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ACT3 優柔不断は早々簡単に治らない7
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正直、こんなに明るくて、あほで無邪気なきなこが、いじめられっ子だったとは信じがたいけど・・・
まぁ、人間、生きてれば必ず何かの壁にはぶち当たるよな。
小学だの中学だので、そうやって壁にぶち当たったきなこが、こうやって明るく今を生きてるとか・・・
こいつはあほだし、天然だし、たまに始末にならないほど面倒くさいけど、俺なんかよりずっと人生の荒波を越えてきてるのかもしれない。
それに比べて今の俺は・・・
現実から逃げまくり、本カノの涙の訴えからも逃げまくり、音楽も中途半端。
この現状じゃ・・・・
クズよばわりされても、仕方ないよな・・・
俺は思わず自分自身に呆れてため息をついた。
そんな俺の心情も知らないまま、あおいはきなこの髪を撫でて言葉を続けた。
「きぃちゃんだって、あんなに頑張ったんだし、あたしだって頑張れるって思って
あたしも頑張ってここまで来たんだ・・・
そういう意味で、きぃちゃんはあたしの恩人
色んなことがあって、泣きながらきぃちゃんに電話することもよくあったよ。
きぃちゃんは、いつもの変な言葉で慰めてくれて、きぃちゃんと話してるうちに、悩んでることがバカらしくなっちゃうんだよねw」
「・・・・さすが、きなこクオリティ、問題の本質すら忘れさせる珍回答な」
あおいが、悩みなんかどうでもよくなる気持ちはよくわかる。
なんていってもきなこ節だしな・・・
あおいは、うふふっと笑ってチャイナブルーに口をつけると、また少しだけ切ない顔になる。
「だけど・・・さすがにここまできたら、たまに折れそうになっちゃう・・・
このギョーカイは、上を見ても隣を見ても下をみても、怖くて震えちゃうぐらいだもんね・・・」
「ああ・・・・」
俺はプロじゃないけど、あおいの言ってることはなんかよくわかる。
そうなんだ、実力があるやつも山ほどいる、ルックスがいいやつも、センスがあるやつも、運があるやつも、このギョーカイには腐るほどいる。
気を抜いたら最後、食いつぶされるのは目に見えてる。
有名になればなるほど、足元を掴んで倒そうもする連中も増えていくんだろうな‥‥
俺は、なんとなく手持無沙汰で作ったバーボンの水割りを地味に飲みながら、うつむき加減になったあおいの顔を見た。
「ま、そうだろうな・・・
ゾンビみたいにどんどんどんどん沸いてでるしな、上手いやつ等なんて・・・
間違うと即食いつぶされる・・・
なんとなくだけど、わかるよ、俺だって音楽やってるから」
そう言った俺の顔を、あおいはハッとしたような表情で見つめていた。
水割りのグラスごしに、あおいと俺の目がばっちりあった。
「おかしいな・・・・あたし、あんまこういうの、人に言わないタイプなんだけど・・・
てっちゃんがきぃちゃんの知り合いのせいかな?
なんか・・・ついぽろっと言っちゃった・・・」
「たまにはいいやん?愚痴とか弱音とか、そんなの貯めてばっかいると脳内カオスになるし」
「・・・てっちゃんて、なんかやっぱ面白いねw」
「そうかな?俺はただのクズだけど?」
「またそうやって自虐するw自覚してるんなら、クズ卒業すれば?w」
「あぁ・・・・卒業できるかなぁ?クズ・・・」
「そこは努力したらいいんじゃないのかな?」
そう言って、あおいはくったくなく笑った。
それはトップアーティストとは思えないほど、ごく自然で可愛い、まるで飾り気のない笑顔で、なんとなく、俺も悪い気分にはならなかった。
そんな俺に、あおいは矢継ぎ早に聞いてくる。
「てっちゃんて、ギターやってんの?」
「違うよ、ボーカル」
「ああ!そっか、だから、なんとなく声が気持ちいいんだ!」
「声が気持ちいい???」
「そうそう、歌唄う人はしゃべる声もどこか違うから、あたしもプロだからね、そういうのよくわかる」
「なる・・・・」
「ねぇねぇてっちゃん?」
「なんでしょう??」
「Can'tTakeMyEyesOffYou 歌える??」
唐突にそんなことを聞かれて、俺はバーボンのグラスを持ったまま一瞬きょとんとする。
「君の瞳に恋してるかぁ~
あぁ、歌えるといえば歌える、かな?」
そう答えた瞬間、あおいはヘーゼルの瞳をきらっきらっと輝かせて、これまた唐突にこう言ってきた。
「ねぇ!今からちょっとセッションしようよ!」
「はい???今???ここで????」
「そうそう!!」
まぁ、人間、生きてれば必ず何かの壁にはぶち当たるよな。
小学だの中学だので、そうやって壁にぶち当たったきなこが、こうやって明るく今を生きてるとか・・・
こいつはあほだし、天然だし、たまに始末にならないほど面倒くさいけど、俺なんかよりずっと人生の荒波を越えてきてるのかもしれない。
それに比べて今の俺は・・・
現実から逃げまくり、本カノの涙の訴えからも逃げまくり、音楽も中途半端。
この現状じゃ・・・・
クズよばわりされても、仕方ないよな・・・
俺は思わず自分自身に呆れてため息をついた。
そんな俺の心情も知らないまま、あおいはきなこの髪を撫でて言葉を続けた。
「きぃちゃんだって、あんなに頑張ったんだし、あたしだって頑張れるって思って
あたしも頑張ってここまで来たんだ・・・
そういう意味で、きぃちゃんはあたしの恩人
色んなことがあって、泣きながらきぃちゃんに電話することもよくあったよ。
きぃちゃんは、いつもの変な言葉で慰めてくれて、きぃちゃんと話してるうちに、悩んでることがバカらしくなっちゃうんだよねw」
「・・・・さすが、きなこクオリティ、問題の本質すら忘れさせる珍回答な」
あおいが、悩みなんかどうでもよくなる気持ちはよくわかる。
なんていってもきなこ節だしな・・・
あおいは、うふふっと笑ってチャイナブルーに口をつけると、また少しだけ切ない顔になる。
「だけど・・・さすがにここまできたら、たまに折れそうになっちゃう・・・
このギョーカイは、上を見ても隣を見ても下をみても、怖くて震えちゃうぐらいだもんね・・・」
「ああ・・・・」
俺はプロじゃないけど、あおいの言ってることはなんかよくわかる。
そうなんだ、実力があるやつも山ほどいる、ルックスがいいやつも、センスがあるやつも、運があるやつも、このギョーカイには腐るほどいる。
気を抜いたら最後、食いつぶされるのは目に見えてる。
有名になればなるほど、足元を掴んで倒そうもする連中も増えていくんだろうな‥‥
俺は、なんとなく手持無沙汰で作ったバーボンの水割りを地味に飲みながら、うつむき加減になったあおいの顔を見た。
「ま、そうだろうな・・・
ゾンビみたいにどんどんどんどん沸いてでるしな、上手いやつ等なんて・・・
間違うと即食いつぶされる・・・
なんとなくだけど、わかるよ、俺だって音楽やってるから」
そう言った俺の顔を、あおいはハッとしたような表情で見つめていた。
水割りのグラスごしに、あおいと俺の目がばっちりあった。
「おかしいな・・・・あたし、あんまこういうの、人に言わないタイプなんだけど・・・
てっちゃんがきぃちゃんの知り合いのせいかな?
なんか・・・ついぽろっと言っちゃった・・・」
「たまにはいいやん?愚痴とか弱音とか、そんなの貯めてばっかいると脳内カオスになるし」
「・・・てっちゃんて、なんかやっぱ面白いねw」
「そうかな?俺はただのクズだけど?」
「またそうやって自虐するw自覚してるんなら、クズ卒業すれば?w」
「あぁ・・・・卒業できるかなぁ?クズ・・・」
「そこは努力したらいいんじゃないのかな?」
そう言って、あおいはくったくなく笑った。
それはトップアーティストとは思えないほど、ごく自然で可愛い、まるで飾り気のない笑顔で、なんとなく、俺も悪い気分にはならなかった。
そんな俺に、あおいは矢継ぎ早に聞いてくる。
「てっちゃんて、ギターやってんの?」
「違うよ、ボーカル」
「ああ!そっか、だから、なんとなく声が気持ちいいんだ!」
「声が気持ちいい???」
「そうそう、歌唄う人はしゃべる声もどこか違うから、あたしもプロだからね、そういうのよくわかる」
「なる・・・・」
「ねぇねぇてっちゃん?」
「なんでしょう??」
「Can'tTakeMyEyesOffYou 歌える??」
唐突にそんなことを聞かれて、俺はバーボンのグラスを持ったまま一瞬きょとんとする。
「君の瞳に恋してるかぁ~
あぁ、歌えるといえば歌える、かな?」
そう答えた瞬間、あおいはヘーゼルの瞳をきらっきらっと輝かせて、これまた唐突にこう言ってきた。
「ねぇ!今からちょっとセッションしようよ!」
「はい???今???ここで????」
「そうそう!!」
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