上 下
32 / 44

32 大好きだよ※  

しおりを挟む
 ローションをたっぷりまとった雄が、ぐちゃりと恭弥のうしろに触れる。先端にはちゃんとゴムの突起がある。アランはまた手品を使ったらしい。
 
「ぁう、んあ」
 
 うしろから片腕で抱きしめられ、先端で孔を小突かれて、恭弥は鳴いた。

「いれるよ」

 ぐっと雄が中へめり込む。ずぷぷ、と肉をかき分けて、待ちわびていたものが恭弥の内側を埋めていく。
 
「んぁあぁあああぁ」

 恭弥は悦びに全身を震わせた。これがほしくてたまらなかった。
 焦らされて疼ききった壁が、さざめいてアランを引き絞る。
 
「すっごい。吸い付いてくる」

 アランは笑った。
 優しくへそのあたりを手で支えられる。じわじわと中に押し込まれ、恭弥の内側がアランのかたちにひずんでいく。
 
(すき、すき……これ、すき)

「あぁ、ぁああぁああ」

 弱点をねっとりと擦られている。
 恭弥は喘ぎながら胸をそらした。恭弥の上体は、天井を向いた自分の性器と同じ曲線を描いている。
 
「ぁ、ぁあ、んあっ、ああっ」

 ぐっぐっと中に押し込まれ、恭弥の声がきれぎれになる。
 
「っぁあ!」
 
 ぱん、と音を立てて、肌がぶつかった。恭弥の尻にアランの腰骨が強く接して、恭弥の奥に振動がつたわっていく。
 
「ねえ、ここにぼくのがあるよ。触ってごらん」

 アランはそっと恭弥の手を取って、へその下に触れさせた。
 
「っぁ……」

 自分の腹に触れると、恭弥はぞくりと肌を粟立てた。
 
「わかる?」
 
 薄い腹の下に、かたく丸い異物の感触がある。
  
(亜蘭、さんの……ほんとに、はいってる)

 いとおしさと信じられなさとで、恭弥はそこを無意識に撫でた。
 そのたびに腹の奥がじりじりと痺れて、気持ちよかった。
 
「なでなでしてくれるの? かわいい」
 
 アランは恭弥の手に自分の手を重ねた。
 
「動くね」
 
 アランはゆっくりと腰を波打たせた。
 
「んああっ!!」

 ずん、と手のひらに衝撃が走る。外側に手があるせいで、アランの雄はより深く、より強く、恭弥の内壁を押し上げる。
 
「かわいい声。もっと鳴いてみせて、猫ちゃん」

 アランは恭弥の耳にキスすると、連続して恭弥の中を叩いた。
 速い脈拍の速度で、アランの雄が手のひらにぶつかってくる。 
 
「ぁあ、っあああ、っあぁあ、はあぁ、っんんあ」
「上手」

 アランにしっかりと支えられ、中を杭打たれて、恭弥は我を忘れて喘いだ。
 何度も、何度も、何度も、アランのものが恭弥の中を行き来する。
 さびしかった内側を太い熱で擦られ、掻きむしられて、恭弥は何も考えられなくなる。
 
「みてみて。窓にぼくらが映ってるよ」

 優しく顎をとられ、恭弥はそちらを向かされる。
 間接照明がガラスに反射して、浴室の中を描き出している。中央で、ふたりの痩せた男が立ったままつながっている。
 
「ごらん。恭弥くん、かわいいねぇ」
 
 アランの優美な腰が、まるで動物のように絶えず動いて、恭弥をうしろから犯している。そのたびに恭弥の前はふるふると揺れて、犯される悦びをあらわにしている。
 もうすっかり湯気は引いて、ガラスは透明だった。上がったばかりの月が、反射光の向こう側に透けている。
 
「~~~!!」

 恥ずかしさが恭弥を追いつめた。
 ぎゅっぎゅっと恭弥のうしろが締まる。達しているとしか思えない強い快楽が、恭弥の脳を焦がしていく。
 
「ああ、いっちゃってるのかな? 恥ずかしいの、気持ちいいね」

 恭弥を抱き支え、捏ねるように腰を使いながら、アランは笑う。

「大丈夫、見えない見えない。エッチでかわいい恭弥くんは、ぼくとお月さましか知らない」

 軽く息を切らしながら、アランはささやく。
 
「恭弥くんがとっても敏感なことも、胸にばんそうこうの痕がついてることも、かわいい喘ぎ声も。中だけでいっちゃうぐらい、おちんちんいれられるのが大好きになっちゃったことも」

 ゆっくりと数え上げられて、恭弥は恥ずかしさで震えた。

「誰にも教えてやらないさ」

 アランは恭弥の腹を押さえ、力強く恭弥の中を穿った。

「っ……!!」

 恭弥はふるりと腰を震わせた。ぱたぱたと恭弥の精液が床に落ちた。

「出ちゃった」

 涙でぐしょぐしょの恭弥の頬を、アランは舐める。

「はは、ぼく、危ないなぁ。ぼくがもっと悪い人なら、君のこと、閉じ込めてたかもしれない。だって……」

 アランは何か言いかけて、やめた。

「うそうそ。そんなことしないよ。君の意思で君はここにいる……こうしてぼくに全部くれる……」

 アランは夢見るように言って、荒々しく奥を叩いた。
 
「あぁ、んあ、あああっ」

 小さく、軽く、やわらかくなった性器を耳飾りのように揺らして、恭弥はなおも喘ぐ。
 精を出してしまったのに、内側の熱はひどくなる一方だった。

「大好きだよ」

 ぐり、と腰骨をめいいっぱい恭弥の尻に押し付け、アランは呻く。
 はじけるような衝撃とともに、恭弥の内側でゴムが質量を増していく。

(このひとは、おれが、すき)

 恭弥はアランの熱を受け止めながら、ぼんやりと口角を上げた。
 
(なんか、うそ、みてぇ……)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘をついて離れようとしたら逆に離れられなくなった話

よしゆき
BL
何でもかんでも世話を焼いてくる幼馴染みから離れようとして好きだと嘘をついたら「俺も好きだった」と言われて恋人になってしまい離れられなくなってしまった話。 爽やか好青年に見せかけたドロドロ執着系攻め×チョロ受け

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

俺は完璧な君の唯一の欠点

白兪
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。 そんな彼にも、唯一の欠点がある。 それは、平凡な俺に依存している事。 平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。

煽られて、衝動。

楽川楽
BL
体の弱い生田を支える幼馴染、室屋に片思いしている梛原。だけどそんな想い人は、いつだって生田のことで頭がいっぱいだ。 少しでも近くにいられればそれでいいと、そう思っていたのに…気持ちはどんどん貪欲になってしまい、友人である生田のことさえ傷つけてしまいそうになって…。 ※ 超正統派イケメン×ウルトラ平凡

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

こじらせΩのふつうの婚活

深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。 彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。 しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。 裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...