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05.ルシャナ
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いつのまにか眠ってしまったのだろう。違和感を覚えつつ目を開けたルシャナは、自分の居場所がすでにわからなくなっていた。
知らない部屋にいる。
夜にしてはやたらと外が明るいのはなぜなのか不思議に思い、窓を開けて外を覗くと、なんと月が二つ並んでいる。だからこんなに明るいのか。
「あっ……僕、異世界に連れてこられたんだっけ」
納得はしたくないが、状況は把握した。
結局疲れてしまったルシャナを気遣った三人は、誰に見られることなくラウル王の隠匿の術を使い、王城内の客室を宛がわれたのだ。そこは誰も使用していないエリアなので、必要なものはすべてユージンとマンフリートが毎日運ぶことになっていたらしい。
でも誰がきてもそんなのは些細なことだ。
なにせ昨日は、自分の人生が終わった日だった。それ以上にショックな出来事など起こらないだろう。
兄に裏切られ、父に殺されたのだ。そう、自分は彼らの要求と引き替えに、魔王に食い殺された、そういう設定なのだ。実際にはノースフィリアという異世界に連れてこられたに過ぎないのだが、事実はもはや何の意味も価値もない。
まったくの別世界で、おとぎ話のような冗談な世界に、現実として自分がいるのだ。魔法という言葉が大人の口から出てくること自体、すでにラジェールとは違う。信じられないと思うのに、どこかホッとしている自分がいる。
なぜだか理由を解析したくないし、受け入れたくはないが、重荷が消えたように軽くなったのは事実だ。
砂漠の国ラジェール王国の、国王の七人兄弟の三男としてルシャナは産まれた。
しかし王子という立場にありながら、その真っ白な外見ゆえに誰からも愛されたことはないし、はっきりいうと人間として扱われていた気もしない。
家族はもちろん使用人にすら遠巻きにされ、腫れ物に触るような扱いを受け続けていれば、自然と人の顔色を伺う、肝の小さい子が出来上がるのは当然だ。
自分でそうなりたくてなったわけではない。そうすることでしか生きられなかったからだ。
といっても結局生きている価値もないと判断されたからこそ、こうして家族から排除されてしまった結果――今ここにいるのだ。
自分の存在意義すら与えられなかった現実に、もう立ち向かう術はないし、すでに別世界に来てしまったのだから、無理に生きる理由を探す必要もない。
知り合いも誰もいないが、今までとどう違うというのだろうか。
本当に心を通わせて付き合うことこそ大切だと思ってきたのだが、ラジェールでは、とうとう信頼できる人間は、ただの一人も作ることができなかった――家族にすらほとんど相手にされなかったのだ。
そんな無価値だったルシャナに、ここの世界の人たちは奴隷のように乱暴に扱おうとはせず、むしろ賓客のような破格の待遇に、正直驚いた。
伝説の白き異界人がルシャナだと言われても、その意味がまったくわからない。そもそもラジェールでは一人だけ奇異に産まれてきてしまったのだ。病気だと言われたことさえあるルシャナが、伝説であるはずがないのだ。
何かの間違いだと気づいて、いずれは捨てられることになるだろう。
ラジェールでは自分の肌の色も髪の色も何もかも、白いことは忌み嫌われていたため、王宮からというより部屋からあまり出してもらえなかった。行事か何かで出席しなければならないときは、女性のような格好をさせられて、男なのに姉たちの後ろに座らせられた。
子供だからと最初は思っていたが、弟が生まれて、やがて彼も兄たちと同列に並びだしたときに、自分だけ白いから同列に加えてもらえないのだと、ようやく気づいた。だからみんなに迷惑をかけないようにひっそりと生きてきたのだ。
生きていたと言うより、毎日淡々と過ごしていただけだ。そんな空っぽな人生に何を未練に思うことがあろうか。どこにいてもひとりぼっちだという事実はついぞ変わることはなかった。
どうせ一度死んだ人生だ。いまさら何を臆病になっているのだ。開き直ればなんてことはない。これは強がりでも何でもない。
「もう、向こうの世界のことは忘れよう。ここでだってどんな扱いをされるかわかったもんじゃないよね。伝説の人とか言われても、正直自分はただ白いだけで、何にもできないし、彼らがいうように魔力なんてこれっぽっちもないんだから。せめて、死ぬときは、痛くないほうがいいな……」
どうやら自分は、巨体の将軍マンフリートのお世話になるようだ。宰相だというユージンばかりが話していたので、ほとんど話すことがなかった将軍がどういう人なのかはまったくわからない。
髪は少し長めの茶色だった。風貌だけでいえばとても将軍には見えないが、身体は誰よりも大きくて、そして無精ヒゲがまた凄みを増しており、何がとは言えないが、とにかく威圧感が半端ないのだ。
(濃い……のかな、いろいろと)
あの中では一番野性味溢れているというか、正直よくわからない人だった。
でもルシャナにとって一番怖いのは、こちらの世界に連れてきた魔王と勘違いした、この国の王だろう。
気さくに見えてもどこか掴みどころがなく、一番得体の知れない人物なのは間違いない。
ユージンは見た目は一見優しそうだが、有無を言わせぬオーラがあり、実は曲者ではと深読みをする。
「誰が一番やさしいのかな……」
知らない世界でしかもなんの特技もなく、生活力のまったくないルシャナが、一人では生きていけない以上、結局彼らの誰かに頼らざるを得ないのだ。
「きっと一番まともな人が彼……だと思う」
怖いといっても、単に身体が大きいだけで、きちんと人となりを知れば、いい人かもしれない。見た目で判断してはいけないということは、この奇妙な外見の自分が一番よく知っているではないか。
どれくらいそんなことを考えていたのだろうか。
ずっと夜空なので、時間の感覚というものが狂っているのがなんとなくわかる。
人間の体には絶えず夜であることは毒だと言う。しかしそれはルシャナにとっては少し違う。
ラジェールのラゴン砂漠に聳える王宮は、まさに灼熱地獄の真下にいるようなものだった。
色白のルシャナにとって、日焼けは火傷に直結していた。それは周りに疎まれるには十分すぎる理由で、砂漠で生きていけない人間など一族にはいらないと、面と向かって兄たちに言われたことすらある。
だから、それに比べたらこの世界はルシャナにとって快適なはずなのだ。
ただ一つ難点があるとすれば、時刻がまったくわからないということだ。
「太陽がないから、昼なのか夜なのかわからないよね……たとえ時計が目の前にあっても」
ルシャナはベッドから起き上がり、暗闇の中で明かりのないまま、あちこちを手探りで探した。
ただし夜空には月が二つも輝いているので、自分が知る夜に比べたらずいぶん明るい。
「うーん、ないみたい。あとで来た人に聞くしかないか。誰にも、来てほしくないんだけどな……でも、お腹も空いてきたし……」
空腹を覚えて無意識に腹を擦っていたのだが、突然のノック音に驚いて思わず動きが止まる。
知らない部屋にいる。
夜にしてはやたらと外が明るいのはなぜなのか不思議に思い、窓を開けて外を覗くと、なんと月が二つ並んでいる。だからこんなに明るいのか。
「あっ……僕、異世界に連れてこられたんだっけ」
納得はしたくないが、状況は把握した。
結局疲れてしまったルシャナを気遣った三人は、誰に見られることなくラウル王の隠匿の術を使い、王城内の客室を宛がわれたのだ。そこは誰も使用していないエリアなので、必要なものはすべてユージンとマンフリートが毎日運ぶことになっていたらしい。
でも誰がきてもそんなのは些細なことだ。
なにせ昨日は、自分の人生が終わった日だった。それ以上にショックな出来事など起こらないだろう。
兄に裏切られ、父に殺されたのだ。そう、自分は彼らの要求と引き替えに、魔王に食い殺された、そういう設定なのだ。実際にはノースフィリアという異世界に連れてこられたに過ぎないのだが、事実はもはや何の意味も価値もない。
まったくの別世界で、おとぎ話のような冗談な世界に、現実として自分がいるのだ。魔法という言葉が大人の口から出てくること自体、すでにラジェールとは違う。信じられないと思うのに、どこかホッとしている自分がいる。
なぜだか理由を解析したくないし、受け入れたくはないが、重荷が消えたように軽くなったのは事実だ。
砂漠の国ラジェール王国の、国王の七人兄弟の三男としてルシャナは産まれた。
しかし王子という立場にありながら、その真っ白な外見ゆえに誰からも愛されたことはないし、はっきりいうと人間として扱われていた気もしない。
家族はもちろん使用人にすら遠巻きにされ、腫れ物に触るような扱いを受け続けていれば、自然と人の顔色を伺う、肝の小さい子が出来上がるのは当然だ。
自分でそうなりたくてなったわけではない。そうすることでしか生きられなかったからだ。
といっても結局生きている価値もないと判断されたからこそ、こうして家族から排除されてしまった結果――今ここにいるのだ。
自分の存在意義すら与えられなかった現実に、もう立ち向かう術はないし、すでに別世界に来てしまったのだから、無理に生きる理由を探す必要もない。
知り合いも誰もいないが、今までとどう違うというのだろうか。
本当に心を通わせて付き合うことこそ大切だと思ってきたのだが、ラジェールでは、とうとう信頼できる人間は、ただの一人も作ることができなかった――家族にすらほとんど相手にされなかったのだ。
そんな無価値だったルシャナに、ここの世界の人たちは奴隷のように乱暴に扱おうとはせず、むしろ賓客のような破格の待遇に、正直驚いた。
伝説の白き異界人がルシャナだと言われても、その意味がまったくわからない。そもそもラジェールでは一人だけ奇異に産まれてきてしまったのだ。病気だと言われたことさえあるルシャナが、伝説であるはずがないのだ。
何かの間違いだと気づいて、いずれは捨てられることになるだろう。
ラジェールでは自分の肌の色も髪の色も何もかも、白いことは忌み嫌われていたため、王宮からというより部屋からあまり出してもらえなかった。行事か何かで出席しなければならないときは、女性のような格好をさせられて、男なのに姉たちの後ろに座らせられた。
子供だからと最初は思っていたが、弟が生まれて、やがて彼も兄たちと同列に並びだしたときに、自分だけ白いから同列に加えてもらえないのだと、ようやく気づいた。だからみんなに迷惑をかけないようにひっそりと生きてきたのだ。
生きていたと言うより、毎日淡々と過ごしていただけだ。そんな空っぽな人生に何を未練に思うことがあろうか。どこにいてもひとりぼっちだという事実はついぞ変わることはなかった。
どうせ一度死んだ人生だ。いまさら何を臆病になっているのだ。開き直ればなんてことはない。これは強がりでも何でもない。
「もう、向こうの世界のことは忘れよう。ここでだってどんな扱いをされるかわかったもんじゃないよね。伝説の人とか言われても、正直自分はただ白いだけで、何にもできないし、彼らがいうように魔力なんてこれっぽっちもないんだから。せめて、死ぬときは、痛くないほうがいいな……」
どうやら自分は、巨体の将軍マンフリートのお世話になるようだ。宰相だというユージンばかりが話していたので、ほとんど話すことがなかった将軍がどういう人なのかはまったくわからない。
髪は少し長めの茶色だった。風貌だけでいえばとても将軍には見えないが、身体は誰よりも大きくて、そして無精ヒゲがまた凄みを増しており、何がとは言えないが、とにかく威圧感が半端ないのだ。
(濃い……のかな、いろいろと)
あの中では一番野性味溢れているというか、正直よくわからない人だった。
でもルシャナにとって一番怖いのは、こちらの世界に連れてきた魔王と勘違いした、この国の王だろう。
気さくに見えてもどこか掴みどころがなく、一番得体の知れない人物なのは間違いない。
ユージンは見た目は一見優しそうだが、有無を言わせぬオーラがあり、実は曲者ではと深読みをする。
「誰が一番やさしいのかな……」
知らない世界でしかもなんの特技もなく、生活力のまったくないルシャナが、一人では生きていけない以上、結局彼らの誰かに頼らざるを得ないのだ。
「きっと一番まともな人が彼……だと思う」
怖いといっても、単に身体が大きいだけで、きちんと人となりを知れば、いい人かもしれない。見た目で判断してはいけないということは、この奇妙な外見の自分が一番よく知っているではないか。
どれくらいそんなことを考えていたのだろうか。
ずっと夜空なので、時間の感覚というものが狂っているのがなんとなくわかる。
人間の体には絶えず夜であることは毒だと言う。しかしそれはルシャナにとっては少し違う。
ラジェールのラゴン砂漠に聳える王宮は、まさに灼熱地獄の真下にいるようなものだった。
色白のルシャナにとって、日焼けは火傷に直結していた。それは周りに疎まれるには十分すぎる理由で、砂漠で生きていけない人間など一族にはいらないと、面と向かって兄たちに言われたことすらある。
だから、それに比べたらこの世界はルシャナにとって快適なはずなのだ。
ただ一つ難点があるとすれば、時刻がまったくわからないということだ。
「太陽がないから、昼なのか夜なのかわからないよね……たとえ時計が目の前にあっても」
ルシャナはベッドから起き上がり、暗闇の中で明かりのないまま、あちこちを手探りで探した。
ただし夜空には月が二つも輝いているので、自分が知る夜に比べたらずいぶん明るい。
「うーん、ないみたい。あとで来た人に聞くしかないか。誰にも、来てほしくないんだけどな……でも、お腹も空いてきたし……」
空腹を覚えて無意識に腹を擦っていたのだが、突然のノック音に驚いて思わず動きが止まる。
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