17 / 44
17 あんたのおもちゃ※
しおりを挟む
何を食べたかわからないまま食事が終わった。ワインを飲みながら景色を眺め、
「君の方がきれい」
「嘘つけ」
などの、すでに様式化されてしまった会話を済ませたあとは、沈黙が支配する。
(考えちゃ、ダメなのに)
酔いも手伝って、恭弥はもうこのあとのことしか考えられなくなっている。
「それじゃ、部屋に戻ろっか」
まるでなんでもないことのように、アランは軽く言った。
(この人にとっちゃ、セックスなんて、なんでもねぇことなのかもな)
アランは三十そこそこにみえるし、かつては遊び人だったような雰囲気をまとっている。きっと経験は豊富だろう。さっきだって、ずいぶんと手慣れていたようだし。
それにひきかえ、経験のない恭弥にとっては、セックスは恭弥という人間を根底から変えてしまうほどの事件だ。アランにとってはたいしたことのない一夜でも、きっと恭弥には一生忘れられない夜になってしまう。
「……はい」
熱でかすかすになった声で、恭弥はつぶやいた。
廊下をどうやって歩いたかもわからなかった。これからされることへの期待と不安が、恭弥の脳を支配していた。すぐうしろを歩くアランには、恭弥のぎくしゃく、かくかくとした妙な足取りがよく見えていただろう。
気づくと部屋に入っていた。人感センサーでぱっと明かりがついた。うしろでドアがゆっくりと閉まった。
「恭弥くん」
うしろからぎゅっと抱きしめられる。
(あっつい)
完全に火のついた身体で、恭弥は思った。
「しよっか」
アランがささやくと、恭弥は鳥肌を立てる。アランのものが恭弥のうしろで、ぐいと主張する。
(この人も、ほしいんだ)
ズボンの中で、恭弥のものが震える。
「ぼくが買ってあげた服を着せられて、ぼくに抱かれる恭弥くんってさ、なかなかたまんないな」
優美な指が恭弥のシャツのボタンをはずしはじめる。
「着せ替え人形の感覚ですかね。俺はあんたの……おもちゃ、だから」
「ん、怒ってんの?」
「や」
アランの腕にくるまったまま、恭弥は首だけで振り返った。
「飽きて捨てられるんじゃなきゃ、別にあんたのおもちゃでいい」
アランの目を見て、挑発するように言い放つ。もう格好なんてつかないことはわかっていたが、最後のプライドだった。
(だれかさんの身代わりのおもちゃ。それでいいんだ、俺は)
アランは一瞬何も言わなかった。
「……そんなに煽っちゃダメじゃない。お兄さんだってさぁ、優しくしたいんだよ」
奇妙に抑えた声で、アランは言った。
振り返った顎をつかんで、アランはキスをした。じゅぷり、と唾液の音が立つ。
(きもちい……)
夕方のキスより激しく、アランは恭弥の口の中をかき混ぜ、擦った。恭弥もぼうっとした頭で応えた。
まだドアの前なのに、背後から伸びたアランの手は恭弥の胸をはだけさせ、胸の粒を弄ってくる。
「ん……」
きゅっと粒を摘まみこまれると、じわっと下着の前が濡れていく。
アランが唇を離した。恭弥は必死に呼吸した。
「もうちょっと信用して? ぼくが君を捨てるわけない」
恭弥の唇を指で弄り、アランは微笑む。
「お尻、出して。シャツは脱がないで」
鼻を合わせたまま、優しい声でアランは命じた。
恭弥は何も言わずにズボンをおろした。ジーンズで締められていた前が弾んで出て、恭弥は恥ずかしくなる。
アランはポケットからローションを出して準備している。
「いいこ」
アランはふたたび恭弥を後ろからハグする。アランは恭弥の裸を見下ろし、息だけで笑った。
「きれいな身体。どこもかしこもピンクでさ。乳首も、おちんちんも」
「経験がねぇって笑ってんだろ」
「ううん? おいしそうって言ってんの」
裸になった尻に、ローションで濡れたアランの指が走る。さっきと違って、今度は素手だ。
「んっ!!」
外を軽く撫でられただけなのに、内側の肉まで痺れが走って、恭弥は呻いた。
「ほんと感度いいよね」
恭弥の乳首を緩慢に弄りながら、アランはささやく。
「ぁ、ああぁあ」
恭弥のうしろは、簡単に指の侵入を許した。
「ほら、胸を触ると、はいる」
とろけそうに気持ちがよかった。足に力が入らなくなる。
アランはずり落ちそうになる恭弥の腰を優しく抱きなおして、指を進めた。
「二本目」
そう楽しそうに言って、アランは中指で恭弥の孔をつついている。こりこりと恭弥の乳首を繰りながら、ふうっと耳に息を吹き込んでくる。
「うぁ」
恭弥の目の前がちか、と光った。その一瞬を逃さず、ぬるり、と中指がぬめりこんだ。
「やぁああぁ」
苦しいのは一瞬だった。腹の中の甘い痺れはすぐに恭弥の思考を溶かし、痛みを麻痺させてしまう。
「すんなりはいっちゃった」
二本指のまわりで、恭弥の肉がじんじんと熱を持つ。
「すごいよ恭弥くん」
褒められると震えるほど気持ちよかった。二十五年間の人生で、誰かにこんな風に褒められたことはなかった。
張り詰めた恭弥の前がとくん、と蜜をこぼして、玄関の床に雫を落とす。
「でも、きつきつだね。苦しくない?」
もっと褒めてほしくて、恭弥は首を横に振った。
「そっか」
アランはうれしそうに言って、恭弥の中で指をばらばらに動かした。
「……っあ、ひあ」
恭弥は思わず藻掻いた。
「あともう一本」
「は……は、あ……」
「そしたら、その次は。わかるね?」
アランは意味深長にささやいて、自分のものを恭弥に強く押し付ける。
「君の方がきれい」
「嘘つけ」
などの、すでに様式化されてしまった会話を済ませたあとは、沈黙が支配する。
(考えちゃ、ダメなのに)
酔いも手伝って、恭弥はもうこのあとのことしか考えられなくなっている。
「それじゃ、部屋に戻ろっか」
まるでなんでもないことのように、アランは軽く言った。
(この人にとっちゃ、セックスなんて、なんでもねぇことなのかもな)
アランは三十そこそこにみえるし、かつては遊び人だったような雰囲気をまとっている。きっと経験は豊富だろう。さっきだって、ずいぶんと手慣れていたようだし。
それにひきかえ、経験のない恭弥にとっては、セックスは恭弥という人間を根底から変えてしまうほどの事件だ。アランにとってはたいしたことのない一夜でも、きっと恭弥には一生忘れられない夜になってしまう。
「……はい」
熱でかすかすになった声で、恭弥はつぶやいた。
廊下をどうやって歩いたかもわからなかった。これからされることへの期待と不安が、恭弥の脳を支配していた。すぐうしろを歩くアランには、恭弥のぎくしゃく、かくかくとした妙な足取りがよく見えていただろう。
気づくと部屋に入っていた。人感センサーでぱっと明かりがついた。うしろでドアがゆっくりと閉まった。
「恭弥くん」
うしろからぎゅっと抱きしめられる。
(あっつい)
完全に火のついた身体で、恭弥は思った。
「しよっか」
アランがささやくと、恭弥は鳥肌を立てる。アランのものが恭弥のうしろで、ぐいと主張する。
(この人も、ほしいんだ)
ズボンの中で、恭弥のものが震える。
「ぼくが買ってあげた服を着せられて、ぼくに抱かれる恭弥くんってさ、なかなかたまんないな」
優美な指が恭弥のシャツのボタンをはずしはじめる。
「着せ替え人形の感覚ですかね。俺はあんたの……おもちゃ、だから」
「ん、怒ってんの?」
「や」
アランの腕にくるまったまま、恭弥は首だけで振り返った。
「飽きて捨てられるんじゃなきゃ、別にあんたのおもちゃでいい」
アランの目を見て、挑発するように言い放つ。もう格好なんてつかないことはわかっていたが、最後のプライドだった。
(だれかさんの身代わりのおもちゃ。それでいいんだ、俺は)
アランは一瞬何も言わなかった。
「……そんなに煽っちゃダメじゃない。お兄さんだってさぁ、優しくしたいんだよ」
奇妙に抑えた声で、アランは言った。
振り返った顎をつかんで、アランはキスをした。じゅぷり、と唾液の音が立つ。
(きもちい……)
夕方のキスより激しく、アランは恭弥の口の中をかき混ぜ、擦った。恭弥もぼうっとした頭で応えた。
まだドアの前なのに、背後から伸びたアランの手は恭弥の胸をはだけさせ、胸の粒を弄ってくる。
「ん……」
きゅっと粒を摘まみこまれると、じわっと下着の前が濡れていく。
アランが唇を離した。恭弥は必死に呼吸した。
「もうちょっと信用して? ぼくが君を捨てるわけない」
恭弥の唇を指で弄り、アランは微笑む。
「お尻、出して。シャツは脱がないで」
鼻を合わせたまま、優しい声でアランは命じた。
恭弥は何も言わずにズボンをおろした。ジーンズで締められていた前が弾んで出て、恭弥は恥ずかしくなる。
アランはポケットからローションを出して準備している。
「いいこ」
アランはふたたび恭弥を後ろからハグする。アランは恭弥の裸を見下ろし、息だけで笑った。
「きれいな身体。どこもかしこもピンクでさ。乳首も、おちんちんも」
「経験がねぇって笑ってんだろ」
「ううん? おいしそうって言ってんの」
裸になった尻に、ローションで濡れたアランの指が走る。さっきと違って、今度は素手だ。
「んっ!!」
外を軽く撫でられただけなのに、内側の肉まで痺れが走って、恭弥は呻いた。
「ほんと感度いいよね」
恭弥の乳首を緩慢に弄りながら、アランはささやく。
「ぁ、ああぁあ」
恭弥のうしろは、簡単に指の侵入を許した。
「ほら、胸を触ると、はいる」
とろけそうに気持ちがよかった。足に力が入らなくなる。
アランはずり落ちそうになる恭弥の腰を優しく抱きなおして、指を進めた。
「二本目」
そう楽しそうに言って、アランは中指で恭弥の孔をつついている。こりこりと恭弥の乳首を繰りながら、ふうっと耳に息を吹き込んでくる。
「うぁ」
恭弥の目の前がちか、と光った。その一瞬を逃さず、ぬるり、と中指がぬめりこんだ。
「やぁああぁ」
苦しいのは一瞬だった。腹の中の甘い痺れはすぐに恭弥の思考を溶かし、痛みを麻痺させてしまう。
「すんなりはいっちゃった」
二本指のまわりで、恭弥の肉がじんじんと熱を持つ。
「すごいよ恭弥くん」
褒められると震えるほど気持ちよかった。二十五年間の人生で、誰かにこんな風に褒められたことはなかった。
張り詰めた恭弥の前がとくん、と蜜をこぼして、玄関の床に雫を落とす。
「でも、きつきつだね。苦しくない?」
もっと褒めてほしくて、恭弥は首を横に振った。
「そっか」
アランはうれしそうに言って、恭弥の中で指をばらばらに動かした。
「……っあ、ひあ」
恭弥は思わず藻掻いた。
「あともう一本」
「は……は、あ……」
「そしたら、その次は。わかるね?」
アランは意味深長にささやいて、自分のものを恭弥に強く押し付ける。
36
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! 時間有る時にでも読んでください
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる