しっかり者がダメ男に惹かれる法則(1)

坂田 零

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ACT4 けじめけじめと言うけれどけじめを付けてどうすれば??1

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 トップアーティストMarinことあおいと、そしてきなことの奇妙な飲み会から、数日が過ぎていた。
 けじめなんかどうでもいいと思いながらも・・・
 余りにもきなこにしつこく言われたせいか、どうにも脳みその片隅に、真奈美の泣き顔がちらついてしかたなかった。
 
 けじめけいじめと言うけれど・・・一体何にけじめを付ければいいのか?
 半分腐ったような俺のクズな脳みそは、相変わらずそんなことを考えつつ。
 正看護師であるきなこの部屋は、めちゃくちゃ良い部屋だったことに、なんとなく男としての劣等感も覚え。
 あんなすっとぼけたきなこが、一人暮らしで豪華な部屋に住んでるとかね・・・
 あいつに負けてることが、そもそもなんとなく気に入らなかった。
 
 正社員の職を探すかな・・・?

 なんて、バンド練習中のスタジオで地味に求人雑誌を読んでる俺がいたりもしたけど、やっぱ、ぱっとする仕事がなくて。
 ずっとバイトで食いつなぎ、音楽しかやってこなかったから、なおさら脳みそが『正社員』という枠にハマることをやたらめったら拒否している。
 それに正社員になるのはいいが、俺は真奈美と結婚したいの????
 なんて考え始めるとまた壁に当たって、そしてまた最初に戻る堂々巡り。
 
 一体俺はどうしたいんだ・・・・?

 なんとなく風が冷たくなってきた秋口。

 なんとくタバコを吸いながら、なんとなくコンビニにコーヒーを買いにきて、コンビニのコーヒーをなんとなく飲みながら、なんとなく空を眺めてみる。
 俺は自分の人生を、だいたいこんな感じで、なんとなく過ごしてきた気がする。

 ぜってーメジャーにいってやる!とか、ぜってー音楽関係の仕事についてやる!とか、そんな感情はもうとっくに失せてるし。
 これといってやりたい仕事もないし・・・
 もうどうでもいいやと結婚しようとも思わないし・・・

「あ~・・・・我ながらクズだなぁ・・・」

 バイトに行くまでまだ時間がある。
 今日はバンドの練習もないし、来週までライブもない。
 クズな人間のクズな人生が行き着く先は、やっぱクズなんじゃないかとふと思って、ため息をついた。

 だけど、きっと、真奈美にだけは、ちゃんとしてやらないとな・・・
 さすがの俺も、気の強い真奈美があんなに泣く顔を見てしまえば、心だってそりゃ痛む。
 
 真奈美のことは嫌いか?
 いや、嫌いじゃないな・・・
 じゃあ好きか?
 まぁ、それなりに好きではあるよな・・・
 じゃあ、結婚とかしたいか?
 それはなんとなく勘弁だな・・・
 真奈美と別れたいか?
 面倒くさくなければ・・・・
 そう・・・
 別れたいのかもしれない・・・

 どんなに頑張っても、今の俺は、真奈美の希望に沿ってやることはできないし、正直、自由がなくなるし、面倒くさい。
 そうなんだ、面倒くさいんだよ・・・いつだって何もかもが面倒くさい。

 でも・・・

 なんだろう?
 
 きなこも、あおいも、二人揃ってなんか色々頑張ってるっていうか、人生必死に生きてるというか、壁を乗り越えてきたというか・・・

 なんかよくわからないけど、あの女の子たちがあれだけやってんだし、微妙に触発された感があって。
 だからなんていうか、俺も微妙にちゃんとしないといけないかなとか、妙にそんなことを考えてみたりもした。

 ~ 哲は、何に対しても本気でやってないよね?

 本気か・・・
 人生は惰性で
 人生はぬるく
 熱くなんてならなくていい・・・
 なんて・・・
 人間として終わってるけど・・・

 せめて最後ぐらい、ちゃんとしてやらないとな。
 俺は、多分、真奈美のことが嫌いじゃないけど、本気で好きな訳でもない。
 なんとなく、それが分かったから。
 面倒くさいけど、面倒くさがってたら、確かに何も前に進まない。
 俺の人生なんて終わってるし、熱くなる必要も、本気になる必要もないけど・・・
 なんとなく、それじゃダメだよなって、この間、きなことあおいを見て思ったから。
 今までのぬるい人生なんて変わることもないけど、せめて、なにか一つぐらいちゃんとしないとな。

 俺は秋めいた空にタバコの煙を吐き出すと、スマホを取って、真奈美に『近いうち会えないかな?』とLINEを打った。

 
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