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第1章︰騎士の道
第3話
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「これで終わりだね。シュー、お昼食べに行こう?」
「は、はい…。」
午前の講義を終え、昼食を食べに食堂へと足を運んだ。
「フランーこっちこっちー。」
「おまたせニア。」
先に食堂へ来ていた彼女と合流し、手に持ったお盆を机に置いて席に着いた。
「週番って面倒よねー…。あんなの、教官にこき使われてるだけじゃない。」
「僕は結構好きだよ?教官室に行くのは嫌だけどね。」
週番とは、教官が講義を行う際に使う教材や書類を運んだり、生徒に出された課題の冊子を回収したりする雑務を行う。週に1度のペースで交代し、今週は僕とシューが週番の担当に選ばれたのだ。
「あんたってほんと…変わり者よねぇ。シュティレは嫌でしょ?週番なんて。」
「は、はい…。色んな人と…話さなきゃいけないから…嫌いです。」
「え…そっちなの…?」
とにかく人と接する事が苦手なシューが、人と馴れ合う事を好まないニアと会話を交わしていた。
「ねぇ…いつの間にシューとニアは仲良くなったの?」
「仲良くなったつもりはないわ。あんた達が話すようになったから、たまたまあたしも加わってるだけよ。」
「ふーん?」
彼女は慌てて視線を逸らすと、手元に置かれた水を口に含んだ。
「…あんたこそ仲良さそうじゃない。シューなんて呼んじゃってるし。」
「名前が長いと呼びにくくない?僕が勝手に呼び始めたんだけど…そういえば、シュー本人から許可をもらってなかったよね?」
隣に座る彼に向かって質問を投げかけると、黙々と食事をしていた彼は口に含んだものを慌てて飲み込んだ。
「じ、自分は別に…なんでも…。」
「よかった~。なら、これからもシューって呼ばせてもらうね?僕の事も、気軽に呼んでくれると嬉しいな。」
「わ、わかり…ました。」
「あたしもニアで構わないわ。こっちはシュティレって呼ぶつもりだけどね。」
「えー。そこはシューって呼ぼうよー。」
「あたしは愛称で呼び合うなんて御免よ。トワ1人で充分だわ。」
「…とか言って、そう呼ぶのが恥ずかしいだけじゃ…」
「いいから黙って食べなさいよ!今日は午後から実習があるんだから、昼寝の暇はないわよ?」
「そっか…そういえばそうだったね。…あ。ねぇ、シュー。今日の実習って…」
今までは、ニアと2人で食事をするのが日常だった。それだけでも充分だったが、毎日同じような話題で会話をするしかなかった。しかし、新しい仲間が加わった事で、より一層楽しいひと時を過ごせるようになっていた。
「全員集まったかしら~?それじゃあ早速、魔法の実習を始めるわね~。」
訓練場に集められた生徒達の前に、午後の実習を指導するメドゥヴァーナ教官が姿を現した。彼女は保健室の担当教官でありながら、月に何度か魔法を教える講師も務めているのだ。名前が長い事から、生徒達の間でメドゥ教官と呼ばれている。
「前回、下級の属性魔法を一通り教えましたから、今回は上級魔法に挑戦してみましょうか~。まずは~…」
彼女は座っている生徒達の前を歩きながら、上級魔法について説明を始めた。
下級の魔法と基本的な所は同じだが、魔法の詠唱が長い事と魔力の量が多く必要になるという点で、下級に比べて扱いが難しくなっている。
「…さて、難しい説明はこれくらいにして、教本のやり方に沿って実際にやってみましょう~。隣の人と充分距離を取って、安全に行ってくださいね~?」
説明を聞き終えた生徒達は訓練場の各所にバラけ、魔法の訓練を始めた。
「ニアは魔法得意だよね?コツとか教えてよ。」
「あんたは何かと言うとすぐそれね…。」
「自分も…魔法は苦手だから、もしコツあるなら聞きたいな…。」
僕とシューは、前回の魔法訓練で行った下級魔法ですら、まともに扱えていなかった。それに比べ、ニアは魔法に関する知識や扱いに長けている。彼女の話によると、幼い頃から魔法の知識を教え込まれ、自然と扱いも上達したらしい。
「そう言われてもねぇ…。魔力の量に個人差があるのは仕方ないし、出来る事と出来ない事があるのは当然よ。それを無くす為に訓練するんじゃない。」
「そもそも…どうして騎士を目指す僕達が、魔法まで必要があるの?剣の扱いだけで充分だと思うんだけど…。」
「戦う力のない民衆を守るのが騎士の務めよ?剣だけじゃ救い切れない命は沢山あるの。助けられる可能性を広げる為に、魔法の訓練だってやるべきだわ。」
「ニアさんは……騎士の鏡…みたいな人ですね…。」
「はぁ…!?ほ、褒めても…何も出ないわよ?」
「そっか…。出来る事なら魔法は避けたかったけど、そういう訳にもいかないんだね。」
「そういう事。…上手く教えられるか分からないけど、あたしに出来る事は手伝うわ。」
「そうこなくちゃ!よろしくねニア。」
魔法の苦手な僕達は彼女の力を借り、実習時間が終わるギリギリまで魔法の訓練に打ち込んだ。
「おまたせルナちゃん。」
1日の授業を終え、僕はいつものように彼女の部屋へやって来た。
「あれ?ルナちゃん?」
彼女は机に向かい、真剣な眼差しで手元に視線を落としている。その様子を見る限り、僕の呼びかけに全く気が付いていないようだった。
「ねールナちゃん!」
「わ!?」
彼女の背後に近寄り、耳元に声をかけた。慌てて振り向いた彼女は僕の顔を見て驚き、身体が後ろに倒れかけた。
「おっ…と!」
咄嗟に右手で椅子の背を掴み、左手で彼女の背中を支えた。近くにあった彼女の顔が、さらに近くに迫る。
「ごめん…。そんなに驚くと思わなくて。」
「い、いつの間に来てたの?」
「え?さっき来たばかりだよ。3回くらいルナちゃんの事呼んだけど、無反応だったから具合悪いのかな?と思って。」
「あ、ごめん…魔導書読んでたから…気付かなかった…。」
傾いた椅子を元に戻し、机の上に視線を移した。
「これが魔導書?どんな事が書いてあるの?」
「爆破魔法についてまとめてある本なの。少し前にあった実習で、ルシュ様に読めって言われてて…。」
「レジデンスに住んでたんだもんね。じゃあ、魔法はルシュ様に習ってたんだ?」
「うん。そうだよ。」
幹部の中で1番魔法の扱いに長けたルシュ様に、手をかけてもらえる彼女が正直羨ましかった。何年か前まで僕もレジデンスに住んでいたが、彼女に魔法を教わった事は1度もない。それどころか、話をする事すらままならない状況だった。
「僕もルシュ様と一緒に住んでたら、今頃魔法得意になってたのかなぁ…。」
「それはどうだろ…。」
「あ、そういえば、リーシア様が話してた護身術、僕にも教えてくれる約束だったよね?」
「そういえばそうだったね…。ごめん忘れてた…。」
「まだ2人共来ないみたいだし、ちょっとやりながら教えてよ。」
「うん!いいよ。」
手元の魔導書を閉じて机から離れると、彼女は僕の前に立った。
「まずは、背後から首に腕を回された時ね。ちょっとフランやってみて?」
「こう?」
彼女は僕に背を向け、言われた通りに首元に腕を回した。
「そうそう。そしたら、両手で相手の手首を掴んで、自分の身体に押し付けるの。」
引き寄せられた身体が彼女の背中に密着し、接した部分がじんわりと暖かくなっていく。
「次に、相手の手首を掴んだまま、相手の腕の下に自分の頭を通して、相手に近いほうの足を1歩後ろに出して…。相手の背後に回りながら、掴んだ相手の手首を相手の背中に押し付ける!」
説明を続ける彼女にされるがまま、掴まれた腕が背中にまわされた。
「いてて…。」
「あっ…ごめん!」
痛みを訴えるのと同時に彼女は手を離し、後ろへ後退した。その隙に僕は彼女の肩を掴み、後方にあるベッドへ彼女を押し倒した。
「えっ…?」
「だめだよ…ルナちゃん。襲って来た相手が痛そうにしてるからって、離したりしたら。」
僕は彼女に向かって微笑んだ。心に秘めた想いを悟られぬよう、できる限り優しげに。
「で…も…今のは…教えてるとこだっ…たし…。」
「どうするの?今ここに居る僕が、僕の姿をした偽物だったら。」
「偽物…?え、冗談でしょ…?」
今の僕は、彼女を利用する為に作り上げた人格であり、優しくするのは計画の為。彼女の味方をする事で安心させ、僕が信用出来る人物だと思わせて従わせる必要がある。彼女の瞳の奥に隠された力で、僕の目的を果たす為に。
「フ…ラン…?」
「…なんてね~。」
押さえつけていた腕を離し、僕は再び笑顔を浮かべた。
「え…。」
「ごめんごめん。ルナちゃんの驚いた顔、見るの好きなんだよね。」
僕と違って彼女は、感性が豊かで見ていて飽きない。わざと困らせてみたり、からかったりした時の反応が面白く、ついちょっかいを出したくなってしまう。
「ちょっとフラン!?」
怒った彼女は握りしめた拳を振りかざし、僕は慌ててベッドから飛び降りた。
「わっ…!ごめんってば~。」
「本当にびっくりしたんだからー!冗談も程々にしてよ!」
「そんなに怒らないで?…ね?」
部屋の隅に身を寄せ、反省している風を装った。すると彼女は怒る気力を無くし、ベッドの上にそっと腕をおろした。
少々強引ではあるが、彼女と仲良くなる為にはこういう時間も時には必要だ。少しずつ、時間をかけてゆっくりと…計画実行に向けて準備は進んでいく。
「は、はい…。」
午前の講義を終え、昼食を食べに食堂へと足を運んだ。
「フランーこっちこっちー。」
「おまたせニア。」
先に食堂へ来ていた彼女と合流し、手に持ったお盆を机に置いて席に着いた。
「週番って面倒よねー…。あんなの、教官にこき使われてるだけじゃない。」
「僕は結構好きだよ?教官室に行くのは嫌だけどね。」
週番とは、教官が講義を行う際に使う教材や書類を運んだり、生徒に出された課題の冊子を回収したりする雑務を行う。週に1度のペースで交代し、今週は僕とシューが週番の担当に選ばれたのだ。
「あんたってほんと…変わり者よねぇ。シュティレは嫌でしょ?週番なんて。」
「は、はい…。色んな人と…話さなきゃいけないから…嫌いです。」
「え…そっちなの…?」
とにかく人と接する事が苦手なシューが、人と馴れ合う事を好まないニアと会話を交わしていた。
「ねぇ…いつの間にシューとニアは仲良くなったの?」
「仲良くなったつもりはないわ。あんた達が話すようになったから、たまたまあたしも加わってるだけよ。」
「ふーん?」
彼女は慌てて視線を逸らすと、手元に置かれた水を口に含んだ。
「…あんたこそ仲良さそうじゃない。シューなんて呼んじゃってるし。」
「名前が長いと呼びにくくない?僕が勝手に呼び始めたんだけど…そういえば、シュー本人から許可をもらってなかったよね?」
隣に座る彼に向かって質問を投げかけると、黙々と食事をしていた彼は口に含んだものを慌てて飲み込んだ。
「じ、自分は別に…なんでも…。」
「よかった~。なら、これからもシューって呼ばせてもらうね?僕の事も、気軽に呼んでくれると嬉しいな。」
「わ、わかり…ました。」
「あたしもニアで構わないわ。こっちはシュティレって呼ぶつもりだけどね。」
「えー。そこはシューって呼ぼうよー。」
「あたしは愛称で呼び合うなんて御免よ。トワ1人で充分だわ。」
「…とか言って、そう呼ぶのが恥ずかしいだけじゃ…」
「いいから黙って食べなさいよ!今日は午後から実習があるんだから、昼寝の暇はないわよ?」
「そっか…そういえばそうだったね。…あ。ねぇ、シュー。今日の実習って…」
今までは、ニアと2人で食事をするのが日常だった。それだけでも充分だったが、毎日同じような話題で会話をするしかなかった。しかし、新しい仲間が加わった事で、より一層楽しいひと時を過ごせるようになっていた。
「全員集まったかしら~?それじゃあ早速、魔法の実習を始めるわね~。」
訓練場に集められた生徒達の前に、午後の実習を指導するメドゥヴァーナ教官が姿を現した。彼女は保健室の担当教官でありながら、月に何度か魔法を教える講師も務めているのだ。名前が長い事から、生徒達の間でメドゥ教官と呼ばれている。
「前回、下級の属性魔法を一通り教えましたから、今回は上級魔法に挑戦してみましょうか~。まずは~…」
彼女は座っている生徒達の前を歩きながら、上級魔法について説明を始めた。
下級の魔法と基本的な所は同じだが、魔法の詠唱が長い事と魔力の量が多く必要になるという点で、下級に比べて扱いが難しくなっている。
「…さて、難しい説明はこれくらいにして、教本のやり方に沿って実際にやってみましょう~。隣の人と充分距離を取って、安全に行ってくださいね~?」
説明を聞き終えた生徒達は訓練場の各所にバラけ、魔法の訓練を始めた。
「ニアは魔法得意だよね?コツとか教えてよ。」
「あんたは何かと言うとすぐそれね…。」
「自分も…魔法は苦手だから、もしコツあるなら聞きたいな…。」
僕とシューは、前回の魔法訓練で行った下級魔法ですら、まともに扱えていなかった。それに比べ、ニアは魔法に関する知識や扱いに長けている。彼女の話によると、幼い頃から魔法の知識を教え込まれ、自然と扱いも上達したらしい。
「そう言われてもねぇ…。魔力の量に個人差があるのは仕方ないし、出来る事と出来ない事があるのは当然よ。それを無くす為に訓練するんじゃない。」
「そもそも…どうして騎士を目指す僕達が、魔法まで必要があるの?剣の扱いだけで充分だと思うんだけど…。」
「戦う力のない民衆を守るのが騎士の務めよ?剣だけじゃ救い切れない命は沢山あるの。助けられる可能性を広げる為に、魔法の訓練だってやるべきだわ。」
「ニアさんは……騎士の鏡…みたいな人ですね…。」
「はぁ…!?ほ、褒めても…何も出ないわよ?」
「そっか…。出来る事なら魔法は避けたかったけど、そういう訳にもいかないんだね。」
「そういう事。…上手く教えられるか分からないけど、あたしに出来る事は手伝うわ。」
「そうこなくちゃ!よろしくねニア。」
魔法の苦手な僕達は彼女の力を借り、実習時間が終わるギリギリまで魔法の訓練に打ち込んだ。
「おまたせルナちゃん。」
1日の授業を終え、僕はいつものように彼女の部屋へやって来た。
「あれ?ルナちゃん?」
彼女は机に向かい、真剣な眼差しで手元に視線を落としている。その様子を見る限り、僕の呼びかけに全く気が付いていないようだった。
「ねールナちゃん!」
「わ!?」
彼女の背後に近寄り、耳元に声をかけた。慌てて振り向いた彼女は僕の顔を見て驚き、身体が後ろに倒れかけた。
「おっ…と!」
咄嗟に右手で椅子の背を掴み、左手で彼女の背中を支えた。近くにあった彼女の顔が、さらに近くに迫る。
「ごめん…。そんなに驚くと思わなくて。」
「い、いつの間に来てたの?」
「え?さっき来たばかりだよ。3回くらいルナちゃんの事呼んだけど、無反応だったから具合悪いのかな?と思って。」
「あ、ごめん…魔導書読んでたから…気付かなかった…。」
傾いた椅子を元に戻し、机の上に視線を移した。
「これが魔導書?どんな事が書いてあるの?」
「爆破魔法についてまとめてある本なの。少し前にあった実習で、ルシュ様に読めって言われてて…。」
「レジデンスに住んでたんだもんね。じゃあ、魔法はルシュ様に習ってたんだ?」
「うん。そうだよ。」
幹部の中で1番魔法の扱いに長けたルシュ様に、手をかけてもらえる彼女が正直羨ましかった。何年か前まで僕もレジデンスに住んでいたが、彼女に魔法を教わった事は1度もない。それどころか、話をする事すらままならない状況だった。
「僕もルシュ様と一緒に住んでたら、今頃魔法得意になってたのかなぁ…。」
「それはどうだろ…。」
「あ、そういえば、リーシア様が話してた護身術、僕にも教えてくれる約束だったよね?」
「そういえばそうだったね…。ごめん忘れてた…。」
「まだ2人共来ないみたいだし、ちょっとやりながら教えてよ。」
「うん!いいよ。」
手元の魔導書を閉じて机から離れると、彼女は僕の前に立った。
「まずは、背後から首に腕を回された時ね。ちょっとフランやってみて?」
「こう?」
彼女は僕に背を向け、言われた通りに首元に腕を回した。
「そうそう。そしたら、両手で相手の手首を掴んで、自分の身体に押し付けるの。」
引き寄せられた身体が彼女の背中に密着し、接した部分がじんわりと暖かくなっていく。
「次に、相手の手首を掴んだまま、相手の腕の下に自分の頭を通して、相手に近いほうの足を1歩後ろに出して…。相手の背後に回りながら、掴んだ相手の手首を相手の背中に押し付ける!」
説明を続ける彼女にされるがまま、掴まれた腕が背中にまわされた。
「いてて…。」
「あっ…ごめん!」
痛みを訴えるのと同時に彼女は手を離し、後ろへ後退した。その隙に僕は彼女の肩を掴み、後方にあるベッドへ彼女を押し倒した。
「えっ…?」
「だめだよ…ルナちゃん。襲って来た相手が痛そうにしてるからって、離したりしたら。」
僕は彼女に向かって微笑んだ。心に秘めた想いを悟られぬよう、できる限り優しげに。
「で…も…今のは…教えてるとこだっ…たし…。」
「どうするの?今ここに居る僕が、僕の姿をした偽物だったら。」
「偽物…?え、冗談でしょ…?」
今の僕は、彼女を利用する為に作り上げた人格であり、優しくするのは計画の為。彼女の味方をする事で安心させ、僕が信用出来る人物だと思わせて従わせる必要がある。彼女の瞳の奥に隠された力で、僕の目的を果たす為に。
「フ…ラン…?」
「…なんてね~。」
押さえつけていた腕を離し、僕は再び笑顔を浮かべた。
「え…。」
「ごめんごめん。ルナちゃんの驚いた顔、見るの好きなんだよね。」
僕と違って彼女は、感性が豊かで見ていて飽きない。わざと困らせてみたり、からかったりした時の反応が面白く、ついちょっかいを出したくなってしまう。
「ちょっとフラン!?」
怒った彼女は握りしめた拳を振りかざし、僕は慌ててベッドから飛び降りた。
「わっ…!ごめんってば~。」
「本当にびっくりしたんだからー!冗談も程々にしてよ!」
「そんなに怒らないで?…ね?」
部屋の隅に身を寄せ、反省している風を装った。すると彼女は怒る気力を無くし、ベッドの上にそっと腕をおろした。
少々強引ではあるが、彼女と仲良くなる為にはこういう時間も時には必要だ。少しずつ、時間をかけてゆっくりと…計画実行に向けて準備は進んでいく。
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