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13.マンフリート
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「マンフリート、そろそろ始めますよ。了承してもらえましたか?」
「いや……まだだ」
そう言いかけたとき、突然ルシャナが苦しそうに胸を抑えている。
「どけ、マンフリート」
ラウル王はすぐさまルシャナに駆け寄り、魔法をかける。少し楽になったようで、何もできることのないマンフリートは、せめてもとハンカチで額の汗を拭ってやる。
ルシャナは不安な表情を浮かべてマンフリートを見上げ、何かを言おうとしているようだが、もう口を開く気力もないのだろう。
「大丈夫だ。絶対に死なせないから、俺にすべてを委ねてくれ。あとでいくらでも苦情は聞くから」
涙をこぼして、横になっていても尚、首を横に振る。
「マンフリート。時間切れだ。どうする? やめるか? ルシャナの意思を無視したくないと言ったのはおまえだぞ」
ラウル王は意地悪を言っているのではなく、説得できなかった自分が悪い。でも綺麗事はこの場合意味を為さない。そのまま意思を尊重すればルシャナの死が確定するからだ。
「……死なせたくない。儀式を行ってください、我が王よ」
か細い腕で、ルシャナはマンフリートの太腿ふとももを何度もボカボカと殴る。しかし、まったく痛くないどころか、心地よいくらいに、血の通ったルシャナが自分に触ってくれているのだ。
もっと、たくさんこれからも触れてほしいし、怒りでもなんでもいいから自分にぶつけてほしい。きっと嫌味や暴言すら、ルシャナが生きているのだという喜びにしかならないだろう。
彼を直接肌で、耳で、すべての五感を使っていつまでも感じていたいのだ。
「では、始めてよいのだな?」
「はい、お願いします」
「やめて、ください……お願い、します」
ルシャナがここまで強情だとは思わなかった。
頑なな態度にマンフリートは凹みそうになったが、自分の意思を通すと決めた。これだけはたとえルシャナ本人であっても覆せない。
「いいのか、マンフリート?」
ラウル王は最終確認をマンフリートに尋ねる。
「はい、お願いします」
「では……始める前にいくつか説明する……ルシャナ、これはおまえのための儀式だ。私もおまえには生きていてもらいたいと思う。素直にこの申し出を受け、あとでいくらでも苦情はマンフリートに直接いえばよい」
そう前置きをしてからラウル王は、儀式の進め方から最後の流れまでの要点と意義について、簡潔に説明をする。
儀式は至ってシンプルだ。
王が二人の〝気〟を繋ぐ。互いの〝気〟が十分に満たされれば、ベッド全体を覆った結界がなくなる。それまで、〝気〟を精製するために、ひたすら体液の交換をし続ければよいのだ。
目安はおおよそで二十四時間だ。体力のないルシャナにはもちろん耐性たいせい魔法が施される。
ラウル王が必要な魔法をすべて練り込んで封じ込めた物を、ユージンがベッドの支柱に括り付ける。
「結界を以て二人を内部に封じ込める。どうやっても自ら出ることはできない。完遂するまでがんばってくれ。ちなみに、この部屋は誰も入れないようにするし、声はもちろんこの結界の外へ漏れることはない。ベッドの結界と部屋の結界だ。俺以外部屋の結界を壊すことはできない。ただしベッドの結界は俺でも壊せない。では、ユージン。準備は終わったな?」
「はい、四つの小瓶すべて支柱に固定しました」
「では、次に会うときは……二人とも夫婦だ」
そう言って、結界を張られた空間には、ルシャナとマンフリート、二人だけになった。
「それでは儀式を始める。二十四時間耐えてくれ」
泣き続けているルシャナは、マンフリートの顔を見たくないのか、ずっとそっぽを向いたまま、微動だにしない。
もうここまできたら後戻りはできないのだ。抵抗されても何を言われても、完遂かんすいするしかない。
心はだめでも、せめて肉体だけでも傷をつけたくない。そう思いながら、マンフリートは慎重にベッドに上がる。
それでもなお、体を投げ出したまま動こうとしないルシャナの服に手をかけた。ビクッとするが、相変わらずこちらを向こうとはしない。
まずはローブの腰ひもを解く。上着のボタンを一つずつ外していき、下着の紐も解いた。その間も変わらずまったく自分から動こうとはしない。
服を一気に摺り下げると、真っ白でシミ一つない滑らかでいて艶やかな、ルシャナの肌が露わになる。思わずマンフリートは感嘆を漏らす。
(美しい……いままで抱いた、どの女性よりも綺麗だ)
うっとりと眺めていたマンフリートだが、すぐに我に返り、最後の下着を取り去る。
「美しい……」
だがやはり堪えきれず、つい賛美が口から零れ出てしまった。
首をもたげた小ぶりなルシャナのものは、まるで食べてくれといわんばかりの、美味しそうな白いキャンディのようだ。
一瞬で誘われそうになったのを我慢して、手早く自らも服を脱ぎ捨てる。
すでに滾たぎっている己の欲望は、いつでも臨戦態勢だ。
(こちらを向かないでいてくれて正解だ。これを見たら、ルシャナは怖気づいてしまうだろう)
おそらく初めて向けられるであろう欲望のせいで、一生彼に怖いという汚点を残させてしまうのは、男のプライドとして避けたいところだ。
自分の大きくて、色も浅黒く、毛深い体を怖いと思うだろうか。服は着ておくべきだったか。これほどまでに自分の外見を気にしたことはいまだかつてない。
むしろその特長のどれも男として誇るべきものであって、けしてこのように卑下ひげするようなことはないのだが、なぜか躊躇ためらいと遠慮があるのだ。
(怖気づいている場合ではないだろう。こうしている間にも、ルシャナの体には異変が起きているのだ)
「ルシャナ王子、いや、ルシャナ。これからあなたに触れる。王がいったように、この結界の中で魔法を使うことはできない。痛くないように極力努力はするが、痛くても……途中で止めてあげられない」
聞いているのか、聞いていないのか、ルシャナは頑なに首を限界まで反対側に向けたままだ。
マンフリートは一言言ってから、膝立ちでルシャナのほうへ移動し、そして躊躇いがちではあるが、彼を跨またいで、完全に下に組み敷いた。
それから、左側に向いたままなので、彼の右頬にそっとキスを落とす。
一瞬体がピクリと反応をする。
それから、無理には顔を引き寄せず、両手をベッドにつけて這いつくばるようにして、極力体の接触はしないように心がける。
顔から始まり、肩、胸、腹、と徐々に下へとキスを落としていく。声を出すまいと唇を噛み、必死で体の反応も抑えようとして、余計な力が体全体に入っているのがわかる。
(暴れないだけ、ましか……)
ついにもっとも敏感な部分の周辺に辿り着く。
誰にも触れられることなく、精通を迎えていないであろうルシャナのものを片手で掴んだ。
さすがのルシャナもハッとして、思わず体を起こしてこちらを見ると、びっくりしたのか、目を大きく見開いていた。
言葉が出ないようで、パクパクと口を動かしている。
「大丈夫、だ」
マンフリートは、ルシャナが見ているのにも関わらず、彼のものをパクリと口の中へ入れる。
やはり予想は正しかったようで、まったく弄っていないのか、皮も剥けていない状態だ。これではこれからの儀式で苦しかろう。
「少しピリッとするかもしれないが、すぐに済むから」
極力痛みを感じさせないよう口で愛撫しながら、唇と舌で刺激してゆっくりと剥いていく。
口に含んで舐めてみると、少しだけ息が上がったのか、胸の上下運動が早くなったようなので、成功したことに安堵して、先へ進もうとしたのだが、急に乱れた息遣いが聞こえなくなったのだ。
必死でルシャナは両手で口を塞ぎ、声を封じているのだ。そんなことをしても無駄なのにとは言わず、マンフリートは口淫こういんを続ける。
いくらもしないうちに硬くなった彼のものを包み込むようにして扱き上げ、少しきつく吸い上げると、あっという間にマンフリートの口の中に、苦味が放出された。
「あ……」
信じられない、何が起こったのかと驚愕きょうがくに戦慄わなないているようだ。
息は上がっているし、体はだるいのだろう。放心状態のルシャナの頬にキスをしてやり、大丈夫だからといって、髪を撫でてやる。もっと間をあけてやりたいが、まだ入り口にすらたっていない。一刻も早くマンフリートはルシャナの中に射精をしなければならないのだ。
嫌がられるのを承知で続ける。どこを触っても過敏に反応してしまうことはわかっているのだが、今度は性感帯である胸の飾りを口に含む。
舌で転がしたり、突いたり、軽やかに刺激をしていくと、あっけなくそれは硬くなった。
「だ、め……」
ようやく言葉らしい言葉を紡ぐが、止める訳にはいかない。ルシャナはこれが山場と思っているのかもしれないが、本番はこれからなのだ。
無数に転がっているクッションをルシャナの腰の下に引き、硬くなったものを擦りながら、目の前の薄く閉じた花弁を一舐めする。
「ひぃっ?」
とんでもないところを舌でなぞられたのだから、無理もない。
「や、めて!」
両足首を片手で持ち上げ、香油を塗り込めた人差し指を後孔こうこうへ差し入れる。いくら暴れたところでルシャナの力ではどうすることもできない。
かわいそうにと思うが、もうそろそろマンフリートの欲望もはち切れんばかりに限界が来ている。しかし、無駄打ちをするわけにはいかないのだ。体液の交換とはいえ、マンフリートが射精をし続けなければならないからだ。
すでにルシャナの放出した精液はきっちりとマンフリートの体内に納めた。できるだけこれは愛の行為の証だという思いで彼の中へと自分の体液を注ぎ込みたい。
それが結婚の儀式の意義だ。二人の絆を高めるため、愛を証明するための儀式。本来はそういう意味も含んでいるだろう。
ルシャナが自分を愛していないのはわかっている。一方通行の愛でも今は構わない。いずれ必ず身も心もきちんと手に入れてみせる。
そのために、二人の未来のための大事な儀式であることに変わりはないのだ。
そんなことを思いながら、丁寧に体を解していく。
「きついかもしれない……でも、がんばってくれ」
体勢を変えて、完全に覆い被さり、己の怒張どちょうを数回扱いてから、ルシャナの少し開いた蕾に自身を押し当て、グッと差し入れる。
「痛い、痛い!」
本気で嫌がるルシャナ。
でも、今止めるわけにはいかないので、すまないと何度も謝りながら、泣き叫ぶルシャナを無視して、さらに押し進める。
キスをして、ルシャナの萎えてしまったものを扱しごき、それでもマンフリートはけして抜かなった。
一番太いカリの部分が入り、ゆっくりと奥へと侵入し、すべて納まった頃に急に滑りがよくなったと思ったら……かなりの出血をしていた。
それを見て、マンフリートも一瞬怯んだが、それで止めてしまったらすべてが水の泡だ。そしてそのままそれはルシャナの死へと直結するのだ。
これは儀式だ。
快楽を得るための行為ではないのだ。
ただ、かわいそうに、魔法で痛みを和らげてやることも、血を止めてやることもできない。
そんなことを考えていると突然支柱が光り、結界の内部に向けて光の粒が上から降ってきた。途端にルシャナの強張った体から力が抜けた。
血に染まっていたシーツも後孔も、血の痕跡が跡形もなく消え去ったのだ。痛みも消えたのだろう。
(これが、王が調合した回復の力か)
マンフリートは、ゆっくりと自身を引き、そして次の瞬間また奥へ差し入れた。
「ああ!」
ルシャナは大きく喘いだ。
それでもときどき痛いのか、顔を顰しかめる。
心の中でだけすまないと詫びて、マンフリートはがんがん攻める。相変わらず痛がるのだが、そんな中でも時折甘い吐息も聞こえてくる。
ルシャナも複雑なようだが、快楽に身を委ねてもらえるよう、マンフリートも内部を擦って、気持ちよい部分を刺激してやる。
「ああ……あっ、あぁぁ!」
抽送を繰り返し、徐々にマンフリートも余裕がなくなる。すでに彼の中に解き放つことしか考えられなくなっている。
ルシャナもいつの間にか、快楽に忠実に腰を動かしている。無意識なのだろうが、痛みだけではないものを与えられていることに安堵して、さらに腰を押し進め、動きも早く、腰を突き動かしている。
「ああぁぁ、だめ!」
左右に首を振り、身悶みもだえしながらあっけなくルシャナは白濁を胸に巻き散らした。
マンフリートもそろそろ限界だ。
「すまんっ」
絶頂直後の敏感な体に擦られてはたまらないだろうが、早く終わらせたい一心で、マンフリートは強く何度も打ちつけて、自身を解放した。
倒れこむようにして、ルシャナの上に覆い被さる。しかし、抜いてやることはできない。一滴たりとも零さずに体内に入れ込まなければならないからだ。
乾かぬうちに、ルシャナが放ったモノもすべて舌で拭き取ってやる。
いつまでもルシャナの上に被さっているわけにはいかない。結合したまま反転させて、ルシャナを自分の上に置く。結果としてルシャナが抱き着かなければならなくなった。
目のやり場に困っているのか、それとも目線を合わせたくないのか、ルシャナはマンフリートの胸毛に左頬を乗せている状態だ。
「それだと……苦しくはないか?」
チクチクして痛いだろうと言っても、何も反応もない。
こういうとき、毛深いと困るなと思った。
剃ってきてやろうとも考えたが、二十四時間もいたら、逆に毛が生えてきてしまい、余計に短いから痛いだろう、などとどうでもいいことを考える。しかし、長時間休んでもいられない。
息が整い、自身のものが回復したのを確認してから、再びルシャナを組み敷く。
相変わらず目を合わせてくれないルシャナ。
もう完全に心を閉ざしてしまったようだ。泣きたくなるのを押し殺して、再び兆した己の抜き差しを始めたのだった。
「いや……まだだ」
そう言いかけたとき、突然ルシャナが苦しそうに胸を抑えている。
「どけ、マンフリート」
ラウル王はすぐさまルシャナに駆け寄り、魔法をかける。少し楽になったようで、何もできることのないマンフリートは、せめてもとハンカチで額の汗を拭ってやる。
ルシャナは不安な表情を浮かべてマンフリートを見上げ、何かを言おうとしているようだが、もう口を開く気力もないのだろう。
「大丈夫だ。絶対に死なせないから、俺にすべてを委ねてくれ。あとでいくらでも苦情は聞くから」
涙をこぼして、横になっていても尚、首を横に振る。
「マンフリート。時間切れだ。どうする? やめるか? ルシャナの意思を無視したくないと言ったのはおまえだぞ」
ラウル王は意地悪を言っているのではなく、説得できなかった自分が悪い。でも綺麗事はこの場合意味を為さない。そのまま意思を尊重すればルシャナの死が確定するからだ。
「……死なせたくない。儀式を行ってください、我が王よ」
か細い腕で、ルシャナはマンフリートの太腿ふとももを何度もボカボカと殴る。しかし、まったく痛くないどころか、心地よいくらいに、血の通ったルシャナが自分に触ってくれているのだ。
もっと、たくさんこれからも触れてほしいし、怒りでもなんでもいいから自分にぶつけてほしい。きっと嫌味や暴言すら、ルシャナが生きているのだという喜びにしかならないだろう。
彼を直接肌で、耳で、すべての五感を使っていつまでも感じていたいのだ。
「では、始めてよいのだな?」
「はい、お願いします」
「やめて、ください……お願い、します」
ルシャナがここまで強情だとは思わなかった。
頑なな態度にマンフリートは凹みそうになったが、自分の意思を通すと決めた。これだけはたとえルシャナ本人であっても覆せない。
「いいのか、マンフリート?」
ラウル王は最終確認をマンフリートに尋ねる。
「はい、お願いします」
「では……始める前にいくつか説明する……ルシャナ、これはおまえのための儀式だ。私もおまえには生きていてもらいたいと思う。素直にこの申し出を受け、あとでいくらでも苦情はマンフリートに直接いえばよい」
そう前置きをしてからラウル王は、儀式の進め方から最後の流れまでの要点と意義について、簡潔に説明をする。
儀式は至ってシンプルだ。
王が二人の〝気〟を繋ぐ。互いの〝気〟が十分に満たされれば、ベッド全体を覆った結界がなくなる。それまで、〝気〟を精製するために、ひたすら体液の交換をし続ければよいのだ。
目安はおおよそで二十四時間だ。体力のないルシャナにはもちろん耐性たいせい魔法が施される。
ラウル王が必要な魔法をすべて練り込んで封じ込めた物を、ユージンがベッドの支柱に括り付ける。
「結界を以て二人を内部に封じ込める。どうやっても自ら出ることはできない。完遂するまでがんばってくれ。ちなみに、この部屋は誰も入れないようにするし、声はもちろんこの結界の外へ漏れることはない。ベッドの結界と部屋の結界だ。俺以外部屋の結界を壊すことはできない。ただしベッドの結界は俺でも壊せない。では、ユージン。準備は終わったな?」
「はい、四つの小瓶すべて支柱に固定しました」
「では、次に会うときは……二人とも夫婦だ」
そう言って、結界を張られた空間には、ルシャナとマンフリート、二人だけになった。
「それでは儀式を始める。二十四時間耐えてくれ」
泣き続けているルシャナは、マンフリートの顔を見たくないのか、ずっとそっぽを向いたまま、微動だにしない。
もうここまできたら後戻りはできないのだ。抵抗されても何を言われても、完遂かんすいするしかない。
心はだめでも、せめて肉体だけでも傷をつけたくない。そう思いながら、マンフリートは慎重にベッドに上がる。
それでもなお、体を投げ出したまま動こうとしないルシャナの服に手をかけた。ビクッとするが、相変わらずこちらを向こうとはしない。
まずはローブの腰ひもを解く。上着のボタンを一つずつ外していき、下着の紐も解いた。その間も変わらずまったく自分から動こうとはしない。
服を一気に摺り下げると、真っ白でシミ一つない滑らかでいて艶やかな、ルシャナの肌が露わになる。思わずマンフリートは感嘆を漏らす。
(美しい……いままで抱いた、どの女性よりも綺麗だ)
うっとりと眺めていたマンフリートだが、すぐに我に返り、最後の下着を取り去る。
「美しい……」
だがやはり堪えきれず、つい賛美が口から零れ出てしまった。
首をもたげた小ぶりなルシャナのものは、まるで食べてくれといわんばかりの、美味しそうな白いキャンディのようだ。
一瞬で誘われそうになったのを我慢して、手早く自らも服を脱ぎ捨てる。
すでに滾たぎっている己の欲望は、いつでも臨戦態勢だ。
(こちらを向かないでいてくれて正解だ。これを見たら、ルシャナは怖気づいてしまうだろう)
おそらく初めて向けられるであろう欲望のせいで、一生彼に怖いという汚点を残させてしまうのは、男のプライドとして避けたいところだ。
自分の大きくて、色も浅黒く、毛深い体を怖いと思うだろうか。服は着ておくべきだったか。これほどまでに自分の外見を気にしたことはいまだかつてない。
むしろその特長のどれも男として誇るべきものであって、けしてこのように卑下ひげするようなことはないのだが、なぜか躊躇ためらいと遠慮があるのだ。
(怖気づいている場合ではないだろう。こうしている間にも、ルシャナの体には異変が起きているのだ)
「ルシャナ王子、いや、ルシャナ。これからあなたに触れる。王がいったように、この結界の中で魔法を使うことはできない。痛くないように極力努力はするが、痛くても……途中で止めてあげられない」
聞いているのか、聞いていないのか、ルシャナは頑なに首を限界まで反対側に向けたままだ。
マンフリートは一言言ってから、膝立ちでルシャナのほうへ移動し、そして躊躇いがちではあるが、彼を跨またいで、完全に下に組み敷いた。
それから、左側に向いたままなので、彼の右頬にそっとキスを落とす。
一瞬体がピクリと反応をする。
それから、無理には顔を引き寄せず、両手をベッドにつけて這いつくばるようにして、極力体の接触はしないように心がける。
顔から始まり、肩、胸、腹、と徐々に下へとキスを落としていく。声を出すまいと唇を噛み、必死で体の反応も抑えようとして、余計な力が体全体に入っているのがわかる。
(暴れないだけ、ましか……)
ついにもっとも敏感な部分の周辺に辿り着く。
誰にも触れられることなく、精通を迎えていないであろうルシャナのものを片手で掴んだ。
さすがのルシャナもハッとして、思わず体を起こしてこちらを見ると、びっくりしたのか、目を大きく見開いていた。
言葉が出ないようで、パクパクと口を動かしている。
「大丈夫、だ」
マンフリートは、ルシャナが見ているのにも関わらず、彼のものをパクリと口の中へ入れる。
やはり予想は正しかったようで、まったく弄っていないのか、皮も剥けていない状態だ。これではこれからの儀式で苦しかろう。
「少しピリッとするかもしれないが、すぐに済むから」
極力痛みを感じさせないよう口で愛撫しながら、唇と舌で刺激してゆっくりと剥いていく。
口に含んで舐めてみると、少しだけ息が上がったのか、胸の上下運動が早くなったようなので、成功したことに安堵して、先へ進もうとしたのだが、急に乱れた息遣いが聞こえなくなったのだ。
必死でルシャナは両手で口を塞ぎ、声を封じているのだ。そんなことをしても無駄なのにとは言わず、マンフリートは口淫こういんを続ける。
いくらもしないうちに硬くなった彼のものを包み込むようにして扱き上げ、少しきつく吸い上げると、あっという間にマンフリートの口の中に、苦味が放出された。
「あ……」
信じられない、何が起こったのかと驚愕きょうがくに戦慄わなないているようだ。
息は上がっているし、体はだるいのだろう。放心状態のルシャナの頬にキスをしてやり、大丈夫だからといって、髪を撫でてやる。もっと間をあけてやりたいが、まだ入り口にすらたっていない。一刻も早くマンフリートはルシャナの中に射精をしなければならないのだ。
嫌がられるのを承知で続ける。どこを触っても過敏に反応してしまうことはわかっているのだが、今度は性感帯である胸の飾りを口に含む。
舌で転がしたり、突いたり、軽やかに刺激をしていくと、あっけなくそれは硬くなった。
「だ、め……」
ようやく言葉らしい言葉を紡ぐが、止める訳にはいかない。ルシャナはこれが山場と思っているのかもしれないが、本番はこれからなのだ。
無数に転がっているクッションをルシャナの腰の下に引き、硬くなったものを擦りながら、目の前の薄く閉じた花弁を一舐めする。
「ひぃっ?」
とんでもないところを舌でなぞられたのだから、無理もない。
「や、めて!」
両足首を片手で持ち上げ、香油を塗り込めた人差し指を後孔こうこうへ差し入れる。いくら暴れたところでルシャナの力ではどうすることもできない。
かわいそうにと思うが、もうそろそろマンフリートの欲望もはち切れんばかりに限界が来ている。しかし、無駄打ちをするわけにはいかないのだ。体液の交換とはいえ、マンフリートが射精をし続けなければならないからだ。
すでにルシャナの放出した精液はきっちりとマンフリートの体内に納めた。できるだけこれは愛の行為の証だという思いで彼の中へと自分の体液を注ぎ込みたい。
それが結婚の儀式の意義だ。二人の絆を高めるため、愛を証明するための儀式。本来はそういう意味も含んでいるだろう。
ルシャナが自分を愛していないのはわかっている。一方通行の愛でも今は構わない。いずれ必ず身も心もきちんと手に入れてみせる。
そのために、二人の未来のための大事な儀式であることに変わりはないのだ。
そんなことを思いながら、丁寧に体を解していく。
「きついかもしれない……でも、がんばってくれ」
体勢を変えて、完全に覆い被さり、己の怒張どちょうを数回扱いてから、ルシャナの少し開いた蕾に自身を押し当て、グッと差し入れる。
「痛い、痛い!」
本気で嫌がるルシャナ。
でも、今止めるわけにはいかないので、すまないと何度も謝りながら、泣き叫ぶルシャナを無視して、さらに押し進める。
キスをして、ルシャナの萎えてしまったものを扱しごき、それでもマンフリートはけして抜かなった。
一番太いカリの部分が入り、ゆっくりと奥へと侵入し、すべて納まった頃に急に滑りがよくなったと思ったら……かなりの出血をしていた。
それを見て、マンフリートも一瞬怯んだが、それで止めてしまったらすべてが水の泡だ。そしてそのままそれはルシャナの死へと直結するのだ。
これは儀式だ。
快楽を得るための行為ではないのだ。
ただ、かわいそうに、魔法で痛みを和らげてやることも、血を止めてやることもできない。
そんなことを考えていると突然支柱が光り、結界の内部に向けて光の粒が上から降ってきた。途端にルシャナの強張った体から力が抜けた。
血に染まっていたシーツも後孔も、血の痕跡が跡形もなく消え去ったのだ。痛みも消えたのだろう。
(これが、王が調合した回復の力か)
マンフリートは、ゆっくりと自身を引き、そして次の瞬間また奥へ差し入れた。
「ああ!」
ルシャナは大きく喘いだ。
それでもときどき痛いのか、顔を顰しかめる。
心の中でだけすまないと詫びて、マンフリートはがんがん攻める。相変わらず痛がるのだが、そんな中でも時折甘い吐息も聞こえてくる。
ルシャナも複雑なようだが、快楽に身を委ねてもらえるよう、マンフリートも内部を擦って、気持ちよい部分を刺激してやる。
「ああ……あっ、あぁぁ!」
抽送を繰り返し、徐々にマンフリートも余裕がなくなる。すでに彼の中に解き放つことしか考えられなくなっている。
ルシャナもいつの間にか、快楽に忠実に腰を動かしている。無意識なのだろうが、痛みだけではないものを与えられていることに安堵して、さらに腰を押し進め、動きも早く、腰を突き動かしている。
「ああぁぁ、だめ!」
左右に首を振り、身悶みもだえしながらあっけなくルシャナは白濁を胸に巻き散らした。
マンフリートもそろそろ限界だ。
「すまんっ」
絶頂直後の敏感な体に擦られてはたまらないだろうが、早く終わらせたい一心で、マンフリートは強く何度も打ちつけて、自身を解放した。
倒れこむようにして、ルシャナの上に覆い被さる。しかし、抜いてやることはできない。一滴たりとも零さずに体内に入れ込まなければならないからだ。
乾かぬうちに、ルシャナが放ったモノもすべて舌で拭き取ってやる。
いつまでもルシャナの上に被さっているわけにはいかない。結合したまま反転させて、ルシャナを自分の上に置く。結果としてルシャナが抱き着かなければならなくなった。
目のやり場に困っているのか、それとも目線を合わせたくないのか、ルシャナはマンフリートの胸毛に左頬を乗せている状態だ。
「それだと……苦しくはないか?」
チクチクして痛いだろうと言っても、何も反応もない。
こういうとき、毛深いと困るなと思った。
剃ってきてやろうとも考えたが、二十四時間もいたら、逆に毛が生えてきてしまい、余計に短いから痛いだろう、などとどうでもいいことを考える。しかし、長時間休んでもいられない。
息が整い、自身のものが回復したのを確認してから、再びルシャナを組み敷く。
相変わらず目を合わせてくれないルシャナ。
もう完全に心を閉ざしてしまったようだ。泣きたくなるのを押し殺して、再び兆した己の抜き差しを始めたのだった。
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