2 / 43
02.マンフリート
しおりを挟む
❃❃❃
「ラウル王、お願いですから勝手にいなくならないでください」
「いあ……ちょっと、おもしろいことがあってな?」
「おもしろいからといって、誰にも何も告げずに消えないでくださいと、再三申し上げてきたのですが……王の後を追える者など誰もいないのですから、少しは部下の心情を慮って頂いても罰は当たりませんよ」
「うん、わかってはいるんだけどね? 緊急事態だったから仕方がなかったんだよな……」
宰相ユージンはいつもの如く、くどくどとラウル王を諌めるべく、毎度同じセリフを吐く。
しかしそれが空返事だということは分かりきっているのに、懲りずに注意するユージンに敬意を表さずにはいられない。
すでに〝今日のお加減はいかがですか?〟という挨拶と変わらない定型文言と化している。
どっちもどっちだなと、この国の将軍であるマンフリート・バウムガルデン卿は部屋の壁に寄りかかって溜息をつく――これもまた見慣れた光景だ。
この世界〝ノースフィリア〟は四大国と十小国と呼ばれる十四の国から出来ている。
五人の神が地上に降り立ち、それぞれ大地に子供を授けたと言われている。子供は神の子であり、その証として〝宝珠〟と呼ばれる至宝を授けられた。
宝珠を持つ五人はやがてそれぞれの国を作り、王となり五大国となった。それが三千年前のことだ。
宝珠のおかげで彼ら五人には寿命がなく、悠久の時を淡々と過ごしていた。
しかし飽いた一人の王は、突然暴君となり他国へ戦争を仕掛け、制御不能になり多くの命を奪った罪により、天からの命によって四人の王に滅ぼされた。
それがおよそ千年前のことだ。
飄々としているが、ラウル王は『サカディア王国』という、ほとんど夜の国を統治する王である。
永遠の命を持つ王は、こうしてときどき刺激を求めて、後先考えずに出奔してしまうのもすでに恒例行事と化している。
歴代の宰相も同じ小言をおそらく何千回と発したことだろう、そして将軍はその光景を目にして、自分と同じように何度もため息をついては、しかたがないと諦めたことだろう。
宰相は国政を司る役職ではあるが、最近は有能な部下たちに任せて、王のお守り役もとい補佐役として、日夜ラウル王に振り回されている。
そして将軍はといえば、宰相に言われて城中をあちこちと探し歩くのだ――もちろん王探しのために。
(本当の理由が知られたら……情けないな)
我が国いや、この世界でたったの四人しかいない、神にも等しい人物だというのに、あまりにも奔放すぎる行動のせいで、敬うことをつい忘れがちだ。
それにこの世で時空を超えることができるのは、ラウル王ただ一人なので、探し出すのも付いて行くのも至難の業だ。これは彼だけが有する固有魔法であり、他の王たちもそれぞれに別の能力があるというが、詳細は王たちにしかわからない。
ラウル王の固有魔法を知っているのは、王たちと王の側近のパシャメル、そして宰相と将軍のみだ。
それゆえにおおっぴらにできないという制限があるため、三人だけで探し回らなければならないのだ。
極力勝手に時空を超えないようにお願いしても、興味がそちらへ傾けば誰の忠告も利きはしない。我道を行きすぎる王を持つ部下は、苦労が絶えないのだ。
(こんなことなら、部下に頼まれていた剣術の指導でもしたほうがマシだったかもしれないな)
隣でユージンは今にも爆発しそうな勢いで、王を無言で睨みつけていると、にっこりと笑って、まあまあと往なすように肩をポンポンと叩く。
がっくり肩を落としたユージンは、結局王はこうと決めたら自分の意思を通すことを知っているので、諦めた口調で何があるんですと、しかたなく水を向ける。
すると王はまるで子供のように目をキラキラと輝かせて、いいものを見せてやるから静かにしろよと前置きをして、仮眠室へと向かう。
二人にはいいものだとは思えなかった……。
「なんですか、こんなところに連れてきて……」
「しーっ……大きな声を出すと、起きてしまうよ」
「……何が、起きるんです?」
ユージンは嫌な予感的中かと猜疑心いっぱいの表情で、そう尋ねる。
また動物でも拾ってきたのだろうか。
王はなんでもかんでも持ち帰るクセがあるわりに、すぐに飽きてしまうという質の悪い面もある。
最終的に後始末に追われるのは、我々二人のどちらかの役目であることが多いのだが、なぜか胸騒ぎがして、どうにも収まりがつかない。
何も言わない王に、マンフリートも問う。
「今度は、何を拾ってきたんですか? ネコとか?」
ラウル王は、にやりとしながら首を横に振る。
「もっと、すごいものだよ。マンフリート。こっちに」
胡散臭そうにラウル王のあとについて書斎にある仮眠室のドアの前まで来た。
足取りの軽いラウル王に比べ、なんと自分の足は重いのだろう。ユージンも溜息ばかり漏らしている。
ドアを開けてベッドを見ると、なんとそこには……ありえない人? が横たわっているではないか!
「……っ!?」
思わず言葉を失い、今目の前にあるものを凝視する。
――ドクンドクン。
予期せぬ者を目にして、思わず胸の鼓動が早くなる。
「王よ……これは、もしや……」
どうだ、いいだろう? と言わんばかりに誇らしげに語るラウル王。マンフリートは頭が痛くなった。
どうみてもこれは、伝説の〝白き異界人〟にしか見えない。
(回廊に掲げられているタペストリーだと、もっとこう勇敢な戦士のような……光に包まれた感じで威厳があるというか、有無を言わせぬ圧倒的な強さが滲み出ている感じなんだが、これは……)
眠っている人物は、頬に涙のあとがくっきりと出ている、ただのか弱き幼子にしか見えない。もしやラウル王が泣かせたのではと、じろりと王を睨む。
「いやいや、まてまて、俺じゃない。こいつは最初から泣いていたぞ」
本当にそうなのか? 王はよくマンフリートを煙に巻くために嘘を吐く。今回もそうなのかと訝しげに思いながらも、横たわる子供に視線が釘付けだ。
背中まである長い白髪に、透き通るような白い肌。まだ目を開いてはいないが、睫毛まで白く、とても血の通った人間には見えない。
(男……なのか? 華奢すぎて少女にも見えるな)
そして、この子はただの人間だった。
「ラウル王、お願いですから勝手にいなくならないでください」
「いあ……ちょっと、おもしろいことがあってな?」
「おもしろいからといって、誰にも何も告げずに消えないでくださいと、再三申し上げてきたのですが……王の後を追える者など誰もいないのですから、少しは部下の心情を慮って頂いても罰は当たりませんよ」
「うん、わかってはいるんだけどね? 緊急事態だったから仕方がなかったんだよな……」
宰相ユージンはいつもの如く、くどくどとラウル王を諌めるべく、毎度同じセリフを吐く。
しかしそれが空返事だということは分かりきっているのに、懲りずに注意するユージンに敬意を表さずにはいられない。
すでに〝今日のお加減はいかがですか?〟という挨拶と変わらない定型文言と化している。
どっちもどっちだなと、この国の将軍であるマンフリート・バウムガルデン卿は部屋の壁に寄りかかって溜息をつく――これもまた見慣れた光景だ。
この世界〝ノースフィリア〟は四大国と十小国と呼ばれる十四の国から出来ている。
五人の神が地上に降り立ち、それぞれ大地に子供を授けたと言われている。子供は神の子であり、その証として〝宝珠〟と呼ばれる至宝を授けられた。
宝珠を持つ五人はやがてそれぞれの国を作り、王となり五大国となった。それが三千年前のことだ。
宝珠のおかげで彼ら五人には寿命がなく、悠久の時を淡々と過ごしていた。
しかし飽いた一人の王は、突然暴君となり他国へ戦争を仕掛け、制御不能になり多くの命を奪った罪により、天からの命によって四人の王に滅ぼされた。
それがおよそ千年前のことだ。
飄々としているが、ラウル王は『サカディア王国』という、ほとんど夜の国を統治する王である。
永遠の命を持つ王は、こうしてときどき刺激を求めて、後先考えずに出奔してしまうのもすでに恒例行事と化している。
歴代の宰相も同じ小言をおそらく何千回と発したことだろう、そして将軍はその光景を目にして、自分と同じように何度もため息をついては、しかたがないと諦めたことだろう。
宰相は国政を司る役職ではあるが、最近は有能な部下たちに任せて、王のお守り役もとい補佐役として、日夜ラウル王に振り回されている。
そして将軍はといえば、宰相に言われて城中をあちこちと探し歩くのだ――もちろん王探しのために。
(本当の理由が知られたら……情けないな)
我が国いや、この世界でたったの四人しかいない、神にも等しい人物だというのに、あまりにも奔放すぎる行動のせいで、敬うことをつい忘れがちだ。
それにこの世で時空を超えることができるのは、ラウル王ただ一人なので、探し出すのも付いて行くのも至難の業だ。これは彼だけが有する固有魔法であり、他の王たちもそれぞれに別の能力があるというが、詳細は王たちにしかわからない。
ラウル王の固有魔法を知っているのは、王たちと王の側近のパシャメル、そして宰相と将軍のみだ。
それゆえにおおっぴらにできないという制限があるため、三人だけで探し回らなければならないのだ。
極力勝手に時空を超えないようにお願いしても、興味がそちらへ傾けば誰の忠告も利きはしない。我道を行きすぎる王を持つ部下は、苦労が絶えないのだ。
(こんなことなら、部下に頼まれていた剣術の指導でもしたほうがマシだったかもしれないな)
隣でユージンは今にも爆発しそうな勢いで、王を無言で睨みつけていると、にっこりと笑って、まあまあと往なすように肩をポンポンと叩く。
がっくり肩を落としたユージンは、結局王はこうと決めたら自分の意思を通すことを知っているので、諦めた口調で何があるんですと、しかたなく水を向ける。
すると王はまるで子供のように目をキラキラと輝かせて、いいものを見せてやるから静かにしろよと前置きをして、仮眠室へと向かう。
二人にはいいものだとは思えなかった……。
「なんですか、こんなところに連れてきて……」
「しーっ……大きな声を出すと、起きてしまうよ」
「……何が、起きるんです?」
ユージンは嫌な予感的中かと猜疑心いっぱいの表情で、そう尋ねる。
また動物でも拾ってきたのだろうか。
王はなんでもかんでも持ち帰るクセがあるわりに、すぐに飽きてしまうという質の悪い面もある。
最終的に後始末に追われるのは、我々二人のどちらかの役目であることが多いのだが、なぜか胸騒ぎがして、どうにも収まりがつかない。
何も言わない王に、マンフリートも問う。
「今度は、何を拾ってきたんですか? ネコとか?」
ラウル王は、にやりとしながら首を横に振る。
「もっと、すごいものだよ。マンフリート。こっちに」
胡散臭そうにラウル王のあとについて書斎にある仮眠室のドアの前まで来た。
足取りの軽いラウル王に比べ、なんと自分の足は重いのだろう。ユージンも溜息ばかり漏らしている。
ドアを開けてベッドを見ると、なんとそこには……ありえない人? が横たわっているではないか!
「……っ!?」
思わず言葉を失い、今目の前にあるものを凝視する。
――ドクンドクン。
予期せぬ者を目にして、思わず胸の鼓動が早くなる。
「王よ……これは、もしや……」
どうだ、いいだろう? と言わんばかりに誇らしげに語るラウル王。マンフリートは頭が痛くなった。
どうみてもこれは、伝説の〝白き異界人〟にしか見えない。
(回廊に掲げられているタペストリーだと、もっとこう勇敢な戦士のような……光に包まれた感じで威厳があるというか、有無を言わせぬ圧倒的な強さが滲み出ている感じなんだが、これは……)
眠っている人物は、頬に涙のあとがくっきりと出ている、ただのか弱き幼子にしか見えない。もしやラウル王が泣かせたのではと、じろりと王を睨む。
「いやいや、まてまて、俺じゃない。こいつは最初から泣いていたぞ」
本当にそうなのか? 王はよくマンフリートを煙に巻くために嘘を吐く。今回もそうなのかと訝しげに思いながらも、横たわる子供に視線が釘付けだ。
背中まである長い白髪に、透き通るような白い肌。まだ目を開いてはいないが、睫毛まで白く、とても血の通った人間には見えない。
(男……なのか? 華奢すぎて少女にも見えるな)
そして、この子はただの人間だった。
1
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

猫の王子は最強の竜帝陛下に食べられたくない
muku
BL
猫の国の第五王子ミカは、片目の色が違うことで兄達から迫害されていた。戦勝国である鼠の国に差し出され、囚われているところへ、ある日竜帝セライナがやって来る。
竜族は獣人の中でも最強の種族で、セライナに引き取られたミカは竜族の住む島で生活することに。
猫が大好きな竜族達にちやほやされるミカだったが、どうしても受け入れられないことがあった。
どうやら自分は竜帝セライナの「エサ」として連れてこられたらしく、どうしても食べられたくないミカは、それを回避しようと奮闘するのだが――。
勘違いから始まる、獣人BLファンタジー。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる