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17 あんたのおもちゃ※

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 何を食べたかわからないまま食事が終わった。ワインを飲みながら景色を眺め、
 
「君の方がきれい」
「嘘つけ」

などの、すでに様式化されてしまった会話を済ませたあとは、沈黙が支配する。

(考えちゃ、ダメなのに)

 酔いも手伝って、恭弥はもうこのあとのことしか考えられなくなっている。

「それじゃ、部屋に戻ろっか」

 まるでなんでもないことのように、アランは軽く言った。
 
(この人にとっちゃ、セックスなんて、なんでもねぇことなのかもな)

 アランは三十そこそこにみえるし、かつては遊び人だったような雰囲気をまとっている。きっと経験は豊富だろう。さっきだって、ずいぶんと手慣れていたようだし。
 それにひきかえ、経験のない恭弥にとっては、セックスは恭弥という人間を根底から変えてしまうほどの事件だ。アランにとってはたいしたことのない一夜でも、きっと恭弥には一生忘れられない夜になってしまう。
 
「……はい」

 熱でかすかすになった声で、恭弥はつぶやいた。
 廊下をどうやって歩いたかもわからなかった。これからされることへの期待と不安が、恭弥の脳を支配していた。すぐうしろを歩くアランには、恭弥のぎくしゃく、かくかくとした妙な足取りがよく見えていただろう。
 気づくと部屋に入っていた。人感センサーでぱっと明かりがついた。うしろでドアがゆっくりと閉まった。
 
「恭弥くん」

 うしろからぎゅっと抱きしめられる。
 
(あっつい)

 完全に火のついた身体で、恭弥は思った。

「しよっか」

 アランがささやくと、恭弥は鳥肌を立てる。アランのものが恭弥のうしろで、ぐいと主張する。
 
(この人も、ほしいんだ)

 ズボンの中で、恭弥のものが震える。

「ぼくが買ってあげた服を着せられて、ぼくに抱かれる恭弥くんってさ、なかなかたまんないな」

 優美な指が恭弥のシャツのボタンをはずしはじめる。

「着せ替え人形の感覚ですかね。俺はあんたの……おもちゃ、だから」
「ん、怒ってんの?」
「や」

 アランの腕にくるまったまま、恭弥は首だけで振り返った。
 
「飽きて捨てられるんじゃなきゃ、別にあんたのおもちゃでいい」

 アランの目を見て、挑発するように言い放つ。もう格好なんてつかないことはわかっていたが、最後のプライドだった。

(だれかさんの身代わりのおもちゃ。それでいいんだ、俺は)

 アランは一瞬何も言わなかった。

「……そんなに煽っちゃダメじゃない。お兄さんだってさぁ、優しくしたいんだよ」

 奇妙に抑えた声で、アランは言った。
 振り返った顎をつかんで、アランはキスをした。じゅぷり、と唾液の音が立つ。
 
(きもちい……)
 
 夕方のキスより激しく、アランは恭弥の口の中をかき混ぜ、擦った。恭弥もぼうっとした頭で応えた。
 まだドアの前なのに、背後から伸びたアランの手は恭弥の胸をはだけさせ、胸の粒を弄ってくる。
 
「ん……」

 きゅっと粒を摘まみこまれると、じわっと下着の前が濡れていく。
 アランが唇を離した。恭弥は必死に呼吸した。

「もうちょっと信用して? ぼくが君を捨てるわけない」

 恭弥の唇を指で弄り、アランは微笑む。
 
「お尻、出して。シャツは脱がないで」

 鼻を合わせたまま、優しい声でアランは命じた。
 恭弥は何も言わずにズボンをおろした。ジーンズで締められていた前が弾んで出て、恭弥は恥ずかしくなる。
 アランはポケットからローションを出して準備している。
 
「いいこ」

 アランはふたたび恭弥を後ろからハグする。アランは恭弥の裸を見下ろし、息だけで笑った。
 
「きれいな身体。どこもかしこもピンクでさ。乳首も、おちんちんも」
「経験がねぇって笑ってんだろ」
「ううん? おいしそうって言ってんの」
 
 裸になった尻に、ローションで濡れたアランの指が走る。さっきと違って、今度は素手だ。
 
「んっ!!」
 
 外を軽く撫でられただけなのに、内側の肉まで痺れが走って、恭弥は呻いた。
 
「ほんと感度いいよね」 

 恭弥の乳首を緩慢に弄りながら、アランはささやく。
 
「ぁ、ああぁあ」

 恭弥のうしろは、簡単に指の侵入を許した。
 
「ほら、胸を触ると、はいる」
 
 とろけそうに気持ちがよかった。足に力が入らなくなる。
 アランはずり落ちそうになる恭弥の腰を優しく抱きなおして、指を進めた。

「二本目」

 そう楽しそうに言って、アランは中指で恭弥の孔をつついている。こりこりと恭弥の乳首を繰りながら、ふうっと耳に息を吹き込んでくる。
 
「うぁ」

 恭弥の目の前がちか、と光った。その一瞬を逃さず、ぬるり、と中指がぬめりこんだ。
 
「やぁああぁ」
 
 苦しいのは一瞬だった。腹の中の甘い痺れはすぐに恭弥の思考を溶かし、痛みを麻痺させてしまう。
 
「すんなりはいっちゃった」

 二本指のまわりで、恭弥の肉がじんじんと熱を持つ。
 
「すごいよ恭弥くん」

 褒められると震えるほど気持ちよかった。二十五年間の人生で、誰かにこんな風に褒められたことはなかった。
 張り詰めた恭弥の前がとくん、と蜜をこぼして、玄関の床に雫を落とす。
 
「でも、きつきつだね。苦しくない?」

 もっと褒めてほしくて、恭弥は首を横に振った。
 
「そっか」

 アランはうれしそうに言って、恭弥の中で指をばらばらに動かした。
 
「……っあ、ひあ」

 恭弥は思わず藻掻いた。

「あともう一本」
「は……は、あ……」
「そしたら、その次は。わかるね?」

 アランは意味深長にささやいて、自分のものを恭弥に強く押し付ける。
 
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