナ

しおりを挟む
 自分の体重で一気に沈み込めば、きっと入るはず。


 中腰になり、グッと入れようとするのだが、全く入らないどころかつるりと滑って、マンフリートの大事なモノを落としてしまった。

「あ……」


 何度も試みるが、まったく入る気配すらないどころか、どんどんマンフリートのものも硬度を失い、完全にふにゃふにゃになってしまった。

「僕、じゃだめなのですか?」


 魅力がないから、硬くなってくれないのだ。とうとう感極まってマンフリートの腰に跨がったまま涙が出てきて、しまいには彼の胸に抱きついたまま、堪えきれずに泣いてしまった。


「な、んで……っ、も、だめ……っ、嫌われ、たかも」


 そんなことはないと頭を撫でてくれるが、今のルシャナにそれは虚しいだけだ。


「じゃ、最後まで抱いて、ください……っ、僕の、こと、好きな、ら……っ」


 嗚咽おえつを漏らしたあげくに、しゃっくりまで出てきて、挫くじけそうだ。でも、やはり今日完遂しなければ、自分の気力も持たないだろう。


 ルシャナらしかぬ癇癪に、マンフリートもどうしてよいのかわからず、おろおろするばかりだ。天下の将軍も、妻の前では形無しだ。


「だから、ルシャナのことを本気で愛しているから、また、血に染めてしまったらと思うと、怖いんだ」


「マンフリート様。僕、癒しの力が、あるの、知ってますよね? それに、痛みを気にしてくれるなら、魔法、使っていいですから……」


 宝物のように、大切に、いつまでも真綿に包むような愛で、包んでやりたいんだ、と何度も言う彼に、業を煮やしたのはルシャナだ。


 それはただの彼の自己満足と、目の前のルシャナではない、人形のルシャナに思えてしかたがないからだ。生身の自分はここだと主張したいのだ。


「痛いって、ちゃんと、言いますから、いやだったら、途中で止めてって言います……」


 その一言で、マンフリートは、ようやく納得して、そしてポジションを移動した。


(ああ、ようやく、愛する旦那様と一つになれるんだ)


 怖いという思いより、そちらのほうが断然強いのだ。


 マンフリートは少し躊躇ってから、でも観念したのかキスの雨を顔に降らせてくれた。そして、今までにない手の動きに、ルシャナはあっという間に快楽の渦に呑まれていった。


「あぁ! あっ」


 勝手に漏れる声が部屋中に響き渡り、正直恥ずかしかったが、声は殺さないようにした。


 どこを触られようと、すべてが気持ちいいのに、マンフリートは両胸にキスを落とし、それから軽く噛んだり、引っ張ったり、ときには捏ねくり回されているうちに、じんじんと腫れ上がるような、熱を先端に感じて、フーッと息を吹きかけられただけで、反応してしまう。


「感度が、いいな」


 ようやく一言そう言って笑ったマンフリートにも、いつもの余裕が生まれてきた。彼も覚悟を決めたのか、ちゃんと気持ちよくなるようにしてくれている。


「だ、って、マンフリート様の、手がっ、あぁぁ!」


 そしてついにルシャナのものに手が伸びてくる。玉を転がされ、手の中にすっぽり収まったものを扱かれ、でも緩くてぜんぜんいけそうになくて……。


「ね、もっと、強く、お願い、します……」


「少し、我慢できるか?」


 頷くと、両足を一括りにされたかと思うと、腰の下にクッションを敷かれて、恥ずかしい格好で窄まりが彼も目の前に来てしまう。


(恥ずかしい、でも……)


 期待をこめて、彼が何をするのかと見ていると、いきなり蕾の周辺を舐め始めたではないか。

しかも一舐めされただけで、甘い痺れが下半身とつま先に走るのだ。


 自分でもどこから声が出ているのかと思うほど、甘ったるい嬌声に、思わず口を塞いでしまう。

「ダメだ、もっと声を、聞かせて」


 さっきまでの遠慮が嘘のように、積極的になったマンフリート。気が変わらないように、言うとおりにする。といっても、すでにどうしようもないほど声は勝手に出てしまう。


 容赦なく舌で攻められて、為す術もなくただ喘いでいるだけのルシャナ。程なくして指が差し入れられ、じんじんと血液が逆流するように一点に集中し、続いて奥まで何本もの指が内部を縦横無尽に動き回る。


「あっ? うぁっ……な、に、ああぁ!」


 触れるたびに体の奥からせり上がるような快感に、ルシャナのものは完全に立ち上がり、淫液が内股まで垂れている。


 かなり長い間鈍い快感が長引き、つらくて、もうどうにかしてほしくて、涙が溢れてもマンフリートは大丈夫だからと言って、止めてはくれなかった。


「なんとか、あぁ……っ、して、くださいっ、あぁ」


 内部はもうどこに触れても危険なくらいうねりをあげて、マンフリートの指を引き留めようとしているのだが、彼は抜いてしまった。


「あ……、な、んで」


 涙と快感で視界がぼやけているのだが、ぴたりと蕾に当てられたモノが何か分かった途端に、ルシャナは喜びしかなかった。これでようやく彼と一つになれるのだという思いが、マンフリートに伝わったのだろう。


「入れるぞ」


 蕾の入り口に押し当てられた彼のものはひどく熱く、硬く、彼もまた相当我慢していたのだと知る。


「あぁ!」


 ゆっくりと彼の巨大なものがゆっくりと入ってくる。

 十分解してもなお、その太さと大きさは尋常ではなく、ルシャナは涙が出そうだったが、息を止めずに彼をしっかりと受け止めているのだ。

 一番太いカリの部分がすんなり入ると、あとはスッと入る。


 しかしここまででもルシャナの様子を見ながら、ゆっくりと入れてくれているのがわかる。相当つらいはずなのに、彼はここでも忍耐力を発揮するのだ。


「ぜ、んぶ、入りまし、た?」


「……ああ」


「よかった、も、大丈夫です、痛く、ないですから、動いて……くださいっ」


 気遣わしげにルシャナの表情を一つも漏らさないように観察するマンフリート。こんなに愛してくれる旦那様が他にいるだろうか?


 愛おしくて、彼の額の汗を手で拭ってやると、優しく微笑まれ、唇にキスを落としてくれる。

甘い。とにかく、甘い。どこまでも甘い。


 完全にルシャナから緊張が引いたのを感じたマンフリートは、ゆっくりと抜き差しを始めた。彼の太いもので快感のツボを擦られると、それだけでルシャナの頭は真っ白になって、もはや淫らな声しか出せなくなっている。


 こんなに気持ちの良いものだとは思わなかったルシャナは、どこまでこの快楽が続くのか、怖くて堪らずにマンフリートに抱きついたのだが、彼のリズムに合わせて自分の腰も動いていることに、まだ気づいていない。


 体は悦びにひたすら忠実だ。動きもかなり激しくなり、マンフリートは同時にルシャナの滾ったものを上下に擦っているので、たまったものではない。


こんなの正気のときにできるわけがない。

二人は互いを高め合うことだけに集中する。


「あぁ、マンフリート、様……っ、もう、無理、あぁ!」


 頭が真っ白くなり、堪えられなくなり、


「俺も、もう限界、だ」


 擦られて感覚も麻痺してきて、それはいきなりやってきた。


「あぁっ、ああ……あぁ!」


 ルシャナの立ち上がっているものから勢いよく愛液が吐き出されるのとほぼ同時に、キューッと締め付けたのだろう、マンフリートも苦しそうに、最後の一突きをした瞬間、


「…………っ!」

 ルシャナのもっとも深い部分に、マンフリートの熱い飛沫が放たれた。


 トクントクンとまだあまり硬度を失っていない彼の硬くて熱いものが、脈打っているのを感じる。

ルシャナの中でその鼓動が一打ちされるたび、ピクピクと伝わってくる。


 ゆっくりと引き抜かれていくマンフリートに、ほんの少し寂寥感せきりょうかんを覚えた。

 バタリとルシャナに覆い被さるようにして倒れ込んだ。その重みこそが愛の重みだと思った。二人はようやく壁を乗り越えたのだ。


 うれしくて、涙が止まらなかった。


 これで二人は本当の夫婦になれたのだ。


「愛してるっ、ルシャナ……っ、ありがとう」


 横にごろりとなり、こちらを向いて、マンフリートはそう言ってくれた。ルシャナは握り締めている手をさらにキュッと握り、

「ありが、とう、ございます。マンフリート様、僕、うれしくて……うっ」


「俺に勇気がなくて、すまなかった」


 ルシャナも何か言いたいのに、ただ泣き笑いをするばかりだ。嗚咽で言葉が出てこないが、思いは十分に伝わったはずだ。


 疲れ切ってはいるが、心はこれ以上ないくらい満たされていて、ルシャナは幸せだった。


 もっと余韻にひたっていたいのに、緊張の糸が切れたせいか、急に眠気が襲ってきた。でも、まだ二人で話したいことがいっぱいあるのに……。


 意識が遠のく寸前で、愛してる、おやすみ、奥さん、そう聞こえたのが最後だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

負けず嫌いオメガは、幼なじみアルファの腕のなか

こたま
BL
お隣同士のベータ家庭に、同じ頃二人の男の子が産まれた。何でも一緒に競いあって育った二人だが、アルファとオメガであると診断され、関係が変わっていく。包容美形アルファ攻×頑張るかわいいオメガ受

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。 オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。 地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

猫の王子は最強の竜帝陛下に食べられたくない

muku
BL
 猫の国の第五王子ミカは、片目の色が違うことで兄達から迫害されていた。戦勝国である鼠の国に差し出され、囚われているところへ、ある日竜帝セライナがやって来る。  竜族は獣人の中でも最強の種族で、セライナに引き取られたミカは竜族の住む島で生活することに。  猫が大好きな竜族達にちやほやされるミカだったが、どうしても受け入れられないことがあった。  どうやら自分は竜帝セライナの「エサ」として連れてこられたらしく、どうしても食べられたくないミカは、それを回避しようと奮闘するのだが――。  勘違いから始まる、獣人BLファンタジー。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...