悪役に壁ドンされたら思い出しました

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5.定食屋にリスがいるぞ!

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「確かにどこに行くか聞いた。送るとも言った。そのあと俺もその店に寄ろうとも言ったぞ。」

頭を抱えながら、呻くように言うグウィン。

そんな様子を気にせずに、ミアはモシャモシャと丼物を食べていた。

「なぜ帰り道に定食屋へ寄るんだ!!!男が密集してる定食屋へ寄る伯爵令嬢がどこの世界にいる!」

「ここにいますね。」

「コイツゥゥッ」

 ギュリギュリと変な音を出しながら食いしばっているグウィンの様子に疑問符が浮かぶ。

「どうしました?お腹でも減ってるんですかね・・・だから注文したら良いのではと聞いたのに・・・」

「誰が食べるかっ!」

 グウィンとしては、当たり前だろう。

彼にとって庶民じみた食べ物を口にするのは抵抗があった。

そもそも貴族が軽々しく、外のものを口に入れるべきではない。

「美味しいのに・・・」

ミアは残念そうに、人生半分は損してるよと視線を送る。

「もしかして、お腹減ってはないんですかね?でも食べたい、と。」

 ビシッと指をさしてフムフムと納得をするミア。

「おい。勝手に結論づけるな。」

「そんな可哀想な貴方には、こちらの美味しい一口サイズ丼を差し上げましょうか。それともこちらの一口分の美味しいピザを差し上げましょうか?」

 スっスっスっと大きめのスプーンにたくさんの具とご飯が乗ったミニ丼を、サッサッサッとナイフで一口サイズの三角形に切られたピザを用意して見比べさせた。

それを見たグウィンは固まる。

(これは、ん?このスプーンってさっきコイツが咥えてたヤツじゃないのか?ん?つまり・・・)

チラリとミアの手と周辺を見るが、それらしきスプーンは一つもない。

つまりは・・・

「・・・ピザにします・・・」

萎んだ声でピザを選択したグウィン。

「はいどうぞ。(なんで敬語?)」

その面構えは一気に老け込んでいた。

ピザを食べながらグウィンは聞く。

「お前そんなんで良いのか?」

「何がです?」

「・・・一人で女が男の集まる定食屋へ食事をしに行って。しかも貴族が。・・・あとその鈍さとか、見てて危なっかしいが?」

 その言葉を聞いて、ミアはプッと笑う。

そんなミアの様子を見たグウィンは、顔を真っ赤にしながら言った。

「な、なにがおかしい!」

「だって、その危なっかしい令嬢に絡んで叩かれた侯爵様がそんなこと言うから・・・ふっ・・・あ、返してください!」

 ミアに言われて思い出したグウィンは、やけになってピザを奪い取った。

そしてリスのように口を頬張らせて言った。

「代金は俺がだす。」

「美味しいでしょ。」

「・・・まあ及第点」
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