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19 のんびり屋、廃業※

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 ごそごそと寝返りをうつ音で眠れない。
 
「うるさいぞ」

 俺はサノユーに向かって文句を言った。

「だって、あんなかわいいこと言われて、眠れないよ……」
「頼むからじっとしててくれ」

 俺はそう言って背を向けた。
 物音は消えた。サノユーは息をひそめているようだ。
 時計の音が大きく鳴っている。
 妙な緊張感が部屋に漂っている。
 
(眠れん)

 よく考えたら、明日には、もう一度あんな目にあわないといけなくなるのだ。
 そう思ったとたん、身体の中をさぐるサノユーの指の感触がよみがえってくる。
 
(ダメだ、思い出すな)
 
 弱いところを撫でこする、冷たい指。
 サノユーの視線。
 尻に押しあてられた、かたくて大きなものの感触。
 内側に塗りこめられた、ぬるぬるとした体液。
 
(思い出すなって)

 どくどくと心臓が鳴っている。
 ズボンの中が持ち上がって、俺はぎゅっと両手で股間を押さえつける。
 
「寝ちゃった?」

 サノユーの囁き声がして、俺はびくんと肩を震わせた。
 
「起きてるよね?」
「う、うるさい。今寝るところだったんだ」

 耳まで熱い。
 俺は布団をかぶって、寝たふりをした。俺の前はしっかりと勃起したままだ。
 今サノユーを起こせば、たぶん全力で相手してもらえるだろう。
 だが、俺にはできなかった。
 身体には火がついているのに、全然心の準備ができていない。
 この身体はまた、あのおそろしい快楽に耐えられるんだろうか。
 ベータを捨てたいのは本心だ。だが正直、今の俺は時間がほしかった。
 
 正確にはわからないが、一時間ぐらい経ったころだろうか。
 サノユーがそうっとベッドを抜け出す音がした。
 サノユーは俺のベッドの横にたたずんだ。そのままじっと息をひそめている。
 何をする気だろう。
 まさか、犯されてしまうんだろうか。
 おそろしいと思うベータの理性と裏腹に、俺のものはさらにかたさを増した。
 手が布団にかかると、俺は思わず身をすくめた。
 
「朝くん、やっぱり起きてるでしょ」

 サノユーの猫なで声が聞こえてきた。

「……ね、寝てる」
「嘘つき」

 サノユーはそっと布団を剥がす。
 俺はあわてて背中を向け、下半身を隠した。
 
「ねえ、朝くん。眠れないよ」
「そ、そうかよ」
「抱きたくて頭おかしくなりそう。どうしちゃったんだろうね、僕。五年も待てたのに、今は数時間だって待てない。
 元カレの話、聞いたからかな? お前に好きって言ってもらったからかな? 上書きしたくてたまんないよ」

 サノユーの手がそっと俺の髪を梳く。

「電気消してから、ずっとひどいこと考えてた。眠ってる間にいたずらしちゃおうか、とか……寝てる朝くんのおっぱいとかお尻を弄ったら、こわがらせずに馴らせるんじゃないか、とか。僕のおっきいのを入れてあげたら、起きた朝くんはどんな反応するのかな、とか」

 想像してしまって、俺の後ろがじくじくと疼き始める。

「でも朝くん、待ってても寝てくれなかったね」

 服の下で俺のものがひくんと痙攣する。

「お前だって、眠れなかったんでしょ? 僕のこと、意識しちゃって。ねえ、そうだと言ってよ」
「そんなんじゃ」
「じゃあ、なんで僕にそこ、隠したの?」

 何もかもばれている。
 
「勃ってないなら、こっち向いて」

 俺は振り返れなかった。
 口の中を噛んでも身体は鎮まってくれない。
 興奮で頭がぐるぐるする。
 サノユーがこわい。だが、身体は期待しきっている。
 俺のものは張り詰めて、痛いぐらいだった。
 触ってもらえば、楽になれる。
 犯してもらえば……どうなるんだろう、俺は。
 サノユーはくすっと笑った。

「やっぱりか。ところでさ、今はもう、『明日』なんだよねぇ」

 言われて俺は首を上げ、時計を見た。
 蛍光の針が暗闇に浮かび上がって、12時すぎを指している。
 
「しよ? ダメ?」

 俺に覆いかぶさりながら、サノユーは優しく聞いた。
 けれど、俺の逃げ道はしっかりとふさいでいる。
 身体をそっとひっくり返される。
 しっかりとテントを張った前が、サノユーの下にさらされた。
 
「かわいい。先っぽ、ぐしょぐしょに濡れてる。ずーっと勃ってたんだ?」

 サノユーはささやいた。
 じわり。また先端が濡れて、布地に輪をつくっていくのがわかる。
 
「してって、言って?」
 
 アルファのにおいで頭がぼうっとしてくる。
 アルファに発情するオメガは、こんな気持ちなんだろうか。
 
「オメガになりたいんでしょ?」

 声が響いて、尻の中がきゅうんと疼いた。

「し、して……」
 
 気づいたらそう口に出していた。
 
「いいこ」

 サノユーの手がするすると俺の服を脱がした。いつもはどんくさいのに、こんなときばかり器用だ。
 そばに出しっぱなしだったローションを掴むと、俺の上で傾ける。透明な液体がとろとろと俺のものに垂れて、尻の方までたっぷりと濡らしていく。
 
「いれるね」

 つぷん、と指が中に潜り込む。
 最初から二本だ。うろたえる間も与えず、すぐに指を根元まで埋め込んでくる。
 
 

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