幼女助けたら幼女になっちゃいました!!

ジャスミンティー

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4話 保健室と傷

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 机の落書きを目撃した本人は思わず膝から崩れるように倒れ込んだ。
1年生だから意味は詳しく知らないだろう言葉だが、感である程度は分かったのだろう。
涙を流しながら、その場で動かなくなってしまった。
「何だこれ?」
そう言って男子が集まってきた。思わず読み上げそうに成った男子の腹に蹴りを打ち込んで黙らせ、何とか彼女をこの場から離れさせないと…
「誰か!近藤さん運ぶの手伝って!」
クラスの連中に呼びかけるが、男子はいきなり一人を力ずくで黙らせた僕に怖がっており女子はビクビクと震えているだけだった。もう少し丁寧に黙らせれば良かったのだが、荒っぽい手に走った性だな。
「…もう、貴方があんなことをするからよ。…男子も女子も怯えてるじゃない」
「ごめん…、あのまま口で止めても止まらないと思って…」
「…貴方はそういうところは馬鹿なのね。…運ぶわよ保健室まで」
何とか雨宮さんの力も借りて、彼女を保健室にまで運ぶことが出来た。
彼女は泣きじゃくりながらハァーハァーと過呼吸気味になっていたので養護教諭の指示もとベットに寝かしつけた。

「ごめんね、八乙女さん。雨宮さん。私のせいで迷惑かけたね。本当にごめんなさい」
「良いよ気にしないで!大丈夫だから!それに授業サボれてラッキーだから!」
「授業嫌いなの?」
「そうじゃない?学生って?」
「どうなんだろう?まだ1週間しか経ってないから分からないよ…」
「あっ…!そうだね!私もすっごい楽しいよ!ただ親戚のお兄ちゃんとかが退屈だって言ってたから真に受けちゃって!」
危ない。他愛もない会話をしようと思ったら学生は学生でも、もっと年齢が上の学生の話をしてしまっていた。入学して1週間の子に振る話じゃないだろ。
「それに大丈夫かな…。私のせいで八乙女さんが男子に暴力振るっちゃったから…」
「大丈夫大丈夫!そんなの近藤さんが心配しなくて良いから!」
「…そうね。いきなり暴力で黙らせた八乙女さんが悪いから。きっと先生に後でみっちりと怒られるはずよ」
「うっ…、本当に面目ない」
僕は近藤さんと雨宮さんに平謝りしながら、近藤さんに話を聞き出した。
少し、酷ではあるが犯人を突きとめて懲らしめる為にも情報を聞き出さないと。あと、本人がどんな風に傷ついているか言葉で聞いて何とか慰めてあげたい。こんな小さな子がこんなこちでトラウマになって後の人生が台無しになってもいけない。


「学校に着たらね。もう私の机には文字が書かれていたの。良く意味は分からないけど、でも私の事を良く言っていないのは分かったの。昨日の体育の後のこともあったから…」
「そうだよね。いきなり学校に着て、あんなの見たら誰だって驚くよね。辛かったよね。怖かったよね」
僕の手は不思議に彼女の頭を撫でていた。あまり良いこととは思えないが、それでも今はこうしてあげるくらいしかやることが無かった。
彼女が泣き疲れてたくさん話したからか疲れたようでベッドで軽く寝だしたので、今の間に授業を受けに教室に戻った。

「本当にごめんなさい!」
とにかく謝った。悪いという自覚はあったし、雨宮さんにも散々怒られたので急いで謝った。
彼も許してくれたようで握手をした後に、給食のプリンをこっそり彼に差し出した。
先生にもこっぴどく注意をされた。確かに悪いとはおもっているのだが、酒癖がヒドすぎて看板や道行く人に当たり散らしていた男に注意されると少し腹が立つ。
とりあえず、お叱りを受けた後に少しだけ話を昼休みに女の子に聞いて下校の時間になった。
簡単な終わりの会と呼ばれるような会を行って、みんなランドセルに文房具や教科書を詰め込んで帰りだした。
僕はやることがあるので、ワザとゆっくりと帰る準備をしていると雨宮さんが近くにやって来た。
「…止めはしないけど。何かするつもりなの?」
「やっぱりバレてた?そうだよするつもりだよ」
「何でそんなことするの?意味ないじゃない?」
「そうかな?確かに意味は無いかもね。でもね嫌いなんだ。誰かが泣いてるの。だから、放っておけないだけかな」
「…そうなんだ。別に良いけど。下手なことしたら余計に火に油を注ぐわよ」
「おっ!難しい言葉を良く知ってるね!流石、優等生」
「何かその言葉はムカッとするわ」
「まぁ、私のような劣等生は精々問題を起こさずに解決させますよ」
僕はランドセルを背負うと、予定の場所に向かうため雨宮さんに手を振って別れた。

 さてと、ここからは本気でやらないとな。
とりあえず、昼休みの聞き込みで犯人の目星と動機はなんとなくだが分かった。
例のウシチチ騒動と同じ犯人だから分かりやすい。だが、問題はそこでは無い。
どうやって解決するかなのだ。
簡単に犯人を暴いて言及することなどは簡単だ。しかし、そこで別の問題が発生する。それはその犯人が次の被害者にも成りかねない。今は近藤さんの仇を取れて、僕の胸はスッキリとするだろう。しかし、それでは意味が無い。近藤さんも犯人も傷つけない所で問題の落としどころを見付けないと意味が無い。
やっていることは陰湿なイジメだが、相手の子供はまだ大して知識の無い子供である。近藤さんの人生をゆがめたくないように犯人の子の人生も歪めたくない。
だからこそ、僕以外の人間の手伝いが必要なのだ。今回の問題を解決できるような存在に。
僕は職員室の戸をノックして入り、担任の佐藤の野郎を連れ出してお話することにした。
今回の落としどころを見付けるための。
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