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第7章:衝突
第81話
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翌日。後から合流するガゼル以外のメンバーで、サトラテールの北の森へ向かった。北門をくぐり抜けた先で、見覚えのある人物と顔を合わせた。
「フラン!あんたなんでここに…」
「ニ、ニア…それにシューも…。」
そこには、騎士学校で共に学んだ2人の姿があった。その周りには、見覚えのある顔が何人か集まっている。まさか騎士見習いの彼等まで派遣されていたとは思わず、僕は心底驚いた。
「良かった…!行方不明になったって聞いて…心配してたんだよ…。」
「全く…。生きてたなら連絡しなさいよ!」
「ご、ごめんね。ちょっと…色々ありすぎて…。というか、騎士団以外にも吸血鬼の撃退に参加するとは思わなかったよ。」
「それはこっちのセリフよ。あんた、騎士団から抜けたはずだけど、どうしてここにいる訳?」
「あ、えっと…それは…」
「おいおいフラン。再会を喜んでる場合じゃねぇぞー?」
僕の肩に腕が回され、人の体温と重みが伝わる。視線を斜め後ろに移すと、そこにはギルドメンバーのラズの姿があった。
「ラズ…!」
「君達が、騎士学校で出来たフランの友達かー。初めまして。俺はラズギエル・オズマ。こいつと同じギルドのもんだ。」
「再会を喜ぶ暇は無いのに、自己紹介の時間はあるのね。」
「ちょ…ニア…!初対面の人にそんな言い方…。す、すみません…!」
いつもと変わらぬ様子の彼女を、隣に立つシューが慌ててなだめる。その光景を見て、どこか懐かしさを感じた。
「ははは。いいよいいよ。堅苦しいのは俺も嫌いでさー。君は…ニアちゃんって言うのか。いい名前だね?今度、時間が出来たらお茶でも…」
「ラズ。ニアには婚約者がいるよ。」
「え!?」
彼女にはデトワーズという婚約者がいる。親同士の約束だと聞いた事があるが、貴族である彼等にとって、親の約束と言うのは絶対だろう。
彼女を口説こうとした彼を、僕はやんわりと引き止めた。
「もういいかしら?行くわよシュー。」
「え?あ…う、うん…!し、失礼します…。」
ラズの事を警戒しているのか、彼等はそそくさとその場から立ち去っていった。
「ありゃりゃ。こりゃあ嫌われちゃったかな?」
「彼女は気が強いから、いつもの事だだよ。」
「そっかそっか。なら仕方ないな…っと、油を売ってる場合じゃなかったな。リーガルの所に行こうぜ。」
後からやってきたガゼルも合流し、リーガルを中心に作戦会議が始まった。
「今回の目的は、森を陣取った吸血鬼の部隊を退ける事だ。退けると言っても、遠慮はいらない。向こうも俺達を殺す気で掛かってくるだろうからな…俺達もそのくらいの気持ちで思いっきり暴れてくれ。」
「そりゃあいいけどさ…流石に全員で一緒に動くわけじゃないだろ?班分けはどうする?」
「人数的に、2つの部隊に分けるのがいいだろう。前後のバランスを考えると…。」
リーガルが率いる、ラヴィ、シェリアのチームとラズが率いる、リアーナ、ガゼル、僕の2チームで行動する事になった。
「前衛であるラヴィ、リアーナ、フランはあまり前に出過ぎないように気を付けてくれ。お前達は主に敵の陽動を目的とし、後衛の俺、シェリア、ラズ、ガゼルが仕留める。」
「了解!陽動は得意だよ。」
「一発で仕留められるとも限らない。そん時は、サポートも頼んだぜリアーナちゃん。」
「もちろん。陽動だけじゃ物足りないよ。一発くらい蹴っとかないと気が済まないわ。」
「あんまり張り切りすぎて、怪我しちゃだめよー?」
「わ、わかってるよ…!そんなヘマはしないってば…。」
「他に質問はあるか?」
彼の問いかけに、僕は小さく手を挙げた。
「あの…もしもなんだけど、吸血鬼の部隊の中に僕の知り合いがいた場合、僕はどうすればいいと思う…?」
「そうだな…お前は俺達と違って、吸血鬼との繋がりもある訳か…。」
僕の質問に、リーガルは頭を抱えてしまった。それも当然だ。ここに居るほぼ全員が吸血鬼に対して恨みを持っている。僕のように吸血鬼との接点は無く、吸血鬼を傷付けたくないという考え方がそもそも無いのだ。
黙り込んでしまった彼の代わりに、隣に立っていたリアーナが口を開いた。
「あたしだったら…相手次第かな。向こうが攻撃してくるならあたしも攻撃するし、してこないならしない!」
「俺なら、とにかく衝突を避けるかな。相手がどっちに出てきても、周りに戦ってる奴がいるんだから、味方に迷惑はかけたくねぇし。」
ガゼルは自分の考えを述べた後、ちらりとラズの方に視線を向けた。
「え?俺?俺はそうだな…。俺なら、目の前の戦いに集中すべきだと思うな。…ここは戦場だ。昔は味方だった相手とも、ここでは敵になる事だってある。相手に恨まれようが妬まれようが、自分が残る為に俺は全力で戦う。」
「あたしもラズと一緒かな。お互い全力でぶつかり合えばいいんだよ。ほら、仲がいいほど喧嘩するって言うじゃん?」
「それとはちょっと違うような…。」
「と、とにかく全力!あたしはそうするって事!」
これから命を取り合う戦いをすると言うのに、ラヴィは笑顔を浮かべてそう口にした。
僕はサトラテールを救いたいという気持ちと、吸血鬼と戦わなければならない背徳感に挟まれていた。僕の中にある、ルドルフという存在がそういう気持ちにさせるのか、僕を友と言ってくれたイムーブルの幹部達が帰りを待っているからなのかはわからない。
この問いを投げかけた事により、僕の迷いが一層増えてしまったような気がした。
「…フラン。迷っているなら、お前は剣を振らなくてもいいんだぞ?」
「え?でもそれは…。」
「どっちも助けたいけど、どっちも傷付けたくない…その気持ち、私にもわかるわ。」
そう言うと、シェリアは僕の頭に手を乗せた。その優しいぬくもりに、僕は目頭が熱くなった。唇を噛みしめ、涙が出そうになるのを必死に堪える。
「リーガル。やっぱりフランは、ギルドに残ってもらうのがいいんじゃないかしら?」
「ふむ…。俺はそれでも構わないが…。フラン。お前はどうしたい?」
「僕は…。」
シェリアの言う通り、人間と吸血鬼をどちらも助けたいし傷付けたくない。今から僕は人間の立場に立って、吸血鬼を殺める手伝いをしなければならない。その事で、僕の心は揺らいでいた。
「俺はもう覚悟を決めている。今度こそ、この戦いを終わらせると。」
ルドルフが、迷っている僕にそう告げた。その言葉に、僕は何をしにここへ来たのかを思い出した。
人間である僕を救ってくれた、吸血鬼のステラ様。彼が守ろうとしたのは吸血鬼だけではない。人間も吸血鬼も争いのない世の中にしたい。そんな彼の意志を尊重するなら、この戦いを終わらせる事こそが僕が今やるべき事であると。
「…僕も戦うよ。」
「本当にいいんだな?」
「うん。僕は僕のやり方で、この戦いを終わらせるんだ!」
こうして、二手に分かれた僕達は森の奥へと足を踏み入れた。
「フラン!あんたなんでここに…」
「ニ、ニア…それにシューも…。」
そこには、騎士学校で共に学んだ2人の姿があった。その周りには、見覚えのある顔が何人か集まっている。まさか騎士見習いの彼等まで派遣されていたとは思わず、僕は心底驚いた。
「良かった…!行方不明になったって聞いて…心配してたんだよ…。」
「全く…。生きてたなら連絡しなさいよ!」
「ご、ごめんね。ちょっと…色々ありすぎて…。というか、騎士団以外にも吸血鬼の撃退に参加するとは思わなかったよ。」
「それはこっちのセリフよ。あんた、騎士団から抜けたはずだけど、どうしてここにいる訳?」
「あ、えっと…それは…」
「おいおいフラン。再会を喜んでる場合じゃねぇぞー?」
僕の肩に腕が回され、人の体温と重みが伝わる。視線を斜め後ろに移すと、そこにはギルドメンバーのラズの姿があった。
「ラズ…!」
「君達が、騎士学校で出来たフランの友達かー。初めまして。俺はラズギエル・オズマ。こいつと同じギルドのもんだ。」
「再会を喜ぶ暇は無いのに、自己紹介の時間はあるのね。」
「ちょ…ニア…!初対面の人にそんな言い方…。す、すみません…!」
いつもと変わらぬ様子の彼女を、隣に立つシューが慌ててなだめる。その光景を見て、どこか懐かしさを感じた。
「ははは。いいよいいよ。堅苦しいのは俺も嫌いでさー。君は…ニアちゃんって言うのか。いい名前だね?今度、時間が出来たらお茶でも…」
「ラズ。ニアには婚約者がいるよ。」
「え!?」
彼女にはデトワーズという婚約者がいる。親同士の約束だと聞いた事があるが、貴族である彼等にとって、親の約束と言うのは絶対だろう。
彼女を口説こうとした彼を、僕はやんわりと引き止めた。
「もういいかしら?行くわよシュー。」
「え?あ…う、うん…!し、失礼します…。」
ラズの事を警戒しているのか、彼等はそそくさとその場から立ち去っていった。
「ありゃりゃ。こりゃあ嫌われちゃったかな?」
「彼女は気が強いから、いつもの事だだよ。」
「そっかそっか。なら仕方ないな…っと、油を売ってる場合じゃなかったな。リーガルの所に行こうぜ。」
後からやってきたガゼルも合流し、リーガルを中心に作戦会議が始まった。
「今回の目的は、森を陣取った吸血鬼の部隊を退ける事だ。退けると言っても、遠慮はいらない。向こうも俺達を殺す気で掛かってくるだろうからな…俺達もそのくらいの気持ちで思いっきり暴れてくれ。」
「そりゃあいいけどさ…流石に全員で一緒に動くわけじゃないだろ?班分けはどうする?」
「人数的に、2つの部隊に分けるのがいいだろう。前後のバランスを考えると…。」
リーガルが率いる、ラヴィ、シェリアのチームとラズが率いる、リアーナ、ガゼル、僕の2チームで行動する事になった。
「前衛であるラヴィ、リアーナ、フランはあまり前に出過ぎないように気を付けてくれ。お前達は主に敵の陽動を目的とし、後衛の俺、シェリア、ラズ、ガゼルが仕留める。」
「了解!陽動は得意だよ。」
「一発で仕留められるとも限らない。そん時は、サポートも頼んだぜリアーナちゃん。」
「もちろん。陽動だけじゃ物足りないよ。一発くらい蹴っとかないと気が済まないわ。」
「あんまり張り切りすぎて、怪我しちゃだめよー?」
「わ、わかってるよ…!そんなヘマはしないってば…。」
「他に質問はあるか?」
彼の問いかけに、僕は小さく手を挙げた。
「あの…もしもなんだけど、吸血鬼の部隊の中に僕の知り合いがいた場合、僕はどうすればいいと思う…?」
「そうだな…お前は俺達と違って、吸血鬼との繋がりもある訳か…。」
僕の質問に、リーガルは頭を抱えてしまった。それも当然だ。ここに居るほぼ全員が吸血鬼に対して恨みを持っている。僕のように吸血鬼との接点は無く、吸血鬼を傷付けたくないという考え方がそもそも無いのだ。
黙り込んでしまった彼の代わりに、隣に立っていたリアーナが口を開いた。
「あたしだったら…相手次第かな。向こうが攻撃してくるならあたしも攻撃するし、してこないならしない!」
「俺なら、とにかく衝突を避けるかな。相手がどっちに出てきても、周りに戦ってる奴がいるんだから、味方に迷惑はかけたくねぇし。」
ガゼルは自分の考えを述べた後、ちらりとラズの方に視線を向けた。
「え?俺?俺はそうだな…。俺なら、目の前の戦いに集中すべきだと思うな。…ここは戦場だ。昔は味方だった相手とも、ここでは敵になる事だってある。相手に恨まれようが妬まれようが、自分が残る為に俺は全力で戦う。」
「あたしもラズと一緒かな。お互い全力でぶつかり合えばいいんだよ。ほら、仲がいいほど喧嘩するって言うじゃん?」
「それとはちょっと違うような…。」
「と、とにかく全力!あたしはそうするって事!」
これから命を取り合う戦いをすると言うのに、ラヴィは笑顔を浮かべてそう口にした。
僕はサトラテールを救いたいという気持ちと、吸血鬼と戦わなければならない背徳感に挟まれていた。僕の中にある、ルドルフという存在がそういう気持ちにさせるのか、僕を友と言ってくれたイムーブルの幹部達が帰りを待っているからなのかはわからない。
この問いを投げかけた事により、僕の迷いが一層増えてしまったような気がした。
「…フラン。迷っているなら、お前は剣を振らなくてもいいんだぞ?」
「え?でもそれは…。」
「どっちも助けたいけど、どっちも傷付けたくない…その気持ち、私にもわかるわ。」
そう言うと、シェリアは僕の頭に手を乗せた。その優しいぬくもりに、僕は目頭が熱くなった。唇を噛みしめ、涙が出そうになるのを必死に堪える。
「リーガル。やっぱりフランは、ギルドに残ってもらうのがいいんじゃないかしら?」
「ふむ…。俺はそれでも構わないが…。フラン。お前はどうしたい?」
「僕は…。」
シェリアの言う通り、人間と吸血鬼をどちらも助けたいし傷付けたくない。今から僕は人間の立場に立って、吸血鬼を殺める手伝いをしなければならない。その事で、僕の心は揺らいでいた。
「俺はもう覚悟を決めている。今度こそ、この戦いを終わらせると。」
ルドルフが、迷っている僕にそう告げた。その言葉に、僕は何をしにここへ来たのかを思い出した。
人間である僕を救ってくれた、吸血鬼のステラ様。彼が守ろうとしたのは吸血鬼だけではない。人間も吸血鬼も争いのない世の中にしたい。そんな彼の意志を尊重するなら、この戦いを終わらせる事こそが僕が今やるべき事であると。
「…僕も戦うよ。」
「本当にいいんだな?」
「うん。僕は僕のやり方で、この戦いを終わらせるんだ!」
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