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8.張り込み
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※虫が苦手な方はご注意(?)
こちらミア。現在ストロベリーブロンドの2年生を張り込み中。至急あんぱんを持ってこい。
「──ってあんぱんこの世界にはないか。」
あ、と気がついて頷く。
そのすぐ後にエレンという少女が移動し始めたため、ミアはお得意の動体視力と筋力を駆使し学園の柱という柱を引っ付き飛んで、引っ付き飛んでを繰り返した。(はたから見たら地獄絵図)
「まるで虫になったようね。例えるなら何かしら?カナブンとかカメムシとかかしら?」
全く愛嬌のない虫だ。
カナブンは変な汁を出すし、カメムシは悪臭を放つのだ。
「あとはバッタとか?」
確かに跳ねるが、大きなバッタは日本のであっても普通に噛み付いたりおかしな液(排泄物だと思うが)を出す記憶がミアにはあった。
「・・・こう考えると虫って可愛くないわ。せめててんとう虫がいいかしら。」
ちなみにてんとう虫は寒めの地域であればカーテンの裏にみっちりと沢山詰めて入り込んでる場合がある。
人によってはトラウマにもなるらしい。集合体恐怖症の始まりだ。
「・・・これ以上は考えないようにしよう。」
引っ付き飛んで、引っ付き飛んで、引っ付き・・・
ヒロインが丁度騎士のマーティンと接触したようだ。
幸運なことに、イベントだったらしく2人は手を繋いでお昼ご飯を食べにいっていた。
(あらら、グウィン侯爵が付け入る隙ないじゃない。)
残念という表情をしながら、2人のイベントを眺めていたミアだが2人に近づく人影を見て思わず身を乗り出した。
「ここにいたのか!エレン!」
息を切らしてエレンの手を取ったのは、まさかの王太子だった。
「アルベルト様!どうしたのですかぁ?」
エレンが振り返るとふわりとストロベリーブロンドの髪の毛が揺れた。
そんな一挙一動にマーティンもアルベルトも頬を染め釘付けになっている。
(・・・ん?)
マーティンが前に出て、奪われたエレンの手を取り返して優しく握る。
「殿下、貴方には婚約者がいるではないですか。このような事をするのは不義理な事ですよ。」
「何を言っているマーティン。俺は彼女を説得したしエレンにもちゃんと説明した。これのどこが不義理というんだ?」
(いやいやいや、紳士としてする事じゃないよねえ!?)
思わず声に出して突っ込みかけたけれど、堪えるミア。
おかしな事に、マーティンルートに突入してるはずなのにライバルキャラとして王太子が出しゃばってきているようだ。
(てことはグウィン様はお役御免・・・?)
そう思い至って、ミアはホッとした。
その時また新たなる乱入者が現れる。
「何してるんですか!全く・・・これだから目を離せないんですよ。エレンの手を離してください。そんな強く握ったら痛いでしょう。」
王太子とマーティンからエレンを剥ぎ取った人物を見て、あんぐりとしてしまう。
宰相の息子ルドルフだ。
彼は頭脳明晰で合理的な判断をよく下すが、実の所心優しい少年で国民の声を聞き理解しようとしてるできた令息だ。
他人にほとんど興味を示さないミアも、彼には好感を持っている。
・・・のだが。
(確かに宰相の息子も攻略対象ではあったけど・・・まさか彼まで骨抜きにされているとはねぇ。)
途中から冷めた目で見つめてしまっていたミア。
もうここまで来たら予想できますよ。はい。
「エレンちゃん!だーれだっ!」
栗色で小柄の小さな少年が、エレンの目を両手で塞いでピタッとくっついた。
そうしてカップルおなじみのイチャつきを披露し始めたのだ。
視界を急に奪われる行為をされたら絶対に苛立つであろうミアの表情はひくついている。理解不能らしい。
「きゃ、もう!クリスったらまた悪戯して!もうその手には引っかからないわよぉ。」
くすくすと笑いながら優しくクリスの手を握り、目から離すエレン。
ミアの視線は絶対零度のものとなっている。
(逆ハールート?っていうんだっけ?そんなのなかったと思うけど・・・)
そもそも現実的に考えたら絶対不可能だ。
ぶっちゃけこんな4人もの男を誑かしたのだ。どんな噂をされていてもおかしくないし、彼女も、彼女にメロメロの彼らも立場が危ういものだろう。
(何で今まで私の耳にそういう噂が入ってきてなかったのかな?)
心底不思議そうに首を傾げるミアであったが、当然彼女に興味がなかったからだ。
耳に入ってたとしても、すぐに頭の隅に追いやって忘れてしまうのだ。
(とりあえず、あっちはお花畑ね。あんな所にグウィン様を追いやっても1人ぽつねんとする事しかできなくて可哀想なことになるね。絶対。)
ヒロインに張り付いていたが、彼女に押し付ける作戦はやはりダメなようだ。
そもそもグウィンが見向きすらしていないことに、今回張り込みをしていて気がついた。
(・・・ま、グウィン様も他に誘える令嬢がいないぼっちなのかもしれないし。)
パーティに一緒に行っても問題ないかと思い直したミアであった。
こちらミア。現在ストロベリーブロンドの2年生を張り込み中。至急あんぱんを持ってこい。
「──ってあんぱんこの世界にはないか。」
あ、と気がついて頷く。
そのすぐ後にエレンという少女が移動し始めたため、ミアはお得意の動体視力と筋力を駆使し学園の柱という柱を引っ付き飛んで、引っ付き飛んでを繰り返した。(はたから見たら地獄絵図)
「まるで虫になったようね。例えるなら何かしら?カナブンとかカメムシとかかしら?」
全く愛嬌のない虫だ。
カナブンは変な汁を出すし、カメムシは悪臭を放つのだ。
「あとはバッタとか?」
確かに跳ねるが、大きなバッタは日本のであっても普通に噛み付いたりおかしな液(排泄物だと思うが)を出す記憶がミアにはあった。
「・・・こう考えると虫って可愛くないわ。せめててんとう虫がいいかしら。」
ちなみにてんとう虫は寒めの地域であればカーテンの裏にみっちりと沢山詰めて入り込んでる場合がある。
人によってはトラウマにもなるらしい。集合体恐怖症の始まりだ。
「・・・これ以上は考えないようにしよう。」
引っ付き飛んで、引っ付き飛んで、引っ付き・・・
ヒロインが丁度騎士のマーティンと接触したようだ。
幸運なことに、イベントだったらしく2人は手を繋いでお昼ご飯を食べにいっていた。
(あらら、グウィン侯爵が付け入る隙ないじゃない。)
残念という表情をしながら、2人のイベントを眺めていたミアだが2人に近づく人影を見て思わず身を乗り出した。
「ここにいたのか!エレン!」
息を切らしてエレンの手を取ったのは、まさかの王太子だった。
「アルベルト様!どうしたのですかぁ?」
エレンが振り返るとふわりとストロベリーブロンドの髪の毛が揺れた。
そんな一挙一動にマーティンもアルベルトも頬を染め釘付けになっている。
(・・・ん?)
マーティンが前に出て、奪われたエレンの手を取り返して優しく握る。
「殿下、貴方には婚約者がいるではないですか。このような事をするのは不義理な事ですよ。」
「何を言っているマーティン。俺は彼女を説得したしエレンにもちゃんと説明した。これのどこが不義理というんだ?」
(いやいやいや、紳士としてする事じゃないよねえ!?)
思わず声に出して突っ込みかけたけれど、堪えるミア。
おかしな事に、マーティンルートに突入してるはずなのにライバルキャラとして王太子が出しゃばってきているようだ。
(てことはグウィン様はお役御免・・・?)
そう思い至って、ミアはホッとした。
その時また新たなる乱入者が現れる。
「何してるんですか!全く・・・これだから目を離せないんですよ。エレンの手を離してください。そんな強く握ったら痛いでしょう。」
王太子とマーティンからエレンを剥ぎ取った人物を見て、あんぐりとしてしまう。
宰相の息子ルドルフだ。
彼は頭脳明晰で合理的な判断をよく下すが、実の所心優しい少年で国民の声を聞き理解しようとしてるできた令息だ。
他人にほとんど興味を示さないミアも、彼には好感を持っている。
・・・のだが。
(確かに宰相の息子も攻略対象ではあったけど・・・まさか彼まで骨抜きにされているとはねぇ。)
途中から冷めた目で見つめてしまっていたミア。
もうここまで来たら予想できますよ。はい。
「エレンちゃん!だーれだっ!」
栗色で小柄の小さな少年が、エレンの目を両手で塞いでピタッとくっついた。
そうしてカップルおなじみのイチャつきを披露し始めたのだ。
視界を急に奪われる行為をされたら絶対に苛立つであろうミアの表情はひくついている。理解不能らしい。
「きゃ、もう!クリスったらまた悪戯して!もうその手には引っかからないわよぉ。」
くすくすと笑いながら優しくクリスの手を握り、目から離すエレン。
ミアの視線は絶対零度のものとなっている。
(逆ハールート?っていうんだっけ?そんなのなかったと思うけど・・・)
そもそも現実的に考えたら絶対不可能だ。
ぶっちゃけこんな4人もの男を誑かしたのだ。どんな噂をされていてもおかしくないし、彼女も、彼女にメロメロの彼らも立場が危ういものだろう。
(何で今まで私の耳にそういう噂が入ってきてなかったのかな?)
心底不思議そうに首を傾げるミアであったが、当然彼女に興味がなかったからだ。
耳に入ってたとしても、すぐに頭の隅に追いやって忘れてしまうのだ。
(とりあえず、あっちはお花畑ね。あんな所にグウィン様を追いやっても1人ぽつねんとする事しかできなくて可哀想なことになるね。絶対。)
ヒロインに張り付いていたが、彼女に押し付ける作戦はやはりダメなようだ。
そもそもグウィンが見向きすらしていないことに、今回張り込みをしていて気がついた。
(・・・ま、グウィン様も他に誘える令嬢がいないぼっちなのかもしれないし。)
パーティに一緒に行っても問題ないかと思い直したミアであった。
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