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第二節 白銀の守り手 青珠(せいじゅ)の守り手11

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「ま、お前なら、なんとかなるかもな」

「何を言っているのです貴方は?」

「別に・・・このまま泣き言を言わずに着いてこれたら、いずれ解るさ」

そう言うと、彼は僅かに騎馬の手綱を引いてその馬頭をカルダタス山脈とは逆の方向、東北の方角へと向けたのだった。
 急速に銀楼の道(エルッセル)を外れていくその道筋。

「どこに行くのです!ジェスター!?」

リーヤは、慌てて馬頭を東北へと向けると、彼が翻す鮮やかな朱色の衣を追いかけたのだった。

「言っただろ?ファルマス・シアへ行くと?」

「そこにスターレットが居ると?」

「多分な」

 石畳の街道を外れた二頭の騎馬が、ファルマス・シアと言う名の地図に無い地へ向けて荒野を駆け抜けていく。
ジェスターは、その燃え盛る炎のような鮮やかな緑玉の瞳を空に向けて、古の言語を用い、天駈ける風の精霊に言うのだった。

『白銀の守護騎士に伝えてくれ・・・俺はファルマス・シアへ行く、お前がもし闇の者を追って森を出たのなら、いずれどこかで会うだろう・・・と』 

 高い声を上げて、天空の風が鳴いた。
 風の向きが変われば、いずれ、懐かしい友の元へその声が伝わるだろう・・・・。
 全く意味の理解できない言葉を口にしたジェスターの横顔を、きょとんと見つめながら、リーヤは思わず彼に問いかけてしまう。

「一体、何をしたのです?貴方は今?」

 そんな彼女に、ゆっくりと緑玉の瞳を向けると、ジェスターは凛々しい唇だけでどこか不敵に笑って答えて言うのだった。

「お前には、風の精霊の声は聞こえないからな」

「風の精霊?」

「空と大地を駈ける風の精霊は、大抵のことは全て知っている。
伝言を頼めば、気まぐれだがいずれ相手には伝えてくれる」

「伝言?・・・一体誰に?」

「お前もいずれ会えるさ・・・スターレットだけじゃなく、あいつにもな」

 リーヤは、怪訝そうに綺麗な眉を寄せて、何か考え込むような仕草をすると、少しの間を置いて再びその桜色の唇を開いたのだった。

「風の精霊が何でも知っているというなら・・・スターレットの居場所も知っていると?」

「ああ」

「だから貴方は、そのファルマス・シアという地に、スターレットが居ると?」

「今は・・・・の話だが」

「今は?それはどういう意味なのです?」

 矢継ぎ早に何かと聞いてくるリーヤに、僅かばかり苛立った様子で、ジェスターは、面倒臭そうにため息ついた。

「いちいち説明しなきゃわかんねーのかよお前は?行けばわかるだけの話だろう?少し黙ってろ」

「わかる訳がありません!私は魔法など一度も習ったことはないのですよ?!」

 ファルマス・シアへ向かう荒野に、リタ・メタリカの美しき姫の怒声が響き渡った。
 いつもは風の渡る音だけが響く荒涼の大地に、なにやら賑やかな気配が漂う。

 しかし、その先に待ち受けるものが何であるか、天空を渡る風の精霊すら知ることはできなかった・・・・
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