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9.さながら魔女
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『Dear Lord Huffness.』
「・・・えーっと、親愛なるうんたらかんたら・・・グウィン・ハフネス侯爵に初めてお手紙を差し上げます。唐突ですがお元気でしょうか?以前お話されていたパーティについてですが~」
つらつらと手紙に文字をしたためるミア。
だいぶカジュアルな文章になっているのだが、それで良いのだろうか?
仮にも侯爵だ。そこまで砕けてる文の使い回しで良いのだろうか?
・・・しかしそれについて指摘をする者は、今この場に誰一人いない。
元々自由奔放な娘であったミアではあるが、前世の記憶が戻ってからは更に拍車がかかったようだ。
といってもミア自身が、グウィン侯爵に対して気遣いという心を持ち合わせていないからこそできる所業であろう。
でなければ恐れ多くも侯爵に対して手紙を送るのだ。
ガッチガチの不自然過ぎるくらい堅い手紙を送って終わっていたはずだ。
「ふうっ、書き終わった。こんなもんでいいかな?」
一応最後に、便箋をピラピラとして乾かす。
最近使っている便箋は、ノリが悪く乾きにくいのだ。
封筒に入れた際、最悪文字が伸びて読めなくなることがあるから気をつけないといけない。
「リリ、ごめんコレをグウィン様宛に出して欲しいの。」
そう言って、リリというメイドに封筒を手渡す。
「・・・畏まりました。」
少しの沈黙に違和感を感じ、リリの方を見たら何故か物凄く険しい顔をして封筒と睨めっこしていた。
「・・・どうしたの?なにか気になることあったりした?」
「あっ、いえ・・・。なんでもありませんよ。ミアお嬢様」
ミアはこの侍女が、あの噂の主であるグウィン侯爵に手紙を出す彼女を案じていたとは露にも思わなかった。
「そう?なら大丈夫だけど。」
次の日、ミアは学園でずっとしかめっ面をしていた。
「確かにグウィン様はこの三日間仕事に出てて、学園に居ないのは知ってるよ。」
そして自分の机を指さして怒り狂う。
そんなミアをアリアは哀れな目で見つめていた。
「だからって何で今日も手紙を出さないといけないの!?宿題としてって何さ!」
「ミア、口調口調。ここ学園なんだから気をつけないと。」
目の前の机には、一言書かれた紙が否応なく目に入るよう貼られていた。
『今日から三日間手紙を俺に出せよ!』
「何様じゃーーーーーー!」
ビリビリビリ!とその紙を破く。
さながら伝説の魔の森に住まう魔女のような形相をしている。
「・・・昨日手紙出したしいいよね。一日分としてカウントされるかな。」
めんどくさい、なんで私がと遠い目をして呟く。
まあミアとグウィンは婚約関係でもない他人。
しかも教師と生徒という関係なのだから、そんな個人的な手紙のやり取りをしなくても良い。
むしろ拒否してもいいのだが・・・
(そんなミアもどーのこーの言いつつ手紙を出してあげるくせにねぇ)
ふふっと笑いながらアリアは思った。
「あっ・・・!」
そんなふうに生あたたかい目で見つめられていることに気が付かずにミアは、はたと思い出した。
(なぁるほどぉ?確か今回の仕事でグウィン様はヒロインと騎士マーティンのおじゃま虫をしてたよね?)
しかもそれは初日からだ。
仕事をしなさいグウィン侯爵。
「どうしたのミア?」
急に声を出したと思ったら、気持ちの悪い笑みを浮かべてグフグフ笑いだしたミア。
それを疑問に思ったアリアは不安げに覗き込んだ。
「アリア!ごめん!今日ちょっと早退するね!」
「えっ、ちょ・・・」
「大丈夫!今日まで無遅刻・無欠席・無早退だったから!あとでノートだけ見せて!」
「そういう問題じゃあ・・・!ああもうっ! 」
「・・・えーっと、親愛なるうんたらかんたら・・・グウィン・ハフネス侯爵に初めてお手紙を差し上げます。唐突ですがお元気でしょうか?以前お話されていたパーティについてですが~」
つらつらと手紙に文字をしたためるミア。
だいぶカジュアルな文章になっているのだが、それで良いのだろうか?
仮にも侯爵だ。そこまで砕けてる文の使い回しで良いのだろうか?
・・・しかしそれについて指摘をする者は、今この場に誰一人いない。
元々自由奔放な娘であったミアではあるが、前世の記憶が戻ってからは更に拍車がかかったようだ。
といってもミア自身が、グウィン侯爵に対して気遣いという心を持ち合わせていないからこそできる所業であろう。
でなければ恐れ多くも侯爵に対して手紙を送るのだ。
ガッチガチの不自然過ぎるくらい堅い手紙を送って終わっていたはずだ。
「ふうっ、書き終わった。こんなもんでいいかな?」
一応最後に、便箋をピラピラとして乾かす。
最近使っている便箋は、ノリが悪く乾きにくいのだ。
封筒に入れた際、最悪文字が伸びて読めなくなることがあるから気をつけないといけない。
「リリ、ごめんコレをグウィン様宛に出して欲しいの。」
そう言って、リリというメイドに封筒を手渡す。
「・・・畏まりました。」
少しの沈黙に違和感を感じ、リリの方を見たら何故か物凄く険しい顔をして封筒と睨めっこしていた。
「・・・どうしたの?なにか気になることあったりした?」
「あっ、いえ・・・。なんでもありませんよ。ミアお嬢様」
ミアはこの侍女が、あの噂の主であるグウィン侯爵に手紙を出す彼女を案じていたとは露にも思わなかった。
「そう?なら大丈夫だけど。」
次の日、ミアは学園でずっとしかめっ面をしていた。
「確かにグウィン様はこの三日間仕事に出てて、学園に居ないのは知ってるよ。」
そして自分の机を指さして怒り狂う。
そんなミアをアリアは哀れな目で見つめていた。
「だからって何で今日も手紙を出さないといけないの!?宿題としてって何さ!」
「ミア、口調口調。ここ学園なんだから気をつけないと。」
目の前の机には、一言書かれた紙が否応なく目に入るよう貼られていた。
『今日から三日間手紙を俺に出せよ!』
「何様じゃーーーーーー!」
ビリビリビリ!とその紙を破く。
さながら伝説の魔の森に住まう魔女のような形相をしている。
「・・・昨日手紙出したしいいよね。一日分としてカウントされるかな。」
めんどくさい、なんで私がと遠い目をして呟く。
まあミアとグウィンは婚約関係でもない他人。
しかも教師と生徒という関係なのだから、そんな個人的な手紙のやり取りをしなくても良い。
むしろ拒否してもいいのだが・・・
(そんなミアもどーのこーの言いつつ手紙を出してあげるくせにねぇ)
ふふっと笑いながらアリアは思った。
「あっ・・・!」
そんなふうに生あたたかい目で見つめられていることに気が付かずにミアは、はたと思い出した。
(なぁるほどぉ?確か今回の仕事でグウィン様はヒロインと騎士マーティンのおじゃま虫をしてたよね?)
しかもそれは初日からだ。
仕事をしなさいグウィン侯爵。
「どうしたのミア?」
急に声を出したと思ったら、気持ちの悪い笑みを浮かべてグフグフ笑いだしたミア。
それを疑問に思ったアリアは不安げに覗き込んだ。
「アリア!ごめん!今日ちょっと早退するね!」
「えっ、ちょ・・・」
「大丈夫!今日まで無遅刻・無欠席・無早退だったから!あとでノートだけ見せて!」
「そういう問題じゃあ・・・!ああもうっ! 」
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