日々是好日

四宮

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3.残夜、その背後にて

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「ねえ」
「ん?」
「そもそも、お坊さんって何するの?」
「何って・・・」

ソウの問いにサクの言葉が詰まる。
彼は暫くの間、尻尾を揺らしたまま天井を眺めていたのだが、「何って・・・何すんだろな?俺、見た事ねえもん。坊さんなんてよ」と首筋をカリカリと引っかき始めた。
何処か不安げに揺れる尻尾が垂れ下がる。

よわい二十三のソウと比べると、狐の獣人族であるサクは彼よりも三歳年が上だ。
幼少期から兄弟のように育った二名とはいえ、彼らの会話は何処か幼い。
その事に若干の不安を抱きつつもリョはあえて口には出さず、深く吸い込んだ息をゆっくりと吐き出した。

「恐らく、本人は猪国イコクでも修行をしたんだろう。だが、あの所作は修行で身に着けたものじゃない。あれは野戦に慣れた奴の歩き方だ。腕もそうだな。あの時、お前たちがわざと昂遠に抱き着いた事があっただろう?」
「うん」
「あの時、一瞬だったが昂遠コウエンの顔付きが変わったんだ。だが、背後に居るのがお前達だと気付いて咄嗟に体を止めたんだよ」

「え・・・」
「もしかして俺等、殴られてたかもしれないってこと?」

二名の言葉に、リョが頷いている。
それを見た二名は互いに顔を見合わせると唇を歪ませた。

「受け入れたのは俺達だ。昂遠が昔、何をしていたかなんて関係ない。そもそも俺達だって他者の事は言えないだろう?」
「あー」
「まぁ、確かにね」
「それに、人族であったとしても、昂遠が友であることに変わりはない。違うか?」
リョの兄貴が言うなら、俺達はもう何も言わないよ。な」

サクの言葉にソウも頷いている。

「僕達は兄貴に返しきれない恩がある。だから気になったんだ」
「ああ。分かってる」
「でも本当にどうするの?この先、昂遠は家を借りるつもりでいるみたいだけど」
「そうだよなあ。あいつ、本当に何も知らないんだろ?知ってたら家を借りたいなんて言わないはずだし」
「・・・この国じゃ、民札タミフダなんて」
「ま、使えないな」

ソウの言葉にサクは片手を揺らしながら、頭を左右に動かしている。

「だが、人族にとっては必要な物なんだろう?・・・ふうむ、家か・・・」
そうまで呟いていたリョの言葉が止まる。

彼は何かを考えていた様子だったが、「まあ、なるようになるだろ」とだけ呟くと、空になったままの酒杯に水を注いだのだった。
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