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3.残夜、その背後にて
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「・・・ぐ・・・」
さあさあさあ!飲んで飲んで!と勧められるうちに、いつの間にか気を失ってしまっていたらしい。
どんどん飲めと酒を飲まされたことだけは覚えている。
「・・・ここは?・・・ぁぐっ」
突然、腹部に落とされた衝撃で目が覚めた昂遠は、薄闇の中で何度も瞬きを繰り返した。
「これは・・・布・・・か?」
手の甲に触れた布に視線を向ける。落ちていないところを見ると、どうやら寝台に寝かせて貰っていたようだ。
人族が二人以上並んでも余裕で寝られる広さの寝台は初めてで、どうにも落ち着かない。
薄闇の中で目を凝らしてみるも、状況がよく分からず、指を動かして初めて、ザラザラとした妙な感触に気がついた。
「なんだ・・・?」
ジンジンと痛む腹部に視線を向けようと、上体を起こしかけた昂遠の腕が止まる。
彼は自分の頭の横に置かれた長い爪に一瞬、ギョッとした表情になったが、それが共に寝かされていた友の足だと分かると、ホッと息を吐き、ゆっくりと体を起こす事にした。
「・・・じゃあ、これもか」
一体誰の足だ?と自分の腹部を見てみれば、鳥の獣人族特有の長い爪が視界に入った。
「・・・・・・」
俺も人の事を言えた義理じゃないが、これは酷い。
いかんせん、寝相が悪すぎる。
昂遠は自分の腹部に落とされた寉の足をゆっくりと持ち上げると体を右にずらす事にした。
しんと静まり返ったこの部屋からは、竺と寉の寝息しか聞こえてこない。
壁の隙間から入り込む風は冷たく、夜明けまでまだ時間がかかりそうな気がした。
「・・・・・・」
これまでの人生の中で一番食べて飲んだ気がする。それ程に楽しい時間だった。
この国の酒は他国に比べると種類も豊富で飲みやすいと聞いた事はあったが、実際に口にするのは初めてだった。
ほんのり甘く香る酒は飲みやすく、油断すれば何杯でも飲んでしまいそうだ。
果実か花を使用しているのだろうか。機会があったら、また飲んでみたいと思う。そんな味がした。
最も、それは皆で飲んだからこそ美味しいと感じたのかもしれないが。
「・・・う」
思い返してみれば、食事中、殆ど水を飲んでいないことに気付いた昂遠は、何度も唾を飲み込もうと試みたものの、予想以上に唾の量が少なく、なかなか飲み込む事が出来なかった。
しかも、一度渇き始めた喉はイガイガと彼の喉を突くだけで全く変化は感じられない。
それどころか、このままだと咳で皆を起こしてしまう可能性だってある。
「・・・みず・・・ぃや、でも・・・ぅ」
喉を押さえる昂遠の眉間に皺が寄る。
ここが自分の家であれば、遠慮無く水瓶の中の水をがぶ飲みしていたに違いない。
しかし、ここは梠の家だ。
深夜に余所様の家にお邪魔して散々騒いで荒らした挙げ句、厨房までお借りして水を貰うなんて図々しいにも程がある。
「うう・・・」
どうすればいいんだと昂遠は暫く頭を抱えていたのだが、このまま悶々としていても始まらないと思い「仕方ない。後であやま・・・っぐ」と、再び自分の上に落ちて来た友の足を持ち上げたまま、寝台から降りようとした。
「・・・・・・」
その時だ。
天井から何かが覆い被さるような感覚と共に、ジッとこちらを凝視する視線に気付いたのは。
瞬時に全身が粟立った彼は両目を見開いたまま、その場から動くのを止め、ゆっくりと部屋を見渡した。
さあさあさあ!飲んで飲んで!と勧められるうちに、いつの間にか気を失ってしまっていたらしい。
どんどん飲めと酒を飲まされたことだけは覚えている。
「・・・ここは?・・・ぁぐっ」
突然、腹部に落とされた衝撃で目が覚めた昂遠は、薄闇の中で何度も瞬きを繰り返した。
「これは・・・布・・・か?」
手の甲に触れた布に視線を向ける。落ちていないところを見ると、どうやら寝台に寝かせて貰っていたようだ。
人族が二人以上並んでも余裕で寝られる広さの寝台は初めてで、どうにも落ち着かない。
薄闇の中で目を凝らしてみるも、状況がよく分からず、指を動かして初めて、ザラザラとした妙な感触に気がついた。
「なんだ・・・?」
ジンジンと痛む腹部に視線を向けようと、上体を起こしかけた昂遠の腕が止まる。
彼は自分の頭の横に置かれた長い爪に一瞬、ギョッとした表情になったが、それが共に寝かされていた友の足だと分かると、ホッと息を吐き、ゆっくりと体を起こす事にした。
「・・・じゃあ、これもか」
一体誰の足だ?と自分の腹部を見てみれば、鳥の獣人族特有の長い爪が視界に入った。
「・・・・・・」
俺も人の事を言えた義理じゃないが、これは酷い。
いかんせん、寝相が悪すぎる。
昂遠は自分の腹部に落とされた寉の足をゆっくりと持ち上げると体を右にずらす事にした。
しんと静まり返ったこの部屋からは、竺と寉の寝息しか聞こえてこない。
壁の隙間から入り込む風は冷たく、夜明けまでまだ時間がかかりそうな気がした。
「・・・・・・」
これまでの人生の中で一番食べて飲んだ気がする。それ程に楽しい時間だった。
この国の酒は他国に比べると種類も豊富で飲みやすいと聞いた事はあったが、実際に口にするのは初めてだった。
ほんのり甘く香る酒は飲みやすく、油断すれば何杯でも飲んでしまいそうだ。
果実か花を使用しているのだろうか。機会があったら、また飲んでみたいと思う。そんな味がした。
最も、それは皆で飲んだからこそ美味しいと感じたのかもしれないが。
「・・・う」
思い返してみれば、食事中、殆ど水を飲んでいないことに気付いた昂遠は、何度も唾を飲み込もうと試みたものの、予想以上に唾の量が少なく、なかなか飲み込む事が出来なかった。
しかも、一度渇き始めた喉はイガイガと彼の喉を突くだけで全く変化は感じられない。
それどころか、このままだと咳で皆を起こしてしまう可能性だってある。
「・・・みず・・・ぃや、でも・・・ぅ」
喉を押さえる昂遠の眉間に皺が寄る。
ここが自分の家であれば、遠慮無く水瓶の中の水をがぶ飲みしていたに違いない。
しかし、ここは梠の家だ。
深夜に余所様の家にお邪魔して散々騒いで荒らした挙げ句、厨房までお借りして水を貰うなんて図々しいにも程がある。
「うう・・・」
どうすればいいんだと昂遠は暫く頭を抱えていたのだが、このまま悶々としていても始まらないと思い「仕方ない。後であやま・・・っぐ」と、再び自分の上に落ちて来た友の足を持ち上げたまま、寝台から降りようとした。
「・・・・・・」
その時だ。
天井から何かが覆い被さるような感覚と共に、ジッとこちらを凝視する視線に気付いたのは。
瞬時に全身が粟立った彼は両目を見開いたまま、その場から動くのを止め、ゆっくりと部屋を見渡した。
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