悪役に壁ドンされたら思い出しました

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15.これは千人斬りイベント!?

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 声をかけてきた相手は、マーティンと王太子を両隣に侍らせたヒロインのエレンだった。

「・・・挨拶もなしに声をかけるとは、相変わらず礼儀のなっていない女だな。」

 その冷たい声に思わずギョッとするミア。

今更エレンも隣にミアがいることに気がついたのか、こっちを見た。

「ん~~?その女は誰です?」

「聞く前にお前から名乗れ。まあお前に聞かれる筋合いはない気がするが?」

 ニコニコしていたエレンの表情がビクッとひくついたのが見えた。

それを見逃さなかったミアは手をぽんと叩いてひらめく。

「・・・ほほう。グウィン様、これが俗に言う〝修羅場〟というものですね?まさか私が実際に経験するとは思いませんでしたよ。で、この方になにかしたんですか?」

「お前なぁァァ・・・どんだけ俺に対しての信用がないんだ!?何もしていない!あと修羅場じゃないわ!」

「信用がないのは仕方ないかと。最初の出会いも出会いでしたし。あっ、そうそう。酒癖悪いのは直さないといけませんね。あと名前で呼んでくださいって。」

 そう容赦なくグウィンに言うミア。

余談だが、この時既にグウィンは酒断ちをしていた。

それを言おうか言わまいか迷ったグウィンは、小さな声でどもるだけで終わったのだが。

「ひどい・・・グウィン様!また他の女性に手を出そうとしているんですか!?その方が可哀想です!」

 急にハキハキとした口調になって、グウィンを責め始めたエレン。

「「え???」」

 状況の読めないミアとグウィンは、二人揃って間抜けな声を出してしまった。

だがそんな二人はお構い無しに、エレンは涙ぐんで語り続ける。

「酷いわ・・・平民だからと私が嫌な目に遭うのはまだ我慢できたのに・・・!他の女性にも手を出すなんて!噂はこの目で見るまで信じてなかったけど、まさか本当のことだったのね!」

「兄さん・・・!なんて酷いんだ!」

「グウィン侯爵・・・。国王と懇意にしているそなたがそのような事をしているだなんて・・・これは今一度話し合った方が良さそうだな。」

 勝手に進んでいく話に目が回るミア。

だがはたと気がついた。

(これは確かグウィン様の千人斬り現場※を掴んだときのイベント!※女性千人斬りのこと)

「何を言っているのですか・・・王太子殿下。私はただミア嬢と食事をしているだけですが?そしてそこの女性と話したのもマーティンが視察に連れてきた時のみです。いわれのない行動を咎められる理由は何一つありません。」

 乙女ゲーのグウィンはここで逆ギレして大暴れした。

今の冷静な・・・というよりも冷めてるグウィンとは大きな違いだ。

食事を共にしていた女性も大怪我をしたとゲームでは説明されていたが、そこは侯爵の権力でねじ伏せたらしい。(ぶっちゃけミアに怪我をさせることはこのグウィンでは不可能だろうが)

・・・まあ弟のマーティンに王太子も見ていたから誤魔化すことはできなかったのだが。

そのすぐあとに起きるラストイベント。

学園の理事長である公爵が開催するパーティでグウィンは断罪されたのだ。

(・・・・・・・・・!!??だっ、断罪・・・?このグウィン様が!?ゴ〇ブリ並にしぶといグウィン様が?)

「お前、なんか失礼なこと考えてる顔してないか?」

 いやいや有り得ない。記憶違いかな、と思い直すミアだったが、一度考えた可能性は否定出来ないまま胸騒ぎがするのだった。
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