悪役に壁ドンされたら思い出しました

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13.褒めたドレスがいいかな

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「侯爵様、私のは良いんで侯爵様の服を選んでください。」

「何言ってんだ?お前のを選びに来てるんだよ。お前が希望を言わないでどうすんだ。」

 馬鹿にするようにミアを笑うグウィン。

その態度にちょっとばかしイラついたが、ミアは放置することにした。

「そこまで言うなら遠慮なく選ばせてもらいますからね?後悔しても遅いですから。」

「おうおう、選べ。俺を誰だと思ってる?下手したら公爵以上の財を持つグウィン様だぞ?」

「それ、外で言っちゃダメでしょ。侯爵様の頭は飾りですか?」

 ドレスを手に取りながらも鋭い刃(言葉)でグウィンを襲うミア。

「お前ぇ・・・」

「言い返せないんです?」

 首を傾げ、意図して清らかなミアに変身する。

そんなミアを見て、見てはいけないものを見たかのように後ずさるグウィン。

「・・・あっ、あー。そのドレスもイイかもなー」

「棒読みですけど??」

 失礼な人と思いつつ、ミアは無意識にグウィンが褒めたドレスを手に取った。

「・・・・・・」

「言っとくがオーダーメイドだってできるんだからな?既製品じゃなくていいって何度も言ってるってのに・・・」

「高くつくじゃないですか。侯爵様にそこまでしてもらう訳にはいきませんよ。」

 そうスパっと言うミアを見て可愛くねえヤツ、とグウィンは呟く。

「それに侯爵様、パーティの時期を考えてオーダーメイドは無茶ですよ。侯爵権限で無茶振りをするつもりですか?」

「そのつもりだったけど・・・?」

 あんぐりとするミア。

悪気がないのはその表情で分かるのだが、ここでボンボンの自己中思考が露見するとは思わなかったのだ。

「侯爵様。期間も限られている無茶振りは民に負担がかかりますからね。私のドレス一つにわざわざそんな事をしないでください。」

「あ、ああ・・・?わかった?」

 グウィンが珍しくマトモなことを言ったミアに驚いているとは気がつく訳もなく。
 
鼻歌を歌いながらミアは先程のドレスをもう一度手に取った。

「侯爵様、私このドレスがいいです。動きやすそうですし。」

 そう、笑顔を向けた瞬間にグウィンは顔を真っ赤に染めてそっぽを向いた。

「・・・まあお前の好みだろうとは思ったけどな。それでいいのか?既製品だぞ?」

「これがいいんですよ。」

 そのあとはグウィンのタキシードを選ぶことにした。

グウィンは自分の分はあると言って抵抗をしたがミアのある一言で撃沈したよう。



 午前中で服を選び終わった二人は、馬車に戻って帰路につこうとした。

だがグウィンがおもむろに口を開く。

「・・・昼食に行かないか?」

「え?定食屋にですか?気にいったんですね。」

「違うからな!?飯イコール定食屋と結びつけるな!あんなむさむさした場所に二度と行くか!」

 素直じゃないんだから。と言ったミアだが即座に否定される。

「最近話題らしいカフェに・・・な。お前意外と甘いもの好きだろう?ガッツリしたものばっか食べてる筋肉ダルマ令嬢のくせに。」

「最後の一言は余計ですね。誰に似たんだか。けれど気がついてたんですね、私としてはそっちが意外です。」

 ちなみにグウィンの余計な一言についてはミアに影響されてしまったのが大きい。元々素質があったのだろうが・・・。

「当たり前だろ?俺は結構お前のこと見て・・・いや、何でもない。ほら、嫌じゃないなら行くぞ。」

「はあ・・・」

 その気の抜けた声を了承したと受け取ったグウィン。

御者に声をかけて、二人はその話題のカフェとやらに向かうことになった。
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